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ブロックチェーンゲーム・NFTゲームにおける法律上の問題点は?景品表示法、賭博罪との関係を解説

ブロックチェーンゲーム

近年、ブロックチェーン技術を使ってゲーム内のアイテムを売買したり、管理したりすることのできるブロックチェーンゲーム(NFTゲーム)が登場しています。

例えば、「Axie Infinity」というゲームは「プレーして稼ぐ」ことができるとして、一躍注目を浴びました。このゲームでは、プレイヤーはトークンなどの報酬を得ることができます。報酬はゲーム内で使うこともできますし、公開市場で取引することもできます。フィリピンではコロナ禍で減った収入を補うために、このゲームで日常生活の収入を稼いでいるという人もいます。このようにブロックチェーンゲームへの注目は高まっており、今後ますます広がっていくものと予想されます。

本記事では、ブロックチェーンゲームの詳細や、日本における法律上の問題点について解説します。

ブロックチェーンゲームとは

ブロックチェーンゲームとは

ブロックチェーン技術とは、データの塊をブロックとしてとらえ、そのブロックをチェーンのようにつなげてデータを保管するデータベース技術の一種です。

データの破壊や改ざんが極めて難しいという性質があり、ビットコイン等の暗号資産(仮想通貨)に利用されています。

ブロックチェーンゲームとは、このブロックチェーン技術を利用してゲーム内のアイテムやキャラクターを交換したり、売買したりすることのできるゲームを指します。

ブロックチェーンゲームは、NFTゲームとも呼ばれています。

従来のゲームでも、ゲーム内でコインやポイントを稼ぐことができましたが、それらはゲーム内でしか使えませんでした。

一方、ブロックチェーンゲームで得たアイテム(NFT)は、現実のお金に換えることができるという特徴があります。

ブロックチェーンゲームとNFT

ブロックチェーンゲームで取引されるアイテムやキャラクターは、そのアイテムやキャラクターそのもののデータではなく、データに紐づけられているNFTです。

NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で「代替不可能なトークン」という意味で、NFTマーケットで取引されています。

関連記事:NFTにはどのような法律の規制があるのか弁護士が解説

NFTは、データに紐づいている証明書のようなものです。デジタルデータは簡単に複製ができるため、唯一無二であるという証明をすることができませんでしたが、NFTを紐づけることにより、そのデータが唯一無二であることを証明できるようになったのです。

ブロックチェーンゲームと景品表示法

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)とは、消費者を守るため、実際の商品やサービスを偽った表示や過大な景品類の提供を規制する法律です。ここでは、ブロックチェーンゲームに関する景品表示法上の問題点について説明します。

景品表示法の不当表示にあたるケース 

不当表示には、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の二種類があり、それぞれ、「商品・サービスの品質、規格等内容についての不当表示」、「商品・サービスの価格等取引条件についての不当表示」と定義されています。

例えば、ブロックチェーンゲームにおいては、

  • 実際はそうではないにもかかわらず、NFTに紐づいているデジタルデータそのものの所有権がプレイヤーに移転するかのような表示
  • 実際はそうではないにもかかわらず、プレイヤーに多額のフィーが支払われるかのような表示

等は、不当表示に該当する可能性があります。

ブロックチェーンゲームの広告や利用規約等で、消費者を誤認させるような表示をしないよう注意しましょう

景品表示法の過大景品に該当するケース

景品表示法上の「景品類」とは、以下のとおり定義されています。

(1)顧客を誘引するための手段として、

(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する

(3)物品、金銭その他の経済上の利益

消費者庁|景品規制の概要

消費者庁ホーム>政策>政策一覧(消費者庁のしごと)>表示対策>景品表示法>景品規制の概要

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation/

と定義されています。

この景品類に該当する場合は、提供できる景品類の限度額等が定められており、限度額を超えた景品類を提供した場合、消費者庁はその景品類の提供を制限したり、禁止したりすることができるものとされています。

景品類は、「一般懸賞」、「共同懸賞」、「総付景品」の3つに分類されており、それぞれ限度額が異なります。

景品類の定義(2)「事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する」の「取引に付随して提供する」について、ブロックチェーンゲーム等のガチャは取引に当然含まれるものとみなされるため、「取引に付随して提供する」にはあたらないものとされています。

ただし、いわゆる「コンプガチャ」(2種類以上の文字・絵・符号等のついたアイテムを販売し、その組み合わせによって特別なアイテムを提供するもの)については、景品表示法上の「カード合わせ」にあたりうるとされ、禁止されています。

【参考】オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について(平成24年5月18日消費者庁通達)

また、有料のNFTを購入した場合に得られるログイン報酬や、ランキング上位者に与えられる報酬等については景品類に該当する可能性がありますので、個別具体的な検討が必要です。

ブロックチェーンゲームの大会が開催され、報酬としてNFTが提供される場合、その報酬を得るプレイヤーがプロと言えるような場合であれば「仕事の報酬等」とみなされるため、景品類には該当しないものと思われます。

関連記事:コンプガチャが違法な理由と景品表示法との関係性を詳しく解説

景品表示法違反のペナルティ

景品表示法違反が疑われる場合、消費者庁による調査が行われます。調査の結果、景品表示法違反が認められれば、行政指導や措置命令が出される可能性があります。措置命令に従わなかった場合は3億円以下の罰金が科されることがあります。

また、上記とは別に課徴金納付命令が出されるケースもあり、企業にとっては経済的・社会的損失が大きいと言えます。

ブロックチェーンゲームと賭博罪

ブロックチェーンゲームと賭博罪

賭博罪とは、刑法185条・186条により規制されている犯罪です。ここでは、ブロックチェーンゲーム・NFTゲームが賭博に該当しうるかどうかを検討します。

ブロックチェーンゲームは賭博に該当しうるか

賭博とは、

  • 2人以上の者が
  • 金品等財産価値のある物を賭けて
  • 偶然の勝敗により

その得失を争う行為と定義されています。

上記にあてはまった場合でも、「一時の娯楽に供する物(食事や飲み物等)を賭けたにとどまる」場合は賭博罪には該当しないものとされています。

賭博罪の成立要件は2人以上で行う場合とされていますので、1人でゲームを作って1人でプレイしている場合には該当しません。

財産価値がない物を賭けた場合は賭博罪の対象とはなりませんが、NFTに財産価値が認められる場合には、賭博罪の客体となりえます。

NFTゲームのプレイヤーが換金を目的としてNFTを得ている場合は、特に財産価値があると認められる可能性が高くなりますが、たとえゲーム内でしか金銭の取引ができないケースであっても、財産価値があるとみなされる可能性がありますので、注意が必要です。

「偶然の勝敗により」とは、プレイヤーが得ることのできるNFTがガチャによって決まるといった場合だけでなく、特定のゲームをクリアしたプレイヤーのみにNFTを与えるといったケースであってもあてはまる可能性があります。

「得失を争う」とは、勝負の際に利益を失うリスクを負う人が複数名いる状態を指します。

つまり、ガチャに費やした金銭等の価値を下回る価値しかないNFTが出てくる可能性のあるゲームは、この状態にあてはまると言えます。

一方、プレイヤーが費やした金銭等の価値を上回る価値を持つNFTが出てくることが約束されていたり、ガチャで得たNFTによってゲームを楽しめたりするようなケースでは、損失は生じていないと考えることもできるため、賭博罪には該当しない可能性があります。

なお、上述したように「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」場合は賭博罪にはなりませんが、NFTが「一時の娯楽に供する物」に該当するかについては、現時点で判例等はなく、統一の見解もないと言えるでしょう。

関連記事:eスポーツの賞金は賭博罪に該当する?法律を守って賞金提供する方法

賭博罪のペナルティ

賭博罪が成立した場合、50万円以下の罰金または科料に処されます(刑法第185条)。

また、常習として賭博をした者は、3年以下の懲役、賭博場を開張し、または博徒を結合して利益を図った者は、3ヶ月以上5年以下の懲役に処されます(刑法第186条)。

常習性がある場合は罪が重くなりますが、賭博行為を行ったのがたとえ1回だったとしてもゲームのプレイヤー数や売上利益等によっては常習性が認められる可能性がありますので注意が必要です。

まとめ:ブロックチェーンゲームの法律的な問題点についてのご相談は弁護士へ

ブロックチェーンゲームやNFTゲームは、従来のオンラインゲームとは大きく性質が異なる部分があります。

広告の表示や特典の付け方等によっては、法律的なリスクが発生する可能性がありますので、ブロックチェーンゲームの法的な問題点等についてご不明な点がある場合は、早めにITに詳しい弁護士へ相談するのがおすすめです。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。当事務所は暗号資産やブロックチェーンに関わるビジネスの全面的なサポートを行います。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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