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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

アットコスメ(@cosme)の口コミを削除する方法

風評被害対策

当該サイトの特性や性質とは

@cosme(アットコスメ)は、株式会社アイスタイルが運営するコスメ・美容に関する総合情報サイトです。幅広い年代の女性を対象とし、ユーザーの口コミレビューを中心とした化粧品の情報提供をしています。中でも人気なのは、コスメのカテゴリ別クチコミランキングです。これは口コミにおける点数評価を基にして更新されています。@cosme(アットコスメ)には累積1500万件以上もの口コミがあり、これを基に、年間大賞として「@cosmeベストコスメアワード(ベスコス)」という企画も開催されており、ベスコスで「大賞」や「殿堂入り」を受賞したコスメは、ドラッグストアやコスメショップで大々的なポップアップが貼り出されるなど、近年注目度の高い企画になっています。

化粧品は女性が日常的に使用するものであるから市場規模が大きく、ドラッグストアで売っている化粧品やデパートで販売されているようなブランド化粧品、通販化粧品、海外からの輸入化粧品まで様々な種類、価格帯があり選択肢が非常に豊富です。また化粧品は肌に直接触れるものであるため、品定めを慎重にする方が多いでしょう。そこで消費者は、アットコスメをはじめとする口コミサイトや紹介記事を参考にして選ぶことになります。

@cosme(アットコスメ)の特徴として、レビュワーの肌質、効果や購入場所などからクチコミを絞り込む機能があります。例えば、乾燥肌でアトピー体質であれば、店頭で選ぶ段階ではどれが自分に合うのか知ることが難しいところ、似たような肌質の人にとってどのような使用感なのかを知ることができるため、事前に知っておけるという意味で一つの安心材料になります。

当該サイトではどのような風評被害が発生するか

ネガティブな口コミ評価で商品が売れなくなるリスクも。

先ほどのように、化粧品の口コミは消費者にとってとても参考になり役立つものです。一方で、口コミの影響力が上がっている現代では、ネガティブな口コミ評価はマイナスイメージにつながります。 もっとも、低評価であれば直ちに悪質な書き込みとはいえません。人によって感想や評価はそれぞれですし、特に化粧品は肌に直接触れるものなので、特に化粧品は使用者の体質によって合う・合わないがあり、人によって評価のズレが生じやすいのです。 そうだとしても、@cosme(アットコスメ)は、誰でも登録が可能で、匿名性が高いサイトであるため、中には風評被害につながりやすい悪質なコメントもあります。

代表的な例は、

  • 商品に直接関係のない理由で低評価をつける行為
  • 虚偽に基づく情報を提供する行為(事実と相違した内容の書き込み)
  • 同一商品に対して低評価を複数回投稿する行為
  • 第三者を誹謗中傷する、迷惑をかける行為

などです。 @cosme(アットコスメ)では、メンバー退会後も口コミの掲載が継続し、また過去数年の口コミまで遡れるため、このような書き込みが残ると、悪評により商品が売れなくなるなど大きな被害につながるリスクもあります。

当該サイトの利用規約と風評被害の関係

@cosme(アットコスメ)には、クチコミまたは@cosmeQ&A、@cosmeブログの投稿・利用にあたり、「@cosme総合利用規約」及び、本利用規約に基づいたクチコミ・投稿物に関する「ガイドライン」が存在します。
利用規約第6条には、

(4)虚偽の情報を登録または提供する行為
(5)他のメンバー又は第三者を誹謗中傷する行為
(12)未成年者に対し悪影響があると判断される行為
(17)その他、当グループが不適当であると判断した行為

などが、メンバーの禁止事項として挙げられています。

また、ガイドラインには「口コミおよび投稿物に関する禁止事項」として

  • 自身の使用感や感想が記載されていない投稿
  • 身体に危険を及ぼす可能性のある使用法や情報
  • 第三者の人格や権利を害する内容
  • わいせつ、不潔、残酷な内容や、侮蔑的、迫害的な表現など他人を不快にさせると客観的に判断される投稿
  • 日本国の法令や地域の条例に抵触する、又はその恐れのある内容及び、一般道
  • 徳に照らして好ましくないと判断される投稿
  • 政治的、宗教的、思想的に極端な偏りや差別がある内容
  • 真否についての事実確認が困難であり、かつ第三者に悪影響を及ぼす内容
  • 個人的なトラブルに関する内容

などが、具体的に挙げられています。そのほか、同一商品に対する複数回のクチコミ投稿が原則として禁止されています。

利用規約違反の申請方法

ガイドラインには「削除権」が規定されています。これは、@cosme(アットコスメ)を運営する株式会社アイスタイルが、「当ガイドライン及び「@cosme総合利用規約」に違反している、又はその恐れが高いと当社が判断した投稿については、投稿者や他の利用者に通知することなく当社において投稿を削除したり、メンバー資格を抹消する」権利とされています。

削除されるのは、「@cosmeのコミュニティとしての秩序を乱す又はメンバーに損害を与える恐れ」があると認められた場合です。削除を申請する場合は、「利用規約違反に関するご連絡フォーム」から問い合わせという形で申請していくことになります。その判断については、ガイドラインおよび@cosme総合利用規約に基づく判断がなされることになります。

想定される風評被害の違法性主張の例や送信防止措置の方法

「利用規約違反に関するご連絡フォーム」は、アットコスメのサイトの下部にある「利用規約違反に関するご連絡」または「ヘルプ・お問い合わせ」に置かれています。まず、フォームに従い、名前やメールアドレス、違反理由などを選択し、具体的内容の記述をして、送信するという流れです。

お問い合わせ内容の例
   
お世話になります。〇〇リップを販売している△△と申します。
根拠のない誹謗中傷が書かれている口コミの削除をお願い致します。
https://www.cosme.net/product/product_id…
2019/11月訪問のID××さんの口コミですが、
5行目に「〇〇リップの原料に□□という有害な成分が入っているため、唇が荒れてしまいました。皆さんも買わないほうがいいです」とあります。
しかし、当商品はそのような成分は一切使用しておりません。事実と異なります。この記載は、@cosme総合利用規約第6条(4)「虚偽の情報を登録または提供する行為」及び、ガイドライン禁止事項16個目「真否についての事実確認が困難であり、かつ第三者に悪影響を及ぼす内容」に該当し、利用規約およびガイドラインに違反している書き込みといえます。
以上の理由から、削除をお願いしたいです。よろしくお願い致します。

上記のように、「削除してほしい口コミがどこにあるか」、「違反している箇所」、「利用規約・ガイドラインにどのように違反しているか」を明確にしましょう。なお、基本的に返信や報告はありません。削除されたかどうかは、当該の口コミをこまめにチェックしておきましょう。
2週間以上たっても削除されていないようなら、念のためにもう一度、削除依頼をするとよいでしょう。 もっとも、但し書きとして、
「@cosmeの秩序維持を図るために当社が行使する削除権は、当社に投稿に関する何らの義務を課すものではありません。」
とあり、申請したからといって必ず削除されるわけではありません。
@cosmeに削除依頼をしても営業妨害や嫌がらせの投稿が削除されないときは、訴訟を提起することになります。

裁判所を通じた削除手続

口コミの内容に違法性がある場合は、弁護士に相談を。

もっとも、法律に抵触する内容であれば弁護士を通じて削除を裁判上で争うことができます。まず、インターネット上の風評被害対策に関連する仮処分や裁判には、大きく分けて

  • 投稿記事削除請求・仮処分の申立て
  • 発信者情報開示請求(IPアドレスの開示請求、住所氏名の開示請求)
  • 損害賠償請求(投稿者を特定できた後の損害賠償請求)

の三種類があります。この中でも、削除に直結する請求は、投稿記事削除請求、及び仮処分の申立てになります。仮処分とは、民事保全法に規定されている方法で、一刻も早い解決が求められる場合に、正式な訴訟によって確定判決を得る前に暫定的な処分を求めるものです。今回のような誹謗中傷の口コミなどは、一度拡散してしまうと回復困難な損害が生じるおそれが多分にあるので、仮処分の制度を利用して一刻も早い情報の削除を求めることが有効的です。仮処分命令が発令されると、裁判所が相手方に投稿を削除するように命令しますので、相手方は削除に応じることになります。

誹謗中傷や風評被害を受けた場合の当該記事の削除、仮処分の手続きに関しては下記の記事にて詳細に説明しています。

それでは、削除を求める根拠としてどのようなことを主張すべきでしょうか。
@cosmeに対してこれらの請求をしていくには、主に考えられるのは「名誉毀損」の主張をすることです。刑法第230条1項は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と、名誉毀損の構成要件を規定しています。

つまり、名誉毀損は、

  1. 「公然と」
  2. 「事実を摘示し」
  3. 「人の名誉を毀損する」

の1.から3.の全てに該当する事実があるときに成立します。それでは、1.から2.の要件はどのような場合にみたすのか、具体的に見ていきましょう。

まず、1.「公然と」とは、不特定または多数人が認識しうる状態であることをいいます。 今回のようにインターネット上のウェブサイトにおける口コミ投稿は、不特定多数の人物が閲覧することが可能な状態に置かれているといえるので、問題なくみたすでしょう。

次に、2.「事実の摘示」とは、人の社会的評価を低下させるに足りる具体的事実を告げることをいいます。そしてこの具体的事実は、真実性が証明されない限り、真実か虚偽であるかを問いません。 今回の例のように、「原料に□□という有害な成分が入っている」という事案であれば、この記述は商品が人体に有害であるかのような印象を与え、社会的評価を著しく低下させる事実といえそうです。また、有害な成分が入っていることが虚偽であれば、投稿者も真実性の証明をすることはできないため、問題にならないでしょう。

最後に、3.「毀損した」とは、社会的評価を害するおそれのある状態を発生させることをいいます。これは、実際に社会的評価が害されていなくても、その危険性が抽象的に存在すれば足り、名誉が現実に侵害されている必要はないということです。つまり、今回の場合、実際に問題となっている投稿を不特定多数の人に閲覧され、その商品に非難や抗議が殺到したり、ニュースとして他サイトに取り上げられていたりすることを証明する必要はありません。その危険性が客観的に存在することがいえればよいということになります。

名誉毀損の成立要件等は下記の記事にて詳細に説明しております。

まとめ

以上は名誉毀損について解説しましたが、主張の例としては他にも、プライバシー侵害、その他、著作権法や、商標法に基づく差止請求権なども考えられます。
そして、どの主張をしていけばいいのか、削除が認められるのかは個別のケースによって異なります。いずれにしても、違法性を主張する場合は弁護士の力が必要になります。まずは、弁護士に相談して、口コミが法律に抵触しているかどうかを判断してもらうことからはじめましょう。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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