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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

名誉毀損に対する名誉回復措置としての謝罪広告の事例を紹介

風評被害対策

名誉毀損に対する名誉回復措置としての謝罪広告の事例を紹介

情報の拡散力が高い現代社会においては、名誉毀損による被害はより深刻になっています。また、名誉毀損は、他人の社会的評価を低下させる行為であることから、金銭賠償だけでは被害の回復として不十分となるケースが多いと考えられます

そこで民法では、名誉毀損が成立する場合に、損害賠償とともに、名誉回復措置が認められる場合があると規定しています。

第723条(名誉毀損における原状回復)

 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

名誉回復措置としては謝罪広告を掲載させるのが一般的です。しかし、どのような場合に、どのような内容・方法での謝罪広告が認められるのかは、裁判所の裁量に委ねられているので、明確ではありません。

そこで本記事では、謝罪広告に関する実際の事例を紹介します。

謝罪広告とは

謝罪広告とは、名誉毀損の加害者が被害者に対して、広告という形で謝罪の意思を表明するものです。

名誉毀損にあたる記事を週刊誌等に掲載した執筆者や出版社が、被害者に対する陳謝の意をあらわす旨の広告を新聞などに掲載してるのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。

しかし、謝罪広告は、真に謝罪の意思を有しているかにかかわらず、強制的に謝罪の意思を表明させるものであるため、憲法で保障される「良心の自由」(憲法19条)に反するのではないかが問題となった裁判がありました。

もっとも、最高裁判所は、次のように判示して、民法723条による謝罪広告の強制は合憲としました。

時にはこれを強制することが債務者の人格を無視し著しくその名誉を毀損し意思決定の自由乃至良心の自由を不当に制限することとなり、いわゆる強制執行に適さない場合に該当することもありうるであろうけれど、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあつては、これが強制執行も代替作為として民訴七三三条(現171条)の手続によることを得るものといわなければならない。

最判昭和41年7月4日 民集第10巻7号785頁

この判決以後、謝罪広告を命じる判決が積み重ねられてきました。

しかし、名誉毀損が認められたからといって、必ずしも謝罪広告も認められるわけではない、ということに注意が必要です。

そこで以下では、実際の事例をもとに、謝罪広告の掲載請求に対して裁判所がどのように判断してきたのかを紹介します。

名誉回復措置として謝罪広告の掲載請求がされた実際の事例

まずは、謝罪広告の掲載請求が認められた3つの事例を紹介します。

週刊誌の記事で行われた名誉毀損の謝罪広告

とある女性アナウンサーが、「週刊現代」において、学生時代にランジェリーパブでアルバイトしていたという虚偽の記事が写真とともに複数回掲載された件を解説します。

名誉毀損および肖像権侵害に当たるとして、出版社である講談社に対して損害賠償および謝罪広告の掲載を請求した事例です。

東京地裁は、上記記事について名誉毀損および肖像権侵害を認め、講談社に対して770万円の損害賠償を命じるとともに、「週刊現代」の誌面上に1回、5分の2頁(縦9cm、横15.5cm)、本文の倍角の活字という条件での謝罪広告の掲載を命じました(東京地判平成13年9月5日)。

実際に掲載された謝罪広告

おわびと記事の取消し

当社発行の「週刊現代」1999年9月25日号に、「学生時代の(恥)アルバイト テレビ朝日の新人美人アナは『六本木のランパブ嬢』だった」との見出しのもとに、テレビ朝日のアナウンサーである〇〇〇〇さんが、学生時代に六本木のランジェリーパブでアルバイトをしていたとの記事を掲載しましたが、そのような事実は全くありませんでした。

事実無根の記事を掲載し、〇〇〇〇さんの名誉を著しく傷つけたことについて、深くおわびするとともに、右記事をすべて取り消します。

                           株式会社 講談社

                        代表取締役 ◯◯◯◯

◯◯○○様

全国紙で報道された名誉毀損の謝罪広告

造形作家AおよびAが製作した作品を組み込んだ舞台装置を使用して演劇を上演した劇団が、造形作家Bらが行った、Aらの上記行為が著作権侵害に当たる旨の記者会見について、Aらに対する名誉毀損に当たるとして、Bらに対して損害賠償及び謝罪広告を請求した事例です。

東京高裁は、上記記者会見について名誉毀損を認めました。Bらに対して、Aらに対するそれぞれ140万円の損害賠償を命じるとともに、この問題を報道した朝日新聞等の各全国紙において各1回、見出しおよび記名宛名は各14ポイント活字をもって、本文その他の部分は8ポイント活字という条件での謝罪広告の掲載を命じました(東京高判平成12年9月19日)。

なお、この事例では、上記記者会見を報道した各全国紙の責任は否定されています。

ホームページで行われた名誉毀損の謝罪広告

原告は、学会誌および自身のホームページにおいて、被告が執筆した書籍の内容について学問的見地から誤りがある旨の各文書を投稿したところ、それに対して被告が、自身のホームページにおいて、原告の研究行為の悪質性を強調する旨の各文書を掲載しました。

原告は、被告に対して、被告のホームページに掲載された各文書により名誉を毀損されたとして、損害賠償および各文書の削除、謝罪広告の掲載を請求。被告からは、原告のホームページに投稿された各文書や講演等により名誉を毀損されたとして、原告と同内容の反訴が提起された、という事例です。

東京地裁は、被告の各文書については原告に対する名誉毀損であることを認め、被告に対して、330万円の損害賠償および各文書の削除、被告ホームページにおける謝罪広告の掲載を命じました(東京地判平成24年11月8日)。

他方、原告の各文書については、学問的見地から批判したものであり、被告の社会的評価を低下させるものではないとして、被告の請求を棄却しました。

このように、謝罪広告の掲載請求が認められた事例を見てみると、基本的には、名誉毀損が行われた媒体で謝罪広告の掲載が命じられる、ということが分かります。

名誉回復措置の意義を考えれば、情報の発信源において謝罪・訂正することが合理的といえるでしょう。

[blogcard url=” https://monolith-law.jp/reputation/compensation-for-defamation-damages “]

謝罪広告が認められないことも

先述のとおり、名誉毀損が認められたからといって、謝罪広告も必ず認められるというわけではありません

実際には、新聞等の媒体で謝罪広告を掲載するには高額の費用が必要であり、当該費用は加害者の負担となることや、掲載を命じられる媒体の不利益など様々な事情を考慮しなければならないため、裁判所は謝罪広告の強制に対して謙抑的な傾向にあります。

そこで以下では、裁判所が謝罪広告を認めないのはどのような場合か、またその際の考慮要素について見てみましょう。

謝罪広告を認めない一般的な理由付け

とあるベンチャー企業およびその経営者が、「週刊新潮」等において株価操作の疑いがあるなどという記事が掲載されたことが名誉毀損に当たるとして、出版社である新潮社に対して損害賠償および謝罪広告の掲載を請求した事例において、東京地裁は、次のように判示しました

原告らは謝罪広告も請求しているが,以上の金銭賠償に加えて、謝罪広告を掲載しなければ原告らの損害を填補することができないとの事情までは認めることができないので,原告らの謝罪広告の掲載請求は理由がない。

東京地判平成15年7月25日

上記判示は、名誉毀損を認めながら謝罪広告を認めないときに最も多い理由付けです。要は、名誉毀損による損害の補填は金銭賠償で十分であると判断されたわけですが、これはどのような考慮によるものなのでしょうか。

名誉毀損の態様、被害者の地位などを考慮した事例

芸能事務所の社長が、「週刊文春」において掲載された、所属女優とのトラブルに関する記事が名誉毀損に当たるとして、出版社である文藝春秋と当時の編集長に対して損害賠償および謝罪広告の掲載を求めた事例において、東京地裁は、次のように判示しました。

被告らの名誉毀損行為によって原告らが被った損害は重大ではあるものの,本件記事のうち名誉毀損が成立すると判断される表現の中にはその部分に限って見れば真実であるものもある上(例えば,Bの月給が5万円であったこと),被告会社の記者から取材を受けたGの発言の中には誤解を招きかねない部分(例えば,「進撃の巨人」への出演依頼を原告会社が断ったかのような発言を一旦はしたこと)があるなど,被告らによる名誉毀損行為が極めて悪質とまではいえず,原告会社は⼤⼿の芸能事務所であり,原告Aはその代表取締役かつ⾳事協の常任理事を務める者でもあるから,⾃ら名誉の回復を図ることが⼀定程度は可能であることなどを考慮すれば,毀損された原告らの名誉を回復する⼿段としては,上記認定の⾦銭賠償をもって⾜り,それに加えて,謝罪広告の掲載を認める必要性まで認めることはできない。

東京地判平成31年4月19日

このように、名誉毀損の態様被害者の地位を考慮して、謝罪広告の掲載が認められない場合もあります。

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媒体の影響力と掲載後の事情などを考慮した事例

元国会議員の女性が、月刊誌「Will」において掲載された、自身の出生地が朝鮮半島であり、氏名が朝鮮人名である、そのために北朝鮮による日本人拉致事件に対する対応を十分に行わなかった旨の記事が名誉毀損に当たるとして、出版社のワックと当時の編集長に対し、損害賠償および謝罪広告の掲載を求めた事例です。

神戸地裁は、名誉毀損を認め、200万円の損害賠償を命じましたが、謝罪広告については、次のように判示して認めませんでした。

本件記事掲載誌の実売部数は約四万部にとどまるところ、本件記載が摘示する事実は新聞広告や電車内吊り広告などに表示されていなかった上、本件記事の標題及び執筆者名も本件記事掲載誌の表紙には記載されていなかったのであり(したがって、本件記事掲載誌が書店に平積みされていたとしても、それのみで本件記事の内容が容易に認識可能であるとはいえない。)、これらによると、本件記事の内容が社会に広く知れ渡る可能性は乏しかったものといえること、本件記事掲載誌が発行されてから二年以上が経過しているが、その間本件記載の存在が原告の政治活動や社会活動遂行の上で大きな支障となったとの事実を認めることができないこと、本件記事の内容や本件雑誌の言論界における立場等に照らすと、本件記事が与える影響力はほとんどないものと考えられること、などを総合考慮すると、本件では原告の名誉回復のために、金銭による損害賠償とともに、謝罪広告などの原状回復処分を命じる必要性はないものといわざるを得ない。

神戸地判平成20年11月13日

ここでは、掲載雑誌の影響力掲載後の事情などを考慮しています。

このように、裁判例では、名誉毀損に当たる否かは、問題となっている記載の内容に照らして抽象的に社会的評価の低下のおそれを判断されるのに対して、謝罪広告の掲載の要否は、当該記載により実際にどれだけ具体的な被害があるのかが考慮される、といえるでしょう。

書籍による名誉毀損と謝罪広告の方法

評論家Aが、文芸評論家Bが執筆した書籍において、Aの評論家としてのペンネームが配偶者のものであり、Aは執筆活動その他の活動をしていない旨の記載をされたことが名誉毀損に当たるとした件を解説します。

Bおよび当該書籍の出版社等に対して、損害賠償とともに、主要全国紙上に謝罪広告を掲載することや、それぞれのホームページにおいて謝罪文を掲載することを求めた事例です。

東京地裁は、名誉毀損を認めた上で、次のように判示して、各々のホームページのトップページに、それぞれ指定した謝罪文を1ヶ月の間掲載することを命じました。

…本件では、インターネットによる言論が相当程度まで影響していることは明らかであり、原告の名誉を回復するには、金銭賠償だけでは十分ではなく、被告山形及び被告メディアワークスに対してインターネット上の掲示板において別紙謝罪文を掲載させることが必要かつ適切であるところ、これを1か月間掲載させれば原告の名誉は相当程度回復されるものと考えられるから、その期間の限度で、被告主婦の友社を除いて、インターネット上の掲示板における謝罪をも命じることとする。
 なお、原告は、これに加えて、主要全国紙上での謝罪広告をも求めているが、前記認定のように本件書籍はオルタカルチャーというやや特殊な分野のもので、発行部数も約1万部程度で、必ずしも社会一般的に広く流布したものではないことや、上記のようにインターネットによる謝罪広告でほぼその目的を達することができると考えられることなどから、主要全国紙上での謝罪広告については、これを命じないこととする。

東京地判平成13年12月25日

本件では、インターネット上で言論の応酬があったことなども考慮され、ホームページでの謝罪広告が認められています。

また、特に書籍では、同じ人物が同じ書籍を繰り返し購入することは通常考え難いことから、事後的に訂正文等を挟み込む等の方法では名誉回復措置としては十分ではないといった事情もあったと考えられます。

先述したように、基本的に謝罪広告は、名誉毀損が行われた媒体での掲載が合理的ですが、本件のように、名誉毀損の具体的な態様やその媒体の性質等を考慮して、より柔軟に、かつ合理的な謝罪広告の方法を追求していくことも可能でしょう。

まとめ:名誉毀損を受けたら、名誉回復措置としての謝罪広告も検討しよう

裁判所は、謝罪広告を認めることに対して謙抑的ですが、以上のように、認めた事例も複数存在します。名誉毀損による被害は、金銭だけで回復できるものではなく、謝罪広告のような名誉回復措置を講じなければ根本的な解決とはいえない場合も多くあるからです。

したがって、名誉毀損の被害を受けたら、損害賠償請求だけでなく、名誉回復措置としての謝罪広告の掲載請求も視野に入れて検討しましょう。

そして、本記事で紹介した事例などを参考に、名誉回復措置としての謝罪広告を検討したいという場合は、是非とも弁護士に相談してください。

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