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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

どうしても消したいGoogle検索結果を裁判所を通じて削除する方法

風評被害対策

誹謗中傷ページがある場合は、弁護士などに依頼して、そのページ自体の削除を求めることが基本です。しかし、そのページの運営者が不明であるなど、どうしても、「ページ自体の削除」を実現し難いケースもあります。そうした場合、ページ自体を消すことは出来なくても、そのページがGoogleの検索結果に出てこないようにならないか、と考えることになります。つまり、「Google検索結果からの削除」 です。この削除を、裁判所を通じた手続で求めることはできるのでしょうか。

ページの削除と検索エンジンからの削除

風評被害に該当するような書き込みが、例えば5ちゃんねるなどの掲示板などに記載されてしまった場合、その書き込み自体を削除することが、風評被害対策の基本です。記事自体が存在しなければ、その記事を見る人は完全にいなくなるからです。こうした記事削除は、裁判外交渉や、裁判外交渉に失敗した場合は「仮処分」という迅速な手続を用いて、裁判所を通じて求めることが可能です。

しかし、裁判所を通じて記事削除を行おうと思うと、例えば、国際裁判管轄というものが問題になります。非常に簡潔にいえば、日本人を想定せずに海外で運営されているサーバー等に対して、日本の裁判所で削除を求めることはできないからです。

こうした事情などもあり、記事自体の削除ができない場合、インターネット上にその記事が存在することはやむを得ないとしても、その記事を見る人がいない状態にしたい、と考えることになります。現在のインターネットの仕組み上、そうした記事は、多くの場合は検索エンジン経由で閲覧されており、検索エンジンから当該記事が消えれば、その記事を読む人はほぼいなくなる、ということになります。

そこでこうした場合、GoogleやYahoo!などの検索エンジン事業主に対して、「その記事を検索結果に表示するな」と求めることになる訳です。

検索結果の削除を否定する裁判例

この問題に関して、「そもそもGoogleなどの検索エンジンの検索結果の削除を求めることは、少なくとも原則的にはできない」という裁判例も存在します。

検索エンジンYahoo!に関する事件

例えば、GoogleではなくYahoo!の検索エンジンに関する事件ですが、以下のような判決が存在します。

違法な表現を含むウェブページが検索サービスの検索結果として表示される場合でも,検索サービスの運営者自体が,違法な表現を行っているわけでも,当該ウェブページを管理しているわけでもないこと,検索サービスの運営者は,検索サービスの性質上,原則として,検索結果として表示されるウェブページの内容や違法性の有無について判断すべき立場にはないこと,現代社会における検索サービスの役割からすると,検索サービスの検索結果から違法な表現を含む特定のウェブページを削除すると,当該ウェブページ上の違法ではない表現についてまで,社会に対する発信や接触の機会を事実上相当程度制限する結果になることなど」といった背景事情から,「ウェブページ上の違法な表現によって人格権等を侵害される者が,当該表現の表現者に対してその削除等を求めることなく,例外的に,法的な請求として,検索サービスの運営者に対して検索サービスの検索結果から当該ウェブページを削除することを求めることができるのは,当該ウェブページ自体からその違法性が明らかであり,かつ,ウェブページの全体か,少なくとも大部分が違法性を有しているという場合に,申し出等を受けることにより,検索サービスの運営者がその違法性を認識することができたにもかかわらず,これを放置しているような場合に限られる

東京地判平成22年2月18日

この判決は、「Googleなどの運営者自身が違法な表現を行っているわけではない」「違法な表現を行っているページ自体の運営管理を行っているわけでもない」という事情、「検索エンジンは、システム上、原則的には検索結果であるウェブページの適法性について判断すべき立場ではない」という判断に加え、検索エンジンの役割といった背景事情などを考慮して、検索エンジンへの検索結果削除の請求ができる場面を、非常に限定的に捉えています。つまり、

  • 検索結果であるウェブページの違法性が明らか
  • 違法な部分がウェブページの全体か、少なくとも大部分

という二つの条件が両方とも認められた場合のみ、という判断です。こうした場合に、

  1. まず裁判外で検索結果除外申請を行い、それでも検索エンジンが削除を行わなかった
  2. 1の後で裁判所を通じて削除を求めた

という手順を踏んで初めて、裁判上で検索結果の削除を求めることができる、と。

これは、実体的な意味でも手続的な意味でも、検索結果の削除が認められるケースを非常に狭く絞る判断を示すものと言えるでしょう。

スニペット内の記載のみが判断対象になると示した事件

被告が検索結果の表示によって本件検索サービスの利用者に摘示する事実とは,検索ワードがその記載内容に含まれているウェブサイト(リンク先サイト)の存在及び所在(URL)並びにその記載内容の一部(スニペットとして表示される,当該サイトの記載内容のうち検索ワードを含む部分)という事実に止まるものと認めるのが相当

京都地判平成26年8月7日

こちらは少し分かりにくいですが、Googleなどの検索エンジンの検索結果が違法かどうかを判断する際の判断枠組みの問題です。違法なページが検索結果に出てくるからといって検索結果の削除を求めることはできず、検索結果画面内のページ概要(スニペット)に違法な内容の記載がある場合でなければ、その検索結果の削除を求めることは出来ない、と言っているのです。

こうした裁判例は、「検索サービスの運営者自体が,違法な表現を行っているわけでも,当該ウェブページを管理しているわけでもない」と、Googleなどの検索サービス運営者の検索結果への関与を限定的に認定したうえで、「現代社会における検索サービスの役割」を重視し、削除を認めるためのハードルを高く設定していました。

検索結果の削除を認める裁判例

しかし、これに対して、以下のように判示し、検索結果の削除を認めている事件も存在します。

債務者は,本件サイトによるインターネット検索サービスの公益性や,検索サービスの提供者は検索結果の内容の正確性や正当性については何ら表現を行っていないことから,検索サービスの提供者には検索結果についての削除義務は原則として認められない旨主張し,なるほど,今日においてインターネット検索サービスの利用は,インターネットを効率的に利用する上で,きわめて重要な役割を果たしていることは公知の事実である。しかし,本件投稿記事中,主文第1項に列挙したものは,タイトル及びスニペットそれ自体から債権者の人格権を侵害していることが明らかである一方,このように投稿記事の個々のタイトル及びスニペットの記載自体を根拠として投稿記事について債務者に削除義務を課したとしても債務者に不当な不利益となるとはいえないし(現に,疎明資料〔甲7,乙5ないし7〕によれば,債務者は,本件サイトによる検索結果から債務者が違法と判断した記事を削除する制度を備えていることが認められる。),また,他者の人格権を害していることが明白な記載を含むウェブサイトを検索できることが本件サイトを利用する者の正当な利益ともいい難い。よって,債務者の上記主張は採用できない。

また,債務者は,本件サイトの検索結果のリンク先のウェブサイトの管理者に削除を求めれば権利救済として足りるから,債務者に検索結果についての削除義務は原則として認められない旨主張するが,本件投稿記事目録中,主文第1項に列挙したものは,投稿記事の個々のタイトル及びスニペットそれ自体から債権者の人格権を侵害していることが認められるのであるから,本件サイトを管理する債務者に削除義務が発生するのは当然であり,債務者の上記主張は,これに反する限りにおいて採用できない。

東京地決平成26年10月9日

このように、検索エンジンからの検索結果の削除を裁判所を通じて求めることはできるのか、というのは、少し前まで、諸説あるテーマでした。地裁レベルの判断はいくつもあったのですが、最高裁がこの問題について判断したことがなく、最高裁による判断が示されることが待たれていたのです。

ただ、風評被害対策を手がける弁護士としては、検索結果の削除は、これらの裁判例が述べるように、「当然」認められるべきではないかと考えています。理由は、以下の通りです。

まず、一般的なページ削除のケース、例えば、あるブログ記事が違法であり、その記事の削除を求めるという場合、当該ブログ記事を執筆したブログ運営者だけでなく、ブログ運営会社、サーバー運営会社も、裁判上で被告になり得ます。つまり、ブログ記事によって名誉毀損などの被害を受けた人は、その記事を書いたブログ運営者の正体が誰か分からないという場合、ブログ運営会社やサーバー運営会社を相手に、その記事の削除を求めることができるのです。

このことについて、裁判所は、ブログ運営者やサーバー運営会社にも、「条理上の削除義務」がある、というように説明しています。

ブログ運営者やサーバー運営会社は、自分でブログ記事を書いた訳ではありません。ただ、自分が管理運営しているブログサービスやサーバー上に、第三者によって違法な記事が作られた、というだけです。そうであっても、自分が管理運営しているブログサービスやサーバー上に人の名誉を毀損するような違法な記事が公開されており、管理運営者であればその記事を削除することは可能なのだから、管理運営者は違法な記事を削除する「条理上の削除義務」を負っている、というのが、ブログ運営会社やサーバー運営会社に対してブログ記事の削除を請求できる理由なのです。

検索エンジンによる削除義務

検索エンジンの場合も、 そのシステム上、「検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為という側面を有する」といえるものの、たしかにGoogleなどの検索エンジン事業者は、その違法な記事を執筆した訳ではなく、「性質上,原則として,検索結果として表示されるウェブページの内容や違法性の有無について判断すべき立場にはない」訳です。しかし、検索結果から「違法と判断した記事を削除する制度を備えて」おり、名誉毀損等に該当する記事を削除する事ができる以上は、やはり「削除義務が発生するのは当然」ではないかと考えられるのです。

後述するように、現在の最高裁は、削除の必要性が公表の必要性を上回っていることが明らかな場合には検索結果の削除を認める、という判断枠組みを取っていると言われています。仮に、ページ自体の削除の場合と異なり、検索結果の削除は「明らか」でないと認められない、とすると、その違いは何故生じてしまうのか、という事です。

平成29年の最高裁決定で一定の結論が示された

逮捕記事が検索結果に表示されることの削除を求めた

このように、「検索エンジンに対して検索結果の削除を法的に求めることはできるか否か」というのは、両説あるテーマだったのですが、平成29年、最高裁が、これに対して一定の結論を示しました。最高裁が示した結論は、少なくとも、削除の必要性が公表の必要性を上回ることが明らかである、といった一定の要件が満たされる場合には、削除を求めることができる、というものです。

この事件は、平成23年11月に、いわゆる改正前児童ポルノ禁止法(児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)違反で逮捕され、翌月に罰金刑となった者が、Googleを相手方として、検索結果からの削除を求めたものです。

地裁での仮処分で一度検索結果の削除が認められた

検索エンジンからの検索結果の削除は、「裁判」ではなく、迅速な「仮処分」という手続によって可能です。この事件も、最初はさいたま地裁で仮処分事件として始まりました。上記の債権者(裁判における「原告」のような概念)弁護士は、逮捕記事を検索結果に表示するGoogle自身がプライバシー侵害を行っているといった主張で、検索結果の削除を求めました。そしてこれに対し、さいたま地裁は、Google検索結果に逮捕記事の検索結果が出ることはプライバシー侵害であるとして、削除を認める決定(裁判における「判決」と同じような意味)を発令しました。

高裁が再度の判断を行い、検索結果削除を認めなかった

しかしこの決定に対し、Googleは「保全異議の申立」を行いました。テクニカルに難しい話ですが、裁判における「控訴」に近い概念です。仮処分事件で負けた側は、「控訴」の代わりの「保全異議の申立」によって、裁判所に再度の判断を求めることが出来るのです。そしてこの保全抗告審(再度の判断を行う手続)は、当該逮捕事件はまだ公共性を失っていないなどとして、プライバシー侵害は認められないとの判断を示しました。この高裁決定の中では、

(問題の逮捕記事が掲載されているのは)インターネット上のいわゆる電子掲示板であると認められることから,本件犯行とは関係のない事実の摘示ないし意見が多数記載されているものと推認される。そうすると,元サイトの管理者に対して個別の書き込みの削除を求めるのではなく,本件検索結果に係るリンク先のウェブページを検索結果から削除し,又は非表示の措置をすることは,検索サービス事業において抗告人が大きなシェアを有していることや,インターネット上のサイトのURLを直接発見することが極めて困難であることに照らせば,それらに対する公衆のアクセスを事実上不可能にするものと評価することができ,看過できない多数の者の表現の自由及び知る権利を侵害する結果を生じさせるものと認められる。

といった判示も行われました。つまり、掲示板運営者に対して個別の書き込みの削除を求める場合と異なり、検索結果からの削除は、逮捕記事と関係のない書き込みへのアクセス自体を困難にしてしまうため、検索エンジン側から見て「不利益」が大きく、簡単には認められるべきでない、といった論理です。

最高裁が検索結果の削除を認めた

そしてさらにこれに対し、弁護士側から「控訴」のような手続が行われ、最高裁が決定を行うこととなった、という問題状況です。仮処分から始まった事件について、最終的に最高裁が判断を示した訳です。この最高裁判決が、上記で述べたように、削除の必要性と公表の必要性を比較し、前者が後者を上回ることが明らかである場合には削除が認められる、という枠組みを示したのです。

抗告人(上記のような手続の関係上、専門用語が多数登場するのですが、要は「原告」のような意味です)側の弁護士は、上記の高裁決定内の判示に関して、概要、

  1. 著作権侵害の場合、ページ内の一部に著作権侵害が認められれば、そのページ全体の公開が、著作権法上明確に禁止されている
  2. プライバシー侵害などの人格権侵害について、最高裁はいわゆる北方ジャーナル事件で、記事公開の停止を求める権利(差止請求権)があると示している
  3. その法理は明らかにプライバシー権などの場合にも妥当する

といった反論を行いました。

こうした議論について、最高裁は、下記のよう判断を示しました。

他方,検索事業者は,インターネット上のウェブサイトに掲載されている情報を網羅的に収集してその複製を保存し,同複製を基にした索引を作成するなどして情報を整理し,利用者から示された一定の条件に対応する情報を同索引に基づいて検索結果として提供するものであるが,この情報の収集,整理及び提供はプログラムにより自動的に行われるものの,同プログラムは検索結果の提供に関する検索事業者の方針に沿った結果を得ることができるように作成されたものであるから,検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為という側面を有する。また,検索事業者による検索結果の提供は,公衆が,インターネット上に情報を発信したり,インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり,現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしている。そして,検索事業者による特定の検索結果の提供行為が違法とされ,その削除を余儀なくされるということは,上記方針に沿った一貫性を有する表現行為の制約であることはもとより,検索結果の提供を通じて果たされている上記役割に対する制約でもあるといえる。

以上のような検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると,検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに 属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。

最決平成29年1月31日

この決定は、単純に言えば、「検索結果を除外すべき理由」と「検索結果として表示されるべき理由」を比較し、前者が後者を上回ることが「明らか」な場合に、検索結果からの削除を認める、という判断枠組みを採用しています。ただ、

  • なぜ「明らか」な場合でなければいけないのか
  • 単に「多少上回っている」というような場合、つまり上回っていることが明らかでない場合には削除は認められないのか

など、まだ議論が続いているテーマであり、今後の裁判例などによって実務は変わり得るものと考えられます。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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