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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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インターネット上の情報はどこまで利用可能?ネット上の著作権について解説

インターネット上の情報を収集し、プリントアウトしたり、プリントアウトしたものの複製を企業内で作成して配布したりすることは許されるのでしょうか。また、その情報をプリントアウトしなくても、企業内イントラネットに掲載することやスクリーン投影する行為は、許されるのでしょうか。

ここでは、インターネット上の情報の利用と著作権について、解説します。

インターネット上の情報と著作物

インターネット上の情報も、著作権法第2条に定める「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であれば著作物に該当します。

したがって、これらの情報について複製等の利用を行う場合には、個人の私的使用の目的での複製(著作権法第30条)や引用(著作権法第32条)などの権利制限規定に該当する場合(私的複製や教育機関での利用等)などを除いては、原則として著作権者や著作隣接権者の許諾が必要となります。

ただし、ニュース記事のようなものでも、事実を伝えるにすぎないごく短いニュースや死亡記事など、誰が書いても表現に差が出ず、著作物性が認められない情報(著作権法第10条第2項)や、憲法や法令、行政機関などが発する告示、訓令、通達や、裁判所の判決などは著作物であっても保護の対象にならない(著作権法第13条)ので、そのような情報の利用行為が著作権法上で問題となることはありません。

インターネット上の情報のプリントアウト等

インターネット上の情報に著作物性が認められる場合には、これらをプリントアウトすることは、回覧用の1枚だけであっても、複数枚であっても、下記の「有形的に再製」するものといえるので、複製に当たります。

著作権法第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

15 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
(略)

プリントアウトするわけではなくても、当該の情報を企業内の本支店間共通のイントラネットの掲示板に掲示する場合には、多数の者が見る可能性があるので、複製だけでなく下記の公衆送信(著作権法第2条第1項第7号の2)に当たる可能性があります。

著作権法第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

7の2 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

また、多数の人に閲覧させるために、インターネット上の情報をPCに接続したプロジェクターなどを使ってスクリーンに投影したり、大画面モニターに映したりする行為は、上映(著作権法第2条第1項第17号)又は公衆伝達(著作権法第23条第2項)に当たるおそれがあります。

このように、インターネット上の情報を利用する行為は、著作権法上の複製、公衆送信、上映又は公衆伝達等に該当する可能性があるので、これらの利用行為については、著作権法の定める権利制限規定に該当する場合でない限り、権利者の許諾を得る必要があります。

著作権利者による許諾

著作権利者が許諾すると明示している場合には、著作権等の侵害の問題は生じません。これに対し、著作権利者がサイト上で複製、公衆送信等を禁じると明示している場合には、複製、公衆送信等の禁止の意思は明らかですから、権利制限規定の適用がない限りは、プリントアウトを行ったり、イントラネット掲載等を行ったりすることは基本的に許されないと考えられます。

問題となるのは、著作権利者の明示的な許諾が認められない場合でも、黙示の許諾が認定できる場合です。この場合は著作権等の侵害にはならず、著作物の内容や利用行為の態様等によっては、権利者の黙示の許諾が認められる場合もあるとされています。

例えば、インターネット上の情報利用に関しては、著作権利者が、誰でもが無償で自由にアクセスできるサイト上へ情報を掲示し、当該サイトにアクセスする者全てが自由に閲覧することを許容している場合はどうでしょうか?この場合は、サイト上の情報を紙面上で閲覧するためにプリントアウトするという複製行為や、プロジェクターでスクリーンに投影したり大画面モニターに表示する行為は、これらを禁止するという意思表示がない場合には、著作権利者から黙示の許諾があると考えられます。

ニュース記事や論文なども、著作権利者が、誰でもが無償で自由にアクセスできるサイト上へ情報を掲示した場合には、当該サイトにアクセスする者全てが自由に閲覧することを許容しています。そのため、サイト上の情報をディスプレー上ではなく紙面上で閲覧するためにプリントアウトするという複製行為や、スクリーンに投影する等の行為については、これらを禁止するという意思表示がない場合には、著作権利者から黙示の許諾があると考えられます。

ですが、無償でインターネットにアクセスして閲覧できる場合であっても、ニュース記事や論文などをプリントアウトして複製し、これを販売するといった行為、資料として営業活動の一環として社外で配付するといった行為、有料での閲覧に供するためにインターネット上の動画等をスクリーンに投影する行為などは、権利者の予測の範囲を超えるものであるとして、黙示の許諾の範囲にはないとみなされます。

また、有料サイトや会員限定サイトの情報をプリントアウトしてコピーを複数作成して配布する行為、社内でメール配信する行為、不特定又は特定多数人の閲覧に供する行為等は、通常利用契約で禁止されていることが多いと考えられます。明示的な禁止条項がない場合でも、本来有料である利用を無償で利用されることについては、黙示の許諾はないと考えられます。

もちろん、インターネット上の情報が著作権利者に無断で掲載されたものである場合は、その掲載自体が著作権や著作隣接権の侵害であるため、当該情報の利用が黙示的に許諾されていることはあり得ず、著作権等を侵害することになります。

ネット掲示板の書き込みや投稿動画・画像の二次利用

ウェブサイトの管理者や第三者が、掲示板の書き込みや投稿された動画・画像を二次利用したい場合には、権利者の許諾が必要となります。

ネット上の掲示板に書き込みをしたり、画像や動画を投稿したりしたという事実をもって、書き込みや投稿した画像・動画の二次利用についてまで許可したとはみなされません。また、投稿という行為により、著作権が放棄されたと考えることはできません。

ただし、書き込みや画像・動画が投稿される掲示板等に、事業者による二次利用の利用規約が定められており、この規約につき拘束力が認められる場合には、当該二次利用に関する許諾があるとみなされる可能性があります。

二次利用と著作権

著作物性の判断について、投稿画像・動画等の著作物性については特に問題はないので、無断転載は、著作権侵害となります。

一方、ネット上の掲示板の書き込みについては、その「創作性」の判断が問題となりえます。過去には掲示板管理者による書き込みの利用について争われた事例があります。

ホテル利用者がホテル選びをする際に役立つことを目的とした、ホテルと観光に関する質問及び読者の回答を掲載していた「ホテル・ジャンキーズ」という名称のホームページの管理者と出版社が被告となりました。原告となったのは、ホームページの投稿者11人で、掲示板に投稿された文章の一部を複製(転載)して書籍を作成し、出版、販売頒布した被告の行為に対し、出版等の中止及び損害賠償金の支払などを請求しました。

被告である管理者側は、ネット上での掲示板への書込みは多くの場合対価が得られないような程度の内容のものが大部分であると主張しました。さらに、そもそも著作権法が予定する著作権は、創作者が、これは自分の創作した意見表明である、と世間に明言して、広く不特定多数の者に対して権利を主張するとともに責任をも負う仕組みであって、自らの正体を隠して発言するインターネットにおける匿名の発言にはなじまない、と主張しました。

一審原告勝利を受けた控訴審では、裁判所は、著作権による保護の範囲を不当に限定してしまうことは表現の保護のためには不十分であるとして、

著作物性が認められるための創作性の要件は厳格に解釈すべきではなく、むしろ、【強調】表現者の個性が何らかの形で発揮されていれば足りるという程度に、緩やかに解釈【強調】し、具体的な著作物性の判断に当たっては、決まり文句による時候のあいさつなど、創作性がないことが明らかである場合を除いては、著作物性を認める方向で判断するのが相当である。

東京高等裁判所2002年10月29日判決

とし、一審で「文章が比較的短く、表現方法に創意工夫をする余地がない」等として著作物性を否定した部分も含め、より幅広く著作物性を認めました。匿名で行われたものであることについては、インターネット上の書込みに限らず、他の分野での表現についてもいえることであるとし、著作物性を肯定する妨げにはならないとしています。

掲示板への書き込みや投稿サイトの投稿画像・動画については、あらかじめ掲示板に行われた書き込みの二次利用に関する規約を定めているような場合において、サイト運営者と利用者の双方に客観的に見て合意内容に拘束される意思が認められ、サイト運営者と利用者の間に二次利用に関する契約関係が成立するなら、二次利用規約の定めに従い、書き込みや投稿動画や画像を利用することができることになる、と考えられます。

まとめ

インターネット上の情報の利用には、慎重であるべきです。

書き込みや投稿画像・動画の利用行為は、それらに著作物性が認められない場合は著作権等を侵害することにはなりませんが、緩やかに解釈されて、広く認められています。また、掲示板への書き込みや画像・動画の投稿は、ハンドルネームなどの匿名でなされることが多いのですが、匿名であるからといって、著作物性が否定されるわけではないことには、注意が必要です。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、著作権をめぐる知的財産権は注目を集めており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所では知的財産に関するソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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