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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

ゲームアプリ運営における「資金決済法」「景品表示法」の法的問題点とは

資金決済法

オンラインゲームの国内市場規模は2020年には約1兆5千億円と推計されています。中でも成長著しいのがスマートフォンのゲームアプリです(「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」)。

オンラインゲームは、業界の成長が期待される伸びしろのある産業であり、その分消費者トラブルに対する法整備も進んできています。

この記事では、ゲームアプリを運営する事業者が特に知っておくべき「資金決済法」と「景品表示法」における3つの法的問題について解説します。

ゲームに関して知っておくべき3つの規制

オンラインゲーム事業では、ゲームを有利に進めるためのアイテムやレアキャラなどをユーザーに購入させるため、ゲーム内通貨を発行することがあります。

これはオンラインゲーム事業で収益化するために有効な方法ですが、ゲーム内通貨を発行するには以下の法的問題に注意が必要です。

  • ゲーム内通貨やアイテムへの規制(資金決済法)
  • ゲーム内の景品の金額に対する規制(景品表示法)
  • ゲーム内の表示方法に対する規制(景品表示法)

ユーザーがゲーム内のアイテムなどを購入するためには、通常あらかじめゲーム内通貨等を購入します。そのゲーム内通貨が資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するかどうかは、ゲーム事業者にとって重要な問題です(資金決済法第3条)。

また、「このアイテムを買ったらレアキャラプレゼント」というように、アイテム購入という取引に付随して提供されるプレゼントの金額は、景品表示法の上限規制に従わなければなりません。

景品表示法による規制は、ゲーム内のユーザーに対する誇張表現にも及びます。消費者に誤認を抱かせる誇張表現には、消費者庁から再発防止策を命じられたり、ときには課徴金納付を命じられることもありえます(景品表示法第7条、第8条)。

ゲーム内通貨やアイテムへの規制

ゲーム内通貨やアイテムへの規制

オンラインゲームでは、ゲーム内で通貨のように使えるコインやポイントを、ユーザーがあらかじめ購入する仕組みが設けられることがあります。この仕組みは、ゲーム事業者の収益化手段として有効な方法です。しかし、ゲーム内通貨が資金決済法上の規制を受けるかどうかは、事業者にとって非常に大きな問題となります。

ゲーム内通貨やアイテムが「前払式支払手段」にあたるか

ユーザーが利用するゲーム内通貨が「前払式支払手段」に該当すると、資金決済法による規制を受けます。

「前払式支払手段」とは、商品券やビール券のように、利用者が前払いした金額を元に発行され、通貨の代わりに使用される有価証券です。

ゲームという仮想空間の中での通貨が、前払式支払手段に該当する要件は以下の3つです。

  • 価値の保存:金銭等の財産的価値が記載・保存されていること
  • 対価発行:対価を得て発行されること
  • 権利行使:代金の支払等に使用されること

たとえば、「100コイン」や「50ポイント」のように金額または数量が記録されるもので、それがユーザーが前もって払った現金などの対価によって得られるものであり、ゲーム内のアイテムと交換できるという機能をもつのであれば、「ゲーム内通貨」は、前払式支払手段であるといえるでしょう。

前払式支払手段の規制

ゲーム内通貨が資金決済法上の前払式支払手段にあたる場合、以下の3つの義務が発生します。

  • 表示義務
  • 供託義務
  • 行政庁に定期的に報告書の提出

前払式支払手段に該当すると、内閣府令で定められた一定情報をサイト内等に表示する義務を負い、行政庁に定期的に報告書を提出、その監視を受けます。

事業者にとって最も重要な問題は、供託義務です。資金決済法第14条では、基準日において、前払式支払手段の未使用残高が1,000万円を超える場合、「発行保証金」として、未使用残高の2分の1を最寄りの法務局に供託することが義務づけられているのです。

前払式支払手段による規制の問題点と回避方法

ゲーム内通貨が前払式支払手段に該当する場合に負う「供託義務」はユーザーを保護するための制度です。仮に、会社の倒産などでサービスが突如終了した場合、購入したゲームコインなどが使える場所・機会がなくなってしまいます。となると、消費者はあらかじめゲーム内通貨に変換しておいた現金分の商品を手に入れられなくなってしまいます。

そうしたリスクからユーザーを保護するために、前払式支払手段の発行者には供託金を支払う義務が設けられています。もしものときは、この供託金から消費者に対してお金が戻されます。ただし、この供託義務はゲーム事業者にとっては大きな負担となります。発行保証金としてキャッシュが凍結されてしまう状況は、企業にとっては死活問題になりかねません。

資金決済法第4条第2項では、「発行の日から政令で定める一定期間内に限り使用できる」ものを、前払式支払手段に対する規制の適用除外としています。資金決済法施行令第4条2項によると、その期間は6ヶ月です。つまり、ゲーム内通貨やポイントの有効期限を6ヵ月以内に設定すれば、発行保証金の供託による資金凍結を回避できます。

ゲーム内の二次コンテンツは「前払式支払手段」に該当するか

いわゆる「二次コンテンツ」が、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当することも考えられます。

二次コンテンツとは、ゲーム内の通貨を使って購入するアイテムや二次通貨などです。これが「前払式支払手段」の要件に該当するなら、ゲーム内通貨と同じく供託義務が発生するのではないかという問題があります。

2016年には、無料通信アプリ内パズルゲームの二次コンテンツである「宝箱の鍵」が、資金決済法における前払式支払手段に該当すると関東財務局より判断された事例がありました。「宝箱の鍵」は、ゲーム内に登場する「宝箱」を開けることができるアイテムで、宝箱にはゲームを有利に進めるためのさまざまなアイテムが入っていました。なお、この「宝箱の鍵」は当該アプリ内の通貨「ルビー」で購入されていた二次コンテンツでしたが、この事例では、「宝箱の鍵」が前払式支払手段に該当するとして、事業者に供託義務が発生しました。

ただし、供託義務という重い負担が企業に課せられるにもかかわらず、二次コンテンツの前払式支払手段該当性の明確な基準は示されていません。

ゲーム内の景品の金額に対する規制

ゲーム内の景品の金額に対する規制

ゲーム内では、ユーザーに対するプロモーションとして、プレゼント企画を実施することがあります。このプレゼントが景品表示法の「景品類」に該当する場合には、プレゼントの価格の上限規制が適用されます。

ゲーム内でのプレゼントが「景品類」にあたるか

ゲーム内のプレゼント企画が「景品類」にあたるのは、以下の要件を満たした場合です。

  • 顧客を誘引するための手段として提供される
  • 商品やサービスの取引に付随して提供される
  • 物品、金銭その他経済上の利益である

たとえば、「何月何日にこのアイテムを購入するとレアキャラをプレゼント」というプレゼント企画を打った場合、「アイテム購入」という取引と引き換えに「レアキャラプレゼント」という別の経済的利益を提供していると考えられ、「景品類」にあたります。

「景品類」にあたる場合に受ける規制

偶然性の要素がなく、取引に付随して提供される景品類を「総付景品」といい、前項の「レアキャラ」がこれにあたります。

総付景品は、以下のような限度額規制を受けます。

  • 取引金額が1,000円未満であれば景品の上限額は200円
  • 取引金額が1,000円以上であれば景品の上限額は取引価格

この限度額基準によると、ゲーム内で2,000円のアイテムを購入したユーザーに対して提供されるレアキャラは、400円以内にする必要があります。

ただし、特定のアイテムをコンプリートすることで別のアイテムを入手できる仕組みの、いわゆる「コンプガチャ」は、金額にかかわらず提供そのものが禁止されています。

参考: オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について |消費者庁
関連記事:コンプガチャが違法な理由と景品表示法との関係性を詳しく解説 – モノリス法律事務所

ゲームの表示方法に対する規制

景品表示法は、ゲーム内での表示方法に対する規制も設けています。

大げさな表現で実態より優れているように見せかけたり「今買わなければ損」とユーザーの購入意欲をあおる表現は、以下のように景品表示法の規制を受けます。

実態より良く見せる「優良誤認表示」や「有利誤認表示」

ゲーム内の表現で、実際よりも優れている、または有利であるとにユーザーが誤解するおそれがある「優良誤認表示」や「有利誤認表示」は、景品表示法により規制されています。

2018年には、レアキャラ出現率が0.333%しかないにも関わらず、3%と表記をしたことが「有利誤認表示」にあたるとして、消費者庁はアプリ配信元に対して再発防止を求める措置命令を出しています。

ただ「無料」と記載するのではなく、「ダウンロード無料」や、「アイテムには課金あり」などと、無料範囲や課金対象を明確する必要があるでしょう。

特別価格として表記する「二重価格表示」

期間限定の特別価格として表記する「二重価格表示」にも注意が必要です。

二重価格表示とは、通常は1,000円で売っているものを今回のみ100円にする際、特別価格であることを強調するために、1,000円を二重線で削除して100円と書き足すような表示方法です。これは非常に効果的な価格表示方法で、ゲーム以外でもよく利用されます。

ただし、実際に1,000円として販売していた実績がなければ、この表記は「景品表示法違反」にあたります。また、販売実績があったとしても、もとの価格で販売されていた期間や時期によっては違反と判断される可能性もあります。

公正取引委員会では、「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」の中で、元の価格の二重表記が認められる条件として、以下のような判断基準を示しています。

  • 販売時から遡って過去8週間のうち、元の価格で販売されていた期間が過半を占めること
  • 元の価格で販売された最後の日から2週間以上経過していないこと

まとめ:ゲームアプリをリリースする前には弁護士に相談を

オンラインゲームは、資金決済法上または景品表示法上の問題を十分把握したうえでリリースしなければなりません。

いずれの法にも、違反すれば行政処分もしくは課徴金の納付を命じられる可能性があります。特にゲーム内通貨が資金決済法上の前払式支払手段に該当すれば、多額の発行保証金を供託しなければなりません。

また、オンラインゲームに対する法規制には、未だ明確な基準が示されていない部分もあります。ゲームアプリをリリースする際には、行政庁の指針や実務上の事例などについて専門知識を持つ弁護士に相談しつつ進めていくことをおすすめします。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。昨今、スマホゲームの市場は急拡大し、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所はさまざまな法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:システム開発関連法務

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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