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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

ゲームと法律(後編):消費者契約法・特定商取引法・電気通信事業法

IT・ベンチャーの企業法務

ゲームと法律(後編):消費者契約法・特定商取引法・電気通信事業法

特に、オンラインゲームやゲーム内課金型のゲームが一般的となってきた昨今、ゲームの運営のためには、様々な法律との関係での適法性を検証し、運営が適法に行われている事を確認する必要性が出ています。本記事では、前編で、著作権法・景品表示法・資金決済法の解説をしてきましたが、後編にて、消費者契約法、特定商取引法及び電気通信事業法について説明をします。

消費者契約法について

消費者契約法とはどのような法律か

消費者契約法とは、消費者と事業者間で締結される契約関係等について規定された法律です。

消費者契約法の目的

消費者契約法の目的については、以下の消費者契約法第1条で規定されています。

(目的)

第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

簡単に言えば、消費者契約法は、消費者と事業者が契約を締結する際に、両者間に存在する情報の質・量や交渉力の格差に鑑み、当事者が公平な立場で契約を締結し、もって消費者の利益を保護することを目的とする法律です。

消費者契約法による規制内容

オフラインのゲームであれば、ゲーム会社が利用者のアカウント等にアクセスすることはできず、利用者に対して何らかの措置を講じることは難しいと考えられます。

一方、オンラインゲームの場合、利用者が、アカウントなどを作成し、ゲーム会社が提供するサーバ等にアクセスし、ゲームをプレイすることになります。そのため、オンラインゲームでは、ゲーム会社と利用者との関係が継続することとなります。

オンラインゲームのこのような特性から考えると、ほぼ全てのオンラインゲームで、利用規約等の規約が規定されていると思います。

ゲームをプレイする際に、利用規約をしっかり読む人は多くはないと思いますが、消費者契約法との関係では、この利用規約が問題となります。

ゲームの利用規約において、規約に違反した利用者に対し、アカウントの停止や削除などの制裁措置を講じることができる旨を定めた条項や、違約金や損害賠償に関する条項が規定されていることがあります。

制裁措置を講じることができる旨を定めた条項について

まず、制裁措置を講じることができる旨を定めた条項については、以下の消費者契約法第10条との関係が問題となります。

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

利用規約における制裁措置については、上記の条文のうち、特に、「その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」という部分との関係が問題となります。

かかる条項に抵触する場合には、制裁措置を規定した利用規約の条項が無効となる可能性があります。

ただ、判例では、制裁条項の無効は認められない傾向にあると考えられます(東京地裁平成22年1月27日判決、東京地裁平成21年9月16日判決など)ので、その点、留意する必要があります。

違約金や損害賠償に関する条項について

次に、違約金や損害賠償に関する条項についてですが、以下の消費者契約法第9条との関係が問題となります。

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)

第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

上記の消費者契約法第9条第1号では、違約金や損害賠償を規定する条項について、その額が、「当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」場合については、超える部分について無効となると規定されています。

そのため、ゲーム会社が、利用規約の中で、違約金や損害賠償に関する条項を規定する場合には、消費者契約法第9条との関係に留意しつつ、利用規約を定める必要があります。

特定商取引法について

特定商取引法とはどのような法律か

特定商取引法とは、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルが生じやすい一定の取引を類型化し、事業者が守るべきルールや、消費者の保護のためのルールを定める法律になります。

特定商取引法の目的

特定商取引法の目的については、以下の特定商取引法第1条に規定されています。

(目的)

第一条 この法律は、特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引をいう。以下同じ。)を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

特定商取引法の目的は、簡単にいえば、事業者による違法や悪質な勧誘行為等を防止し、もって消費者の利益を保護することを目的としています。

特定商取引法による規制内容

前述のように、最近のゲームでは、課金システムという方式が増えてきています。

オフラインのゲームでは、基本的に、ゲームを購入する段階にのみ消費者が金銭を払うこととなりますが、課金システムがあるオンラインゲーム等の場合、利用者は、ゲームを購入したり、ダウンロードしたりした後にも、金銭を支払うこととなります。

この課金システムについては、以下の特定商取引法第2条第1項第2号で規定される「通信販売」に該当するものと考えられます。

2 この章及び第五十八条の十九において「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。

オンラインゲーム等における課金が「通信販売」に該当する場合には、特定商取引法の規制を受けることとなります。

そして、特定商取引法との関係で注意すべき規制に、広告の表示(特定商取引法第11条)があります。

ゲーム会社は、原則として、以下の事項を表記する必要があります。

1.販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
2.代金(対価)の支払い時期、方法
3.商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
4.商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(その特約がある場合はその内容)
5.事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
6.事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
7.申込みの有効期限があるときには、その期限
8.販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額
9.商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
10.いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
11.商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件
12.商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容
13.請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
14.電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス

https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/

ゲーム会社が、特定商取引に基づく表記を行わない場合には、業務改善の指示(特定商取引法第14条)、業務停止命令(特定商取引法第15条)及び業務禁止命令(特定商取引法第15条の2)などの措置が講じられることとなります。

電気通信事業法について

電気通信事業法とはどのような法律か

電気通信事業法とは、電気通信サービスを用いて、何らかの事業を行う電気通信事業者を規制する法律のことをいいます。

電気通信事業法の目的

電気通信事業法の目的については、以下の電気通信事業法第1条で規定されています。

(目的)

第一条 この法律は、電気通信事業の公共性にかんがみ、その運営を適正かつ合理的なものとするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利益を保護し、もつて電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進することを目的とする。

電気通信事業法は、簡単にいえば、電気通信事業を発展させるとともに、電気通信を利用する利用者の利益を保護することを目的とする法律になります。

電気通信事業法による規制内容

最近のゲームは、前述のようにオンラインで行われるものが増えてきており、利用者間のコミュニケーションを図るために、チャットやメッセージの送受信機能が用意されているケースがあります。

ゲーム上で提供されるチャットやメッセージの送受信方法によっては、電気通信事業の登録・届出(電気通信事業法第9条、同法第16条)が必要となる可能性があります。

まず、「電気通信事業」とは、「電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業」をいうとされています(電気通信事業法第2条第4号)。

次に、「電気通信役務」とは、「電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいう」とされています(電気通信事業法第2条第3号)。

そして、電気通信事業を営もうとする者については、原則として、電気通信事業の登録・届出が必要となります。

ただ、ゲームの利用者間で行われるチャットではなく、掲示板などが利用され、不特定多数の利用者が閲覧できる状況で行われるチャットについては、ゲーム会社が、利用者同士が交流するための場所を提供しているに過ぎないと考えられますので、「他人の通信を媒介」するものとはいえず、電気通信事業に該当しないと判断される可能性があります。

その場合には、電気通信事業法で規定される登録・届出が不要となります。

そのため、ゲーム内でのチャット機能やメッセージの送受信機能を設ける場合には、電気通信事業法の適用があるかどうかについてしっかりと確認する必要があります。

まとめ

以上、前編・後編という形に分け、意外と知られていないゲームに関する法律について説明をしました。

ゲームについては、現在、急速に発展しているジャンルになりますので、その発展にあわせ、関係する法律も急速に変化することとなります。

また、ゲームの内容や態様が複雑になってきていることから、ゲームに関する法律も複雑になってきています。そこで、ゲームに関わっている企業や個人の方は、ゲームに関する正確な法律知識をしっかりと身に付けておくことが重要となります。

ゲームに関する法律については、本記事で説明をしたように、多くの法律についての法知識や専門的な判断が要求されますので、詳しい内容について、法律事務所に相談をするようにしてください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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