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風評被害対策

就活会議のネガティブな口コミを削除する方法とは?

風評被害対策

就活会議のネガティブな口コミを削除する方法とは?

企業が採用活動をする時や、学生が就職活動をする時、近年は就活サイトを経由することが多いと思います。このようなサイトを通して、学生は企業の情報や評判を調べ、企業は学生に対してアピールをしたり、学生の情報を得たりします。就活会議も就活に関するサイトの1つであり、ここでは企業についての情報や選考の口コミを読むことができます。就活会議では、ポジティブな情報からネガティブな情報まで様々な人の口コミや情報が掲載されており、学生にとってはリアルな体験談をしれるという点で役に立つサイトですが、一方で、企業としては悪い口コミが書かれて広まってしまった場合には、採用活動や企業経営に悪い影響を及ぼしかねません。ここでは、就活会議に誹謗中傷の口コミが投稿された場合の風評被害対策について説明します。

就活会議に関する解説

就活会議とは、株式会社リブセンス (Livesense Inc.)が運営する就活生のための就活口コミサイトです。就活会議では、気になる企業の業務内容や年収・評価制度などを口コミ形式で見ることができるほか、本選考やインターンに通過したESを読むことができ、企業研究や選考対策のための強い味方になります。最大の特色の1つは、同社の運営する転職サイト「転職会議」と掲載内容が同じであるため、勤めていた人の生の声はもちろんのこと、「退職理由」の口コミまで読むことができることです。そして退職した人にはそれなりのネガティブな理由があって退職していることがほとんどで、例えば「残業が当たり前だった」「キャリアアップが見込めなかった」などネガティブな情報が書かれることが多いです。そして就活会議の売りはこのような本音の口コミを読むことができるところにあり、就活生にとっては有益なサイトですが、企業にとってはあまり良くない印象がついたり、敬遠されてしまったりなどの悪影響が考えられます。また、誹謗中傷等が書き込まれると、企業イメージのダウンや顧客や株主からの信頼失墜など、大きな損害になりかねません。本記事では、就活会議ではどのようなネガティブな口コミが書き込まれうるのか、書き込まれてしまった時にどのように対処すべきなのかを解説していきます。

就活会議の検索画面 より

就活会議ではどのような風評被害があるのか

就活会議はユーザーの書き込みが中心の口コミサイトですので、ネガティブな口コミが掲載されてしまうこともありえます。就活会議において口コミが用いられているのは、主に企業別の「口コミ・評価」ページです。以下では、そこで想定されるネガティブな口コミ・風評被害の内容を紹介します。

就活会議での風評被害に繋がる口コミの事例を挙げていきます。

就活会議はユーザーの書き込みが中心の口コミサイトですので、ネガティブな口コミが掲載されてしまうこともありえます。就活会議において口コミが用いられているのは、主に企業別の「口コミ・評価」ページです。以下では、そこで想定されるネガティブな口コミ・風評被害の内容を解説します。

上司のパワハラ・セクハラがあったなどという告発の口コミ

就活会議は、実際に働いた人たちの生の声を掲載するコンテンツのため、勤務中に感じたことが中心となります。職場でハラスメント被害にあって辛い思いをした先輩たちが、もう二度とこのような経験をしてほしくない、という思いを口コミとして掲載することは多く考えられることだと思います。ハラスメントの被害報告に限らず、長時間残業、給与面など、勤務形態についての告発も同様に考えられます。しかし、企業側にとっては、このような書き込みが求人に悪影響を及ぼして、思うような採用活動ができなくなることは好ましくないことです。特に、勤務形態の改善を図っている、ハラスメント行為を行なった社員を処分しているなど、これらの問題について対策を行なっている場合、このような書き込みが残り続けることは企業にとっては実態に即さず好ましくない口コミといえます。

断定的表現を用いる・事実と異なる・悪意ある口コミ

例えば、「会社の将来性は無く2年以内に倒産間違いなし!」「社長に意見など言えば、間違いなくクビになります」「企業体質が最悪の会社。まともな人なら就職しません」と言った断定的表現を含んだ口コミです。このような断定的な表現は根拠に乏しいにも関わらず、就活生の不安を煽り、また企業イメージを著しく低下させるもので、企業にとって好ましくないといえます。残念ながら、会社に対して不満を持ったまま退職した元社員が、会社を攻撃・妨害する意図をもって、うらみつらみを口コミとして投稿するケースも実際にあるようです。このような口コミは、どこまでが事実なのか明らかでなく、断定的表現を用いて会社の社会的評価を下げるものであり、悪影響が大きいです。削除されるべき口コミといえるでしょう。

特定の個人に対する誹謗中傷を含む口コミ

その他に考えられるのは特定の個人に対し誹謗中傷の記述を含む口コミです。例えば「経理部のAという人は臭いしブスで大っ嫌いな社員です」など、このような表現は就活生にとって就活のために全く有益なものではなく、特定の個人を攻撃するだけのものです。このような投稿によって名誉毀損の被害などを受ける可能性がある人にとっては、できるだけ早い削除が望ましいでしょう。

利用規約違反で削除請求する方法

就活会議の利用規約と照らし合わせながら削除依頼を方法を説明していきます。

「就活会議」ご利用規約

就活会議ご利用規約第15条(ユーザーの禁止行為)には、禁止事項が列挙されています。この各号に該当する事由が削除したい口コミにあれば、削除対象となりいえるでしょう。

就活会議ご利用規約第15条(ユーザーの禁止行為)
より抜粋

削除依頼を行う方法

就活会議には違反報告専用のフォームや通報ボタンはありません。そのため、全体のお問い合わせフォームから違反報告を行うことになります。

お問合せ画面フォームより

利用規約違反として削除依頼を行う時の例

お問い合わせフォームに従って記入を進めます。お問い合わせ種類は「問題のあるコンテンツの報告」を使いましょう。またお問い合わせ内容欄では、削除を依頼したい投稿のURLを示した上で、その投稿のどの部分がなぜ問題なのか、具体的に示して、就活会議側が特定しやすいように配慮しましょう。また、利用規約違反に当たることを示したほうが削除される可能性が高いので、当該投稿が利用規約違反にあたるのかを慎重に確認した上で、丁寧な説明を記入するように心がけましょう。

今回は、先ほどの例で紹介したような特定の個人に対する誹謗中傷を含む口コミ、例えば「経理部のAという人は臭いしブスで大っ嫌いな社員です」という書き込みを例にします。説明欄は以下のように書くとよいでしょう。

お世話になります。〇〇証券株式会社採用担当△△と申します。
本口コミの削除をお願い致します。
この口コミの3行目から、「経理部のAという人は臭いしブスで…」という記述がされています。これは就活や企業とは無関係であり、会社のこれは、利用規約第16条14号の「事実に反する情報を提供するもの」にあたります。また、仮にこのような事実が存在したとしても、このような告発を含む投稿は、職場レポートの趣旨である病院選びに役立つような内容のではなく、ガイドライン5号の「違反、事故、問題などに関する告発」にあたります。このような書き込みがあると弊院の採用活動及び企業活動に悪影響ですので、削除をお願いしたいです。よろしくお願い致します。

もっとも、利用規約15条には、

「なお、当社は、本条に基づく措置を講じる義務を負わず、ユーザーは、当社が本条に基づく措置を講じたこと又は講じなかったことについて、異議を申し立てることはできず、ユーザーに何らかの損害等が生じたとしても、当社は一切責任を負いません」

とあります。これは、削除をするかどうかは就活会議側が自由に決定することができ、削除をする義務はないということです。このように削除依頼をしても投稿が削除されないときは就活会議に対して、送信防止措置請求を行う、または訴訟の提起を検討することになります。これらは、法律事務になりますので、自分自身で行うまたは弁護士に相談して行っていくことになります。弁護士以外の削除代行業者に依頼すると、法律違反になりうることに注意しましょう。

違法だとして削除請求する場合

法律上取りうる手段

権利侵害など、法律に抵触する内容であれば弁護士を通じて削除を裁判上で争うことができます。まず、インターネット上の風評被害対策に関連する法的にとりうる手段には、大きく分けて

  • 送信防止措置請求による自主的削除の依頼
  • 投稿記事削除請求・仮処分の申立て
  • 発信者情報開示請求(IPアドレスの開示請求、住所氏名の開示請求)
  • 損害賠償請求(投稿者を特定できた後の損害賠償請求)

などがあります。この中でも、削除に直結する請求は、送信防止措置請求または、投稿記事削除請求、及び仮処分の申立てになります。

法律上主張するべき内容

では、法律上で削除の請求をしていくには、まず考えられるのは「名誉毀損」の主張をすることです。名誉毀損は、

  • 「公然と」
  • 「事実を摘示し」
  • 「人の名誉を毀損する」

の全てに該当する事実があるときに成立します。例として、「この会社では残業代が支払われないのが当たり前」という真実でない内容に基づくクチコミが掲載されていた場合、1から3の要件をみたすのか、具体的に見ていきましょう。まず、今回のように就活会議などクチコミサイトにおける投稿は、インターネット上で不特定多数の人物が閲覧することが可能な状態に置かれているといえるので、「公然と」といえます。次に、「事実の摘示」とは、人の社会的評価を低下させるに足りる具体的事実を告げることをいい、真実か虚偽であるかを問いません。今回、会社が残業代を支払っていないという内容は、当該企業が労働基準法に反していることを示すものであり、社会的評価を低下させるに足りるといえます。

最後に、「毀損した」というためには、実際に社会的評価が害されていなくても、その危険性が抽象的に存在すれば足り、名誉が現実に侵害されている必要はありません。実際に問題となっている投稿がネットニュースやSNSで不特定多数の人に閲覧され、企業に対し非難や抗議が殺到したことを証明する必要はありません。その危険性が客観的に存在することがいえればよいということになります。

名誉毀損の詳しい成立要件等は下記の記事にて詳細に説明していますので参考にしてください。

裁判所を通した手段(訴訟および仮処分)による削除

裁判所を通した手続きでは、裁判で削除が認められれば、プロパイダは強制的に削除に応じることになります。

名誉毀損など、上記のような法律違反の指摘をして削除を求めるには、まずは、送信防止措置請求の方法をとるのが通常です。しかし、送信防止措置請求は裁判所を通さない削除依頼の方法で、サイトの管理人や運営会社(プロパイダ)による自主的な削除を求めるものです。これは任意手段なので、判断によっては、削除は行われないこともありえます。これに対し裁判所を通した手続きでは、裁判で削除が認められれば判決による拘束力が生じるので、プロパイダは強制的に削除に応じることになります。このため、送信防止措置が認められなければ、裁判手続に移行することが効果的です。なお仮処分とは、民事保全法に規定されている方法で、一刻も早い解決が求められる場合に、正式な訴訟によって確定判決を得る前に暫定的な処分を求めるものです。

今回のような誹謗中傷の口コミなどは、一度拡散してしまうと回復困難な損害が生じるおそれが多分にあるので、仮処分の制度を利用して一刻も早い情報の削除を求めることが有効的です。仮処分命令が発令されると、裁判所が相手方に投稿を削除するように命令しますので、相手方は削除に応じなければなりません。仮処分の場合、風評被害対策にノウハウのある弁護士へ相談を行えば、依頼から削除まで、2-3ヶ月程度で実現できるケースが多く有効的な手段といえます。誹謗中傷や風評被害を受けた場合の当該記事の削除、仮処分の手続きに関しては下記の記事にて詳細に説明しています。

仮処分による投稿者特定

ところで、上記のような法的手段をとるためには、誰がその書き込みをしたのか、名前や住所などを特定する必要があります。しかし、インターネット上の誹謗中傷は匿名で行われるケースがほとんどであるため、書き込んだ人物(発信者)の特定は困難です。そこで、プロバイダに、書き込んだ人物の個人情報の開示を求め投稿者特定を行うことが必要となります。これが仮処分による投稿者特定というものです。発信者開示請求とは、『プロバイダ責任制限法第4条1項』によって規定されている、投稿者を特定するための情報開示請求の事です。弁護士に依頼を行えば、この発信者情報開示請求で投稿者のIPアドレスなどの情報を開示し、投稿者を特定することができる可能性があります。これにより投稿者が特定されれば、その人に対して、誹謗中傷投稿により被った損害について今後誹謗中傷を行わないと誓約させたり、損害賠償を請求する、あるいは刑事告訴をするなど法的手段の実現が可能になります。
これらの手続の流れに関しては下記記事にて詳細に解説しています。

まとめ

就活会議は、口コミによりリアルな企業の情報を知ることできるということを大切にしているサイトです。他方で、批判的な投稿であっても、就活の判断において非常に重要な情報であると考えていることがサイト上で明記されていることからも、ネガティブな投稿が広く認められているサイトであるともいえます。しかし、仮に悪質な口コミによる風評被害が発生してしまっても、法的な手段をとれば、投稿の削除などの解決をすることができるかもしれません。もっとも、どのような方法でどのような主張をしていけばいいのか、削除が認められるのかは個別のケースによって異なります。いずれにしても、違法性を主張する場合は専門的な内容や手段を含むので個人で行うのは難しく、また法律行為になりますので、弁護士の力が必要になります。まずは、弁護士に相談して、当該口コミが権利侵害にあたるのか、法律に抵触しているかどうかを判断してもらいましょう。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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