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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

風評被害対策の前提 ネット上のネガティブ記事の精査方法を解説

風評被害対策

過去の会社不祥事や炎上事件、逮捕や前科などに関するウェブページを一掃する、という場合、まず前提として、「それらネガティブページや投稿を全て漏れがないようにリストアップする」という作業が必要になります。このリストアップが出来ないと、全体のボリュームを見ながら風評被害対策を進めることができませんし、例えば、仮処分や裁判といった裁判所手続について、本来は1回で済むはずだったのに、見逃しが発生したせいで2回行う必要が生じる、といった危険もあるからです。

ただ、インターネット上から、ある事実(例えば会社不祥事や炎上事件、逮捕や前科)について記載されている全てのウェブページや投稿をリストアップする、ということは、決して「簡単」ではありません。この部分は、非常に専門性が高く、ノウハウが無ければできない作業なのです。

モノリス法律事務所は、元ITエンジニアの代表弁護士や、上記のようなネットリサーチ専門のスタッフを擁する、風評被害対策に専門性を有する法律事務所です。ネットリサーチはどのように行われるべきなのか、以下、解説します。

Google検索結果とその限界とは?

ネットリサーチの基本となるのは、やはりGoogle検索です。ただ、Googleで、自分が探したいキーワード、例えば逮捕記事の削除の場合「自分の氏名 逮捕」といったキーワードを検索して表示される検索結果には、3個の意味で、限界があります。

Google検索の対象となるウェブページ

インターネット上には、「無数」のウェブページが存在します。インターネット上の総ウェブページ数は理論上計測不能ですが、一説では、「ウェブサイト」の数が、現時点で約18億だと言われています。

一つのウェブサイト内にウェブページは複数存在する訳ですから、ウェブページの数はそれよりも遙かに多い、ということになります。

そしてGoogle検索とは、単純に言うと、

  1. Googleのbot(Googlebot)がインターネット上を走査し、既知のウェブページ内からリンクを辿ることで開ける新たなウェブページを検出し
  2. そのページの内容を把握し(インデックス登録)
  3. そのページ内に含まれるキーワードで検索が行われた際に、そのページを検索結果に表示させる

という仕組みで行われています。何を言いたいかと言うと、Google検索で表示されるのは、あくまで「上記のようにしてGoogleがインデックス登録を行ったウェブページ」であって、「全てのウェブページ」ではない、ということです。つまり、Google検索を使う限り、「Googleがまだインデックス登録を行っていないウェブページ」を見つけることはできませんし、そもそも、インターネット上の全てのウェブページを一切漏れなく探し尽くす方法は、この世に存在しません。

「似た」ウェブページは検索結果から除外される

また、Googleは、「インデックス登録されているウェブページのうち、検索キーワードが含まれる全てのウェブページ」を検索結果に表示させている訳ではありません。これは、普通にGoogle検索を使っていると気付くケースもあるかもしれません。検索結果最終ページに表示される「最も的確な検索結果を表示するために、上の○件と似たページは除外されています。」というものです。

Google検索結果最終ページの例

例えば、

  1. あるニュースが大手ニュースサイトで一次配信され
  2. ニュース記事をまとめるサービスなどに転載され
  3. 個人サイト等にも転載された

といった場合、同じ内容のページが検索結果を埋めてしまうとユーザーから見て使いにくいため、Googleは、「似た」ページ、上記の場合であれば2や3を検索結果から自動除外しているのです。

これは、「風評被害ページを一掃したい」という場合には、必ずしも「使いやすい」仕様とは言えません。例えば上記の「あるニュース」が自分の過去の逮捕記事だとすると、

検索結果に表示されていたのが「1.大手ニュースサイトの一次配信記事」だけだったので、そのページだけを削除したところ、1が無くなったことで、次に「2.ニュース記事をまとめるサービス上の転載記事」がGoogle検索結果に表示されるようになってしまった

といった事態があり得るからです。

この問題は、上記表示で「検索結果をすべて表示するには、ここから再検索してください」の部分をクリックすれば良いのですが、この仕様や機能を知らないと、風評ページを「見逃す」可能性がある、ということです。

同一サイト内から表示される記事数には上限がある

Googleは、必ずしも同一サイト内の記事を全て検索結果には表示していません。

さらに、Googleは、一つのウェブサイト内から表示される検索結果ページ数に、上限を設定しています。この仕様は少し複雑なのですが、単純に言うと、「同一サイト内から表示されるのは最大2ページ」です。

どういうことかというと、例えば、仮に、Yahoo!知恵袋内で、ある会社や個人の名前が登場するQ&Aが5個あるとしても、Googleで当該会社や個人の名前を検索した検索結果には、Yahoo!知恵袋内のページは最大2ページしか表示されない、ということです。掲示板等の場合も同様で、あるキーワードが含まれる5ちゃんねるスレッドが5個あっても、Google検索結果には最大2個しか表示されませんし、また、例えば、ある人物が、

  • 逮捕された記事
  • 再逮捕された記事
  • 有罪判決を受けた記事

と3記事が同一ニュースサイト上に存在する場合、Google検索結果には少なくともどれか一つ(3-2=1)は表示されません。

あるキーワードを検索した際に、同一サイト(例えばYahoo!知恵袋、特定の掲示板、特定のニュースサイトetc)内のページが大量に検索結果に並んでしまうと、ユーザーにとっては不便なので、Googleは、こうした仕様になっているのです。

ただ、この仕様も、「風評被害ページを一掃したい」という場合には、必ずしも「使いやすい」ものとは言えません。

例えば上記で、Yahoo!知恵袋のネガティブなQ&Aを裁判所手続で削除したい、という場合に、Google検索結果を見て「対象は2個しかない」と判断して手続を進めてしまうと、削除成功時、残りの5-2=3個のうちのどれかが検索結果に表示されるようになってしまいます。

「検索式」を用いた高度なGoogle検索

上記の問題のうち、特に3番目の問題を解決するために必要なのが、Googleの「検索式」という機能です。

Googleは、たしかに、「インターネット上全体から、当該キーワードの含まれるページを検索する」という機能(グローバル検索)については、「1サイトあたり基本2ページ」という上限を設定しています。しかし、「キーワード site:対象サイトのURL」という「検索式」を用いると、

  • 指定した対象サイト内の記事のみを対象に検索を行う
  • その検索結果には、「1サイトあたり基本2ページ」という上限はない

という検索を行うことができます。

「site:」の検索式を用いた検索結果の例

「検索式」は、実際にはもっと複雑で、上記以外の問題を解決するために用いる検索式なども存在します。

特定サイト用の特殊検索手段

例えば、Yahoo!知恵袋には、独自の検索機能が存在します。

Yahoo!知恵袋内検索機能の例

この検索は、「Googleが(たまたま)インデックス登録したウェブページ」ではなく「Yahoo!知恵袋内のデータベースを、直接Yahoo!知恵袋の検索プログラムが検索した結果」なので、最初に述べた、「Googleがまだインデックス登録していないウェブページも存在する」という問題の解決となります。「Yahoo!知恵袋内のページであれば、Yahoo!知恵袋の検索機能さえ用いれば、全て漏れなく見つけ出すことができる」ということです。

すなわち、

ある事実(会社の不祥事、個人の逮捕etc)について、少なくとも、グローバル検索上でYahoo!知恵袋のページが発見された場合、「site:」の検索式を用いるよりは、Yahoo!知恵袋内の検索機能を用いた方が、漏れの無いリストアップを行う事ができる。

ということです。

これは、Twitter等についても同じです。Twitterは、そのサービスの性質上、話題となった事実(会社の不祥事、個人の逮捕etc)についてのツイートが、複数存在するケースが多いサイトです。そうしたツイートは、必ずしも全てがGoogleにインデックス登録されている訳ではありませんし、少なくとも、全てがグローバル検索上に表示される訳ではありません。

削除対象の「1件」のカウント方法

削除請求においては「何を」単位とするかも複雑です

適切なリストアップと「URL」の関係

ここまでは、「Google検索等を用いて、可能な限り多くのウェブページ(URL)を拾い出す方法」について書いてきましたが、しかし、多くリストアップできればそれで良い、という訳でもありません。削除請求の対象は、必ずしも「URL」を単位としていないからです。

5ちゃんねるの場合

これは、特に掲示板系のサイト(5ちゃんねるやそのコピーサイト等や、他の掲示板系サイト)の場合に、問題になる事柄です。

例えば、あるキーワードをGoogleで、「site:5ch.net」の検索式で、つまり、5ちゃんねる内から検索すると、下記のようなURLが検索結果として表示されるケースがあります。

  1. ○○○.5ch.net/test/read.cgi/○○/○○○○/40
  2. ○○○.5ch.net/test/read.cgi/○○/○○○○/1-100
  3. ○○○.5ch.net/test/read.cgi/○○/○○○○/30-

5ちゃんねるは、

  1. スレッドのURLの後にレス番号を記載すると、当該レスのみを表示させる
  2. スレッドのURLの後に「A-B」のようにレス番号の範囲を記載すると、当該範囲のレスのみを表示させる
  3. スレッドのURLの後に「A-」のようにレス番号の始点と「-」を記載すると、当該レス以降のレスを表示させる

といった仕様です。つまり、レス番号40のレスに当該キーワードが書き込まれているだけで、様々なURL(のウェブページ)が「検索結果」に表示されてしまうのです。

しかし、掲示板系のサイトに対して削除請求を行う場合、その請求対象の単位は、少なくとも原則的に、「レス」です。したがって、レス番号40のレスを削除したいのであれば、端的に

  1. ○○○.5ch.net/test/read.cgi/○○/○○○○/40

というURLのみを抽出すればよく、後二者はリストアップしなくて良い、ということになります。

5ちゃんねるコピーサイト・まとめサイトの場合

そして付言すれば、更にややこしい話なのですが、同じ5ちゃんねる(系)でも、そのコピーサイトや「まとめサイト」の場合、サイトによっては、削除請求の単位は「レス」ではなく「ページ(スレッド)」となります。「どのサイトの削除請求の対象はどれなのか」というのは、完全に「ノウハウ」の領域です。

このため、

  • 法的な削除請求の単位に関する理解
  • あるウェブサイトのURL仕様(例えば5ちゃんねるには上記のような複雑な規則がある)に関する理解

がないと、「検索結果を見ながら削除対象をリストアップする」ということ自体が難しい、ということになります。

オープンウェブ以外の検索

インターネットには、オープンウェブ以外の領域も存在します

そして、ここまでは、Googleがインデックス登録を行う可能性のあるサイトについて説明してきましたが、

  • Googleは確実にインデックス登録を行わない
  • しかし風評被害対策としては削除請求の対象として考慮すべき

というサイト群も存在します。

Googleは、上記の仕様上、ログインをしなくても誰でも見ることの出来るウェブサイト(オープンウェブ)しか、検索対象としていません。しかし例えば、この世には、「新聞記事の過去記事を一括検索して閲覧できる、有料の(したがってユーザー登録やログインを行わないと見ることができない)ウェブサービス」といったものも存在します。

例えば逮捕記事の削除の場合、上記の新聞データベースサイトも、精査を行う必要があります。企業や個人の与信などを調査する会社は、上記の新聞データベースサイトを利用しているケースが多いからです。

新聞データベースサイトについては、下記記事にて詳細に解説しています。

まとめ

以上のように、「インターネット上から、風評被害対策として削除請求を行う対象をリストアップする」というのは、非常に専門性の高い業務です。当事務所は、風評被害対策をお受けする際に上記のような対象記事リストアップを行っていますが、この作業は、IT・インターネットに関する専門性を前提としているのです。

当事務所が作成する風評ページリストアップの例

インターネット上の風評被害対策において、ページ(や掲示板レス)の削除は、弁護士だけが行うことができる業務です。

しかし一方で、このリストアップは、主にIT・インターネット知識を、本記事で概要を解説したとおり、非常に高度に要求される業務です。これは、風評被害対策を、IT・インターネットに関する高度な専門性を有する法律事務所に依頼すべき大きな理由の一つだと言えます。繰り返しになってしまいますが、上記のようなリストアップが甘いと、

  • リストアップされたページを一掃しても、リストアップ時にはグローバル検索結果に表示されていなかった他のページが検索結果に表示され、追加削除が必要になって、当初の予算算定が大幅に間違っていたことになってしまう
  • 裁判所手続について、本来は1回で済むはずだったのに、2回3回と必要になってしまい、過大な費用が必要になってしまう
  • 新聞データベースサイトなど、オープンウェブ以外のページの存在に気付かず、例えば「逮捕記事を検索されるせいで就職に支障が出る」といった「問題」の解決にならない

といった問題が発生してしまうからです。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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