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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

転職サイトに悪評を書き込みされた企業が削除をしてもらうための方法

風評被害対策

インターネット上の掲示板・SNS・レビューサイトなどでは、利用規約の範囲で自由に書き込みをすることができるため、中には悪質な書き込みがされて風評被害に遭うことがあります。このページでは、転職サイトに悪評を書き込まれた場合に、どうやって削除してもらうかについてお伝えします。

転職サイトとはどのような性質のものか

まず、対象となる転職サイトとはどのような性質のものでしょうか。転職サイトは中途採用をしたい企業の求人情報が集められたサイトです、そのサイトへの誘導を目的として、サイト内や関連サイトとして、ある会社についての勤務についてのレビューを書き込めるものが運営されています。たとえば、株式会社リブセンスが運営している「転職会議」という転職口コミサイトでは、ある企業の口コミを閲覧できるページに、株式会社が運営をしているdodaという転職求人サイトへのリンクを設置しています。このような転職口コミサイトは、勤務をしようとしている人が、働いている人・働いてた人の生の口コミを知ることができ、当該企業に対するイメージと実際のギャップの違いを埋めることが可能になったり、転職をするための動機付けになり、結果として転職を促すことができるという観点から運営されています。

転職サイトではどのような風評被害が発生するか

転職サイトのおける、好ましくない企業レビューが風評被害となりうる事もあります。

ではこの転職サイトで、どのような風評被害が発生するのでしょうか。転職サイトの書き込みは利用規約に反しない限りは自由に記載をすることができます。生の声を反映するという性質上、企業にとって望ましくないレビューもあります。その声が事実であるならば、サイトの性質上致し方ないといえますが、問題は事実に反するような書き込みをされてしまう事によって、その書き込みをみた人は当該企業への応募をとりやめます。当然その企業は人が集まりにくくなるという直接的な風評被害が発生し、これによって同様他社に人材が集まりやすくなって人材面で後手を踏むことになることになります。後に削除されることになったとしても、そのページのスクリーンショットなどを取得してSNSで拡散をされるような事があれば被害は永遠に残るという風に考えておいたほうが良いでしょう。

このような情報の拡散により、採用面のみならず、企業が扱っている商品や、企業そのものへの信頼が失われることにもなりかねません。つまり、「短期的に採用が難しくなる」というだけではない、長期的な被害が発生するという認識を持っておくべきといえます。

またインターネット上で「ブラック企業」等、求人面で大きなマイナスとなるような口コミを書かれてしまう事も採用活動等に悪影響が生じかねません。このような状況に陥った場合の対処方法について、下記記事にて詳細に説明しています。

転職サイトの利用規約での風評被害防止策はあるのか

転職口コミサイトにはサイトごとに利用規約があります。これらの利用規約によって風評被害がどのように防がれているのでしょうか。代表的なサイトである「転職会議」の事例を見てみましょう。まず、ユーザーは虚偽の情報・他のユーザー、第三者を誹謗中傷する行為を禁止されています(規約第14条)。口コミの書き込みはいったんサイトのほうで確認をしてから掲載がされますが、当該掲載事項が事実ではない場合には、企業から削除の依頼を受けて(第15条)削除をすることになっています(第8条)。他の転職口コミサイトでも同様の処理がとられております。

利用規約違反の申請方法

では、もし悪意のあるユーザーから、事実ではないことや、誹謗中傷する事項を書き込まれた場合には、どのように削除の申請をすれば良いのでしょうか。このような場合には通常は問い合わせフォームから削除に関する問い合わせをして行います。削除依頼のフォームがある場合にはフォームの記載内容に従って記載をします。当然ですが、単に「書き込みがあって迷惑である」と伝えたとしても、膨大な情報の中からどの書き込みがそれにあたるのかを勝手に探してくれるわけではありません。ほとんどのサイトで削除を要求する理由があるので、どの書き込みかを特定できるもの(URL・書き込みの番号・内容)と、その書き込みが、どの利用規約に違反するか?という事を指摘するようにします。

たとえば、転職会議においてA社に関する書き込みとして、「部長が会社のお金を使い込んでいた」、という書き込みがされた場合には、書き込みが掲載されているURL・書き込みの事実が上記の利用規約の第14条に違反すること、の指摘を行います。中にはVorkersやLighthouse(旧・カイシャの評判)のように、「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」を印鑑登録証明書・登記簿謄本・被害事実を明確にできるものと一緒に書面で提出する方法がありますので、このような書類の提出が必要な場合もありますので、書き込みがされたサイトの削除要請フォームに従った要請をします。

裁判所に申立を行って仮処分をもらって削除要求をする方法

口コミ削除の申し立て手順について説明していきます。

削除要請の方法として裁判所に申立を行ってする方法があります。

転職口コミサイトの削除要請の現状は?

上記は、転職口コミサイトの運営者に任意に削除を求める場合の事例ですが、転職口コミサイト側としてはこのような申請を全て削除するわけではありません。
口コミサイトという本質を考えれば、ひとたび悪い評判がされたからと言ってすべての削除に応じるならば、本来利用者が知っておくべき悪い評価が見られないサイトとなってしまい、利用価値が無いサイトだと判断されることによって、誰も利用しなくなります。そのため、上述するような任意での削除依頼は応じてもらえる可能性は非常に低く、上述の「転職会議」を例にすれば、時期によりますが、0.何パーセントのみ削除に応じているのが現状のようです。ですので、サイトの削除要請を利用するのはあまり現実的ではありません。

裁判所に申立をして仮処分をする

そのため、法律的な手段による口コミの削除依頼をすることを検討すべきことになります。法律的な手段による口コミの削除依頼は、裁判所に申し立てをして仮処分を出してもらうことによって行います。仮処分を出してもらうためには、守るべき権利(被保全権利)が侵害されている状態である必要があります。具体的には、書き込みが、法的に企業に対する権利を侵害している状態であることが必要です。転職口コミサイトで想定されるのは名誉毀損です。どのような場合に名誉毀損になるかは、 下記記事で詳しく解説しております。

概要としては、

  • 公然と
  • 事実を適示し
  • 人の名誉を毀損する

ことにより名誉毀損は成立しますので、仮処分の際にも書き込みによって名誉毀損が生じていることを特定します。

仮処分の手続きの概要を知る

裁判所への仮処分の申し立ては、申立書と証拠を提出して行うことになります。
申立は管理者等の住所地か、被害者である請求者の住所地を管轄する裁判所に対して行います。申立書に記載すべき内容としては、当事者に関する事項、侵害された権利(名誉毀損など)、削除を早期に必要とすべき理由の記載が必要となります。この申立書に、削除対象となる記事の書き込みがされたものの目録・証拠資料・相手が法人の場合には資格証明書として相手の商業登記簿謄本を添付します。申立がされると、申し立てた人の面接(債権者面接)が裁判所によって行われ、裁判官に詳細を説明することになります。

その後双方から事情を聴取する双方審尋期日が開かれ、裁判所が削除要求を認めるかどうかの最終的な判断を行います。場合によっては裁判所が担保を立てることを命じることがありますので、お金を法務局に供託することになります。供託をする際には供託書を作成し、その写しがもらえますので、写しを裁判所に提出をします。その後仮処分命令が発令され、決定正本が交付されますので、その写しをサイト管理者に送付して削除を求めます。削除までには、手続がスムーズに進めば1ヶ月~2か月程度で行うことができます。

誹謗中傷や風評被害を受けた場合の、当該記事の削除の手続き方法については下記記事にて解説しています。

まとめ

このページでは、転職サイトへの企業への悪評が書き込まれた場合の削除の方法についてお伝えしました。口コミという性質上、悪評であるからといって直ちに削除できるものではありませんが、事実と異なる・名誉毀損に該当するといった場合には削除ができます。利用規約違反を主張してサイトに削除を依頼するにしても、裁判所に申し立てて仮処分を得るにしても、適切な方法で行なう必要があります。弁護士に相談するなどして、削除依頼をスムーズに進めるようにしましょう。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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