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風評被害対策

防犯カメラはプライバシーを侵害する?ガイドラインや判例を解説

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防犯カメラはプライバシーを侵害する?ガイドラインや判例を解説

防犯カメラは、駅や街中などの公共の場所だけでなく、コンビニの店内や家庭の庭先など様々な場所で、防犯や防災目的で設置・使用されています。

そして、近年、防犯カメラの高性能化に伴い、暗い場所や動きのあるものでも鮮明に映し出すことが可能になっています。

こうした防犯カメラの高性能化は、防犯や防災目的という側面においては非常に役立ちますが、一方で、通行人や施設利用者を鮮明に撮影したり録画できるという点では、個人のプライバシーを侵害してしまう危険性を孕んでいます。

この記事では、防犯カメラの設置・使用によるプライバシー侵害の危険性について、ガイドラインや判例を挙げて説明していきます。

関連記事:プライバシー権を徹底解説。3つの侵害要件とは

防犯カメラはプライバシー侵害になるリスクがある

防犯カメラはプライバシー侵害になるリスクがある

前述のとおり、近年の防犯カメラは高性能化が進んでおり、その特徴の一つとして、高解像度での撮影・録画が可能な点が挙げられます。

防犯カメラの高性能化は、犯罪が起こった際の犯人の特定などには非常に優れた効果を発揮しますが、日常生活においては、必要以上の情報まで撮影・録画してしまう可能性があります。

例えば、コンビニが防犯目的で、入り口付近に外に向けた防犯カメラを設置した場合には、コンビニに出入りする人だけでなく、付近を歩いている人も鮮明に映りこんでしまうことが考えられます。

防犯カメラで撮影・録画した映像が特定の個人を識別できるものであれば、個人情報保護法で規定される「個人情報」に該当します。「個人情報」は、法律に準じた適正な取扱いや管理をする必要があり、それを怠ると、プライバシー侵害になるおそれがあります。

関連記事:個人情報保護法とプライバシーの侵害の関係

以上から分かるように、防犯カメラの設置は、意図せずにプライバシー侵害を招くおそれがあるので、取扱いには注意が必要です。

防犯カメラによるプライバシー侵害を防ぐためにガイドラインを確認

防犯カメラによるプライバシー侵害を防ぐためにガイドラインを確認

個人情報保護委員会による「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」

個人情報保護委員会は「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」(https://www.ppc.go.jp/files/pdf/2205_APPI_QA.pdf)Q1-12 において、防犯カメラの設置に関わる個人情報の取扱いについて、次のように示しています。

  • 個人情報の利用目的をできる限り特定し、当該利用目的の範囲内でカメラ画像や顔認証データを利用しなければならない
  • 個人情報の利用目的をあらかじめ公表するか、又は個人情報取得後速やかに本人に通知若しくは公表しなければならない                                               
  • 取得したカメラ画像を防犯目的のみに利用する場合には、「取得の状況からみて利用目的が明らか」(法第21条第4項第4号)であるため、利用目的の公表・通知は不要

つまり、防犯目的のみでコンビニ内に設置する等、利用目的が明らかな場合は利用目的の公表は不要ですが、防犯以外の目的でカメラ画像等を利用する場合には、利用目的の特定・公表が必要です。

例えば、

  • 顔認識システムと組み合わせて施設の入退室管理を行う
  • 各部屋にカメラを設置し状況を確認する
  • 河川や堤防など遠隔地の状況確認のために設置する

というような場合には、映り込む相手に対して「現在、防犯カメラによる撮影を行っています」と張り紙などで伝えることが必要になります。

市町村ごとの防犯カメラ設置基準

防犯カメラの具体的な設置基準に関しては、市町村ごとに条例やガイドラインが策定されています。

例えば、当モノリス法律事務所の所在地である、東京都千代田区の「千代田区防犯カメラの設置に関する基本方針」(https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/2185/setsubi_h29-02.pdf)には、「基本原則」として、次のように示されています。

  1. 防犯カメラの設置及び運用は、設置目的の達成に必要最低限度の範囲とすること。
  2. 防犯カメラは、道路等の公共の場所を記録するものとし、特定の個人又は建物を記録するものでないこと。防犯上やむを得ず私有地の映像を記録する場合は、あらかじめ当該私有地の所有者、管理者、使用者又は占有者の承諾を受けること。
  3. 防犯カメラで記録された映像、音声等(以下「映像等」という。)の取扱いに当たっては、プライバシー保護に関し適切な措置を講ずること。
  4. 防犯カメラの設置、管理、運用及び映像等から知り得た秘密をみだりに漏らさないこと。
  5. 防犯カメラの設置及び運用について、あらかじめ地域住民に対し説明会等を行い、合意を得ること。
  6. この基本方針に基づき防犯カメラの設置、運用、映像等の管理及び利用に関する基準を定め、これを遵守すること。当該基準は、他者からの求めに応じて常時開示できる状態で保管すること。

そして、設置方法及び場所、映像等の管理・利用についても、

  • 防犯カメラの設置場所は、全ての人が認識できるよう標識等を用いて明瞭に表示するものとする。
  • 映像等の保存期間は7日程度とし、保存に当たって映像等を編集し、又は加工してはならない。
  • 映像等の外部への提供及び開示は、法令等に基づくとき又は捜査機関の捜査等に必要なときに限り行うことができるものとする。

と、示されています。

したがって、防犯カメラを設置する場合は、設置場所の属する市町村の条例やガイドラインも確認するようにしましょう。

防犯カメラとプライバシー権に関する裁判例

防犯カメラとプライバシー権に関する裁判例

コンビニの防犯カメラ

日頃から防犯カメラで買物客の容ぼうを撮影していたコンビニが捜査協力のために当該ビデオテープを警察に提出したことについて、当該ビデオテープに映っていた原告が、コンビニ経営者に対して、肖像権及びプライバシー権を侵害されたとして、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した事例があります。

この裁判では、

  • 被告が原告を防犯カメラによって撮影し、これを本件ビデオテープに録画したこと
  • 被告が本件ビデオテープを警察に提出したこと

の違法性がそれぞれ争点となりました。

関連記事:肖像権侵害で損害賠償請求となる基準や流れを解説

防犯カメラの設置及び撮影・録画について

裁判所は、商店において買物をする個人が、商品の選択、店内における行動について、他人に知られるのを欲しないことは認められるべきであり、商店内において承諾なしに撮影されることは、肖像権の侵害にとどまらず、プライバシー権の侵害でもあることを認めました。

一方で、裁判所は、「個人の有する肖像権等も一定の場合には制限される」とし

買物のために商店を訪れた客の場合について検討すると、客は、上記の肖像権等を有するものであるが、商店の経営者は、来店した客及び従業員等の生命、身体の安全を確保し、また、その財産を守るため、店内において一定の措置を採ることが許される。

そして、通常、客にとって、どの商店を利用するかについて大幅な選択の余地があることに照らすと、商店の経営者は、当該商店の置かれた諸事情を勘案した上でどのような措置を採るかにつき広範な裁量権を有するものと認められる。

名古屋地方裁判所平成16年7月16日判決

として、防犯カメラの設置等の措置についてコンビニ経営者の広い裁量を認め、店内における防犯カメラの設置及び撮影・録画が許されるかどうかは、その目的の相当性、必要性等を考慮して検討する必要があるとしました。

その上で、コンビニにおける万引き等の増加などに言及し、店内における防犯カメラの設置及び撮影・録画の目的は、万引き等の犯罪に対処するためであるから、その目的は相当であり、必要性も認められるため、違法ではないと判断しました。

防犯カメラの映像を録画したビデオテープを警察に任意提出したことについて

続いて、裁判所は、目的に相当性や必要性が認められるとしても、ビデオテープが来店客を順次撮影していることによると、上記目的を逸脱して利用することは許されず、警察から協力を求められた場合であっても、上記の目的を著しく逸脱するものであるときには違法と評価されることがあると述べています。

その上で、本件については、コンビニ経営者が捜査対象である犯罪と本件コンビニが無関係であることを認識していなかったことからすれば、コンビニ経営者が撮影テープを警察に提出したことは、上記目的を逸脱したものとは言えず、違法ではないとしました。

建物の通路部分に設置した防犯カメラ

ひとつづきの建物の通路部分に、被告が設置した4台のカメラについて、住民である原告4人がプライバシーを違法に侵害されているとして、被告にその撤去及び損害賠償を求めた事例があります。

裁判所は、うち3台のカメラについては、原告らの居室玄関付近や廊下等、公道に出るための通行路が撮影範囲となっておらず、原告らに対する監視目的が含まれているとまでは認められないとして、原告らのプライバシーが社会生活上受忍すべき限度を超えて侵害されてはいないとしました。

しかし、残り1台のカメラ(本件カメラ1)については、玄関入口付近に立っている人が、顔を識別できるほどではないものの、かなり鮮明に映ること、通用口の前付近において上記ほど鮮明ではないものの、少なくとも人が通過していることは映像上認識することが可能であること等を認定し、

本件カメラ1の撮影が、常に行われており、原告らの外出や帰宅等という日常生活が常に把握されるという原告らのプライバシー侵害としては看過できない結果となっていること、他方、被告は、本件カメラ1の設置について、被告所有建物の1階居室の南側窓とその窓付近を撮影して防犯を図るものであるとするが、窓の防犯対策としては二重鍵を設置するなどのその他の代替手段がないわけではないこと、その他上記の種々の事情を考慮すると、本件カメラ1の設置及びこれによる撮影に伴う原告らのプライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えているというべきである。

東京地方裁判所平成27年11月5日判決

としてプライバシー侵害を認め、4台のうち1台のカメラの撤去と、各自10万円(原告4人分で合計40万円)の慰謝料を認めました。

各自10万円という慰謝料は低額に思われるかもしれませんが、

  • カメラ1の撮影範囲が原告らのプライバシーを保護すべき場所に及んでいるものの、これらの場所が通路という屋外であって私的空間ではないこと
  • 監視目的で設置された場合に比べると悪質性が低いこと
  • 撮影された映像は約2週間経過後に自動的に上書きされて消去され、映像が永続的に保存・管理されるものではないこと

等が考慮されたのだと考えられます。

感情のもつれによるテレビカメラの設置

私道をはさんで隣接する家同士が、私道の歩行や自転車利用時などの些細な騒音を原因とする感情のもつれから近隣トラブルとなり、片方の家が複数のテレビカメラを設置したことで感情対立が拡大し、テレビカメラ設置がプライバシーの侵害にあたるかどうかが争いになった事例があります。

さらに被告夫婦がカメラで収集した内容をもとに、被告が開設するホームページ上に原告夫婦を誹謗中傷する記事を書き込んだため、これが名誉毀損及び名誉感情の侵害にあたるとの争いに発展しました。

プライバシーの侵害について、裁判所は、私道は原告宅の敷地ではないものの、原告宅の延長として日常生活に密着した空間であり、プライバシーを保護しなくてもよい場所であるとするのは相当ではないと判断しました。

また、被告夫婦による防犯目的で設置したという主張については、防犯目的の要素があったとしても、原告夫婦のプライバシーを侵害するような態様での継続的な監視は、社会通念上受忍すべき不利益の程度を超えているとして、プライバシーの侵害を認めました

関連記事:ネット上の誹謗中傷行為とプライバシーの侵害

その上で、原告夫について合計30万円(プライバシーの侵害に対して10万円、名誉毀損に対して20万円)、原告妻について合計60万円(プライバシー侵害に対して10万円、名誉毀損に対して30万円、名誉感情の侵害に対して20万円)、合わせて90万円の支払いを命じました。

また、原告が請求したカメラ撤去に関しては、

被告らによる本件カメラの設置は、原告らのプライバシーを侵害するものとして違法であるから、原告らは、被告らに対し、プライバシーの権利に基づく妨害排除請求として、本件カメラの撤去を求めることができると解すべきである。

東京地方裁判所平成21年5月11日判決

として請求を認め、また、

原告らと被告らの間のトラブルの経緯等に照らすならば、被告らは、本件カメラを撤去した後、新たなテレビカメラを設置して、原告宅や本件私道部分を撮影し、原告らのプライバシーを侵害する具体的危険性があると認められるから、原告らは、被告らに対し、プライバシーの権利に基づく妨害予防請求として、今後、原告宅や本件私道部分が撮影範囲に入るテレビカメラを設置することの禁止を求めることもできるというべきである。

同上

として、新たなテレビカメラの設置を禁止しました。テレビカメラによりプライバシーを侵害するような継続的監視をすることは、許されません。

防犯カメラによるプライバシー侵害のトラブルを避けるために

防犯カメラによるプライバシー侵害のトラブルを避けるために

ガイドライン等を遵守する

防犯カメラによるプライバシー侵害を避けるためには、まず、前記で紹介した、個人情報保護委員会による「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」や、市町村ごとの防犯カメラ設置基準等を確認し、その内容を遵守しましょう。

「防犯カメラ作動中」と掲示する

目的が防犯の場合は店頭やWebでの表示が義務ではない場合がありますが、基本的には「防犯カメラ作動中」などの掲示を行いましょう。

録画映像の流出を防ぐ

撮影した録画映像が、インターネットや第三者に流失しないように十分に注意しましょう。対策例の1つとしては、カメラ・レコーダーやデータベースなどのログインID・パスワードを初期設定のものから、セキュリティ性の高い複雑なものに変更して運用することが挙げられます。

また、外部への流失だけでなく、内部への流失にも注意を怠らないようにしましょう。従業員などの不正利用を防ぐためには、プライバシーポリシーを定めて、リテラシー向上のための研修の実施などの啓蒙活動を積極的に行うことも重要です。

まとめ:防犯カメラの設置にはガイドライン等を確認しよう

まとめ:防犯カメラの設置にはガイドライン等を確認しよう

現代生活において広く浸透している防犯カメラですが、ガイドライン等に沿って正しく設置・管理をししなければ、プライバシーを侵害してしまうおそれがあります。防犯カメラを使用する場合には、ガイドライン等を確認し、慎重に対処すべきです。

また、他者の防犯カメラによって自己のプライバシーが侵害されてしまう場合もあります。防犯カメラをめぐるトラブルに遭遇した際には、一度弁護士に相談することをお勧めします。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報を看過すると深刻な被害をもたらします。当事務所では風評被害や炎上対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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