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風評被害対策

ハッシュタグは名誉毀損になるか?判例を元に解説

風評被害対策

ハッシュタグは名誉毀損になるか?判例を元に解説

インスタグラムやTwitterなどのSNSでは当たり前のように使用される「ハッシュタグ」。共通の語句等を含むデータの検索等に関する機能であるハッシュタグ投稿に対する「タグ」として利用されています。ハッシュタグの後に特定のキーワードを付与することで投稿がタグ化され、同じキーワードでの投稿を瞬時に検索できたり、共通の関心を持つユーザー同士で話題を共有したりすることが可能となります。

ハッシュタグは日常的な話題から最新のトピックまで、様々な情報を得るのに役立つだけでなく、自分が得た情報を多くのユーザーに発信したい時にも有効です。その一方でハッシュタグを悪用して、誹謗中傷や悪口などを拡散する人もいます。

ツイート内容そのものが名誉毀損の対象になることは明らかですが、ハッシュタグでも名誉毀損となるのでしょうか?ハッシュタグが裁判でどのように取り扱われているかを解説します。

発信者情報開示請求の場合

原告となったのはYouTube等でファッションに関する情報を発信している、アパレル製品等の企画、開発、製造、販売及び輸出入等を目的とする会社とその代表取締役です。原告はネット上の投稿につき、発信者情報開示を請求しました。

この投稿は原告会社X1と原告の代表取締役であるX2に対して12回にわたって行われました。裁判所は、「氏名不詳者は、次のような表現で、原告ないし原告の代表取締役であるX2を誹謗中傷した」と、しています。

原告会社X1と原告の代表取締役であるX2に対して行われた誹謗中傷を、裁判所は、「氏名不詳者は、次のような表現で、原告ないし原告の代表取締役であるX2を誹謗中傷した」と、しています。

実際の投稿内容は以下の通りです。

  • 投稿1:セール品の返品規定の改定を「糞改定」と罵り、「#詐欺」などのハッシュタグを付けた
  • 投稿2:X2につき、「人間性もなければモラルの欠片もない犯罪者がほざいた言葉」と罵り、「#犯罪者」、「#毎日違法行為」、「#X1」などのハッシュタグを付けた
  • 投稿4:X2を「ドクズX2」と呼び、(警察に対し)「尿検査と毛髪検査をお願いします。」、「脳が溶けている」などと罵り、上記のようなハッシュタグを付けた
  • 投稿5:X2を「株式会社X1代表取締役社長ドクズX2△△」と呼び、「お前んとこの糞ブランド(一部略)が異常」、「キチガイレベルの異常さ」などと罵り、上記のようなハッシュタグを付けた
  • 投稿6:原告の事業に関し、「メインの若年層視聴者をいかに騙して」、「インチキ情報商材屋や振り込め詐欺グループとなんら遜色ないよ。お前良心痛まないの?マジで。」と強く批判したり罵ったりして、上記のようなハッシュタグを付けた
  • 投稿8:X2を「ドクズX2」と呼び、同人が違法行為、犯罪行為、反社会的行為に関与したと罵り、上記のようなハッシュタグを付けた
  • 投稿9~12:氏名不詳者は自身が、原告会社と取引のある大手企業B社及びC社が開設しているサイトに送信した投稿のコピーを公開したが、X2が数々の違法行為や反社会的行為に関与している旨の中傷に加え,原告に広告を依頼したことがB社の企業ブランド価値を毀損している旨の批判が含まれていた

裁判所は上のように各投稿を整理し、「ハッシュタグを付けた」ことを指摘しつつ、このような事実の摘示ないし意見の表明が原告の社会的評価を低下させることは明らかであるとしました。

一般の読み手の普通の注意と読み方を基準にして判断すれば、本件各投稿は、原告の事業につき、客観的な根拠もなく詐欺、異常などと激しく批判し、また、原告の代表取締役であるX2につき、原告の事業と結び付けた上で、犯罪者とか、違法行為、犯罪行為、反社会的行為に関与したなどと度を越した誹謗中傷を重ね、さらに、原告と取引のあるB等の大手企業に対して原告との関わりを批判するなどした投稿を公開したものである。

東京地方裁判所2020年6月11日判決

としました。本件各投稿は、原告の人格権及び営業権を侵害するものであって権利侵害の明白性が認められるとし、原告が本件各投稿をした氏名不詳者に対し不法行為に基づく損害賠償請求をするためには、本件において原告が開示を求める発信者情報の開示を受けてその者を特定する必要があるとして、サイト管理者に対し、保有する発信者情報の開示を命じました。

誹謗中傷するだけでなく、「#詐欺」「#犯罪者」「#毎日違法行為」などのハッシュタグを付けて閲覧者を増加させようという行為は悪質であり、非難されるべきです。ただ、裁判においてハッシュタグがつけられているか否かを指摘するようになったのは、この1,2年のことです。

名誉毀損に基づく損害請求の場合

東京都葛飾区内で診療所を開設する医師がTwitterで行われた2回のツイートに対し、名誉毀損による不法行為に基づく損害賠償請求を行いました。

本件ツイート1は、原告と原告の子であるAが傷害事件を起こした事実、深夜に高齢の女性の家に侵入して乱暴し、器物損壊で警察に連行された事実、原告がAの暴力をあおったという事実を摘示し、原告が犯罪行為を行ったかのような印象を閲覧者に与えたというものでした。

本件ツイート2は、原告とAが同人の高齢の女性の家に侵入して暴力的な事件を起こした数日後に、平然と酒を飲みながらバーベキューをしていたとの事実を摘示し、一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準とすると、原告が道徳心や常識を持ち合わせていない人物であるかのような印象を閲覧者に与えたというものでした。

原告は、次のように主張しました。被告が、原告及び原告の長男の本名、原告の居住地、原告が開設するクリニックの名称、原告が指導教授として在籍する大学名等を明らかにしており、原告の人格権を侵害するだけでなく、医師としての信用を失墜させるという悪質なものであり、ハッシュタグを多用して本件ツイート1の閲覧数が増加することを意図したと非難しました。

裁判所は、本件各ツイートはいずれも原告の社会的評価を低下させるものであり、被告は原告に対し、不法行為に基づき本件各ツイートによって原告に生じた損害を賠償する義務を負うとしました。

開業医等である原告の社会的地位や本件各ツイートの内容からすれば、本件各ツイートの内容が第三者に知られることによって原告の事業や私生活に生ずる影響は大きい上、本件ツイート1がハッシュタグによって原告に関係する者に相当程度閲覧されやすい状態に置かれていたことにも照らすと、本件各ツイートによって生じた原告の精神的苦痛の程度は軽視し得ないものといえる。

東京地方裁判所2021年5月31日判決

として、「ハッシュタグによって原告に関係する者に相当程度閲覧されやすい状態に置かれていた」ことを指摘し、ただし、本件各ツイートが投稿後3日ないし9日後に削除されたことなどの事情を総合考慮して、慰謝料30万円、開示請求手続き費用54万円、弁護士費用8万円、合計92万円の支払いを被告に命じました。

まとめ

当サイトの別記事「名誉毀損の慰謝料が加害行為の悪質性で高額になるケースとは」で解説しましたが、「執拗な名誉毀損に対する場合」として、「嫌がらせの繰り返し」が過去の裁判では、悪質性を測る指標とされることがありました。

今後は、ハッシュタグを付けて閲覧者を増加させようという行為も、悪質性を測る指標の一つとなる可能性があるといえるでしょう。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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