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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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サブドメインやサブディレクトリ貸しと契約書チェックポイント

サブドメインやサブディレクトリ貸しと契約書チェックポイント

自社が管理するドメインの一部、サブドメインやサブディレクトリを他社に貸し出し、当該部分で当該他社のメディアを運用させる、というビジネスが、数年前から流行っています。

検索エンジン、例えばGoogleには、「ドメインの権威や評価が高いページをSEO上で有利に扱う」という基本方針があります。そこで、例えば仮に、当事務所のドメインが「権威や評価」が高いドメインであった場合に、以下のような処理を行うものです(なお、言うまでもなく、当事務所のドメインにはそのような権威や評価はありませんし、当事務所自身はこうしたビジネスは行っていません)。

URLの例
  1. 貸主(ここでは当事務所とします。)のサブドメインやサブディレクトリを、借主(例えば、別の法律事務所や会社など)に「貸し出し」する
  2. 借主が、その中でメディア運用を行う
  3. 借主は、そのメディアによる収益の一部を、いわば「賃料」のようなイメージで貸主に支払う

このビジネス(及びSEO手法)は、検索エンジンから見れば「ドメイン単位で権威や評価を行うという方針の穴を付くような手法」であり、ビジネス自体にリスクがあるとも言われています。ただ、実際問題としてこのようなビジネスは存在しており、その契約書の不備等が原因で、法的紛争に発展するケースもあります。

「法的紛争を避けるため」という観点で、こうしたビジネスの場面で用いられる契約書について、そのチェックポイント等を解説します。

サブドメイン・ディレクトリ貸しの性質と条項

サブドメイン・ディレクトリ貸しは、貸主の保有するドメインの一部に関する運用等の権限を、借主に認めることが、その本質的な部分です。

第●条(運用権限の付与)
貸主は、借主に対して、貸主の管理する本件ドメイン内の本件URL以下の階層(以下「本件領域」という。)について、本件領域内での、本件カテゴリに関する情報メディア(文章、画像、動画その他の情報により構成されるウェブ上の記事その他のコンテンツ及びその集合をいう。)の制作・運用(以下「本件利用」という。)を行うために利用させること(以下「運用権限の付与」という。)を約し、借主は貸主に対して、その対価を支払うことを約する。なお、「URL以下の階層」とは、本件URLの末尾に任意の数の「/」によって区切られる階層、任意の文字列を追加した全てのURLを含むものとする。
本件ドメイン:●●●●
本件URL:●●●●
本件カテゴリ:化粧品

「本件URL」は、上述のサブドメインであるケース、サブディレクトリであるケースがあります。「なお」以下は、技術的観点からは冗長ですが、こうした契約から紛争が発生し、万一裁判所で扱われることになってしまった場合、裁判官から見て疑義のない記載を行っておく方が望ましいという観点から追加しているものです。

また、「本件カテゴリ」は、後述する「借主の義務」との関係で、定義しておく方が望ましいものです。ここで定義を行わないと、「借主の義務」の条項が、後述するとおり複雑化しやすいものと言えます。

貸主の義務に関する条項

契約書:貸主の義務に関する条項

サブドメイン・ディレクトリ貸しに関連する紛争は、借主の立場から言えば、メディア運用のために必要なアカウント情報などが十分に渡されない・渡されなくなったことによって、発生するケースが多いものといえます。

第●条(貸主の義務)
貸主は、運用権限の付与のため必要な一切の行為(以下の各号を含むが、これらに限られない。)を行う。
(1)借主が本件領域での情報メディアの制作を行うために必要であるとして、貸主・借主間で合意されたアカウントの付与
(2)本件ドメインが利用するウェブサーバーその他に関する情報の提供
(3)その他、甲乙間で別途合意された行為

そこで、第1号では、可能な限り、例えば「WordPressのアカウント情報」など、具体的な記載を行っておいた方が、上述のような場面で「契約書上で明確に合意されているアカウントを付与せよ」と主張しやすくなると言えます。

借主の義務に関する条項

こうしたビジネスでは、借主が「どのような」メディアを運用するかによって、貸主・借主間の友好関係が崩れるケースもあります。例えば、借主が「一定の法的リスクはあるが、収益のためにはやむを得ない」として、薬機法などの行政法に違反している可能性のある、リスクのある記事などを公開し、そのことを貸主が問題視する、といったケースです。

第●条(借主の義務)
借主は、運用権限の付与に基づき、以下の義務を遵守して本件利用を行う。
(1)本件ドメインが利用するウェブサーバーに過度の負荷を与えないこと
(2)著作権、肖像権その他の第三者が保有する権利を侵害しないこと
(3)薬機法、医療広告ガイドラインその他の法令に違反しないこと
(4)本件カテゴリ以外の記事を掲載しないこと

また、第4号は、例えば、「化粧品メディアのために貸し出しを行ったのに、アダルトグッズの商品紹介が掲載されるようになった」といった場合に義務違反を問うための条項です。

上述の「本件カテゴリ」を狭く設定しておけば、こうした「想定外ジャンルの記事」について、義務違反を問うことが可能になります。

「本件カテゴリ」を広く設定した場合は、本条項の第4号で、「こうしたジャンルの記事を掲載してはならない」という、いわば禁止カテゴリを列挙することになります。しかし、「警戒すべきジャンル」を列挙する方が手間や難易度が高く、最初から「本件カテゴリ」として、「公開可能な記事ジャンル」を定義する方が簡便であり、また、実効性も高くなるケースが多いと思われます。

対価の支払いに関する条項

契約書:対価の支払いに関する条項

サブドメイン・ディレクトリ貸しの対価は、当該領域内で運用されるメディアの収益の●%、といった方式で計算されることが一般的です。

第●条(本件利用の対価)
1.借主は貸主に対して、本件利用に基づき生じた全ての売上(以下「本件収益」という。)の内訳(当該売上を生じさせた記事のURL、金額、発生日を含む。)を、翌月10日までに報告しなければならない。なお、以下の各号は本件収益に含まれるものとみなす。
(1)本件領域内の記事又は当該記事のリダイレクト、リンク先記事から生じたアフィリエイト報酬
(2)本件領域内の記事に設置されたGoogleAdSense、クリック課金型の広告、ディスプレイ型の広告などの広告報酬
2.貸主は、前項の報告に疑義がある場合、報告から10日以内にその旨を書面(電子メールその他の電磁的媒体を含む。以下同様)にて、借主に通知する。かかる通知のない場合、借主の報告は正確であったものとみなす。
3.借主は貸主に対して、当月の本件収益の10%に消費税を加えた金額を、翌月末日までに貸主の指定する銀行口座に振り込んで支払う。振込手数料は借主の負担とする。

第2項は、報告した収益の金額が過小だったのではないか、といった疑義を、後から遡って主張されることを回避するための条項であり、借主に有利な条項です

サブドメイン・ディレクトリ貸しのビジネスでは、メディア内に設置されるアフィリエイトリンクや広告自体が、借主のアカウントであるケースが多く、すなわち、貸主からは正確な収益の金額が見えにくいケースが多いものといえます。こうした場合、何らかの理由で信頼関係が崩れると、貸主が「従前受け取ってきた収益分配は、過少申告された収益の金額に基づくものであり、過小だったのではないか」と主張することがあります。そうしたトラブルを防止するための条項です。

契約解消後の301リダイレクト処理に関する条項

サブドメイン・ディレクトリ貸しのビジネスでは、契約関係の終了後に、いわゆる301リダイレクトによって、借りていた領域へのアクセスを、借主が管理する別のサイト等にリダイレクトさせること、そのための条項を契約時に設定しておくことが、ある程度一般的に行われています。

第●条(契約終了時の処理)
1.本契約が、契約期間満了、解約、解除その他の理由によって終了する場合、貸主は、本件領域について、借主の指定するURLへ、301リダイレクト処理によるリダイレクトを行わなければならない。
2.前項のリダイレクト処理は借主が行うものとし、貸主は、借主がかかるリダイレクト処理を行うために必要な全ての協力や情報提供(以下の各号を含むが、これらに限られない。)を行わなければならない。
(1)DNS設定を変更するために必要なアカウント情報の提供
(2)本件領域にアクセス可能なFTPアカウント情報の提供
3.本項に基づくリダイレクト処理の期間は、本契約終了から1年間とする。

リダイレクト処理それ自体は借主によって行われることが一般的ですが、サブドメイン貸しの場合のDNS設定を行うためのアカウント情報、FTPサーバー情報など、必要な情報の提供は、貸主によって行われなければなりません。

まとめ:専門性の高いインターネットビジネスと契約書

本記事で述べてきたとおり、専門性が高い・ある程度「最新」といえるようなビジネスの場合、その契約書作成や修正といった業務では

  • そのビジネスを円滑に行うための処理を、どのような条項で実現すべきか
  • 紛争が発生し、万一裁判所で争うことになってしまった場合に、裁判所や裁判官目線で「疑義のない」記載を、どのように行うべきか

といった意味で、当該ビジネスに関する理解と、法的知識等が必要となります。ITやインターネットビジネスに対する知識やノウハウのある法律事務所に依頼を行うことが重要だと言えるでしょう。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。当事務所では、東証上場企業からベンチャー企業まで、さまざまな案件に対する契約書の作成・レビューを行っております。もし契約書等についてお困りであれば、下記記事をご参照ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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