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NFT発行時の注意点は?NFTの保有・譲渡の法的効果を解説

NFT

NFTは、誰でも発行することができるということを聞いたことがある人もいると思います。ただ、NFTを実際に発行する場合にどのようなことに注意すべきかということまで理解している人は多くありません。

また、発行されたNFTについて、保有や譲渡がなされることが一般的ですが、NFTを発行する場合には、この保有や譲渡の法律上の意味についても理解をしておく必要があります。

そこで、本記事では、NFTの発行をお考えの事業者の方を対象に、NFT発行時の注意点や、NFTの保有・譲渡の法律上の意味について説明をします。

NFTとは

NFTとは

NFTとは、Non-Fungible Token(ノン-ファンジブル トークン)を意味する用語で、代替をすることができないトークンのことをいいます。

トークンとは、しるしや象徴などの意味も有する言葉ですが、多義的な意味で使用されることも多く、意味を持つ最小単位、代用通貨、証拠などの意味として使用されることもあります。

関連記事:NFTにはどのような法律の規制があるのか弁護士が解説

NFTの発行とは

NFTの発行とは、デジタルコンテンツなどと何らかの方法で紐付けを行ったトークンを作成することをいいます。

また、NFT作成者が、作成したNFTを他の者に移転させることをNFTの発行と呼ぶケースもあります。

ブロックチェーン上でデジタルコンテンツなどと紐付けが行われていることから、簡単にトークンをコピーして増やすということができず、デジタルコンテンツなどに唯一の価値を付与することができます。それにより、当該デジタルコンテンツの希少性が高まることととなります。

NFTを発行する際には、トラブルを防ぐためにも、発行したNFTを保有することや、移転させることの法律上の意味や権利関係について正しく理解しておきましょう。

NFTアートとアートNFTの違い

NFTアートとアートNFTの違い

NFTを用いた概念として、「NFTアート」と「アートNFT」という概念があります。

NFTアートとアートNFTは、よく似た用語ですが、2つの区別を理解しておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

NFTアートとアートNFT には、以下のような違いがあります。

まず、「NFTアート」とは、NFT化されたアート作品それ自体のことをいいます。つまり、アートNFTの元となるアート作品のことをいいます。

次に、「アートNFT」とは、アート作品それ自体を意味するのではなく、アート作品と紐付けられたトークンのことをいいます。

そのため、NFTアートとアートNFTの区別がしっかりできていないと、例えば、アートNFTを購入した人の中に、「アートNFTを購入したのだから、アートNFTの元となるNFTアート作品の権利も自分にある」と思ってしまうケースが考えられます。

このように、NFTの取引を行う両当事者が、NFTアートとアートNFTの区別ができていないと、当事者間で認識のズレが発生し、トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。

NFTを「保有」することと「譲渡」することの法律上の意味

NFTには、「保有」するという概念と、「譲渡」するという概念があります。この「保有」と「譲渡」の法律上の意味を理解していないと、NFT取引でトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。以下で、NFTの「保有」と「譲渡」について説明をします。

NFTの「保有」について

保有という概念を考える際には、所有という概念と対比することにより理解がしやすくなります。

まず、所有という概念について考えてみると、我が国の民法では、所有権の対象として定められているものはいわゆる有体物であって、無体物は含まれていません。そこで、NFTを考えてみると、NFTは、デジタルコンテンツなどと紐付いているトークンですので、有体物ではなく無体物です。

そのため、我が国の民法では、無体物であるNFTを「所有」することはできません。

そのため、例えば、他者にNFTに関する権利を侵害されたとしても、NFTの所有権を有していることを主張し、所有権に基づく権利を行使するという事はできません。

NFTに所有という概念が認められないということになると、民法上の保護を受けることができず、取引を行っても意味がないと考える人もいるかもしれません。ただ、我が国の民法では、NFTに対する所有権が認められないことから、NFTに対して何らの権利も主張できないというわけではなく、「保有」という概念を用いることになります。

NFTについては、ブロックチェーン上のウォレットで管理されている秘密鍵を知っている者しか扱うことができないという特徴がありますので、事実上専有することは可能です。この、事実上専有している状態のことを保有といいます。

関連記事:NFTの取引に必要なウォレットとは?日本における法規制について解説

NFTの「譲渡」について

NFTの譲渡については、スマートコントラクトの仕組みが利用され、行われるのが一般的です。NFTには、所有権という概念がない以上、譲渡をすることはできないと考える人もいるかもしれません。

ただ、NFTに関しては、ブロックチェーン上に保有者情報や取引履歴が記録され、他の人に権利を移転させるという形で譲渡を行うことが可能です。

保有と著作権の関係

保有と著作権の関係

NFTの価値を考える上では、NFTの保有と著作権の関係を考える必要があります。具体的には、アートNFTの取引とともに、NFTアートの著作権を譲渡することができるかという問題があります。

仮に、アートNFTの取引とともに、NFTアートの著作権が譲渡されると、アートNFTを保有する者が、NFTアートの著作権を取得することになります。

この問題については、アートNFTの取引を行うということのみをもって、当事者間でNFTアートの著作権を譲渡するという合意がなされたと考えることまでは、通常できないと考えられます。

そのため、原則として、アートNFTの取引を行い、アートNFTの保有をするに至った場合でも、NFTアートの著作権を取得するわけではないと考えられます。

ただし、NFTアートの著作権者が、他者との間でアートNFTの取引を行う場合、当事者間で著作権の譲渡に関する合意があれば、著作権を譲渡することは法律上禁止されている訳ではなく、可能であると考えられます。このように、理屈としては、アートNFTの取引と共に、NFTアートの著作権を譲渡することは可能です。

ただ、さらに進んで、NFTトークンの取引によってのみ著作権の譲渡を可能にするというような仕組みを実現するにはまだまだ現実的な問題があります。

例えば、NFTアートの著作権者が、他者にNFTアートの著作権を譲渡する旨の合意をしたとしても、アートNFTに関する取引は行われていないというようなケースも想定できます。このようなケースでは、アートNFTと著作権が一致しないこととなり、アートNFTを保有しても、著作権を取得できないという状況が生じることになります。

そのため、実務的な仕組みとしては、アートNFTの保有による著作権の取得を認めるのではなく、アートNFTを保有することにより、著作権の利用許諾を得るという仕組みが多く見られます。

この仕組みによれば、アートNFTの保有により、著作権の取得はできないものの、著作物の利用ができるというメリットを、アートNFTの保有者が得ることができます。

関連記事:アートNFTの「保有」と著作権の関係とは?

まとめ:NFT発行時の注意点

以上、本記事では、NFTの発行をお考えの事業者の方を対象に、NFT発行時の注意点や、NFTの保有・譲渡の法律上の意味について説明をしました。

NFTに関しては、法整備が十分でない側面があり、既存の法律では対応することが難しいケースもあります。NFTの発行をお考えの事業者の方は、専門的知識を有する弁護士に相談をすることをおすすめします。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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