IT・ベンチャーの企業法務

システム開発・ITコンサルへの下請法の適用と概要

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システム開発・ITコンサルへの下請法の適用と概要

IT業界では、システム開発業者が他の開発業者に開発を委託するなど、下請法の適用を受けるケースが少なくありません。

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、下請事業者の利益保護などを目的に、親事業者の義務、禁止事項、制裁などを定めています。下請法が適用されると、相対的に資本金が少ない「下請事業者」は、適正な代金が支払われるように守られ、「親事業者」は、違反した場合に公正取引委員会から公表されるリスクがあります。IT事業者であれば、下請法について確認しておくべきです。

下請法の適用対象

下請法の適用対象は、取引内容と資本金区分によって決まります。

取引内容である委託契約の性質が請負契約のみでなく準委任契約でも対象になります。また、いわゆる元請下請以外の関係でも対象になります。

システム開発・運用などは3億円の資本基準

3億円の資本基準が適用される取引内容は以下のとおりです。

・「プログラム作成に係る」情報成果物作成委託

プログラムの作成に至る情報システムの企画・設計、ネットワーク構成の設計や、組込ソフトウェアの開発も含まれます。

後述(1.3)しますが、この委託は3個の類型に分けられます。

なお、「情報成果物」とは、プログラム(ソフトウェア、システムなど)、映像や音声、音響等から構成されるもの(テレビ番組や映画など)、文字、図形、記号等から構成されるもの(デザイン、報告書など)をいいます。

・「情報処理に係る」役務提供委託

役務の提供を業として行っている事業者が、その提供を他の事業者に委託する場合に対象になります。他者に提供する役務であり、親事業者自らが利用する役務は含まれません。

例えば、ソフトウェア販売業者が、当該ソフトウェアの保守・運用を他の事業者に委託することがこれに当たります。

・運送、物品の倉庫における保管に係る役務提供委託、物品の製造委託・修理委託

そして、資本金等が以下の場合に、下請法の対象になります。

・「親事業者」が3億円超の法人で「下請事業者」が個人事業者又は資本金3億円以下の法人の場合
・「親事業者」が資本金1000万円超3億円以下の法人で「下請事業者」が個人事業者又は資本金1000万円以下の法人の場合

コンサルティングレポートは5000万円の資本基準

5000万円の資本基準が適用される取引内容は以下のとおりです。

・情報成果物作成委託(プログラム作成を除く)

コンサルティングレポートはこれに当たります。

・役務提供委託(情報処理および運送、物品の倉庫における保管を除く)

そして、資本金等が以下の場合に、下請法の対象になります。

・「親事業者」が資本金5000万円超の法人で「下請事業者」が個人事業者又は資本金5000万円以下の法人の場合
・「親事業者」が資本金1000万円超5000万円以下の法人で「下請事業者」が個人事業者又は資本金1000万円以下の法人の場合

情報成果物作成委託の類型

「情報成果物作成委託」は以下の類型に分けられます。

・いわゆる元請下請関係になる、ユーザー(発注元)から情報成果物の作成を受託した事業者(親事業者)が、他の事業者(下請事業者)に作成を委託(再委託)する場合

例えば、システム開発業者が、ユーザーから開発を請け負うシステムの一部の開発を他の業者に委託(再委託)することがこれに当たります。

・他者に販売、使用許諾を行うなどの方法で情報成果物を他者の用に供することを業とする事業者(親事業者)が、その情報成果物の作成を他の事業者(下請事業者)に委託する場合

例えば、ゲームソフト制作・販売業者が、消費者に販売するゲームソフトの作成を他の業者に委託すること、システム開発業者が、ユーザーに提供する名刺管理システムの開発を他の業者に委託することがこれに当たります。

・事業者(親事業者)が、自社で業として作成している自家使用の情報成果物の作成を他の事業者(下請事業者)に委託する場合

例えば、WEB制作業者が、自社のイントラサイトの一部の開発を他の業者に委託することがこれに当たります。

親事業者の義務・禁止事項

親事業者が負う責任、禁止事項とは?

親事業者の義務として、発注の際に書面(契約書、発注書等)を交付すること、支払期日を給付(成果物)受領後60日以内に定めること、取引内容を記載した書類を作成し2年間保存すること、遅延利息を支払うこと、が定められています。

また、親事業者の禁止事項として、代金減額、支払い遅延、受領拒否、不当な給付内容の変更などが定められています。

下請事業者が下請法に反する内容で同意したとしても、下請法上違法になります。

主にIT業界で問題になる、下請代金や役務に関することは、以下のように定められています。 詳しくは、経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における下請適正取引等の推進のためのガイドライン」に記載されています。

下請代金の額・支払期日、物品等の受領・返品

「下請代金の額」については、市価に比べて著しく低い額を不当に定めることや、下請事業者に帰責性がない限り発注後に減額することは禁止されています。

「支払期日」については、物品等を受領した日(役務提供の場合は役務が提供された日)から60日以内のできる限り短い期間内に定めることが必要です。親事業者が支払いを遅延した場合には、下請事業者に対し、物品等受領日から起算して60日を経過した日から支払日まで、日数に応じて年利14.6%の遅延利息を支払うことになります。

そして、親事業者は、下請事業者に責任がない限り、物品等の受領を拒否することはできません。また、受領後、明らかに下請事業者に責任がある不良品を速やかに返品することは問題ありませんが、それ以外の場合に返品することはできません。

親事業者は、書面・書類に、下請代金の額、支払期日、給付の受領期日・受領場所、検査をする場合は検査完了日を、書類に、検査結果・不合格の給付の取扱、額に変更があれば増減額とその理由、実際に支払った金額・支払日・支払い手段、実際に受領した給付内容・受領した日などを記載しなければなりません。

不当なサービス要請・給付内容変更の禁止

親事業者が、下請事業者に、契約内容となっていない金銭、役務の提供等を要請すること、下請事業者に責任がないのに費用を負担せずに仕様など給付内容の変更・やり直しをさせることは禁止されています。

親事業者は、書面・書類に、給付内容を、書類に、変更またはやり直しをさせた場合にはその内容・理由を記載しなければなりません。

その他、禁止事項として、購入・利用強制の禁止、有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止、割引困難な手形の交付の禁止、下記の申立てを理由とした報復措置の禁止が定められています。

書面・書類には、上記の他、親事業者・下請事業者の名称、委託日や、手形を交付する場合、一括決済方式で支払う場合、電子記録債権で支払う場合、原材料等を有償支給する場合の一定の事項などを、書類には、下請代金の一部支払・原材料等の対価を控除した場合、遅延利息を支払った場合の一定の事項などについて記載する義務があります。

勧告・公表、罰金など

違反行為がないかの厳重な調査が行われることも。

公正取引委員会により、業種や資本金の額から下請法の「親事業者」に該当する可能性があると判断されると、下請法に違反していないか書面調査が行われます。また、その調査で提出された下請事業者名簿から抽出された「下請事業者」にも、同様に書面調査が行われます。

これらの書面調査や、下請事業者からの申立てにより、公正取引委員会や中小企業庁から下請法違反の疑いがあると判断された場合には、親事業者に対する調査・検査が行われます。違反行為が認められると、指導、勧告が行われます。公正取引委員会が勧告をした場合、違反内容、社名が公正取引委員会のホームページ上に公表されることになります。

公正取引委員会の指導・勧告等により、平成30年度には、親事業者321名から、下請事業者10,172名に対し、下請代金の減額分の返還等で総額6億7068万円相当の原状回復が行われました。

親事業者が、下請事業者への書面の交付義務や書類の作成・保存義務に違反した場合や、上記の調査・検査に対する拒否、虚偽報告などを行った場合には、50万円以下の罰金刑が科されます。

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