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風評被害対策

公務員の逮捕記事や前科情報・犯罪歴は削除できる?弁護士が解説

風評被害対策

公務員の逮捕記事や前科情報・犯罪歴は削除できる?弁護士が解説

窃盗や交通事故での過失致死などの事件を起こし、逮捕をされてしまうと、逮捕時にニュース記事で実名報道をされてしまったり、有罪判決を受けた時のニュースが同様に報道されてしまったりして、インターネット上に逮捕歴や前科情報、犯罪歴が残ってしまうケースがあります。こうした情報が残り続けると、会社への就職時に、履歴書から氏名を検索されて、インターネット上の情報を発見されるなどして、就職等に不利益が発生する可能性があります。

この問題は、一般的に大きな問題なのですが、公務員の場合、更に重大な問題です。公務員が逮捕されるケースでは、一般企業のサラリーマンの場合より、実名報道が行われるケースが多く、また、後述するように、公務員の逮捕記事や前科情報は、一定程度公益性があり、削除できないのではないか、という懸念があるからです。

事件当時に公務員だったとしても、当該事件によって処分を受け、一般企業への就職などを検討する時点では、「かつて公務員であったから」という理由で逮捕記事等がインターネット上に残り続けるというのは、耐え難いものではあります。こうした記事を、弁護士に依頼するなどして、削除することは出来ないのでしょうか。

公務員の逮捕記事・前科情報の削除は困難?

公務員相手の名誉毀損は成立しにくい

公務員に関するインターネット上のネガティブな情報は、一般のサラリーマンの場合と同レベルには、削除できない、と言われる事があります。これはおそらく、名誉毀損に関する下記の条文を踏まえたものであると考えられます。

(名誉毀損)
第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
(公共の利害に関する場合の特例)
第230条の2
3 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

簡潔に言うと、以下のような構造です。

  1. 名誉毀損は、他人に関してネガティブな情報を発信すれば、一旦は成立する。
  2. しかし、(1)公益性がある、(2)真実の情報に関しては、成立しない。言い換えれば、(1)単に私怨を晴らす目的での情報公開に公益性は認められないし、(2)嘘で他人の評価を下げることは許されないので、そうした場合には成立する。
  3. ただし、公務員に関する情報の場合、(1)公益性は常に認められる。したがって、(2)虚偽の情報の場合にしか名誉毀損は成立しない。

実際には名誉毀損の成立要件はもう少し複雑なのですが、詳細に関しては下記記事にて解説しています。

[blogcard url=”https://monolith-law.jp/reputation/defamation”]

ともかく、名誉毀損との関係で、公務員はその他のサラリーマン等とは区別されており、あるインターネット上の記事や投稿が名誉毀損になる領域が、相対的に狭い。すなわち、ネガティブな記事を削除することが、サラリーマン等の場合よりも難しい、ということです。

プライバシー侵害の場合も同様と考えられる?

公務員に公務員に対するプライバシー侵害は、難しい問題です。

ただ、これはあくまで名誉毀損に関する議論です。そして逮捕や前科、犯罪歴に関する情報は、基本的には、「更正を妨げられない利益」といった言葉で、プライバシーの問題であると考えられています。プライバシーに関しても、名誉毀損と同様、公務員の場合はプライバシー侵害は認められにくい、という言説もあるのですが、ただこれは、明確な条文根拠や、明確な裁判例が、必ずしもあるものではありません。

直接の関係はない裁判例ですが、行政に情報公開を求める情報公開法の下における、公務員の氏名の開示について、

公務員の氏名については、情報公開法5条1号の定める「個人に関する情報」に当たらないとの原告(【注】公務員の氏名について情報公開を求めた側)の上記主張は、同号の趣旨及び文言に反するものであって採用できない。

東京地判平成14年6月1日

として、「公務員の氏名は『個人に関する情報』であり、少なくとも一定の保護を受ける情報である」という旨の判断を行ったものはあります。

公務員の逮捕記事・前科の削除で問題となる要素

以上より、公務員の逮捕や前科、犯罪歴の削除は、少なくとも「絶対に不可能」という性質のものではありません。明確な基準はない問題なのですが、弁護士に依頼を行うことで、こうした記事の削除が成功するケースもあります。そしてその手続の中では、下記のような要素が、問題とされるケースが多いと言えます。

当該逮捕や前科について、氏名や理由の公開は予定されているか

懲戒処分の内容等の公開が予定されているケースもあります。

一般的に、公務員は、法律の根拠がなければ懲戒処分を受けることはありません。そして例えば国家公務員の場合、国家公務員法は

国家公務員法 第82条
1 職員が,次の各号のいずれかに該当する場合においては,これに対し懲戒処分として,免職,停職,減給又は戒告の処分をすることができる。
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

という規定を置いており、犯罪行為を行ったことは「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」であると判断され、懲戒処分が行われるケースがあります。地方公務員などの場合も、具体的な法律や条文は異なりますが、同質です。

そして、こうした懲戒処分などに紐付く手続の中では、処分が行われたことを公開する、という制度が用意されているケースもあります。例えば、教員の場合、

教育職員免許法
第13条 免許管理者は、この章の規定により免許状が失効したとき、又は免許状取上げの処分を行つたときは、その免許状の種類及び失効又は取上げの事由並びにその者の氏名及び本籍地を官報に公告するとともに、その旨をその者の所轄庁及びその免許状を授与した授与権者に通知しなければならない。

というように、教職免許の失効処分が行われた場合、官報への「公告」の手続が行われる旨が記載されています。そしてその公告の際には、単に失効処分が行われたことだけではなく、「その者の氏名及び本籍地」も公開される事となっています。ただ、その理由、つまり、例えば「窃盗罪で逮捕され有罪となったため」といった理由は、公開対象となっていません。

また、一般論として、官報で公告された一切の事実がプライバシーの対象にならない、という訳でもありません。例えば、破産を行うと官報への掲載はなされますが、「あの人は過去に破産を行ったことがある」という情報が、プライバシーの対象から一切外れる訳ではありません。

以上より、

  1. 氏名や理由の公開が予定されている前科情報であっても、一切保護されない訳ではない
  2. 氏名のみ公開が予定されている前科情報の場合、実名報道が残り続けるのは耐え難いという主張はできる
  3. 氏名の公開も予定されていない前科情報の場合、なおさら、報道が残り続けるのは耐え難いという主張はできる

という構造となります。

事件の軽微性や公務との関連性

重大な事件の場合は削除は認められにくいという傾向があります。

公務員に限らず、重大な事件ほど、その事件や関係者の氏名を公開することに必要性は認められやすく、軽微な事件であればそれらは認められにくい、という判断となります。

さらに公務員の場合、公務との関連性も、問題となるケースが多いと考えられます。

例えば、同じ窃盗罪での逮捕や前科であっても、

  • 公務員が、公務員としての信頼性を利用して地域住民の家に招き入れられ、その場で窃盗行為を行った場合と、公務と無関係に住居侵入を行った場合
  • 教員が、教員としての地位を利用し、教え子から窃盗行為を行った場合と、公務と無関係に知人や同僚から窃盗行為を行った場合

とでは、「公務との関連性」という点で違いがある、という議論です。交通事故など、他の類型の犯罪の場合も同様です。

これは、前述のように、名誉毀損において、公務員に対するネガティブな情報の公開が一般より広く認められていることと同趣旨と考えられます。

名誉毀損においてそうであるように、プライバシー権に関しても、公務員のそれは多少制限を受ける可能性はあるが、しかし公務と無関係の場合には、公務の中で行われた犯罪行為よりは、プライバシーの要保護性が多少強く認められるのではないか。

という議論であると考えられます。

現在の地位や生活(公務員を続けているか否か)

事件によって懲戒免職などの処分を受けておらず、公務員を続けている場合、特に相応の地位で公務員の職務を続けている場合よりも、事件によって処分を受け、または任意に職を辞め、民間で就職した場合、就職しようとしている場合の方が、削除は認められやすい傾向があります。

これは、常識的にも理解できる傾向かとは思われますが、強いていえば、宗教団体会長の私生活上の不倫の事実の掲載が名誉権侵害(名誉毀損)に該当するか否かが争われた、下記判例などの考え方に近いと思われます。

同会長は、(中略)宗教上の地位を背景とした直接・間接の政治的活動等を通じ、社会一般に対しても少なからぬ影響を及ぼしていたこと(中略)を前提として検討すると、被告人によつて摘示されたC会長らの前記のような行状は、刑法二三〇条ノ二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたると解するのが相当であつて、これを一宗教団体内部における単なる私的な出来事であるということはできない。

最判昭和56年4月16日判決

政治等に対する影響力が高い人物の私生活上の事柄は、名誉毀損(名誉権侵害)との関係で「公益性」を認められやすく、名誉毀損は成立しにくく、同様に、相応の地位の公務員のプライバシーも一定程度は制限され得る、という議論と言えるでしょう。

逮捕記事・前科一般に関する削除の基準

公務員以外のケースでも問題となる基準について解説します。

上記が、特に公務員の逮捕記事や前科情報の削除において問題になるポイントですが、これらに加えて、およそ逮捕記事や前科情報の削除においては、下記のような要素が問題となります。

[blogcard url=”https://monolith-law.jp/reputation/delete-arrest-history”]

起訴の有無や判決、執行猶予期間の経過など

事件の重要性、といった要素に近い問題ですが、起訴が行われたのか、不起訴処分で済んだのか、その不起訴の理由は嫌疑不十分によるものか、といった点、起訴されてしまったにせよ、判決はどうなったのか、執行猶予で済んだのか、その執行猶予期間は既に終わっているのか、といった点です。

ただ、特に裁判所の考え方として、嫌疑不十分で不起訴だった事件、無罪判決となった事件でも、削除は必ず認められるというものではありません。認められるケースが多い、とは言えるのですが…。

[blogcard url=”https://monolith-law.jp/reputation/delete-false-positive-arrest”]

犯罪が行われてからの期間

一般論として、プライバシーの要保護性は、時間経過と共に高まります。ヨーロッパで提唱されている「忘れられる権利」というキーワードは、このことを分かりやすく表現しているものでしょう。逮捕歴や前科の場合も同様です。

あくまで「一つの考慮要素」ではありますが、公訴時効期間と同期間が経過したか否か、という点が、一つの分かれ目となるケースもあります。例えば、窃盗罪の公訴時効期間は、事件経過から7年です。少し分かりにくいですが、ここで「7年」の起点となるのは、逮捕時や報道日ではなく、事件発生日です。逮捕が遅かったケースや、報道が遅れたケースでは、報道から比較的短期間で公訴時効期間の経過が発生するケースもあります。

[blogcard url=”https://monolith-law.jp/reputation/necessaryperiod-of-deletion-arrestarticle”]

更正の取組や削除の必要性

上記の「現在の地位や生活(公務員を続けているか否か)」という話に近い部分です。また、例えば、

  • 民間で就職しようとしたが前科や逮捕歴が原因なのか、うまく就職できなかった
  • 民間で一度就職したがクビになってしまった

といった事情があると削除は認められやすいという傾向があります。

弁護士による削除交渉や裁判所手続

以上のように、逮捕記事や前科情報の削除、特に公務員の場合の削除は、様々な要素が考慮される、難しい問題ではあるのですが、ノウハウを有する弁護士に依頼を行えば、成功するケースもあります。

逮捕記事や前科情報の削除は、インターネット上の風評被害対策・誹謗中傷対策一般の場合と同様、まずはサイト運営者やサーバー運営者相手の削除交渉、それに失敗した場合には、仮処分という裁判所手続によるものとなります。裁判所手続というと長い時間がかかるイメージがありますが、仮処分の場合、1-2ヶ月で終わることが多く、迅速です。こうした分野にノウハウを有する弁護士に相談してみることが重要であると言えるでしょう。

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