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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

独自ポイントサービスを開始する場合に確認すべき法律上の問題点

IT・ベンチャーの企業法務

独自ポイントサービスを開始する場合に確認すべき法律上の問題点

WEBサービスを提供している企業が独自のポイントサービスを行うケースは非常によく見られます。消費者にとって魅力的な仕組みであるため、顧客を誘引するためにポイントサービスの導入を検討する企業は多くあります。

ただし、内容によっては資金決済法や景品表示法による規制対象となることがあります。

本記事では、自社独自のポイントサービスを開始する場合に、留意すべき法律上の問題点について解説します。

ポイントサービスに関連する法律

WEBサービスの利用に伴うポイントサービスの内容は各社さまざまです。ECサイトにおいて、購入金額に応じてポイントが提供されるサービスは従来からみられますが、これ以外にもQ&Aサービスにおける回答など、WEBサービスの利用に対してポイントがもらえるような仕組みもあります。

利用者が取得したポイントの利用方法に関しても、ポイントによりWEBサービスの運営会社の商品やサービスを購入することができるものや、ガチャができるようなものもあります。

気を付けなければならない法律としては、資金決済法と景品表示法が代表的なものです。例えば、ゲーム内で課金することにより得られるポイントや交通系電子マネーは、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当します。なお、自社でポイントサービスを行う場合の自社ポイントの移動や交換に関する法規制に関して、下記記事にて詳細に解説しています。

また、景品表示法では景品類の最高額や総額などを規制しています。例えば、ガチャにより得られる内容によっては景品表示法による規制の対象となることがあります。

ポイントによるガチャの適法性

ガチャの適法性が問題となる事例

最近増えているポイントサービスによるガチャで適法性が問題となるものとして以下の事例をみてみましょう。

Q&AサービスのWEBサイトにおいて、利用者が質問の投稿に対して回答を行うとポイントAがもらえるものとします。このポイントAの性質は以下のとおりとします。

  • ポイントAを現金で購入することはできない
  • ポイントAは現金化できない

利用者はポイントAをガチャに使用すると、以下のような景品が当たるものとします。

  • 世界一周旅行など金銭的な価値のある商品又はサービス
  • ポイントB

ここで、ポイントAのガチャの景品となるポイントBは以下の性質を持つものとします。

  • ポイントBを使用してQ&Aサービス運営会社が提供する商品又はサービスを購入できる
  • ポイントBは現金で購入することができる
  • ポイントBは現金化できない

以上のポイントサービスを行うと仮定して、ポイントAによるガチャで世界一周旅行など金銭的な価値のある商品、又はサービスやポイントBが当たることについて法的な問題がないかを検討します。

論点①:ポイントAは資金決済法の「前払式支払手段」か

まず、上の事例において、Q&Aサービスの利用者が質問に対して回答することで取得できるポイントAは、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するのではないかを検討する必要があります。

前払式支払手段とは

資金決済法の適用を受ける「前払式支払手段」とは、現金により購入されるポイント等をいい、商品券やプリペイドカードに該当するような財産的価値のあるものをいいます。

前払式支払手段には、自家型と第三者型の2種類があります。このうち自家型とは、ポイントの発行者に対してのみ当該ポイントの利用ができるものです。これに対して第三者型とは、交通系電子マネーのように、ポイント発行者以外の第三者に対しても当該ポイントの利用ができるものをいいます。本事例におけるポイントは自家型にあたりますので、以下では自家型の前払式支払手段について検討します。

自家型の前払式支払手段は以下の要件を満たした場合に該当します。

  • 金額等の財産的価値が記載・記録されていること(価値保存)
  • 金額・数量に応じた対価を得て発行されるものであること(対価発行)
  • 代価の弁済等に利用できること(権利行使)

つまり、前払式支払手段に該当するポイントとは、現金などで購入するものであり、発行者との関係では現金同様の支払い手段として利用できるものです。なお、発行から6ヵ月を超えると消滅するものは上の3要件を満たす場合でも前払式支払手段には該当しないこととされています。

前払式支払手段に対する規制

資金決済法上の前払式支払手段に該当する場合、運営する事業者は一定の基準日において、未使用のポイント残高が累計1,000万円分を超えるときは、原則として未使用残高の2分の1以上の金額を供託する必要があります。供託義務のほか、特定の事項を表示する義務や、行政への報告義務などが発生します。資金決済法上の前払式支払手段に関しては、下記記事でも詳細に解説しています。

結論:ポイントAは前払式支払手段に該当しない

本事例におけるポイントAは、Q&Aサービスの利用者が質問に対して回答することで取得するものであり、現金等の対価を払って購入するものではありません。したがって、金額・数量に応じた対価を得て発行されるものであること(対価発行)という要件を満たさないので、資金決済法上の前払式支払手段には該当しないこととなります。

論点②:ガチャによるポイントBの発行は景品表示法で規制されるか

次に、ポイントAを使用したガチャにより得られるポイントBは、景品表示法の規制対象となる「景品」にあたるかを検討する必要があります。

景品表示法上の景品規制の概要

景品は事業者にとって顧客を誘引する有効な手段となります。しかし、事業者の提供する景品が過大なものである場合、消費者は景品欲しさに、本来であれば購入しないような質の悪い商品やサービスなどを購入してしまうおそれがあります。

また、事業者間で景品の提供による過当競争が起きれば、本来の商品やサービスの改良等に力を入れなくなる可能性もあり、本末転倒です。そこで、景品表示法は、事業者が提供する景品について規制をしています。

景品表示法上の「景品類」とは

景品表示法の規制対象となるのは「景品類」です。「景品類」は以下の3つの要件を満たすものをいいます。

  • 顧客を誘引するための手段として
  • 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
  • 物品、金銭その他の経済上の利益

「景品類」に対する規制

景品表示法上の「景品類」に該当する場合、一般懸賞・共同懸賞・総付景品に関するもののそれぞれについて、事業者が消費者に提供できる景品類の上限額などが定められています。

結論:ポイントBは景品表示法の「景品類」に該当しない

本事例でポイントBは、前払式支払手段ではないポイントAのガチャによる賞品です。景品表示法上の「景品類」にあたるためには事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供するものである必要がありました。

しかし、ポイントAが前払式支払手段にあたらない以上、ポイントAを使用したガチャは無償のものなので「取引」に付随するものとはいえません。したがって、ポイントBは景品表示法の「景品類」に該当しないということができます。

論点③:ポイントBは資金決済法の「前払式支払手段」か

最後に、ポイントBが資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するかを検討します。ポイントBは現金で購入することができる性質のものでした。

もっとも、本事例でポイントBはあくまでもポイントAを使用したガチャにより得られるものであるため、その限りにおいては金額・数量に応じた対価を得て発行されるものであること(対価発行)を満たさず、資金決済法上の前払式支払手段には該当しないことになります。

ポイントBのように一見同じポイントであっても、特に課金ゲームにおいてはその取得方法が本事例のように無償である場合と、現金等の対価を支払って購入する場合が混在していることがあります。

まとめ

ポイントサービスを始める際には検討すべき法的論点が多くあります。例えば、今回の記事では検討していませんが、ポイントが資金決済法上の前払式支払手段に該当する場合には、より詳細に行政に対する手続や運用に関する検討をする必要があります。

ポイントサービスを検討している場合には、事前に法務担当者やIT分野に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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