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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

ウェブサイト等における広告掲載で有利な契約書の書き方

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ウェブサイト等における広告掲載で有利な契約書の書き方

インターネット利用者の増加に伴い、かつて広告媒体として主流であった新聞や雑誌など紙媒体における広告やテレビCMに代わって、ウェブサイト上に広告掲載する事業者が急増しています。実際に、2019年に発表された矢野経済研究所の調査によれば、2018年度におけるウェブ広告に関する取引の市場規模は1兆7,000億円に迫る巨大市場となっており、2023年度までに2兆8,000億円程度まで拡大すると予測されています。

そこで、ウェブサイト等での広告掲載業務を委託又は受託する場合における契約書の書式やポイントについて解説します。

なお、インターネット広告代理店との契約に関しては、下記記事でも詳細に解説しています。

ウェブサイト等における広告の種類

ウェブサイト上に掲載する広告にはいくつかの種類があります。事業者に比較的よく利用されている代表的な広告として次のようなものがあります。

  • リスティング広告(検索連動型広告)
  • 純広告
  • アドネットワーク(DSP)

リスティング広告

リスティング広告とは、Googleなど検索エンジンの検索結果表示においてページの上部又は下部に広告と表記した上で表示される広告です。検索エンジンの検索結果で上位表示させるためにはSEO対策が必要となり、競合の多いキーワードであれば上位表示させることは至難の業です。リスティング広告を利用すれば、広告費を払うだけで上位に表示されるため、ウェブサイトからの集客を目指す場合には有効です。

リスティング広告に関しては、下記記事において詳細に解説しています。

純広告

純広告とは、特定のウェブサイト内におけるバナー広告のことを指します。Yahoo! JAPAN などアクセス数の多いウェブサイトにバナー広告を出すことができれば、そのサイトを経由して自社のサイトへのアクセスが見込めます。

アドネットワーク

純広告と似た広告の仕組みとして、アドネットワークがあります。アドネットワークでは、純広告のように特定のウェブサイトだけではなく、複数のウェブサイト、ブログなどにおいて広告を自動的に掲載することができます。

アドネットワークとしては、Google AdSenseが有名です。純広告と異なるのは、ウェブサイトと広告主が直接契約するわけではないという点にあります。また、広告主側で広告を掲載するウェブサイトを選択することができません。

ウェブサイトにおける広告掲載契約

ウェブサイト等における広告掲載を委託する場合や広告業者として受託する場合は、委託業務に関して契約書を作成する必要があります。

以下では広告掲載に関する基本契約書のポイントについて解説します。各条項例において、「甲」は委託者である広告主を指し、「乙」は受託者である広告業者を指します。

個別契約に関する条項

第〇条
1.本契約に付随する個別契約(以下単に「個別契約」という)は、本契約の一部を構成し、別段の特約なき限り、本契約の各条項の内容が適用される。
2.本契約の条項と個別契約の条項が異なる場合には、本契約の条項が当該個別契約の条項に優先すると明記されていない限り、当該個別契約の条項が優先して効力を有する。

広告掲載業務は一定の期間にわたり継続的に依頼することが一般的です。このような継続的契約においては、あらゆる業務に関して適用される条項を基本契約書として締結した上で、個々の業務に関して別途個別契約を締結する方法が採用されます。

個別契約は、契約書を作成するのではなくメール等で委託者が業務内容を指定し、受託者が応諾することをもって契約成立とする方法もあります。個別契約において基本契約の内容を修正する可能性があるため、条項例の第1項のように基本契約と個別契約の優先関係を定めておくと良いでしょう。

業務内容に関する条項

第〇条
甲は、本広告枠における本広告の掲載を乙に対し注文する際は、以下の手順に従い行う。
(1)乙は、甲が入稿した広告に関して、乙の単独の判断で当該広告が掲載可能か否かを決定しその結果と判断の理由を甲に通知する。
(2)広告掲載が可能な場合には、本広告を甲乙が合意した条件に従い広告枠に掲載する。

広告掲載契約において、実際に依頼する具体的な内容は個別契約に定められます。したがって、基本契約においては一般的な条項のみが定められます。広告掲載業務において、問題となることがあるのは、委託者が依頼した広告が想定した広告媒体に掲載されないことです。

上の条項例の(1)(2)号では、委託者が依頼した広告に関して受託者が掲載の可否を判断できるという内容になっています。受託者としては広告内容が法令に抵触するものであるような場合には、広告掲載を拒否する必要があります。したがって、受託者にとっては(1)(2)号は必須の条項といえるでしょう。

他方、委託者としては希望した広告枠に掲載できないと委託の目的が達成できないため、掲載を拒否される場合には少なくとも条項例(1)号に記載されているように理由の開示を求められるようにしておくことが望まれます。

成果報酬に関する条項

第〇条
1.甲は、乙に対し、次の計算式に従い算出する成果報酬を支払う。
  成果報酬単価(税込金額)× 成果数 =成果報酬
2.前項に定める「成果」とは、本広告枠からのアプリケーションのインストール、会員登録、ユーザーの商品購入、資料請求申込、その他成果報酬型広告の掲載の実績をいい、○○広告システム上に記録されるものとする。
3.成果報酬単価は、甲乙の協議に基づき個別契約において定める。

広告掲載業務の報酬は、「月額〇円」といったように定額型の場合と、条項例のように成果に連動して算定される成果報酬型の場合とがあります。成果報酬型の場合には、報酬の算定方法を疑義の生じないように明確に定めておくことが重要です。報酬はもっとも契約当事者間でトラブルを生じやすいため、この点をきちんと契約条項に落とし込むことは、委託者・受託者のいずれにとっても大切です。

特に重要なのが条項例2項に定める「成果」の定義です。また、成果の計測は基本的に受託者側で行うことになることが多いのですが、その場合でも計測システムの集計結果を定期的に委託者に提供するなどの方法により委託者に客観的資料により説明できるようにしておくことが必要となります。

免責に関する条項

第〇条
1.乙は、甲に対して、本サービスを利用したことによる甲の期待する効果、成果、売上又は利益等を保証しない。
2.甲は、本広告枠に関する乙又は乙の提携先のサーバー又はシステム等が障害又はメンテナンス等により停止すること又は誤配信が発生することがあること、並びに当該停止又は誤配信によって甲に生じた損害につき乙が責任を負わないことを認める。
3.乙が、乙と乙の提携先との契約の終了等により、広告枠の販売、本広告の掲載を予告なく停止又は中止した場合、それにより甲が被った損害につき乙が責任を負わないことを認める。その場合、甲乙は代替手段を検討するものとする。

免責に関する条項は主に受託者側を保護するための条項です。条項例の第1項は、受託者は成果を保証しない旨の条項です。広告掲載業務はあくまでも広告内容に適合する広告を出稿することをその内容とします。したがって、特に契約書内に結果を保証する旨の定めがない場合には、受託者が広告出稿による成果を保証しないことは当然ともいえます。第1項はこの点を注意的に規定するものです。

条項例の第2項は、広告掲載業務がサーバーやシステムに依存する以上、その不具合によって意図した広告出稿ができない事態を想定したものです。このようなトラブルはウェブサービスにおいてはつきものですが、何も定めがないと委託者から債務不履行責任を問われるおそれがあります。このため、受託者にとって条項例第2項は必須といえます。

条項例第3項は、一度広告出稿したウェブサイトが閉鎖等により出稿中止となる場合のあることを想定したものです。受託者としては広告掲載をしているウェブサイトの運営をコントロールすることができないため、このような場合を受託者の免責対象とすることは一理あります。

もっとも、委託者からすれば広告出稿が中止となることは受託者側の事情であるため、これによって契約上の義務を履行できない場合に受託者が常に免責されるというのは合理的ではありません。したがって、条項例第3項の2文目にあるように委託者側としては代替手段を用意してもらえるような条項とすることが望ましいといえます。また、受託者との力関係次第ですが、委託者としては損害賠償も請求できる条項とした方が当然ながら有利です。

その他一般条項

上記のほか、契約書一般において規定される一般条項も基本契約書に定められます。例えば、解除、有効期間、秘密保持義務、著作権等の知的財産権に関する条項が典型例です。

このほか、最近では反社会的勢力に関する条項も重要です。暴排条項ともいわれるもので、契約の相手方が暴力団その他の反社会的勢力であることが後から判明した場合にすぐに契約解除できるようにするためのものです。

まとめ

広告掲載業務を委託することや、広告業者として受託することは今後ますます増加すると思われます。もっとも、紙媒体やテレビCM等と異なりウェブサイト上の広告出稿は慣れていないとシステム自体を正確に理解しにくいことがあります。

委託者・受託者を問わず、広告掲載契約を締結する際には、どのようなシステムに基づいて広告を出稿するのか、どのようなリスクがあり得るのかを事前に十分に確認しておくことが大切です。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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