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風評被害対策

法人でも損害賠償請求は可能か?名誉毀損の判例を元に解説

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法人でも損害賠償請求は可能か?名誉毀損の判例を元に解説

ネット上で誹謗中傷され、それが名誉棄損に当たるとなれば、民事訴訟として、損害賠償請求の裁判を起こすのが一般的です。では名誉毀損の損害賠償請求の主体となるのは誰なのでしょうか?名誉毀損の対象が個人だけではなく法人もその対象となるため問題となります。

名誉毀損の裁判で被害者が会社等を経営しているときには、会社の名誉も同時に毀損され、営業上の損害が出ることもあります。その場合、会社という法人が原告になることもあります。

この場合、一般的には、会社が例えば原告Aとして信用及び名誉権侵害、経営者個人が例えば原告Bとして名誉権侵害の訴えを起こすことになりますが、会社とその経営者は別の人格であるので、それぞれが原告となり、別個の裁判を起こすことも可能です。

この点が明確に判断された事例を解説します。

事例の経緯

企業の経営コンサルタント業務等を行う株式会社の代表取締役が、2017年3月頃にブログ上に合計5回にわたり、以下のような、虚偽の逮捕情報を書き込まれました。

  • 2017年2月に強制わいせつの被疑者として取調べを受けた
  • 強制わいせつの被疑事実で逮捕された
  • 強制わいせつに該当する行為に及んだが、被害女性と示談ないしは和解をした

これらの記事が、原告の会社や報道機関が書き込んだような体裁をもって、被告により投稿されました。

詳細な経緯は不明ですが、被告は本件各投稿に係る名誉毀損の事実等につき、2019年3月に懲役1年2月及び懲役7月の実刑判決を受け、刑事上の名誉毀損は確定済みです。刑事名誉毀損は親告罪ですから(刑法第232条)、被害者の告訴なしに刑事手続きが進められることはありません。だから、原告はすでに刑事において告訴しているわけであり、実刑判決が出ているのは、犯罪態様が悪質であることを示唆しています。

代表取締役が原告となった第1事件

原告は、刑事告訴後に、企業の経営コンサルタント業務等を行う株式会社の代表取締役個人として、本件各記事が名誉棄損に当たるとし、被告に対し精神的損害に対する慰謝料等を請求する裁判を提起しました。

被告は各投稿を行ったのは、原告の妻が原告から生活費を渡されず、パワーハラスメントを受けるなどしていることに同情したことによるものであると主張しました。原告は、被告は好意を抱いた原告の妻に対し執拗に連絡を続け、それが不可能になるや、腹いせに本件各投稿に及んだものであると主張しました。

これらを受けて裁判所は、

本件各記事について「社会から受ける客観的評価を低下させる」として、民事上の名誉毀損を認め、慰謝料120万円、弁護士費用15万円、合計135万円の損害賠償金の支払いを、被告に命じました。

東京地方裁判所2019年11月25日判決

なお、原告は加害者特定のために要した発信者情報開示請求の費用として原告の会社が負担した61万7388円を請求したのですが、原告が負担したのではないとして、原告の損害とは認められませんでした。

会社が原告となった第2事件

発信者情報開示請求の費用が認められなかったことがあるのでしょうか。同じ案件で、第1事件の原告が代表取締役である株式会社が今度は原告となり、名誉毀損に基づく無形損害の支払いを求める裁判が提起されました。

裁判所は第1事件でも取り上げられた5本の記事につき、

本件各記事は、原告の代表者であるAが強制わいせつ行為を行い逮捕された事実等を摘示するものであり、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とすると、原告は性犯罪により逮捕されるような者を代表者とする会社であるとの印象を与えるものであるから、本件各投稿は原告の社会的評価を低下させるものというべきである(なお、本件各証拠によっても、Aが、本件各記事に記載された2017年2月又は3月に強制わいせつ行為を行った事実もこれにより逮捕された事実も認めることはできない)。したがって、本件各投稿は、いずれも原告の名誉を毀損するものであって、これによる不法行為が成立する。

東京地方裁判所2020年10月14日判決

としつつ、本件各投稿の内容、方法、数、動機等が悪質で身勝手である一方で、本件各記事は原告の代表取締役であるAに重点を置いたものであって、原告である株式会社自身を直接の対象としたものではないことを総合考慮して、本件各投稿により原告である株式会社が被った無形損害を金銭的に評価すると60万円が相当であるとしました。

そして、裁判所は、弁護士費用6万円、投稿者特定に要した費用61万7388円のうち40万円を因果関係のある損害と認め、合計106万円の支払いを被告に命じました。

被告は2回の裁判で、合計241万円の損害賠償金の支払いを命じられたことになります。

「重複する訴えの提起の禁止」と「一事不再理」

民事訴訟法第142条では、重複する訴えの提起が禁止されています。

第142条 裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。

民事訴訟法(重複する訴えの提起の禁止)

また、憲法第39条後段では、一事不再理の原則が明文化されています。

第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

憲法(遡及処罰の禁止、一事不再理)

これに関し、被告は、本件訴え(第2事件)は本件前訴(第1事件)と訴訟物が同一であって、民事訴訟法第142条に抵触するとともに、憲法39条後段の定める一事不再理に反するから、却下されるべきであると主張しました。

これに対し裁判所は、第1事件に係る判決は、第2事件訴えの提起に先立って確定しているため、第1事件は民事訴訟法第142条の定める「裁判所に係属する事件」に該当しないので第2事件訴えは同条に抵触するものではない、また、憲法第39条後段は刑事上の責任に関するものであるから民事訴訟たる本件訴えの適否について適用されるものではない、としています。

また、裁判所は、

【引用】本件訴えの訴訟物は,原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権であるのに対し、本件前訴の訴訟物は、Aの被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権であるところ、原告とその代表取締役であるAとは別の人格であって、両訴訟の訴訟物の同一性も欠くから、この点からも、本件訴えは、民訴法第142条に抵触するものではない

同上

ともしています。

被告は、第1事件において第1事件原告に対し135万円を支払うべき旨の判決を受けているが、第1事件原告は第2事件原告である会社の代表取締役であって、第2事件原告と事実上同一人物であるから、第1事件判決で認容された損害賠償に加えて、第2事件の損害賠償が認容されたならば、損害を二重に評価していることになり、本件においては,原告の無形損害は存在しないと解すべきであると主張していたのですが、原告会社とその代表取締役とは別の人格なので、損害を二重に評価していることにはなりません。

まとめ

名誉毀損に限らず、権利侵害を訴える裁判においては、被害者が会社等を経営している場合、当該の会社が直接誹謗中傷の対象となっていなくても、会社の権利が侵害され、営業上の損害が出ることもあるので、経営者個人だけでなく、会社という法人が併せて、時によっては別個に原告となることも可能です。

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