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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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悪質な転売ヤーにどう対処する?専門家が解説する5つの対策

昨年の新型コロナウィルス感染拡大の第一波の最中、マスクの品不足に付け込んで高額な価格でマスクを転売する人達が現れました。中には当時500円前後で販売されていた1箱50枚入の商品が10倍近い金額で販売されることもありました。

この頃から希少性のある商品や品不足の商品を事前に買い占めて、高額な販売価格で転売し大きな利益を得ている人たちを「転売ヤー」と呼ぶようになりました。

自分が購入したものを転売する行為自体は違法ではありませんし、ヤフオクやメルカリで大勢の人が当たり前のように転売を行なっています。ただし、一般消費者の定価購入を妨害し、不正に商品を入手し転売する行為は悪質と言えます。

そこで今回は、悪質な転売ヤーの違法性とその対処法について詳しく解説します。

悪質な転売ヤーの事例

悪質な転売ヤーで多くみられるのは、転売商品の入手段階で行われている違法性の高い行為で、具体的には次のような事例があります。

  • 初回の商品に限り割引価格で販売する定期販売を利用し、初回分だけを安価で購入し転売、2回目以降の支払いは行わない行為
  • 「ひとり1点まで」という限定販売の商品を、バイトを雇ったり、ネットであれば複数のアカウントを作ったりして多数購入し転売する行為
  • 規約等で「転売禁止」とされている商品を、転売目的を隠して購入し転売する行為

このように、悪質な転売ヤーの行為にはさまざまな手法が登場してきていますが、今回は最近増加している「定期購入における初回購入割引を悪用した転売」について、その違法性及び対処方法について考えてみたいと思います。

初回購入割引を悪用した転売とは

定期購入を申し込んだお客様に対し、初回の商品に限り割引価格(ときには無料)とする特典を利用し、初回分を安価で購入しクレジットカードで決済。

しかし、2回目以降は登録されたクレジットカードで決済が出来ないようにして、定期購入は行わずに初回分のみを割引価格で購入するというような悪質な手口です。

これを、複数のアカウントで繰り返し行い多数の商品を安価で購入し転売するもので、販売者が定期購入契約に従い2回目以降の代金を請求しようとしても、偽名やうその電話番号などが登録してあり連絡が取れないことが多々あります。

また、商品の送付先住所は、下記のように同じ住所に対し記載方法を変化させて異なる住所のように見せています。

  • ○○丁目○○番地〇〇号
  • 〇〇丁目〇〇番地−〇〇
  • 〇〇丁目−〇〇−〇〇号
  • 〇〇丁目−〇〇−〇〇

このようなケースは、転売行為というよりも転売する商品の購入段階において、販売者を欺いて初回購入割引を利用する「詐欺罪」や連絡を取るために従業員に負担をかけ業務を妨げた「偽計業務妨害罪」などに該当する可能性があります。

刑法 第246条(詐欺)
1. 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2. 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法 第233条(信用毀損及び業務妨害/偽計業務妨害罪)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

このような悪質な転売ヤーの被害に合った場合の対処法については次項以降で詳しく説明します。

悪質な転売ヤーへの対処法

詐欺、偽計業務妨害等で被害届を提出する

被害届は、犯罪によって被害を受けたことを管轄の警察署や最寄りの交番に提出する届出のことで、口頭によって行うこともできます。

犯罪捜査規範 第61条(被害届の受理)
1. 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
2. 前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第六号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。

本ケースのような場合には、販売者は悪質な転売ヤーとの面識は無く連絡が取れないことから、残金の支払いや損害賠償などを求める場合には悪質な転売ヤーを見つけ出し逮捕しなければなりません

しかし、被害届の場合には、捜査するかどうかは警察の判断となるため、被害が軽微であったり、犯罪を裏付ける証拠を得るのは難しいと判断したりすると被害届を受理してもらえない、あるいは受理しても動きが悪い可能性があります。

詐欺、偽計業務妨害等で刑事告訴を行う

被害届と異なり、「刑事告訴」を受理すると警察には捜査義務が発生します。捜査とは、犯人の特定や家宅捜索などによる証拠の収集、その他犯罪の立件に必要な活動のことで、被害の程度や悪質の度合いによっては選択肢の一つになります。

刑事訴訟法 第241条
告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

犯罪捜査規範 第63条(告訴、告発および自首の受理)
司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない
司法巡査たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に移さなければならない。

刑事告訴は被害届と同様に書面でも口頭でも行うことができ、原則として管轄区域外の警察に対して行うことは可能です。

しかし、実際には適切な捜査を行うためには次のいずれかの場所を管轄する警察署に提出することをおすすめします。

  • 実際に被害が発生した場所
  • 被害者の居住地
  • 加害者の居住地

刑法 第242条
司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

警察には告訴状を受理する義務がありますが、被害が軽微だったり、加害者の情報が少なかったりすると色々な理由をつけて受理してもらえない可能性もあります。ただし、法律の専門家である弁護士に告訴状の作成を依頼すると受理してもらえる可能性が高くなります

被害届と告訴状の違い

「被害届」は、犯罪で被害を受けたことを警察(捜査機関)に知らせるものですが、「告訴状」は犯罪で被害を受けたことを警察(捜査機関)に知らせ、犯人の処罰を求める手続きになります

刑事訴訟法 第242条
司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

刑事訴訟法 第260条
検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。

告訴状を受理すると、警察は速やかに調査を行い告訴に関する書類や証拠物を検察に送付しなければなりません。さらに検察官は起訴又は不起訴の処分に関し速やかに告訴を行なった被害者に通知する義務が発生します。

悪質な転売ヤーに対して正式な捜査や処罰を求めるのであれば刑事告訴は有効な手段です。ただし、損害賠償の請求については示談交渉や民事訴訟などの手段によらなければなりません

当該住所に弁護士名義で警告書を送る

悪質な転売ヤーから詐欺又は偽計業務妨害の被害を受けた販売者が、自分の名前で警告書を相手に送りつけても正式なものと受け取られない可能性があります。

そこで、弁護士名義の警告書を内容証明郵便で発送すれば相手が受領した警告書の内容は日本郵便(株)が証明してくれ、弁護士の言葉で相手の行為が違法であること及び法律に則った正当な要求事項を伝えることは、相手に与えるインパクトの大きさが異なります

しかし、違法であることを知りながら詐欺行為などを行う悪質な転売ヤーは、警告書が送られると警察の捜査があるかもしれないと商品の受け取り場所などを変更してしまうかも知れません。

賃貸マンションの場合、管理会社に居住者の氏名を照会する

一般にマンションの管理会社は入居者の情報を第三者に開示することはありませんが、弁護士法で定められている「弁護士会照会」という制度を利用すると、悪質な転売ヤーの本名などの情報を得られる可能性があります

弁護士法 第23条の2(報告の請求)
弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
弁護士会は、前項の規定による申出に基づき、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

この場合、弁護士が直接マンションの管理会社に情報開示を求めるのではなく、所属弁護士会に申し出て審査を受け必要と認められたときに当該弁護士会がマンションの管理会社に対し情報開示を求めることになります。

この制度は、インターネットでの誹謗中傷に対しサイト管理者に投稿者の情報を求める場合にも利用されており、本件の場合にも有効な手法の一つと考えられます。

「弁護士照会」について詳しく知りたい方は下記記事にて詳述しています。

探偵に調査を依頼する

探偵への依頼は、被害届や刑事告訴などのように受理されるかどうか分からない、あるいは受理されても動きが悪いなどの懸念は無く、依頼料の支払いによって調査がスタートできるところが大きなメリットです。

特に損害賠償請求に必要な住民票の「指名」及び「住所」に絞って調査する場合、選択肢の一つになります。しかし、費用負担や必ず調査結果が得られる保証はなくリスクのある選択でもあります

特に、最近では詐欺被害者をターゲットに探偵を名乗る詐欺業者が増えていることから、利用する場合には十分注意が必要です。

まとめ

悪質な転売ヤーの事例、及び「初回購入割引を悪用した転売」とそれに対する次の「5つ対処法」について解説してきました。

  • 詐欺、偽計業務妨害等で被害届けを提出する
  • 詐欺、偽計業務妨害等で刑事告訴を行う
  • 当該住所に弁護士名義で警告書を送る
  • 賃貸マンションの場合、管理会社に居住者の氏名を照会する
  • 探偵に調査を依頼する

インターネットの普及で誰でも、どこでも、気軽に商品を入手し転売できるようになったことから、悪質な転売ヤーの出現は後を立ちません。

定期販売を採用している事業者が今回ご紹介した対処法を実施する場合、自分だけで判断せずに専門的な法律知識と経験豊富な法律事務所に早めに相談し、どのような対処法が適しているのかアドバイスを受けることをおすすめします。

最近話題になっているチケットの違法転売について詳しく知りたい方は下記記事にて詳述しています。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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