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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

プラットフォーム事業者の法的責任 判例が示した5つの義務とは?

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プラットフォーム事業者の法的責任 判例が示した5つの義務とは?

デジタル技術を用いた取引の発達に伴い、利用者は容易に様々なサービスを利用できるようになりました。今では、私達の生活になくてはならないデジタルプラットフォームもあります。その一方、デジタルプラットフォームを巡っては、取引の透明性や公正性などについての懸念もあります。

プラットフォーム事業者は、適法に事業を運営するためには、民法や刑法のような一般法以外にも、

  • 古物営業法
  • 特定商取引法
  • 知的財産権法(商標法・著作権法)
  • プロバイダ責任制限法

など、多くの法律を知っておかなければなりません。上記の法律以外にも、様々な法的責任が発生することがあり、留意する必要があります。

ここでは、実際の裁判例をもとに、プラットフォーム事業者が負担する法的責任について、解説します。

ネットオークションに関する裁判

Yahoo! JAPANが提供するYahoo!オークションを利用して商品を落札し、その代金を支払ったにもかかわらず、商品の提供を受けられないという詐欺被害にあった784名が原告となり、Yahoo! JAPANに対して訴訟を提起しました。

原告はYahoo!オークションのシステムには、契約及び不法行為上の一般的な義務である詐欺被害の生じないシステム構築義務に反する瑕疵があり、それによって原告らは詐欺被害にあったとして、債務不履行並びに不法行為及び使用者責任に基づき、損害賠償金を求めました。

10年以上前の裁判ですが、CtoC(個人間)取引におけるトラブルにつき、プラットフォーム事業者が負担する法的責任について、具体的に問われた裁判です。例えば2019年4月に発表された「消費者委員会オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会報告書」(内閣府)や、2020年8月に発表された「電子商取引及び情報財取引等に関する準則・最終改正版」(経済産業省)のような、多くの報告書や資料において、先例とされ、引用されている、現在でも注意しておくべき裁判例です。

利用契約の性質

裁判ではまず、ネットオークション事業者と利用者との間で、どのような契約が成立したのかが争点となりました。

原告である利用者側は、被告と利用者との間では、「本件利用契約」により、仲立契約に類似する内容の契約が成立しており、本件利用契約は出品者と落札者との間の売買契約の成立を目的とし、また利用料を徴収している以上、被告は利用者に対して、請負契約から導かれる仕事完成義務(民法632条)や、準委任契約から導かれる善管注意義務(民法656条、644条)を負担するものであり、本件サービスを瑕疵のないかたちで提供する義務がある、と主張しました。

この仕事完成義務や善管注意義務に対し、裁判所は、

本件利用料のうち、出品システム利用料及び出品取消システム利用料については、出品に伴うデータ領域の確保などが、落札システム利用料については、電子メールによる落札通知自動の送付などが、具体的な対価関係にあるものと捉えることが相当であるから、本件利用料は本件サービスのシステム利用の対価に過ぎないと認められる。

名古屋地方裁判所2008年3月28日判決

としました。

被告が利用者間の取引に積極的に介入したという証拠はなく、本件利用契約が仲立ちとしての性質を有するとはいえないし、事実行為を委任したり、目的物の完成を請け負わせたりするものとか、あるいはこれに類似するものともいえないとしました。

ただし、これは、本件の場合の料金設定やYahoo! JAPANがどの程度にまで取引に関与していたかという点を考慮した上での判断であり、料金の設定方法や事業者が利用者間の取引に介入した程度によっては、準委任契約等から導かれる善管注意義務等に違反したということで責任を追求される可能性があることに、注意しておく必要があります。

事業者に課せられる義務

原告らは、同じく利用契約に基づき、被告には本件サービスを瑕疵のないかたちで提供する義務がある、とも主張していました。

これに対し、裁判所は、

本件利用契約の内容となっている本件ガイドラインにおいては、被告は利用者間の取引のきっかけを提供するに過ぎない旨が定められており、被告は、これを指摘して、被告には利用者間の取引について一切責任を負わない旨主張する。

しかし、本件利用契約は本件サービスのシステム利用を当然の前提としていることから、本件利用契約における信義則上、被告は原告らを含む利用者に対して、欠陥のないシステムを構築して本件サービスを提供すべき義務を負っているというべきである。

同上

としました。「利用者間の取引のきっかけを提供するに過ぎないのだから、利用者間の取引について一切責任を負うことはありません」などと書いてあっても、サービスを提供している以上は、利用契約に付随して、信義則上、当然に発生する義務は存在するという判断です。

5つの判断基準

裁判所は、被告が負う欠陥のないシステムを構築して本件サービスを提供すべき義務の存在を認めましたが、義務の具体的内容とは、サービス提供当時におけるインターネットオークションを巡る社会情勢、関連法規、システムの技術水準、システムの構築及び維持管理に要する費用、システム導入による効果、システム利用者の利便性等を総合考慮して判断されるべきであるとして、次の5つの義務について、認めるべきか否かを判示しています。

  1. 注意喚起
  2. 信頼性評価システム
  3. 出品者情報の提供・開示
  4. エスクローサービス
  5. 補償制度

1の「注意喚起」については、ネットオークションを用いた詐欺等犯罪的行為が発生していた当時の状況の下では、利用者が詐欺等の被害に遭わないように、犯罪的行為の内容・手口や件数等を踏まえ、利用者に対して、時宜に即して、相応の注意喚起の措置をとるべき義務があったとして、事業者の義務を認めました。

その上で、被告は、利用者間のトラブル事例等を紹介するページを設けるなど、詐欺被害防止に向けた注意喚起を実施・拡充してきており、時宜に即して、相応の注意喚起措置をとっていたものと認められるとしました。

2の「信頼性評価システム」については、原告らは、「落札者が取引の満足度を採点するシステムでは利用者評価システムとして不十分であるため(仲間内での架空取引により良い評価を作出することが可能である)、第三者による信頼性評価システムを導入すべきである」と主張していたのですが、裁判所は、現在まで日本にオークション利用者の信頼性を評価する第三者機関は存在していないのであるから、原告らの主張するような第三者機関による信頼性評価システムの導入は被告にとって相当な困難を強いることとなるとして、信頼性評価システムを導入する義務を否定しました。

3の「出品者情報の提供・開示」については、原告らは、詐欺行為を行った出品者に関する情報を、その落札者に対し開示すべきであると主張していたのですが、裁判所は、

本件サービスを利用して詐欺を行おうとする者は、被告との本件利用契約においても、虚偽の情報を申告したりするなどして、当初から追及されにくいように行動するものと考えられるのであって、出品者情報を開示したからといって、その一般予防的効果を期待することはできない。

また、被告が詐欺被害にあったと主張する落札者の求めに応じて出品者情報の開示をすることは、関係法令の規定上、被告に相当の困難を強いることになる(個人情報保護法23条等参照)。

さらに、出品者が出品時に当該商品を所持しているか否かは、本件サービス上においても、落札後入金前に、落札者から出品者に問い合わせることができるのであるし、そもそも、そのような情報を被告が収集して本件サービス上提供していたとしても、本件サービスを利用して詐欺を行おうとする者は、虚偽情報を申告するなどして、そのような被告の情報収集に対抗するものと考えられるから、詐欺被害の事前防止策としてその実効性には疑問があるし、被告が出品しようとする者の商品所持情報の真偽を確認するということまで要求しては、本件サービスが営利事業として成り立たない可能性が高い。

同上

として、認めませんでした。

4の「エスクローサービス」については、被告が出品者及び落札者の間で行われる代金の支払、商品の送付・受領につき、エスクローサービス(出品者と落札者との間に専門業者が入って代金や商品を現実に取り次ぐサービス)を、出品者が利用を認め、落札者もそれに応じる場合にのみ利用できる任意のサービスとして推奨していたのに対し、原告らは、エスクローサービスを原則として義務付けるべきであると主張しました。ですが、裁判所は、エスクローサービスを義務付けるには、被告は、エスクローサービスの利用手数料を本件手数料に上乗せするなどして費用を回収する必要があるが、これは、販売店等を介さずに安価で目的商品を取得したいと考えて参加する利用者の心理を無視する結果となりかねず、エスクローサービスを利用者間の全ての取引に義務付けることは、被告の営利事業としての本件サービスの運営に困難を強いることになるとして、認めませんでした。

4の「エスクローサービス」については、被告が出品者及び落札者の間で行われる代金の支払、商品の送付・受領につき、エスクローサービス(出品者と落札者との間に専門業者が入って代金や商品を現実に取り次ぐサービス)を、出品者が利用を認め、落札者もそれに応じる場合にのみ利用できる任意のサービスとして推奨していたのに対し、原告らは、エスクローサービスを原則として義務付けるべきであると主張しました。ですが、裁判所は、エスクローサービスを義務付けるには、被告は、エスクローサービスの利用手数料を本件手数料に上乗せするなどして費用を回収する必要があるが、これは、販売店等を介さずに安価で目的商品を取得したいと考えて参加する利用者の心理を無視する結果となりかねず、エスクローサービスを利用者間の全ての取引に義務付けることは、被告の営利事業としての本件サービスの運営に困難を強いることになるとして、認めませんでした。

5の「補償制度」については、原告らは補償制度を充実させるべきであると主張したのですが、補償制度は事後的に被害を補償するものであって、これを充実させることが、詐欺被害の事前防止に結びつくといった関係にあるとは認めがたいとして、認めませんでした。

実際、事業者に契約や法律で明記されていない高度な補償義務を負担させるのは、無理があると思われます。

これらを踏まえて、裁判所は、原告らの被告Yahoo! JAPANに対する請求を棄却しました。

また、控訴審も原審の結論を支持して、控訴を棄却しています(名古屋高等裁判所2008年年11月11日判決)。

まとめ

裁判所が判示している通り、プラットフォーム事業者が負う欠陥のないシステムを構築する義務の具体的内容とは、サービス提供当時における社会情勢、関連法規、システムの技術水準、システムの構築及び維持管理に要する費用、システム導入による効果、システム利用者の利便性等を総合考慮して判断されるべきです。

だから、例えば、オークション利用者の信頼性の評価を第三者機関に委ねるという方式が標準的となったなら、そうした方式を導入していないことが義務違反となるでしょう。

ネットオークションやフリマサービスに代表されるCtoC取引はプラットフォームを介して行われることがほとんどなので、プラットフォーム事業者の役割は大きく、適法に事業を運営し、CtoC取引の拡大に貢献することが、事業者に期待されます。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、CtoC取引をめぐるトラブルは大きな問題となっており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所は様々な法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。

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