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IT・ベンチャーの企業法務

社外取締役の責任限定契約とは?契約書のひな形を解説

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社外取締役の責任限定契約とは?契約書のひな形を解説

2021年3月1日に施行された改正会社法によって、上場会社について社外取締役の設置が義務化されました。このため、上場企業のみならず今後IPOを目指す企業にとっても社外取締役の確保は大きな課題となっています。

また、非上場会社であってもVC等から出資を受けるときに、社外取締役の受け入れが条件とされることもあります。

社外取締役を受け入れる際には、その社外取締役が業務執行取締役でなければ会社とその取締役との間で責任限定契約が締結されることがよくあります。

そこで、社外取締役を設置する可能性のある会社向けに、社外取締役の責任限定契約とはなにか、責任限定契約を締結するために必要となる手続きについて詳しく解説します。 

社外取締役の責任限定契約とは

責任限定契約は、社外取締役や役員を送り込む株主側から締結を提案されることがよくあります。投資契約における取締役派遣に関しては、以下の記事でも詳細に解説しています。

また、VC等と締結する投資契約全般に関しては、以下の記事で詳細に解説しています。

責任限定契約を締結することが初めてという会社も多いと思われますので、まずは責任限定契約とは何かを説明します。

責任限定契約とは

責任限定契約とは、株式会社の役員が負う損害賠償責任について、一定の限度額に限定する契約をいいます。株式会社と役員の間で、就任時に責任限定契約が締結されることが通常です。

もっとも、責任限定契約において役員が負う責任上限額が自由に決められるわけではありません。会社法では、責任限定契約を締結した役員が損害賠償責任を負う限度額は、次の2つのうちいずれか高い額であると定められています。

  • 定款で定められた金額
  • 会社法第 425 条第 1 項に定める最低責任限度額

後者の会社法第 425 条第 1 項に定める最低責任限度額は、おおむね年間報酬額の2倍程度です。

業務執行取締役は責任限定の対象外

責任限定契約を会社と締結することのできる役員は、業務執行取締役でない取締役、会計参与、社外監査役、会計監査人に限定されています。

注意すべきは、業務執行取締役とよばれる常勤の取締役や代表取締役は責任限定契約を締結することができないという点です。

そもそも、責任限定契約という制度が設けられた趣旨は、次のような点にあります。

社外取締役や社外監査役などは第三者的な観点から会社の業務執行を監督すべき立場にあります。外部から優秀な人材を確保すること、萎縮せずにみずからの意見を経営陣に述べることが求められています。

そこで、責任限定契約によって損害賠償責任を限定することで、社外取締役などが過度に自らへの責任追及を気にすることのないように配慮する必要があるというわけです。

なお、従来は形式的に「社外」の取締役であれば責任限定契約を締結することができましたが、平成27年5月1日施行の改正会社法により、形式的に社外か否かではなく業務執行に関与しているか否かによって責任限定契約を締結できる取締役であるかが判断されることになりました。

したがって、名目上「社外取締役」であれば当然に責任限定契約を締結できるわけではありません。もっとも、一般的には社外取締役は業務執行に関与しないことが通常であるため、結果として社外取締役が責任限定契約を締結することは多いでしょう。

責任限定契約を締結するための手続き

実際に会社が社外取締役などと責任限定契約を有効に締結するためには、次のような手順で進める必要があります。単に、社外取締役候補者と契約を締結するだけではなく、定款の定めが必要となる可能性がある点に注意が必要です。

責任上限額を定款で定めるかを判断

責任限定契約を締結した社外取締役らの責任上限額は、定款で定められた金額又は会社法第 425 条第 1 項に定める最低責任限度額のいずれか高い額となります。

したがって、責任上限額を定款で定める意味があるのは、責任上限額を会社法第 425 条第 1 項に定める最低責任限度額よりも高くしたいというケースです。このため、そもそも責任上限額を定款で定めるかどうかを会社は判断する必要があります。

実際に定款で責任上限額を定めるかは会社によってまちまちです。役員に責任追及する株主の立場からすると会社法第 425 条第 1 項に定める最低責任限度額より高い上限額を定款で定めてもらったほうがよいことになります。

ただし、VCなど投資家から社外取締役を受け入れる場合、送り込む側は株主ではあるものの、責任上限額は低い方が一般的には好まれます

このため、投資家から社外取締役を受け入れる場合には、定款で責任上限額を定めるときには何らかの説明を要することになるでしょう。

責任上限額を定款で定める場合の規定例

会社として社外取締役ら役員の責任上限額を定款で定めると判断した場合には、定款を変更して次のような規定を設ける必要があります。

第○条(取締役との間の責任限定契約)
当会社は、会社法第427条第1項の規定により、取締役(業務執行取締役等を除く。)との間で、会社法第423条第1項の賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく賠償責任の限度額は、○円以上であらかじめ定めた金額または法令が定める額とする。

また、社外取締役と締結する責任限定契約において、以下のような条項が定められることが通常です。乙は社外取締役、甲は株式会社です。

第○条(責任限度額)
乙が甲の社外取締役として任務を怠ったことにより甲に損害を与えた場合、乙がその職務遂行にあたり善意かつ重大な過失がないときは、甲の定款で定められた金額または会社法第425条第1項に定める最低責任限度額のいずれか高い額を限度として甲に対し損害賠償責任を負うものとし、当該金額を超える部分について甲は乙を免責する。

責任上限額を定款で定めない場合の規定例

責任上限額を定款で定めない場合には、定款に次のような規定を設けることになります。

第○条(取締役との間の責任限定契約)
当会社は、会社法第427条第1項の規定により、取締役(業務執行取締役等を除く。)との間で、会社法第423条第1項の賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく賠償責任の限度額は、法令が定める額とする。

定款変更の手続き

実際に定款変更をするためには、株主総会での特別決議と登記が必要となります。

株主総会の特別決議

株式会社が定款変更をするためには、株主総会における特別決議が必要です。

特別決議とは、議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款でそれ以上の割合を定めた場合は、その割合)を有する株主が出席し、かつ出席した株主の議決権の3分の2以上定款でそれ以上の割合を定めた場合は、その割合)の賛成を要するものです。

非上場の株式会社の場合には創業者が株式の大多数を保有していると思いますので、特別決議自体は容易に成立することが多いでしょう。

登記手続

社外取締役などと責任限定契約を締結することができる旨の定款の定めを設けた場合、その旨を登記する必要があります。登記申請は、定款変更の効力が生じた日から2週間以内に行う必要があります。

まとめ

IPOを予定している会社やVC等から出資を受ける会社などは、社外取締役を設置することが今後増えるでしょう。社外取締役を受け入れる際に求められるのが責任限定契約です。

責任限定契約は代表取締役など常勤の取締役は締結できないため、はじめて社外取締役を設置する会社としてはどのような手続が必要か検討のつかないことが多いと思われます。

社外取締役は会社の機関の一つであるため、会社法に従って手続きをしなければいけません。もっとも、会社法は条文の準用が多く、一見しただけでは正確な理解が難しい法律です。

そこで、社外取締役の設置を検討している会社は、早めに企業法務に詳しい弁護士に手続を相談することをおすすめします。

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