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eスポーツで賞金を稼ぐことは副業にあたる?所得の区分を含めて解説

eスポーツとは、コンピューターゲームやビデオゲームなどを使用して行う対戦をスポーツ競技としてとらえるものです。eスポーツ業界は、近年盛り上がっており、賞金制の大会も多く開催されています。中には、ゲームの賞金で生計を立てるプロゲーマーもいます。

それでは、eスポーツで賞金を得ている場合、副業とみなされ、就業規則などにより禁止されてしまうのでしょうか。本記事では、その点にお悩みの方向けに解説していきます。

eスポーツとは

eスポーツは、簡単に言えば、ビデオゲームの対戦をスポーツとしてとらえるものです。2018年2月、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)が設立され、「JeSU公認プロライセンス制度」が作られるなどして、eスポーツの振興がはかられています。

「JeSU公認プロライセンス制度」ができた背景として、eスポーツの大会の賞金が、景品表示法の規制の対象となるおそれがあったことが挙げられます。

賞金が「大会への出演」という「仕事の報酬等」として提供されるものであれば、景品表示法による規制の対象にはなりません。

そこで、eスポーツの大会の賞金が「仕事の報酬等」と認められる場合の判断基準について定めたのが「JeSU公認プロライセンス制度」です。

この制度により、賞金制大会が景品表示法の規制に引っかかるリスクが低くなったため、賞金制大会を開催しやすくなりました。

また、国内大会や国際大会なども数多く開催されており、eスポーツ人口は今後ますます増えていくことが予想されます。

参考:ライセンス|一般社団法人日本eスポーツ連合オフィシャルサイト

eスポーツの大会で賞金を得ている場合は副業にあたるのか

eスポーツの大会で賞金を得ている場合は副業にあたるのか

eスポーツの大会で賞金を得ている場合、副業にあたるのでしょうか。eスポーツで賞金を得ているといっても実態はさまざまです。

その実態に即して副業に当たるか否かを判断していく必要がありますが、そもそも、「副業」には明確な定義がありません。

詳細は後述しますが、会社員の場合は、法律により副業が禁止されているということはなく、勤めている会社の就業規則によって副業が禁止されている場合に問題となります

何を副業と判断するかは場合によりますが、所得区分も一つの判断基準となるようです。

eスポーツの大会で得た賞金には、税金が課され、確定申告を行わなければなりません。その際、所得区分が「一時所得」になっているのか「事業所得」になっているのかが、副業であるか否かを判断する基準の一つと言えます。

賞金を一時所得として確定申告している場合

オンラインゲームを趣味として、営利を目的とせず、休日に大会に参加してたまたま賞金を得た場合は、一時所得に該当する可能性が高いでしょう。大会の賞金が年間20万円以上の場合には、所得税の確定申告の対象になります。

賞金を一時所得として確定申告している場合は、単なる趣味と認められ、副業とはみなされない可能性が高いです。

賞金を事業所得として確定申告している場合

継続的に大会に出て賞金を得ている場合や、プロライセンスを取得している場合は、事業所得に該当する可能性が高いです。大会の賞金を年間48万円以上稼いだ場合に所得税の確定申告が必要となります。

会社員が、このように継続的に賞金を稼いだり、プロ選手として賞金を得ている場合には、回数にもよりますが、副業とみなされる場合が多いと思われます。

就業規則の副業禁止規定の効力

そもそも、副業を禁止する就業規則の規定には、法律的な根拠はあるのでしょうか。

実は、労働法や民法等労働に関連する法律では、副業を禁止する規定はありません。ただし、会社の「就業規則」で禁止又は制限されている場合があります。

また、公務員の場合は、「法律」によって禁止されています。

就業規則の副業禁止規定の効力

eスポーツが会社の就業規則で禁止されている副業にあたるかどうかの基準

裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように過ごすかは、基本的には労働者の自由であり、企業がその自由を制限することは許されないと考えられています。

副業の一律的な禁止については、小川建設事件の判例(東京地決昭和57年11月19日労働民例集33巻6号1028頁)においても「就業時間外は本来労働者の自由であることからして、就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性を欠く。」とされています。

では、どのような場合に就業規則違反とみなされるのでしょうか。判例によると以下にあてはまる場合、就業規則違反であると認められました。

  • 本業に明らかな支障をきたす場合(副業にあてる時間が長く、毎日深夜まで及ぶ場合など)
  • 企業秘密が漏洩し、守秘義務違反にあたる場合(同業他社で副業をする場合など)
  • 企業の名誉を損なったり、信頼関係を破壊したりする場合(反社会的勢力と関わるような副業をする場合など)
  • 競業により企業に不利益を与える場合(本業と同じ業種を副業として行っている場合など)

したがって、eスポーツで賞金を得ていた場合であっても、上記にあてはまらない場合は、副業禁止規定を適用して懲戒処分等を下される可能性は低いでしょう。

eスポーツが公務員の副業にあたるかどうかの基準

先述したように、公務員の副業については「法律」で禁止されています。なぜなら、公務員は国民全体の奉仕者として、職務の公正や中立性が求められているからです。国家公務員については、国家公務員法で、

職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

国家公務員法第103条1項

職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

国家公務員法第104条

と規定されており、許可がない限り副業は許されません。

地方公務員については、

職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。

地方公務員法第38条1項

と定められており、公務員は民間企業の従業員よりも副業に対する制限が厳しくなっています。

では、eスポーツは副業に当たるのでしょうか。

くり返しになりますが、eスポーツの大会で賞金を得ることが副業にあたるかどうかについては、明確な基準があるわけではありません。

賞金の額や賞金を反復継続的に受け取っているのかどうか、賞金の所得区分(一時所得または事業所得)などを総合的に見て判断していくしかないと言えます。

概ね、プロライセンスを保有しておらず、一度だけ賞金を受け取ったような場合については、副業にはあたらないでしょう。

eスポーツ選手としての活動が副業にあたるのかについてはいまだ判例がないため、今後裁判所がどのような判断をするのかに注目していく必要があります。

eスポーツの賞金を仕事の報酬として受け取る場合

先述したように、プロライセンスを有する選手が大会で賞金を得た場合、その賞金は「仕事の報酬等」であると認められます。

JeSU公認プロライセンス制度の目的のひとつは、eスポーツの選手が職業であると明確にすることであり、JeSU公認プロライセンスを有している選手は、「eスポーツのプロ選手」という職業に就いていることになります。

そのため、JeSU公認プロライセンスを所有している場合、eスポーツの大会で得た賞金は事業所得とされます。

海外でeスポーツの賞金を得た場合

海外でeスポーツの賞金を得た場合

近年では、eスポーツの大会が海外で開かれることも多くなっています。そこで、海外の大会で賞金を獲得した場合、課税制度がどのようになるのか解説します。

日本国内のeスポーツの大会で賞金を得た場合に日本で課税されることは分かりやすいと思いますが、海外の大会で賞金を得た場合はどうなるのでしょうか。

所得税法第5条1項において、日本の居住者は所得税を納める義務があるとして、所得が生じた場所が国内であるか海外であるかを問わず、すべての所得について日本で課税されます。

しかし、海外のeスポーツの大会で賞金を獲得した場合、その大会の開催地の国の法令によっては、賞金を獲得した国でも所得税が課税されてしまう、いわゆる二重課税になることがあります。

そこで、所得税法第95条には「外国税額控除」という制度が定められています。

この制度は、その年において外国の法令により所得税に相当する租税を納付した場合、一定額を限度として、外国への所得税納付額分をその年分の日本の所得税額から差し引くことができるというものです。

まとめ:eスポーツの賞金問題は弁護士へご相談を

eスポーツの大会で賞金を得ている場合、得ている賞金の額や確定申告の所得区分などを見て副業にあたるかどうかを判断されることとなります。

本業とは別に、eスポーツの大会で賞金を獲得する機会のある方は、副業として問題にならないか、懸念点をあらかじめ弁護士に相談するのもおすすめです。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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