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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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株式会社の資金調達の方法とは?第三者割当増資以外も網羅解説

株式会社の資金調達の方法とは?第三者割当増資以外も網羅解説

ベンチャー企業等の株式会社が資金調達を行う方法としてVC等の投資家から投資を受け自社の株式を発行するという方法がイメージされることが多いと思います。ただ、ベンチャー企業等が資金調達をする方法としては、投資を受け株式を発行するという方法以外にも様々な方法が存在します。そこで、本記事では、株式会社の資金調達の方法について説明をします。

考えられる資金調達の方法

考えられる資金調達の方法としては、大きく分けて以下の方法が考えられます。

  • 株式会社の資産を売却等することにより資金調達を行う方法(アセットファイナンス)
  • 金銭の融資を受けることにより資金調達を行う方法(デットファイナンス)
  • VC等の投資家から投資を受け資金調達を行う方法(エクイティファイナンス)
https://monolith.law/blockchain/newvirtualcurrency-by-sto

アセットファイナンス(Asset finance)について

アセットファイナンスのメリット・デメリットとは?

アセットファイナンスとは、ベンチャー企業等の株式会社が、株式会社の資産を売却等することにより資金調達を行う方法のことをいいます。アセットファイナンスにおいて売却することが考えられる資産として、不動産、有価証券、商品の在庫、クライアントに有する債権、機械設備、車両、著作権又は特許権等が考えられます。

アセットファイナンスのメリット

資金調達のコストを抑えることができる

アセットファイナンスのメリットとしては、まず、資金調達のコストを抑えることができるという点があげられます。
資産を売却する場合には、売却に関し大きくコストがかかるわけではないので、結果として資金調達のコストを抑えることができます。

企業価値を高めることが期待できる

次に、アセットファイナンスのメリットとして、賃借対照表上、対象資産を減らす代わりに現預金を増やすことができるという点があげられます。これにより、企業価値を高めることが期待できます。

アセットファイナンスのデメリット

資金に変える資産がない場合には行うことができない

アセットファイナンスのデメリットとしては、資金に変える資産がない場合には行うことができないという点があげられます。そのため、ベンチャー企業等で資産が少ない場合にはとることが難しい資金調達の方法といえます。

資金に変える資産の選別が難しい

また、資金調達を重視するあまり、本来は売るべきでない資産を売ってしまう可能性もあります。そのためアセットファイナンスを行う場合には、売却をする資産があるか、また、資産がある場合でも本当に売却してよい資産なのかという点をしっかり検討する必要があります。

デットファイナンス(Debt finance)について

デットファイナンスとは、銀行からの借入や社債の発行などによる負債(Debt)によって資金の調達を行うことをいいます。シンジゲートローンや私募債の発行もデットファイナンスの一例といえます。

デットファイナンスのメリット

デットファイナンスのメリットとしては、以下の点が考えられます。

持株比率の変動等が生じないので経営権への影響がない

後で説明をするエクイティファイナンスでは、株式の発行等が伴うため、持株比率の変動等が生じるなどして経営権に影響が生じることとなります。一方、デットファイナンスでは、負債によって資金の調達を行うため、持株比率の変動等が生じず、経営権への影響がありません。経営陣にとっては、資金調達に伴い、経営権が影響されず、自由な経営を行うことができますので、この点はデットファイナンスのメリットといえます。

与信につながる可能性がある

デットファイナンスは、負債によって資金の調達を行いますので当然株式会社は返済を行うことになります。デットファイナンスにより負うこととなった債務に対し、しっかりとした返済がなされていれば、当該株式会社はしっかり返済を行ってくれるという与信につながります。その結果、金融機関から大きな金額の融資を受ける際などに、審査が通りやすくなる可能性があり、これは株式会社にとってメリットとなります。

節税効果が期待できる

デットファイナンスでは、資金提供元に対して、利息を支払うこととなるのが通常です。デットファイナンスの際に支払う利息は、会計処理上、経費として処理することが可能なため、その分税金が安くなることが期待でき、税金面のみを考えれば株式会社にとってメリットといえます。

資金調達を行いやすい

まず、資金提供を行う側からみると、株式会社の与信から提供する資金の金額を検討できるため、大きなリスクをすることなく資金調達を行うことができます。
このように、資金提供を行う側のリスクが小さいため、資金提供の側で資金提供の意思決定が行われやすく、株式会社は資金提供者を容易に見付けることができます。そのため、デットファイナンスでは、資金調達が行いやすく、この点はデットファイナンスのメリットとなります。

デットファイナンスのデメリット

貸借対照表上の負債が増えてしまう

上記説明の通り、デットファイナンスにより節税効果が期待できますが、その反面として、賃借対照表上、負債が増えてしまいます。多かれ少なかれ、株式会社は負債を負っているものですが、負債の割合があまりにも多くなってしまうと、数字上、会社の経営がうまくいっていないように見えてしまいます。そのため、デットファイナンスにより、賃借対照表上の負債が増えてしまうという点は、デットファイナンスのデメリットといえます。

返済を行う必要性がある

後で説明をするエクイティファイナンスでは、株式会社は、融資ではなく、投資として資金提供を受けることとなります。そのため、配当の実施や会社の清算の際の残余財産の分配等は行う可能性があるものの提供を受けた金銭自体を返済する必要はありません。これに対し、デットファイナンスは、投資ではなく、融資となるため、提供された資金を返済する必要があります。この点は、株式会社にとってデメリットとなります。

利息を支払う必要がある

デットファイナンスによる負債に対しては、利息を付すことが通常です。そのため、調達した資金より利息分多く金銭を支払う必要があります。この利息を支払う必要がある点は、株式会社にとってデメリットとなります。

エクイティファイナンス(Equity finance)について

以下エクイティファイナンスについて説明していきます。

エクイティファイナンスとは、株式会社が新株を発行し、それをVC等の投資家に割当て、資金調達を行うことをいいます。エクイティファイナンスの主な方法としては、公募、株主割当増資、第三者割当増資及び転換社債型新株予約権付社債の発行などが考えられます。

エクイティファイナンスのメリット

利息を支払う必要がない

エクイティファイナンスの場合、資金の融資を受けるわけではないので、利息を支払う必要がありません。利息の支払いが伴う場合、株式会社としては割高な資金調達となる可能性があります。そのため、利息を支払う必要がないという点は、エクイティファイナンスのメリットといえます。

返済をする必要がない

エクイティファイナンスの場合、資金の融資を受けるわけではないので、調達した資金を返済する必要がありません。資金を返済する必要がないことから、株式会社は資産を保有することができ、これはエクイティファイナンスのメリットといえます。

資本が増えるため財務体質を強化することができる

デットファイナンスの場合、賃借対照表上、負債が増えてしまうことは上で説明したとおりです。エクイティファイナンスの場合には、調達した資金は株式会社の資本となりますので、財務体質を強化でき、経営がうまくいっている会社にみえます。これにより、取引先や金融機関等からの会社に対する信頼感を得ることができます。そのため、財務体質の強化は、エクイティファイナンスのメリットといえます。

エクイティファイナンスのデメリット

経営権への影響がある

エクイティファイナンスの場合、VC等の投資家に対し、株式の発行等を行う必要があります。そうすると、それにあわせて、持分比率が変更され、経営権へ影響が及ぶこととなります。これは、エクイティファイナンスのデメリットといえます。

資金調達を容易に行えない可能性がある

エクイティファイナンスによる資金調達の場合、資金の提供をする側は、融資ではなく投資として金銭を提供することとなります。そうすると、投資におけるリスクを考慮する必要が生じますので、リスクを考慮し、容易に資金提供を行わないことが考えられます。その結果として、資金の提供を受ける側としては、資金調達を容易に行えなくなる可能性があり、その点が、エクイティファイナンスのデメリットとなります。

まとめ

以上、株式会社の資金調達の方法について説明をしました。株式会社にとって、キャッシュフローは非常に重要な問題です。そこで、本記事で紹介した資金調達の方法を適切に選択し、資金調達を行うことが重要となります。それぞれの資金調達の方法には、メリット・デメリットが存在しますので、それぞれの資金調達の方法のメリット・デメリットにつき、しっかりと理解しておくことが重要です。資金調達の方法につき不安がある株式会社の経営者の方は、弁護士等の専門家に相談するようにしてください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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