風評被害対策

名誉毀損と社会的評価の低下を弁護士が解説

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名誉毀損と社会的評価の低下を弁護士が解説

名誉毀損にいう名誉とは外部的名誉であり、人に対して社会が与える評価を意味します。したがって、名誉を毀損するとは、人の社会的評価を低下させることを意味し、これは、刑法でも民法でも同じです。

刑法においては、名誉毀損罪は抽象的危険犯とされていて、実際に人の社会的評価を低下させたこと、又はその具体的危険を生じさせたことは必要ではないとされています。社会の評価は目に見えないものであるので、実際に社会的評価が低下したことを証明するのは困難だからです。

民法においても、実際に人の社会的評価を低下させたことまでは必要とされず、その危険性を生じさせたことで足りるとされています。では、実際には、どういう場合に「社会的評価を低下させた」と判断されるのでしょうか。民事裁判を見ながら、典型的な「社会的評価を低下させた」とされる事例を考えてみましょう。

犯罪行為を行ったとの誹謗中傷が社会的評価を低下させたとする事例

犯罪行為を事実摘示することは誹謗中傷及び名誉毀損と見なされる場合があります。

対象者が犯罪行為を行ったとの事実摘示は、よほど軽微な犯罪であればともかく、通常は社会的評価を低下させた誹謗中傷であるとみなされます。

1978年2月、青森市の温泉旅館に放火したという容疑で青森警察署に逮捕され、青森地方検察庁から同容疑で起訴され、1985年7月に無罪判決が確定した女性に関して、週刊現代記者に、「私個人はいまでも彼女を犯人だと考えている」「彼女はタダの人じゃない。暴力団以上です」等と話し、それが報道された、逮捕当時の青森警察署刑事一課長に対し、青森地方裁判所は1993年2月16日、名誉毀損を認めて50万円の損害賠償の支払いを命じました。判決文では、「一般人をして無罪判決を得た原告か、真実は放火、詐欺の罪を犯しているのではないかとの推測を抱かせる表現であるから、右談話部分が原告の名誉を毀損するものであることは明らかである」とし、「本件記事は、その全体の記事内容・記述方法に照らすと、被告の原告に対する個人的感情から、原告か暴力団より悪質な人物であることなど原告の悪性を強調するものであって、到底それか専ら公益を図る目的のために発言されたものということはできない」としています。

類似した例として、パソコン通信ニフテイサーブの電子会議室「現代思想フォーラム」における発言が名誉毀損とされた事例があります。

東京高等裁判所は2001年9月5日、「フォーラム内において、ある会員に向けられた批判や反論の発言があれば、当該会員は、直ちにこれに対する反論や再批判をすることができ、場合によっては全く無視することもできた」と認めつつも、「経済的理由で嬰児殺しをやり」「アメリカの出入国法にも違反した疑いが濃厚。これは完全な犯罪者」等の発言は、被控訴人が嬰児殺し及び不法滞在の犯罪を行ったとする内容の発言で、社会的評価を低下させる内容であり名誉毀損に当たるとして、50万円の支払いを命じました。東京高等裁判所は、上記の各発言を、「主張を裏付ける意味をおよそ有せず、また、被控訴人の主張を反駁するためにされているとも解せられず、被控訴人の公表した事実が犯罪に当たることを言葉汚く罵っているに過ぎないのであり、言論の名においてこのような発言が許容されることはない」としています。

事実を真実と信ずるについて相当の理由がないのに、安易に他者を犯罪者呼ばわりすることは、許されません。なお、名誉毀損とその成立要件については、当サイトの下記記事にて詳細に解説しています。

離婚や不倫の報道が誹謗中傷として社会的評価を低下させたとする事例

離婚に関する事実は離婚する夫婦が多くなった現代では、直ちに当事者たちの社会的評価を低下させることにはならないかもしれません。だから、離婚は取り上げ方によるかもしれませんが、不倫関係については、まだ社会的及び道徳的に否定的な評価が根強く、特に、小さな子供を抱える母親が不倫関係にあるなどと報道されれば、家庭人としての社会的評価が低下することは明らかです。

スポーツ報知に「離婚の危機」などと報じられ名誉を傷つけられ、業務を妨害されたとして、女優の小池栄子さんと所属事務所が報知新聞社に損害賠償を求めた訴訟の判決が2013年12月24日、東京地方裁判所でありました。

東京地方裁判所は、離婚に関する事実は離婚する夫婦が多くなった現代では、当事者たちの社会的評価を低下させるとまでは認めがたいとしつつも、小池さんが「円満な夫婦関係を維持継続しながら活動している女優、タレントとして好感度を得ており、本件各記事の公表時においても、そのような好感度を背景に、CM、テレビ番組、映画、舞台等への出演等の活動を幅広く行っていたことが認められ、また、(証拠略)により、本件各記事の公表に起因して、女優、タレントとしての主な活躍の場、仕事の内容等の変更を余儀なくされたことが認められることからすれば、被告による本件各記事の公表は、単に原告の名誉を毀損するにとどまらず、その女優、タレントとしての業務を妨害し、原告に対してそれに伴う相応の損害を与えたものと認めることができるものというべきである」として、報知新聞社に小池さんへ220万円、所属事務所へ110万円の損害賠償金支払いを命じました。

女優の広末涼子さんが「離婚係争中で別居中であるのに夫以外の男性と不倫関係にある」との報道をされ、社会的名誉を毀損されたとして、掲載紙である女性セブンの発行元である小学館に損害賠償を求めた事例があります。

控訴審である東京高等裁判所は2008年12月9日、本件記事等は一般の読者に対して、あたかも広末さんが夫との離婚問題の最中にかつて噂のあった男性とよりを戻して不倫関係にあるかのような印象を与えるものであって、「妻であり母である家庭人としての控訴人の社会的評価に悪影響を与えたのみならず、自由奔放な女優という評価をも超えて女優としての社会的評価にも悪影響を与えたものというべきであり、更に、本件記事は事実無根と評価されてもやむを得ないものであったといえる」として名誉毀損を認め、230万円の損害賠償金支払いを小学館に命じました。

離婚や不倫の報道をされるのは著名人ですが、そうであるとすれば、こうした報道によって経済的損害も被る場合が多くあります。どちらの判決でも触れられていないのですが、パブリシティ権が問題となる可能性があり、実際に上にあげた2人はともに証拠を提出して経済的被害を明らかにしています。このような額の損害賠償金で十分なのだろうか、と疑問を持たずにいられません。

パブリシティ権については、当サイトの下記記事にて詳細に解説しています。

職業人しての評価に対する誹謗中傷が社会的評価を低下させたとする事例

職業人への誹謗中傷や書き込みの転載も、社会評価低下に繋がる名誉毀損として問われる可能性もあります。

当サイトの別記事『名誉毀損に対する名誉回復措置としての謝罪広告』でもご紹介した、評論集『聖母エヴァンゲリオン』の著者小谷真理さんが『オルタカルチャー日本版』という書籍内のコラムでペンネームは夫のものと書かれ、あたかも夫が『聖母エヴァンゲリオン』を書いたかのような誤解を受け、名誉を毀損されたとして、コラム筆者と編集、発行したメディアワークス、発売した主婦の友社に対して、損害賠償を求めた事例があります。

東京地方裁判所は2001年12月25日、被告の記述は「これまで『小谷真理』のペンネームで、フェミニズム評論やSF小説評論を執筆し、日本翻訳大賞思想部門や日本SF大賞を受賞するなど、講義、講演、対談、座談会等を含め幅広い活躍をしている原告の社会的評価を全面的に否定するに等しいもの」として、小谷さんの訴えを認め330万円の損害賠償金の支払いを命じました。

大相撲八百長疑惑を報じた雑誌「週刊現代」の記事をめぐる名誉毀損訴訟で、最高裁は2010年10月21日、発行元の講談社と記事を書いたフリーライター側の上告をいずれも退けました。名誉毀損を認め、2件合わせて計4400万円の賠償金と、同誌への取り消し広告掲載を命じた二審の東京高等裁判所判決が確定しました。二審判決は、八百長を繰り返したとされた元横綱・朝青龍等や、それを知りながら放置したとされる相撲協会の社会的評価が低下したことは明らかであり、にもかかわらず「取材内容は極めてずさんなもので本件名誉毀損行為の態様は悪質といわざるを得ない」と判示しました。

こうした、職業人が築いてきた信頼を根本的に揺るがすような誹謗中傷が、厳しく責任を追及されるのは当然といえるでしょう。

インターネットにおける誹謗中傷が社会的評価を低下させたとする事例

大学の准教授が同大学の学生により「2ちゃんねる」で、「楽しそうにハラスメントしてんじゃねーよ」「パワハラ、セクハラしないと精神が保てない」などと匿名で書き込まれ、名誉を毀損されたとして損害賠償を求めた事案があります。

横浜地方裁判所は2014年4月24日、これらの表現は「大学の准教授であった原告がハラスメント行為を行っている旨の事実を摘示しており、本件記事は、いずれも、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、原告が大学の准教授としての資質や能力に欠ける人物であるとの印象を与えるものであり、原告に対する社会的評価を低下させるものということができる。そうすると、被告による本件書込行為は、原告の名誉を毀損するものとして不法行為に当たるというべきである」として、慰謝料100万円と書き込んだ人物の調査費用約70万円等合計約180万円の損害を認めました。

「Yahoo!掲示板」に中傷記事を書き込まれた男性が、匿名で「2ちゃんねる」に記事を転載した「転載者」の発信者情報を開示するよう、経由プロバイダに対して訴えを起こした発信者情報開示請求で、東京高等裁判所は2013年9月6日、「転載によって情報を拡散させ、社会的評価をさらに低下させた」とし、「匿名で具体的根拠も示さない一方的な転載は公益性もなく名誉毀損に当たる」として、転載者情報の開示を命じました。インターネット上の中傷記事を、別のインターネット掲示板に「転載」した場合でも名誉毀損にあたるとの、初めての判決でした。

「転載しただけでも名誉毀損が成立する」となると、TwitterやSNSへの投稿、さらにはまとめサイトなども同様に、名誉毀損に問われる可能性が出てきます。軽い気持ちで、いたずら半分にコピーアンドペーストし、転載するのは危険です。

TwitterやSNSでの誹謗中傷については、当サイトの下記記事にて詳細に解説しています。

まとめ

「社会的評価を低下させた」と認められるかどうかの判断が難しい場合も多くあります。経験豊かな弁護士にご相談ください。裁判の見通しや手続きについても、詳しい説明を得ることができます。

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