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IT・ベンチャーの企業法務

職務著作とは?4個の要件と法人が著作権を得る方法を解説

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職務著作とは?4個の要件と法人が著作権を得る方法を解説

著作権法上、著作物を実際に創作した者が著作者となるのが原則です。そして、この著作者が著作権を有することになります。

もっとも、例えば新聞記者が執筆したニュース記事の著作権が、原則通り執筆した記者に帰属するとすると、会社は記者の承諾なく記事をオンライン公開したり、修正したりすることができなくなってしまいます。このような不都合な事態を回避するために、著作権法では「職務著作」という制度を設けて原則を修正しています。

今回は、職務著作という制度の内容と、それが認められる要件、職務著作の要件が認められない場合の対処方法を解説します。

著作権とは

「著作権」とは、創作した小説、絵画、映画やプログラムなどの「著作物」を独占的に利用できる権利のことをいいます。著作権は、著作物の創作と同時に発生し、特許権のような出願などの手続きは必要ありません。

著作物と著作権者

「著作物」の定義は、著作権法2条1項1号に次のように定められています。

第2条1項1号 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著作物には、以下のものが考えられます。

  • 論文、小説、脚本、詩歌、俳句、講演
  • 楽曲及び楽曲を伴う歌詞
  • 日本舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊やパントマイムの振り付け
  • 絵画、版画、彫刻、漫画、書、舞台装置
  • 芸術的な建造物
  • 地図と学術的な図面、図表、模型
  • 劇場用映画、テレビドラマ、ネット配信動画
  • 写真、グラビア
  • コンピュータ・プログラム

「著作者」とは、原則として、著作物を現実に創作した者をいいます。そして、著作物を創作した著作者に、著作権が帰属します。そのため、小説を執筆したり、絵を描いた者が著作者となり、その著作権者となります。

もっとも、業務を通して従業員が創作した著作物を会社が利用するたびに、いちいち従業員に許諾を得なければならないとすると、手間も時間もかかり、業務がスムーズにいかなくなってしまいます。また、従業員が退職した後に、著作権が競合他社に譲渡されてしまう可能性もあります。

そこで、このような不都合を解消するため、著作権法では、一定の要件を満たすときには、現実に創作をした従業員ではなく、従業員を使用している会社を著作者とするという制度を設けています。これを、「職務著作」といいます。そして、会社は著作者とされる以上、著作物に関する著作権(及び著作者人格権)を全て有することになります。

職務著作の要件

職務著作の要件について解説していきます。

著作権法第15条1項では、職務著作について、次のように定められています。


第15条1項 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

整理すると、職務著作が成立するのは、以下の要件を満たす場合となります。

  1. 著作物の創作が、法人等の発意に基づくもの
  2. 法人等の業務に従事する者が職務上作成するもの
  3. その法人等の著作名義で公表するもの
  4. 契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと

以下で各要件の詳細を解説します。

1.「法人等の発意に基づく」とは

まず、「法人等の発意に基づ」いて著作物が作成される必要があります。

法人等の発意に基づく」とは、著作物の作成の意思が直接または間接に使用者の判断にかかっていることと考えられています。典型的には、著作物の作成に関して、使用者が企画、統括して従業員に作成活動を行わせることが考えられます。

もっとも、使用者の具体的な指示や承諾がなくても、所属する部署や事業内容から、従業員がその著作物を作成することを当然に期待されているならば、この要件は満たされると判断される傾向にあります。

どのような場合に「発意」が肯定されるのかは、裁判例において様々です。そのため、重要なケースでは、法人等による「発意」を裏づける証拠・資料を作り、残しておくことが必要です。

2.「法人等の業務に従事する者が職務上作成するもの」とは

次に、「法人等の業務に従事する者」が「職務上」著作物を作成する必要があります。

法人等の業務に従事する者」の典型は、従業員が使用者との間で雇用契約を締結している場合です。

また、雇用契約がない場合であっても、実質的にみて使用者と従業員とが雇用関係にあると評価できるのであれば、この場合も「法人等の業務に従事する者」の要件が認められます。例えば、フリーのライターが、出版社の指揮命令下で他の従業員と同じ立場で雑誌記事の作成業務に関与している場合、ライターは「法人等の業務に従事する者」とされる可能性があります。

これに対して、雇用関係のない外部の者に著作物の作成を委託したに過ぎない場合には、その外部の者は「法人等の業務に従事する者」には当たりません。そのため、請負契約等で第三者に著作物の作成を依頼する場合には、著作権の移転する旨を契約書にあらかじめ明記しておくことが必要です。

職務上作成する」とは、勤務時間の内外を問わず、従業員が自分の職務として作成することを言います。

そのため、余暇を利用して職務に関係のない著作物を独自に作成した場合や、たとえ勤務時間内であっても職務とは全く関係のない著作物を私的に作成した場合には、そうした著作物について会社が著作者になることはありません。

3.「その法人等の著作名義で公表する」とは

さらに、作成された著作物が「その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」でなければなりません。

自己の著作の名義の下に」とは、単に法人名を著作物に記載するのでなく、その著作物の著作者名として表示することが必要となるということです。

また、「公表するもの」には、法人等の著作の名義で実際に公表したものにかぎらず、公表することを予定している著作物、公表しないが公表するとすれば当然に当該法人名義で公表されるものも、これに含まれます。

なお、プログラムの著作物については、「その法人等の著作名義で公表する」との要件は求められていません(15条2項)。これは、プログラムには公表を予定しないものが多いという事情を考慮したためです。

4.「契約、勤務規則その他に別段の定めがない」とは

以上の要件を満たした場合でも、著作物の「作成の時における契約、勤務規則その他」に従業員を著作者とする規定が特別に定められているならば、職務著作の成立は妨げられます。そのため、このような規定が定められている場合には、従業員が著作者となります。

なお、この特約は著作物の作成の時点で存在していなければならないのに注意が必要です。これは、著作物の作成後に著作者の地位が変動することは、法的関係を混乱させるとの考慮に基づきます。

職務著作の要件を満たさず会社が著作権を得るには

職務著作の要件をみたさない場合には、原則どおり、従業員が著作者となります。そのため、会社は著作者になることはできません。

もっとも、著作者である従業員が有する著作権を譲り受けることはできます。そこで、会社が従業員から著作権を取得する方法を2つ紹介します。

就業規則で定める

「就業規則」とは、従業員に対して会社が定めた働いていく上でのルールなどを定めたものを言います。

そこで、会社が従業員から著作権の譲渡を受けるという内容を就業規則にあらかじめ定めておくという方法があります。具体的には、以下のような規定を設けることが考えられます。

  • 職務を通して従業員が作成した著作物に関する権利(著作権法第27条および第28条の権利を含む)は会社に帰属する。

このような規定を定めることで、会社は、就業規則が適用される従業員から著作権を取得することができます。

個別に契約書を作る

著作権を持っている従業員と会社との間で、個別に著作権譲渡契約を締結するという方法があります。雇用関係にない人には就業規則が適用されないので、この方法による必要があります。

この方法によると、従業員ごとに個別に契約を締結する必要があります。その際、従業員ごとに個別の条件を設定することができます。よって、雇用関係にある場合でも個別の条件を設定したい場合には、著作権譲渡契約を締結した方が良いでしょう。

著作者人格権に注意!

「著作権」は譲渡することが出来ますが、著作者に一身専属的に認められる「著作者人格権」は譲渡することができません

著作者人格権を従業員が有するままだと、著作物の修正などを自由に行えなくなる可能性があります。そのため、著作権の取得とは別に、従業員との間で会社に対して著作者人格権を行使しないとの合意をしておくようにしましょう。

まとめ:職務著作で困ったら弁護士に相談しよう

著作物を創作した者ではない法人等が例外的に著作者となる職務著作という制度について、解説をしました。

会社は、従業員が作成した著作物について、それが職務著作の要件を満たしているかどうかを確認しておく必要があります。

法人側で職務著作の要件を満たすと考えていても、退職する従業員はそのように考えておらず、後にトラブルとなることはよくあります。職務著作の要件や実際に職務著作に当たるのかについて正しい理解をしておくことが、こうしたトラブルの予防になるでしょう。

職務著作の該当性の判断が難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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