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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

知的財産権の一つである意匠権とはどのような権利なのか

IT・ベンチャーの企業法務

知的財産権の一つである意匠権とはどのような権利なのか

特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権等からなる知的財産権のひとつである意匠権は、製品や商品のデザインについて、その独占権を認める制度です。

知的財産権の中でも、活用に取り組む企業が多い、意匠権について解説します。

意匠制度

製品や商品のデザイン、つまり「意匠」は競争力を高める一方で、容易に模倣の対象になってしまい、健全な産業の発展に支障をもたらします。そこで、新しく創作した意匠を創作者の財産として保護し、同時にその利用を図り、これにより意匠の創作を奨励し、産業の発達に寄与するために、意匠制度が定められました。

意匠法(目的)
第1条 この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

意匠権は、特許権、実用新案権、商標権、育成者権とともに、客観的内容を同じくするものに対して排他的に支配できる「絶対的独占権」のひとつです。
だから、意匠権を獲得すれば、そのデザインを独占的に使用でき、コピー商品、類似商品などの模倣品を排除することができます

意匠法の保護対象

意匠法の保護対象となる「意匠」とは、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいい、物品の「部分」のデザインも「意匠」に含まれます。また、2020年4月1日から、物品に記録・表示されていない画像そのものや、建築物、内装のデザインも、新たに意匠法の保護対象となりました。 意匠権は、デザインを保護する権利ではありますが、美術品などすべてのデザインを保護するものではありません。産業の発達を目的としているので、権利適用を受けるためには、以下の定義を満たしていなければなりません。

意匠法(定義等)
第2条 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

現在までに、様々な物品について意匠権が登録され、権利化されています。特許庁は意匠権で保護される物品のデザインを分類ごとに分けていますが、

  • 製造食品等(例:即席めん)
  • 衣類、身の回り品(例:手提げかばん)
  • 生活用品(例:掃除ロボット)
  • 住宅設備用品(例:扇風機)
  • 趣味娯楽用品(例:電気チェロ)
  • 事務・販売用品(例:ステープラー)
  • 運輸・運搬機械(例:電動二輪車)
  • 電子・通信機器(例:乗車券自動販売機)
  • 一般機器(例:デジタルカメラ)
  • 産業用機器(例:産業用ロボット)
  • 土木建築用品(例:マンホール蓋)
  • 基礎製品(例:シャワーヘッド)

と、されています。

意匠登録と要件

意匠権による保護を受けるためには、保護を受けようとする意匠について特許庁に意匠登録出願をし、意匠登録を受けることになります。所定の様式に基づいた書類を特許庁に出願し、審査を受けることになります。

意匠登録の主な要件

意匠登録の出願がなされると、特許庁は、出願された意匠が登録することができるものかどうかを審査しますが、主な意匠登録の要件は、次のようなものとなっています。

1.工業上利用性

意匠法上の意匠であるか、どのような用途に用いられるものなのか、形状は特定できるか、視覚に訴えるものであるか、同一のものを工業的な生産過程で大量生産できるかなどが審査されます。絵や彫刻のような美術品は量産できないので、工業デザインにはなりません。

2.新規性

今までにない新しい意匠であるか、出願前にそれと同一又は類似の意匠が存在しない、つまり新規性を備えている意匠である必要があります。

3.創作非容易性

新規な意匠であっても、創作性が低い、当業者であれば簡単に創作できる意匠と判断されたものは、意匠登録を受けることができません。

4.先願意匠の一部と同一又は類似でないか

先に出願され、登録された意匠の一部と同一又は類似する意匠は新しい意匠を創作したものとはいえないので、意匠登録を受けることはできません。ただし、先に出願された意匠の一部を構成する部分や部品の意匠であっても、同一創作者の出願であれば、先に出願された意匠の公報が発行されるまでは意匠登録を受けることが可能です。

5. 公序良俗を害するおそれがないもの

人の道徳観を不当に刺激し、羞恥、嫌悪の念をおこさせるものや、元首の像、国旗や皇室の紋章などのようにすでに知られたものは、意匠登録を受けることができません。

6.誤認惹起に相当しないもの

他人の業務に係る物品、建築又は画像と混同を生ずるおそれがあるものは、意匠登録を受けることができません。つまり、似たような意匠も登録不可ということになります。

7.機能確保のための形状でないこと

物品の機能を確保するために不可欠な形状若しくは建築物の用途にとって不可欠な形状のみからなるもの、又は画像の用途にとって不可欠な表示のみからなるものは、登録不可となります。意匠法は機能ではなくデザインを保護するための法律なのです。

8.一意匠一出願

意匠権の登録出願は、原則として「ひとつの意匠につき、ひとつの出願とすること」と定められています。ただし、複数の物品に関わる意匠であっても、一定の要件を満たしているものは「組物の意匠」として認められる場合があります。また、複数の物品等から構成される内装の意匠について、所定の要件を満たせば、ひとつの意匠として認められる場合があります。

9.先願主義

同一又は類似の意匠について複数の出願があった場合には、最先の意匠登録出願人の出願(同日のものはいずれか一方)のみが登録となります。

ただし、同じ人によって同じ日に出願された場合は、一つを本意匠とし、これと類似する意匠を関連意匠とすることで登録を受けることができます(「関連意匠制度」)。また、同じ人によって、最初に本意匠として選択した意匠(「基礎意匠」)の出願の日から10年を経過する日前までに出願された後の出願の意匠は、基礎意匠あるいは基礎意匠に係る関連意匠に類似するものであっても、後の出願の意匠を関連意匠とすることで登録を受けることができます(この場合、後の出願は2020年4月1日以降のものに限られます)

意匠登録の効果

企業が自社製品や自社商品について意匠権を取得することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

コピー商品や類似商品などの模倣品を法的な強制力をもって排除できる

意匠権も特許権と同様に独占排他権ですが、特許権の効力範囲は「特許発明の技術的範囲に属する発明」であるのに対して、意匠権の効力範囲は「登録意匠及びこれに類似する意匠」です。つまり、意匠権者は、登録意匠だけでなく、それに類似する意匠も独占実施することができるのです。

自社製品のデザインについて意匠権を取得しておけば、意匠権を侵害する模倣品に対して、意匠に基づき、

  • 模倣品の在庫、あるいは製造中の模倣品の強制的に廃棄させる
  • 模倣品の製造、販売、広告宣伝を中止させる
  • 模倣品の販売によって自社がこうむった損害の賠償を請求する

という権利を行使することができ、模倣品を排除することができます。

なお、意匠権は取得のためにおおよそ半年~1年程度かかるというデメリットがあるのですが、新規製品の発売が意匠の登録に間に合わないような場合には、「意匠登録出願中」と表示することにより、他社の模倣を未然に防止できます。

ブランディング戦略を進めることができる

自社商品のブランド化が可能となります。意匠権は、偽物やコピー商品など模倣品の排除だけでなく、ブランディングにも活用できます。デザインはブランドを支える重要な要素の1つであり、自社のデザインについて意匠権を取得することで、差別化することができ、商品を強力にアピールをすることが可能となります。

ベンツのような高級車のフロントグリルには、複数車種に共通したデザインが使われ、シリーズ化されていますが、これはブランディング戦略の一環といえるでしょう。

製品、会社の評判が向上する

意匠を取得できたということは、そのデザインが美観に優れており、それを国が認定したということです。意匠取得済と宣伝したり、顧客に説明したりして、製品の信頼性を向上させるという営業上のメリットがあります。

また、きちんと意匠権を取得するような企業であるという安心感が醸成できますし、製品が他社の意匠権を侵害している製品であるという可能性がなくなり、顧客も安心して製品を使用することができます。

意匠権の有効期間

登録査定がされた意匠登録出願については、出願人が登録料を納めれば、意匠権の設定の登録がされ、意匠公報が発行されることになります。

これにより、登録された意匠と同一及びこれに類似する意匠にまで効力が及び、登録意匠とこれに類似する意匠の実施をする権利を専有することができます。

この意匠権の満了日は、2020年4月1日より、「出願日から25年経過した日」になりました。

意匠権を取得すれば、25年間はそのデザインを独占的に使用することができますが、その一方、25年たった後は更新の制度はありません。そのため、25年後は誰でもそのデザインを使用できるようになってしまいます。これは大変困ったことになる場合があります。

https://monolith-law.jp/corporate/company-product-trademark-domain

立体商標

商品のデザインを長期間にわたって保護する方法のひとつとして、まず意匠権取得によって最長25年の独占状態を築き、立体形状が広く認識され、ブランドが確立した段階で、立体商標として登録するというやり方があります。

立体商標制度は、キャラクターや商品パッケージなどを対象に、立体的な形状の独自性を商標として保護することができる制度で、不二家の「ペコちゃん・ポコちゃん」人形や「ヤクルト」の容器などが登録されていますが、HONDAのスーパーカブも自動車業界としては前例のない、乗り物自体の形状として立体商標登録されました。これにより、世界的ロングセラーであるスーパーカブのデザインを意匠権消滅後も守ることが可能となっています。

国際登録制度

意匠権制度は、2015年5月からスタートした「国際登録制度」により、国際的な利用が便利になりました。

意匠権制度は、国ごとの制度であり、たとえば、自社製品のデザインにつき日本で意匠権を取得していても、韓国で意匠権を取得していなければ、韓国での偽物やコピー商品、類似商品など模倣品の製造や販売をやめさせることはできません。日本で登録した意匠権は、日本国内でしか効力がないのです。

そのため、海外での模倣品の製造・販売を防ぐためには、それぞれの国ごとに意匠権を取得する必要があったのですが、意匠権の国際登録制度により、従来は国ごとにしなければならなかった意匠登録の手続きを、複数の国について一括登録することができるようになりました。

この国際登録制度により、米国、韓国、EUなど64の国と地域で、日本での手続きで意匠権の一括登録が可能になり、今後さらに対象国が増える見込みとなっています。このように、海外での意匠権の取得が以前より、格段に便利になり、コストも低くなったので、海外での模倣品対策を検討している企業は、活用を検討するとよいでしょう。

まとめ

意匠権を取得することで、その製品と同一デザインあるいは類似デザインの模倣品を第三者が販売等をすることを禁止できるため、意匠権は非常に強力な権利です。見た目で判別できるデザインなので、同じような効力を持つ著作権と比べて、自社に権利が有ることを立証しやすいのもポイントです。

ただし、特許庁への登録が必要であるため、権利を取得するまでの手続が面倒です。経験豊かな弁護士にご相談ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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