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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

持株比率と株主の権利の関係とは?

IT・ベンチャーの企業法務

持株比率と株主の権利の関係とは?

投資契約等の契約において、VC等の投資家が株式会社に対して投資する際に発行される株式数に関する規定が定められることがあります。株式の発行により株主の持株比率に影響が及ぶことになりますが、この持株比率は、株式会社の経営権に影響を及ぼす重要な事項です。そのため、株式会社が株式の発行を行う際には、株式の発行を行うことにより、持株比率がどのよう変化し、経営権にどのような影響を及ぼすかをしっかり検討する必要があります。そこで、本記事では、持株比率を維持することの重要性ついて説明をします。

持株比率とは何か

持株比率とは、特定の株式会社の発行済株式総数に対して、当該会社の株主が保有する株式の割合のことをいいます。例えば、株式を1000株発行している株式会社Aにおいて、株主Xが株式を500株保有している場合、株主Xの株式会社Aにおける持株比率は、500株÷1000株×100=50%となります。持株比率とは、簡単にいえば、株主が会社の株式をどの程度の割合で保有しているかということとなります。

持株比率は株主のどのような権利に影響するか

株主比率による権利の違いについて解説します。

持株比率により、株主が行使できる権利に違いが生じることがあります。そこで、以下では、持株比率の違いによって影響が及ぶ株主の権利について説明をします。

株主が株式を1株以上保有している場合

株主が株式を1株以上保有している場合、株主には、株主総会議事録の閲覧謄写請求権が認められます(会社法318条4項1号)。1株でも株式を保有していれば、株主総会で決議された事項の影響が及ぶため、株主総会議事録の閲覧謄写請求が認められることとなります。

また、株主が株式を1株以上保有している場合、株主代表訴訟の提起を株式会社に請求することができ(会社法847条1項)、請求を受けた株式会社が株主代表訴訟を提起しない場合には、請求を行った株主は、株主代表訴訟を提起することができます(会社法847条3項)。

持株比率が1%(1/100)以上の場合

株主の持株比率が1%(1/100)以上の場合、株主は、株主提案権を行使することができます(会社法303条2項、305条1項ただし書)。

持株比率が3%以上の場合

株主の持株比率が3%以上の場合、株主は、株主総会招集請求権を行使することができます(会社法297条1項)。他には、役員の解任請求権(会社法854条1項)や会計帳簿閲覧請求権(会社法433条1項)などが認められます。

持株比率が3分の1を超える場合

株主の持株比率が3分の1を超える場合、株主は、特別決議の拒否をすることができます。会社法では、株主総会での特別決議を行うためには、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならないと規定されています(会社法第309条2項)。
この規定から考えると、持株比率が33%を超える株主が反対をすれば、特別決議を行うことができなくなります。
このように特定の株主の持株比率が33%を超えており、単独で特別決議を拒否できる状態を「拒否権」と呼ぶことがあります。

特別決議は、合併・会社分割・株式交換・株式移転等の組織再編、事業の全部譲渡、定款変更、監査役の解任及び新株等の有利発行等、株式会社にとって重要な行為を行う際に要求される手続きですので、特別決議の拒否ができるということは、株主会社の経営を行う上で、重要な意味を持つといえます。

過半数の議決権を有する場合

株主が過半数の議決権を有する場合、株主は、役員の選任及び解任を行うことができます。会社法341条では、「役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。」と規定されています。

つまり特定の株式が株式の過半数を有する場合には、役員の選任及び解任を行うことができます。役員の選任及び解任については、株式会社の経営権に影響を及ぼす極めて重要な事項であり、経営権を維持するためには、株式の過半数を維持することが重要になります。

経営権を維持するためにはどの程度の持株比率を維持する必要があるか

経営権を維持できる株主比率とは?

それでは、どの程度の持株比率を有していれば、経営権を維持できるのでしょうか。前述のように、役員の選任及び解任については、過半数の議決権があれば行うことができます。ただ、経営権の維持のためには、過半数では足りず、持株比率の3分の2以上の持株比率を有することが必要です。株式会社にとって重要な行為を行う際には、前述のように特別決議が必要となります。そのため、経営権を維持するためには、持株比率の3分の2以上の持株比率を有することが必要です。

持株比率が3分の2以上に満たない場合の対応について

それでは、持株比率が3分の2以上に満たない場合に、経営権を維持するためには、どのように対応すればいいのでしょうか。もし、経営陣の持株比率が低い場合には、他の株主の意見を尊重せざるを得ないこととなります。

そこで、他の株主の意見を吸い上げ、他の株主と常によい関係性を構築することが重要となります。経営陣としては、経営権を維持したいと考えると思いますが、他の株主の意見を聞いて会社を経営していく方が、結果的に会社がよい方向に進むことも考えられます。そのため、持株比率が3分の2以上に満たない場合には、他の株主とよい関係性を構築できるように対応することが重要となります。

持株比率に影響を与えることなく資金調達を行う方法

株式会社の運営にとって、資金はなくてはならないものであり、資金調達は極めて重要です。資金調達の方法については、VC等の投資家から投資を受け、株式を発行するという方法が考えられますが、株式を発行する方法は、当然のことながら持株比率に影響が及びます。そのため、持株比率に影響を及ぼさない方法により資金調達を行うということも考えられます。持株比率に影響を及ぼさない資金調達の方法としては、例えば、以下の方法が考えられます。

株式を発行し資金調達をする方法は、エクイティファイナンス(Equity finance)と呼ばれますが、アセットファイナンス及びデットファイナンスは株式の発行を行いません。アセットファイナンスやデットファイナンスの詳しい内容については、以下の記事で説明をしていますので、以下の記事をご覧いただければと思います。

  • アセットファイナンス(Asset finance)
  • デットファイナス(Debt finance)

まとめ

以上、持株比率を維持することの重要性について説明をしました。持株比率の維持することにより、様々な権利を行使することができます。そのため、まずは、どの程度の持株比率を保有すれば、どのような権利を行使することができるかをしっかり把握することが重要となります。また、仮に、経営陣の持株比率が3分の2を下回ってしまっている場合には、経営権を維持するために、他の株主と良好な関係を構築できるように対応することが重要となります。持株比率に関する事項については、会社法等に関する知識など専門的な知識が要求されることとなりますので、持株比率に関する事項について不安を有する方は、弁護士に相談をするようにしてください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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