制度等

「法律事務所」に「総合職」が必要な理由とは:河瀬季(代表弁護士)

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「法律事務所」に「総合職」が必要な理由とは:河瀬季(代表弁護士)

モノリス法律事務所は、「弁護士」「事務局」に加えて、「総合職」という部署を持っています。この部署は、多くの法律事務所には存在しないものです。何故このような部署が必要なのか、「法律事務所」というものの機能から、説明します。

一般的な法律事務所の業務範囲とは

まず、言うまでもない話ですが、「法律事務所」とは、弁護士が法律に関する業務を行うための事業体です。例えば典型的には、クライアントから依頼を受けて裁判を起こす、という業務です。

少しややこしい話になるのですが、例えば「裁判を起こす」といった業務は、細かくは、

  • 真に弁護士しか行うことができない部分(例えば裁判所に行って裁判に参加すること)
  • 弁護士以外のスタッフが補助を行うことの出来る部分(例えば訴状一式を裁判所に郵送すること)

に分類できます。一般的な「法律事務所のスタッフ(当事務所の場合は『事務局』)」とは、上記のうちの後者を行う部署です。

つまり、「法律事務所(という事業体全体)の業務範囲」は、「弁護士の業務」と「事務局の業務」で構成されている訳です。

ただ、当事務所が専門としているIT領域の場合、「一般的な法律事務所が業務範囲外としているような業務を(も)、事務所全体としては、行うべき場面」というものが、発生します。

例えば先ほど、「クライアントから依頼を受けて裁判を起こす」と書きましたが、「どのような裁判を起こすべきか」ということを、「誰が」検討・判断するのか、というのが、一つのポイントです。

IT領域の業務における「業務範囲」とは

古典的な問題、例えば貸したお金を回収したい、という問題であれば、「貸主であるクライアントが、借主である個人や法人を相手に、貸金の返金請求を裁判で求めるべきである」ということが明確です。

しかし例えば、IT領域の業務…の一つの例として、風評被害対策の場面を想定します。当事務所が手がける風評被害対策の中には、例えば

クライアント企業がネット上で「ブラック企業」と謂れのない批判を受けており、そうしたブログやSNS投稿、掲示板投稿などが大量に存在しており、そもそもクライアント自体が被害の全貌を把握できていない

といった大型の案件も多数存在します。この場合、「どのページ(どの投稿)を対象に、削除を求める裁判(等の手続)を行うべきか」というのは、非常に高度な判断です。

  1. インターネット全体から被害状況の全貌を把握する
  2. 一定の価値基準に基づいて優先度を設定する(例えば、どんなに「酷い」内容だとしても、ほぼ誰も見ていないページを、クライアントの予算で削除することは、優先度は低いと考えざるを得ません。)
  3. 予算にあわせて最適なプランを複数作成する

といった作業を、「誰かが」行わなければなりません。

一般的な法律事務所では、こうした作業は、「クライアントが行うべきこと」と認識されていると思われます。つまり、

  • クライアントが上記のような作業を行い、「削除して欲しいページ」のリストを特定する
  • 法律事務所(の弁護士)が、それに対して、法的検討を行い、削除可否などを判断する

という役割分担です。

しかし、クライアントは、ITに強い企業ばかりではありません。ITに専門性を有さない企業がクライアントの場合、法律事務所(という事業体)が、上記のような調査検討を行うべきです。…少なくとも、当事務所は、そのように考えています。

モノリス法律事務所の総合職の業務とは

モノリス法律事務所の総合職は、

  • 一般的な法律事務所は、そもそも「業務範囲」としていない
  • しかしクライアントニーズを考えた場合、「法律事務所(という事業体)の業務範囲」であるべき
  • 弁護士でなくても行える、むしろ、弁護士とは異なる専門性を有するメンバーが実施した方が精度が高くなる

という業務を、行うための部署です。

つまり、当事務所は、一般的な法律事務所よりも「広い」範囲を「法律事務所(という事業体)の業務範囲」と考えており、この結果、「一般的な法律事務所に存在する部署(弁護士と事務局)ではカバーできない範囲」が生じることとなり、「総合職」は、この部分を担当する部署なのです。

上記の風評被害対策の場面であれば、

  • インターネット全体から被害状況の全貌を把握する
    → この業務を行うメンバーには、ネット上の情報のリサーチ能力が求められます
  • 一定の価値基準に基づいて優先度を設定する
    → この業務を行うメンバーには、ITやインターネットの仕組みなどに関する知識や、統計処理などの能力が求められます
  • 予算にあわせて最適なプランを複数作成する
    → この業務を行うメンバーには、提案を組み立てる営業補助的な能力や、プレゼン作成能力などが求められます

と、なります。

「総合職」の専門性と、弁護士との役割分担

そして、こうした能力は、「弁護士」が持つべきものでも、また、実際問題として持てるものでもありません。弁護士が「法律」の専門家であり、年単位の時間をかけて少しずつその知識や経験を深めていくべきであるのと同質に、弁護士以外のメンバーが、少しずつ知識や経験を深めていくべき業務です。

そして、そのようにして、(主にIT関係の)専門的な知識や経験を保有していく「総合職」の業務と、法律の専門家である「弁護士」の業務が組み合わさることではじめて、クライアント企業が真に求める「ソリューション」を組み立てることができる。…というのが、当事務所の理念の一つです。

「風評被害対策」は、あくまで「一つの例」であり、当事務所は現時点でも

  • ウェブサービスやアプリの利用規約作成など(の場面で、総合職が、そのウェブサービスやアプリの機能や動作を正確に把握する)
  • 美容系メディアやサプリメントのLPが違法な広告を行っていないかチェックする(といった場面で、総合職が、公開されている全ページのリストアップやサンプリング抽出を行う)

など、総合職の業務があってこそ成立する、様々な「ソリューション」を、クライアント企業に対して提供しています。

「法律事務所とは、弁護士と、ITや統計等に専門性を有する総合職が、連携を行い、巨大な課題の解決を行う事業体です。」

と、当事務所は、サイト上でも常に発信しています。

このイメージは、いずれ一般的なものになると、我々は考えています。そうでなければ、「法律事務所」は、複雑化し続ける多種多様な社会課題を解決するための十分な力を持つ組織と、なることができないからです。

当事務所の求人情報

モノリス法律事務所は、ウェブリサーチ・KPI設計・提案の作成・インターネット広報などを行う総合職の求人を行っております。IT分野やコンサルティング業務にご興味のある方からのご応募をお待ちしております。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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