風評被害対策

逮捕歴や前科の記事は削除できるのか

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逮捕歴や前科の記事は削除できるのか

あなたに逮捕歴や前科がある場合、その情報がニュース記事などでいったんネット上に掲載されてしまうと、それを見た人が自分のブログやSNSに引用して拡散したりします。2ちゃんねるなどのネット掲示板に転載されたり投稿されたりすることもあれば、ニュースのまとめサイトなどに引用されることもあります。情報はどんどん拡散してしまいます。その結果、大勢の人にあなたの逮捕歴や前科を知られてしまうことになり、大きな不利益を受けることになります。

逮捕歴と前科の違い

逮捕歴と前科情報について、これらの意味の違いを理解しておきましょう。

逮捕歴とは

逮捕歴とは、事件を起こして警察に逮捕された履歴のことです。逮捕されても起訴されないこともあります。不起訴になれば当然有罪にもならないので、前科もつきません。だから、逮捕歴があるからといって前科がついているとは限らず、誤認逮捕や冤罪であったかもしれません。しかし、これらの場合でも逮捕のニュースは報道されますし、拡散されてしまうこともあります。

前科とは

前科というのは実際に刑事裁判を受け、刑罰を受けた履歴のことです。前科があるというのは有罪になっているということなので、誤認逮捕や冤罪の可能性はありません。

前科よりも逮捕歴の方が注目されてしまう

報道では、まず、逮捕報道がなされます。これに対し、刑事裁判には時間がかかるので、前科報道は相当な期間の後に、「以前起こった事件の被疑者の裁判があり、判決が出て有罪となりました」という報道になってしまい、よほどセンセーショナルな事件以外は、読者の関心を引くことはあまりありません。

しかし逮捕されたというだけでは、誤認逮捕や冤罪の可能性もありますし、相手と示談が成立して釈放されたり、微罪だからということで釈放されたりすることもあります。にもかかわらず、逮捕ニュースが大きく取り上げられ、拡散されてしまうのは困った問題です。

特に問題なのは、いわゆる誤認逮捕の問題です。何の落ち度もないまま誤認逮捕され、その逮捕記事がネット上に残り続けるという事態は、いかなる意味でも許し難いものでしょう。誤認逮捕の逮捕歴の削除に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

軽犯罪でも注目されれば拡散する

ニュースを見ていると、たいしたことではないような軽犯罪でも実名報道されたり、勤務先まで公表されたりすることがあります。このような軽犯罪の逮捕歴であっても、同じように注目されてしまうことになります。ニュースを見る人は「逮捕された」ということのみに注目しているのであり、どんな犯罪であるかに注意しているわけではないからです。事件をおもしろいと感じる人がいたら、揶揄の対象となって広く拡散されてしまうこともあります。

逮捕歴、前科情報が残っている場合に受ける不利益

逮捕歴や前科情報がネット上に残ってしまうと、様々な場面で不利益を被ることも。

就職活動で不利益をこうむる

就職や転職をする際に、採用先がネット上で名前検索をし、逮捕歴や前科を知られたら、採用してもらえない可能性が非常に高いです。
たとえ、逮捕された事件が有名でなくとも、どこかのサイトに掲載されていれば、実名検索によって該当の記事が出てきてしまいます。昨今では、採用活動の際に、事前の実名検索を義務付けているような企業もあるようです。たったひとつのサイトであっても、ネット上に実名での逮捕報道記事が掲載されてしまえば、それが採用先に見つけられてしまう可能性は否定できません。

勤務先で不利益をこうむる

会社内で前科を知られたり、逮捕されたことがあると判明すると、勤務先で不利益を受けることになるかもしれません。前科や逮捕歴を理由に、解雇されたり、左遷されたりすることが考えられます。少なくとも、昇進は難しくなるでしょう。また、前科や逮捕歴が知られたからと仕事先を変えようと思っても、上述の理由で転職が困難になってしまう可能性があります。

交際や結婚が困難になる

逮捕歴や前科がある人とあえて結婚したいと思う人はあまりいません。愛していても、将来生まれるかもしれない子供のことなどを考えて、結婚はやめておこうと考えるでしょう。交際相手が結婚してもよいとしても、相手の親や家族が反対するなどの問題も生じます。結婚前に興信所に婚前調査を依頼することもありますが、そういった場合には前科や逮捕歴はすぐに判明してしまいます。

家族にも迷惑がかかる

前科があったりすると、本人以外が不利益を受けることもあります。犯罪者の身内だということで、近所や町内で噂になり、家族にも肩身の狭い思いをさせることになってしまいかねません。子どもがいる場合、友人やその家族が逮捕歴や前科を知ることは、いじめの原因にもなりえます。たとえ引っ越したとしても、ネット上に犯罪歴の報道が掲載されたままであれば、またその情報が周囲に知られてしまう可能性は依然として残り続けることになります。

賃貸物件が借りられない

賃貸住宅を借りる際には、入居審査があります。この時、ネット上で実名検索をされ、逮捕歴や前科を知られた場合には、審査に通らないということが考えられます。審査に通らなければ、契約はできず、家を借りることもできないため、日常生活に支障が出てしまいます。

このように様々な不利益をこうむる可能性を考えれば、過去の逮捕歴・前科に関わる情報は、できるだけ速やかに記事削除を行うことが望ましいといえます。

逮捕歴、前科情報はどれくらいの期間残るのか

逮捕歴・前科情報は極めてプライバシーに関わるものの1つです。

大手新聞のニュースサイトなどの場合、一度掲載した記事を、半年や1年といった一定期間で自動的に削除しています。あまり古い記事がウェブ検索で簡単に出てしまうことは、やはり問題だからです。しかし「一次情報」である新聞社等のニュース記事が消えた後も、そのニュースをコピペしたネット掲示板や個人のブログ、SNSなどはネット上に残ったままです。何もしなければ、いつまでも残ったままとなります。

逮捕歴や前科情報を削除することはできるのか

逮捕歴や前科情報の削除請求はできる場合とできない場合があります。逮捕歴や前科情報はプライバシー情報なので、プライバシー権の一種である「更生を妨げられない利益」を主張して、削除を請求します。個人には誰にでもプライバシー権が保証されており、これを侵害された場合には損害賠償請求や差し止め請求をすることができるのです。その一方で、ニュース記事などの掲載は表現の自由にもとづく行為なので、どのような場合でも記事削除の請求ができるわけではありません。表現の自由とプライバシー権のどちらを優先するかについて判断する必要があり、プライバシー権が過渡に侵害されていると判断できる場合のみ、削除申請が認められます。

なお、逮捕歴や前科に限らない、一般的なプライバシー侵害に関しては、下記記事で詳細に解説しています。

逮捕歴や前科情報の削除に関する判例

判例は、ある人が刑事事件において被疑者とされたという事実、つまり逮捕歴や前科情報について、これがプライバシーの範疇であることを認めています。

前科等にかかわる事実については、これを公表されない利益が法的保護に値する場合があると同時に、その公表が許されるべき場合もあるのであって、ある者の前科等にかかわる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為を構成するか否かは、その者のその後の生活状況のみならず、事件それ自体の歴史的又は社会的な意義、その当事者の重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべきもので、その結果、前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができるものといわなければならない。

最判平成6年2月8日

上記判例は、「前科等にかかわる事実」「を公表されない利益」という概念を認めており、一般にこれは「前科等をみだりに公表されない利益」と呼ばれています。

ただ、「前科等をみだりに公表されない利益」は、「みだりに」という言葉からも分かるように、前科等の公開を一般的に完全禁止できる権利ではありません。

逮捕歴や前科情報は、事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的な意義が認められる場合もあるため、

  • 逮捕歴や前科情報を公表されない法的利益
  • 逮捕歴や前科情報を公表する理由

を比較衡量し、前者が後者に優越する場合のみ、違法であると言える。…というのが、上記判例を含む、最高裁の考え方なのです。

そして、違法な侵害と認められるかの検討、すなわち上記比較衡量を行う際に、最高裁判例で共通して検討されている考慮要素として、挙げられることが多いのが、下記の3個です。

  1. 対象者の属性に関する事項
  2. 対象となった事件の内容に関する事項
  3. 公表の目的及び意義に関する事項

つまり、例えば、

  1. 逮捕されたのが政治家や企業経営者など社会的影響力のある人物であれば、その逮捕歴や前科情報を公表することにも一定の意義があると言えるが、サラリーマンなど一般の市民であれば、その意義は薄い
  2. 歴史に残るような大事件であれば、その事件で逮捕された人について、逮捕歴や前科情報を公表することにも一定の意義があると言えるが、小さい事件であれば、その意義は薄い
  3. 既に風化しているような事件であれば、その意義は薄い

というような判断になります。

逮捕歴や前科情報削除の基準

上記のような判断枠組みの上で、具体的な場面において、さらに具体的に考慮要素を分解していくと、下記のような要素が挙げられます。

起訴されたかどうか

起訴されたかどうかは重要です。不起訴であったということは、刑事裁判を受けておらず、有罪にもなっていないということです。冤罪の場合もあります。このような場合には、比較的削除が容易です。

犯罪が行われてからの期間

事件から一定の期間が経過すれば、社会への影響力は弱まりますし、実名報道の必要性は薄らぎます。長期間が経過していればいるほど、削除請求は認められやすくなります。この場合、もともとの事件の性質や重大さによって異なってきます。どのくらい昔の記事であれば削除できるのかというのは難しいところですが、公訴時効がある種の基準にされていたりします。例えば迷惑防止条例違反は公訴時効が3年です。記事が5年前のものであれば、削除してもらえる可能性が高いでしょう。

この「期間」という要素は、削除を望む側として、最も関心が高い最重要要素かと思われます。この点については別記事で詳述しています。

更生への取り組みがされている

本人がすでに社会復帰していたり、執行猶予期間が終了していたりすれば更生の利益を優先すべきなので、削除が認められやすくなります。また被害者がいる場合、示談が成立し、被害弁償ができていると更生の利益が認められやすくなります。

削除の必要性

プライバシー侵害で重大な被害をこうむっているなど、削除の必要性を判断されることがあります。社会復帰を目指して就職活動をしているのに前科報道による影響でうまくいかないというようなケースでは、事情を詳しく述べた「陳述書」を提出して判断してもらったりします。

逮捕歴、前科の削除が認められないケース

しかし、いくらプライバシーの侵害が言っても逮捕歴、前科の削除が認められないケースがあります。例えば 児童買春・児童ポルノ禁止法違反罪で罰金50万円の略式命令が確定した男性が、事件から3年以上を過ぎても、名前などを検索すると逮捕時の記事などが表示されているとして、Googleの検索結果から自身の逮捕に関する情報の削除を米Google社に求めた仮処分認可決定の保全抗告審で、東京高等裁判所は2016年7月、さいたま地方裁判所の投稿記事削除を命じた仮処分決定(いわゆる「忘れられる権利」判決)を取り消しました。 判決文には「本件検索結果は抗告⼈の居住する県の名称及び抗告⼈の⽒名を条件とした場合の検索結果の⼀部であることなどからすると、本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる」 とし、ネット上やサイトでの逮捕歴の削除を認めませんでした。

また、横浜市で診療所を開設している歯科医師の男性が、自分の名前をネットで検索すると過去に歯科医師法違反の疑いで逮捕され、罰金50万円の略式命令を受けた事実が表示されるとして、Googleを運営する米Google社に、検索結果の削除を求めました。この歯科医は歯科医の資格を持たない者に診察をさせたとして逮捕され、罰金50万円の略式命令を受けたのですが、逮捕の事実が新聞で報じられ、インターネットを通じて拡散しました。この結果患者が減ったり、求人に応募がなかったりする被害が10年以上たっても生じているとして削除を求め提訴したのですが、1審判決は「被害の程度は重くない」などとして、逮捕歴、前科の削除を認めませんでした。この訴訟の控訴審判決で、東京高裁は請求を棄却した横浜地裁判決を支持し、「今なお歯科医師としての資質に関わる事実として、公共の利害に関するものだ」と判示して、男性の控訴を棄却しました。 他の事例を見ても、資格に関係するような犯罪の前科や逮捕歴、言い換えれば資格を悪用したような犯罪に対しては、ネット上やサイトの逮捕歴の削除の判断が厳しくなっています。

逮捕歴や前科情報削除の手続き

上のように、逮捕歴や前科情報の削除は事件からの経過や更生の利益、削除の必要性などによって総合的に判断されますが、このような削除請求の手続きを個人が行うことは困難です。そこで、弁護士に相談して依頼する必要があるのですが、注意しなければならないのは、本人と弁護士以外の第三者が削除作業を行うと、非弁行為となることです。削除代行業者には注意しましょう。

弁護士に手続きを依頼すれば、新聞社のサイトやブログ、掲示板などの管理者に対し、記事削除の請求を行ってくれます。正当な理由があれば、多くの場合に任意の削除請求に応じてくれます。

5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の場合

5ちゃんねるの場合には、メールによる削除要請をします。基準を満たせば、メールによる依頼で削除してくれることになっていますが、実際にはメールで削除依頼してもスムーズに削除されることは稀です。

2ちゃんねるの場合には「削除依頼スレッド」を使って管理人に削除依頼する方法がありますが、削除依頼スレッドを利用すると、その内容が「公開」されてしまいます。削除依頼スレッドは公開されているため、削除申請していることが第三者に広く知られてしまい、かえって世間の関心を集めることになり、被害が拡大しかねません。しかも、削除が認められることはほとんどありません。破産者情報の場合、特に、この方法は避けるべきでしょう。

また、任意の削除請求に応じてくれない場合には、裁判所で仮処分等を利用すれば、認められ、削除命令を出してもらえます。

Twitterの場合

まずは対象となるツイートを、携帯・パソコンなどに付いているスクリーンショット機能などを用いて保存しましょう。そして、画像の信ぴょう性が上がるため画像に投稿日時が含まれていると尚更良いです。
次に問題のツイートをツイートしたアカウント主に、ダイレクトメッセージ機能を用いて連絡してみましょう。その際に、Twitterの本社に連絡をした旨、弁護士にも伝えてある旨を述べると尚更効果的です。簡単にアカウント主が削除依頼に応じる可能性は低いためTwitter社へ直接、対象のツイートを削除するよう依頼してみましょう。削除依頼は、設定にあるサポートに連絡するという項目から該当する違反報告を選択します。誹謗中傷などは「嫌がらせ」を選択してください。報告する内容を選択し、問題のツイートをした人のアカウント名、ツイートのURL、問題の内容、依頼主のアドレス・アカウント名・氏名を入力し削除申請をすることができます。

検索サイトの場合(Yahoo!やGoogle等)

YahooとGoogleなどの検索サイトの場合には、検索された順に関連キーワードが出てくる仕組みとなっています。例えば、その企業自体を調べようとしたにもかかわらず、企業名を入力した際にその企業の印象を悪くする口コミが表示されたり、その企業の商品の評判を悪くするような関連ワードが出てくることがあります。したがって、検索サイトでは関連順の影響から企業にとってはマイナスな情報を含んだ関連キーワードとして出てくる可能性があります。YahooとGoogleでは関連キーワードを削除する専用のフォームがあり、そこに必要事項を記入し、削除の申請を行うことができます。申請から削除までは長くても一か月で済むといわれていてそれ以上かかるようであれば、弁護士などに相談して削除してもらうようにしましょう。

モノリス法律事務所は、NHKドラマ「デジタル・タトゥー」の原案を務める代表弁護士の下、企業・個人の風評被害対策を多数手がけております。

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