弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-17:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

ドメイン名の取消または移転をめぐる裁判例

IT・ベンチャーの企業法務

ドメイン名の取消または移転をめぐる裁判例

ドメインは企業にとって非常に重要なものであり、自社名や商品名のドメインを他者に取得されてしまうと面倒なことになってしまいますが、これに対しては、ドメイン名の取消または移転請求という手段で対抗することが可能です。この裁判の仕組みや流れなどに関しては当サイト内の別記事にて解説を行っていますが、実際のところ、過去にはどのようなドメインに関して、どのような裁判が行われ、その裁判の中ではどのような法的判断が行われているのでしょうか。実際の判決文を見ながら、ドメインの移転請求を巡る訴訟での判断基準等について解説します。

https://monolith-law.jp/corporate/dmain-change-lawyer

gooドメイン名の登録移転

gooは、NTTグループがサービスするポータルサイトですが、このgooに関して、ドメイン名の登録移転が、裁判で争われました。ポップコーン社は1996年8月にJPNIC(社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)から「goo.co.jp」のドメイン名の登録を得ました。これに対して、NTT-X(後にNTTレゾナント)は、1997年2月に同様にしてドメイン名「goo.ne.jp」の登録を取得しました。

NTT-Xはドメイン名「goo.ne.jp」を使用して情報検索サイトを運営していましたが、ポップコーン社によるドメイン名「goo.co.jp」の使用が、出所の誤認混同を引き起こしていること、「goo.co.jp」を選択するとアダルトサイトに自動転送されること等を根拠として、2000年11月に工業所有権仲裁センター(現在は「日本知的財産仲裁センター」に名称を変更)に対して、ポップコーン社のドメイン名「goo.co.jp」のNTT-Xに対する移転を求める申し立てを行いました。

これに対して同センターは、2001年2月にNTT-Xの申し立てを認め、ポップコーン社に対して、ドメイン名「goo.co.jp」をNTT-Xに移転するよう命じ、ポップコーン社はこれを不服として、東京地方裁判所に、ポップコーン社がドメイン名「goo.co.jp」を使用する権利を有することの確認を求めて提訴したのです。

ドメイン名の移転請求の必要要件

この事件では、JPNICが定めたJP-DRP(ドメイン名紛争処理方針)に規定されている、ドメイン名の移転を請求するうえで必要とされる下記要件が具備されているか否かが、争点となりました。

  1. 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
  2. 登録者が、当該ドメイン名の登録についての権利または正当な利益を有していないこと
  3. 登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

NTT-Xが権利または正当な利益を有するか

まず、要件1のNTT-Xが権利または正当な利益を有するか否かが問題となりますが、NTT-Xは2000年4月から9月までだけでも約5億2000万円の宣伝広告費を投じてテレビコマーシャル、新聞広告、雑誌広告、バナー広告、イベント開催等を行い、多数の新聞、雑誌、ウェブページ記事、メールニュース等で紹介され、テレビ番組にも多数回にわたって取り上げられていました。また、株式会社日本リサーチセンターが発表しているインターネット上のサイトのアクセス率を示す指標である「Japan Access Rating」調査において、被告サイトは常に上位を占めており、被告サイトにアクセスされた実数である1日当たりのページビュー数も、サービス開始から5か月間で100万件を超え、2000年7月までに1450万件となっていました。

また、NTTグループが、goo関連事業から得た事業収入は、1999年に約11億6000万円、2000年上半期に約9億5000万円となっていますが、gooは検索サービス等の主要なサービスを無料で提供しているのですから、上記収入の大半は、サイト上の広告収入であることになります。これらの事実により、NTT-Xがgooドメイン名の権利または正当な利益を有することが認められました。

ドメイン名の類似性

ドメイン名はトップレベルドメインやセカンドレベルドメインを含めて一体として、情報発信・提供者のインターネット上における「住所」「氏名」を表しているものであり、セカンドレベルドメインが異なるものは、全く別の「住所」「氏名」を表す、全く別のドメイン名である、とポップコーン社は主張しました。

これに対し、裁判所は、確かにセカンドレベルドメインが異なるものは、別のドメイン名であるといえるが、ポップコーン社のドメイン名は、トップレベルドメインを構成する国別コードである「jp」部分と、セカンドレベルドメインを構成する組織の種別コードである「co」部分と、ドメイン名を使用する主体(ホスト)を示すコードである「goo」部分からなり、「co.jp」は、ポップコーン社ドメイン名がJPNICの管理するもので、かつ、登録者が会社であることを示しているにすぎず、多くのドメイン名に共通するものである。そして、ポップコーン社ドメイン名において主に識別力を有するのは「goo」部分であるから、ポップコーン社ドメイン名の要部は「goo」であり、「グー」と呼ばれるとしました。

一方、NTT-Xの商標1は、「GOO」とアルファベットの大文字で横書きし、その下部に「グー」と片仮名で横書きしたものであり、商標2は、「goo」とアルファベットの小文字で横書きしたものを図案化したものであるというように、NTT-Xの商標は、いずれも「グー」と呼ばれています。

裁判所はこれらの事実、またNTT-Xのサイトが著名であることを総合すると、ポップコーン社のドメイン名は、NTT-Xの商標、表示、ドメイン名と混同を引き起こすほど類似しているものと認められるとし、類似しているか否かの要件は、登録の先後や主観的な認識とは離れて客観的に判断すべきであるとしました。

ドメイン名の登録についての権利または正当な利益

「goo.co.jp」は、もともとカラオケ店営業を主たる業務としていたポップコーン社が、カラオケ客の集客のために、女子高生を対象とするコミュニティーサイトとして開設したウェブサイトのドメイン名であり、不正の目的をもって登録されたものではないことは、裁判所も認めています。

しかし、サイトへのアクセスは少なく、女子高生からのアクセスより、女子高生に興味を有する成人男性からのアクセスが多かったため、カラオケ店の売上げには結びつきませんでした。そこで、ポップコーン社は、原告サイトのコンテンツは従前の女子高生のコミュニティーサイトのままで、成人男性のアクセスを得る目的で、アダルトサイトにバナー広告を出すようになり、やがてより大きな利益を得るため、他社のアダルトサイトへ自動的に転送するように変更し、女子高生のコミュニティーサイトは見ることをできなくして、アクセス数に応じた利益の分配を受けるようになりました。

裁判所は、ポップコーン社の広告には、ポップコーン社の商号の表示はなく、「GOO!サポート及び問い合わせ先」として代理店名が表示されているにすぎず、そのほかにも、サイト又は本件ドメイン名とポップコーン社を結びつけて広告していた事実など、ポップコーン社が「goo.co.jp」又は「goo」の名称で認識されていたことを認めるに足りる証拠はないことをあげて、ポップコーン社が「goo.co.jp」又は「goo」の名称で一般に認識されていたということはできず、他にポップコーン社が「goo.co.jp」についての権利または正当な利益を有していると認めるに足りる事情が存するとは認められない、としました。

不正の目的で登録または使用されているか否か

裁判所は、ポップコーン社はgooが著名になる以前から継続していた「goo.co.jp」の使用態様を、gooが著名になった後に大きく変化させて転送目的のみに使用し、転送先サイトであるアダルトサイトを運営する会社から、アクセス数に応じた利益の分配を受けるだけになったものであって、ドメイン名のみを同じにする別個のサイトを開設したに等しいと判断しました。

また、「goo.co.jp」が自動転送をやめて、アダルトサイトであることを明示してリンクを張った転送先サイトについて、「goo.co.jp」からそのリンクをたどり転送先サイトにアクセスした者が1日当たり数十件であるのに対し、「goo.co.jp」の1日当たりのアクセス数が3万3400件であったということからすれば、アダルトコンテンツを目的として「goo.co.jp」にアクセスした者が多数いるとは認められず、「goo.co.jp」にアクセスした者の大半は「goo.ne.jp」と誤認混同したか入力ミスをしたかであると推認されるとし、ユーザーの誤りに乗じて商業上の利得を得ていたことから、

原告は、本件ドメイン名を被告サイトが著名になる前から使用していたものであり、被告は、本件ドメイン名の存在を知りながら、被告ドメイン名を取得し、誤認混同を生じるおそれを惹起したと主張するが、原告が本件ドメイン名を先に使用していたことや被告が本件ドメイン名の存在を知っていたことから直ちに原告による本件ドメイン名の使用が保護されることにはならず、先にドメイン名を使用していた者といえども、不正の目的で使用していた場合には、当該ドメイン名の使用が保護されないことがあることは、紛争処理方針に照らして明らかである。しかるところ、上記のとおり、原告には、不正の目的があったものと認められる。   

東京地方裁判所2002年4月26日判決

として、ドメイン名を不正の目的に使用しているものと認め、ポップコーン社の請求を棄却しました。

なお、この事件はその後ポップコーン社が控訴しましたが、東京高等裁判所は控訴を棄却し、ドメイン名「goo.co.jp」をNTT-Xに移転するよう命じた一審判決が確定しました(東京高等裁判所2002年10月17日判決)。ドメイン名の移転に関する紛争処理方針の適用をめぐっての最初の高裁レベルでの判決でした。

まとめ

ドメイン名の取消または移転請求には2つのルートがあり、本件はJPNICの認定紛争処理機関による紛争処理を受けたものでしたが、不正競争防止法に基づくドメイン名の使用差止等を求めた請求事例においても、ほぼ同じような要件で判断されています。どちらの場合にも、移転や取り消しを求められた側は、先取権を主張することになりますが、そのことだけをもって、ドメイン名を保有する権利を主張することは認められません。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る