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カストディ業務とは?暗号資産交換業者に対する規制について解説

カストディ業務とは?暗号資産交換業者に対する規制について解説

「仮想通貨」は、2020年に施行された改正資金決済法により、その呼称が「暗号資産」に変更されました。暗号資産交換業者(取引所・交換所等)は、金融機関と同じように登録が義務化され、さまざまな規制を受けます。

また、暗号資産の普及とともに、これらの暗号資産を保管・管理する「カストディ業務」を行うさまざまなウォレットサービス等も登場しました。これらのカストディ業者にはどのような規制があるのでしょうか。

この記事では、暗号資産カストディ業務とは何かについてや、カストディ業者を含む暗号資産交換業者に対する法律上の規制について詳しく説明します。

暗号資産(仮想通貨)とは

そもそも「暗号資産」とは何でしょうか?

暗号資産は、資金決済法において次のように定義されています(資金決済法第2条第5項)。

  1. 以下のすべての性質を有する財産的価値
    • 不特定の者に対して代価の弁済に使用でき、かつ、不特定の者を相手に法定通貨と相互に交換できる
    • 電子的に記録され、移転できる
    • 法定通貨または法定通貨建ての資産ではない
  2. 不特定の者を相手に上記1と相互に交換できる財産的価値
  3. 金融商品取引法第2条3項に規定する「電子記録移転権利」を表示するものでないこと

なお、「電子記録移転権利」とは、電子記録移転有価証券表示権利等(ブロックチェーン技術を使って発行されるセキュリティトークンのこと)のうち、信託受益権や集団投資スキームなどをデジタル化したセキュリティトークンのことを指します。

暗号資産には、決済手段としての側面と投資対象としての側面があります。決算手段としての暗号資産は資金決済法の規制を受け、投資対象としての暗号資産は金融商品取引法の規制を受けます。

暗号資産(仮想通貨)カストディ業務とは

暗号資産(仮想通貨)カストディ業務とは

「カストディ」とは、金融・証券用語で、有価証券を管理することをいいます。暗号資産カストディ業務とは、業務として他人のために暗号資産の管理をすることをいいます。「ウォレット」と呼ばれる、利用者が暗号資産を管理するシステムを提供することなどもカストディ業務にあたります。

2020年に施行された改正資金決済法により、このカストディ業務も「暗号資産交換業」に含まれることになりました。資金決済法では、次の行為を業として行うことを暗号資産交換業と定めています(資金決済法第2条第7項)。

  1. 暗号資産の売買または他の暗号資産との交換
  2. 1の媒介、取次ぎまたは代理
  3. 1・2の行為に関して、利用者の金銭の管理をすること
  4. 他人のために暗号資産の管理をすること(=カストディ業務

このため、カストディ業務を行う事業者も暗号資産交換業の登録が必要になり、さまざまな規制を受けることになりました。

暗号資産交換業者に対する3つの規制

暗号資産交換業者に対する3つの規制

暗号資産の管理のみを限定して行うカストディ業者も資金決済法における「暗号資産交換業」に該当するため、登録義務やさまざまな規制が課されています。ここでは、暗号資産交換業に対する規制について解説します。

暗号資産交換業者による広告・勧誘規制

暗号資産交換業者は、その行う暗号資産交換業に関して広告をするときは、次の項目について表示しなければなりません(資金決済法第63条の9の2、暗号資産交換業者に関する内閣府令第18条)。

  • 暗号資産交換業者の商号・暗号資産交換業者である旨・登録番号
  • 暗号資産は本邦通貨または外国通貨ではないこと
  • 暗号資産の価値の変動を直接の原因として損失が生じるおそれがあるときはその旨およびその理由
  • 暗号資産は、代価を弁済を受ける者の同意がある場合のみ代価の弁済のために使用できること

また、広告をする際や、暗号資産交換契約を締結する際には、以下の行為が禁止されています(資金決済法第63条の9の3)

  • 虚偽の表示をし、また暗号資産の性質などについてその相手方を誤認させるような表示をする行為
  • 支払手段として利用する目的ではなく、専ら利益を図る目的で暗号資産の売買または他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為
  • 暗号資産交換業の利用者の保護に欠け、または暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に師匠を及ぼすおそれがある行為

利用者の保護等に関する措置

暗号資産交換業者は、利用者の保護のため、暗号資産の性質や契約の内容について情報を提供し、また、利用者の保護・業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を取らなければいけません(資金決済法63条の10)。

利用者財産の保全義務

利用者の暗号資産の流出や暗号資産交換業者の倒産などに備えて、暗号資産交換業者には主に以下のような利用者財産の保全義務が課されています。

利用者の金銭の信託

暗号資産交換業者は、利用者からの受託金銭を、自己の金銭と分別して管理し、信託会社等に信託しなければならないとされています(資金決済法第63条の11第1項)。

利用者の暗号資産の分別管理

暗号資産交換業者は、利用者からの受託暗号資産を自己の暗号資産と分別して管理しなければならないとされています。また、その利用者の暗号資産は、内閣府令で定める安全性の高い管理方法によって管理しなければならないとされています(資金決済法第63条の11第2項)。

具体的には、利用者の暗号資産を移転するために必要な情報(秘密鍵)は、常時インターネットに接続していない電子機器等に記録して管理する方法(コールドウォレット)その他のこれと同等の技術的安全管理措置を講じて管理することが定められています。

ただし、利用者の利便性を図るために、その利用者の暗号資産全体の5%(日本円換算額)に相当する数量の暗号資産を上限として、コールドウォレット等の安全性の高い管理方法以外の方法で管理することも認められています(ホットウォレット等による管理)。

履行保証暗号資産の保有

上述のように、暗号資産交換業者には、受託暗号資産の一部をホットウォレット等の「安全性の高い管理方法」以外の方法で管理することが認められています。ただし、それらの暗号資産が流出した際には、利用者への返還義務の履行ができなくなるおそれがあります。

そのため、暗号資産交換業者には、安全性の高い管理方法以外の方法で管理されている暗号資産と同じ種類および数量の暗号資産(これを「履行保証暗号資産」といいます)を自己の暗号資産として保有し、自己の暗号資産と分別して管理することが義務付けられています(資金決済法第63条の11の2)。

預託暗号資産・履行保証暗号資産の優先弁済権

利用者は、暗号資産交換業者に対して暗号資産の返還請求権を有しています。暗号資産交換業者が分別管理している預託暗号資産・履行保証暗号資産については、利用者は他の債権者に優先して弁済を受けることができます(資金決済法第63条の11の2)。

暗号資産交換業者に対するその他の規制

さらに、暗号資産交換業者は、資金決済法に定められた規制のほかにもマネーロンダリングやその他の犯罪を防ぐために犯罪収益移転防止法に基づく次の義務を負います。

  • 利用者の本人確認の実施・記録の保存
  • 取引記録の作成・保存
  • 疑わしい取引の金融庁への届出

暗号資産交換業登録は回避できるか

これらの暗号資産交換業に対するさまざまな規制のほかにも、暗号資産交換業の登録を受けるためには、財産的基礎(資本金の額が1000万円以上あり、純資産額がマイナスでないことなど)が要件とされ、暗号資産交換業を適正かつ確実に行うための体制の整備が求められています。

暗号資産の取引所や交換所ではなくカストディ業務のみを行う業者にとっては、これらの規制は大変負担が大きいものとなっており、新規参入の障壁となっていると言っても過言ではありません。

一方で、暗号資産交換業登録を必要としない形で利用者の暗号資産を取り扱うことも可能です。

金融庁のパブリックコメントにおいて、暗号資産交換業の範囲に含まれる「他人のために暗号資産の管理をすること」の要件については、次のように書かれています。

個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきものではありますが、事業者が利用者の暗号資産を移転するために必要な秘密鍵の一部を保有するにとどまり、事業者の保有する秘密鍵のみでは利用者の暗号資産を移転することができない場合には、当該事業者は、主体的に利用者の暗号資産の移転を行い得る状態にないと考えられますので、基本的には、資金決済法第2条第7項第4号に規定する「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当しないと考えられます。 

「令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について」(別紙1)No.10~12

つまり、事業者が保有する秘密鍵だけでは利用者の暗号資産を移転できない場合は、暗号資産交換業には該当しないということになります。

また、事業者が保有する秘密鍵が暗号化されていて、事業者はその秘密鍵を複合するために必要な情報を保有していないという場合には、利用者の暗号資産を移転することができるすべての秘密鍵を保有していても、「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当しないともされています。

このように、暗号資産交換業に該当しないようにビジネスモデルを設計すれば、暗号資産交換業者の登録を回避することも可能なのです。

まとめ:暗号資産(仮想通貨)カストディ業務

暗号資産のウォレットサービスなどを提供するカストディ業者は、暗号資産交換業に該当し、登録義務や広告に関する規制、利用者保護のための措置などのさまざまな規制を受けます。ただし、事業者が保有する秘密鍵だけでは利用者の暗号資産を移転できない場合などには暗号資産交換業には該当しないことになり、登録義務や規制の対象にはなりません。

個別の事例ごとに判断は異なりますが、ビジネスモデルの設計によっては、登録義務やさまざまな規制を回避することも可能です。カストディ業務該当性や暗号資産交換業登録の要否についての判断は、暗号資産に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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暗号資産取引所運営企業の顧問弁護士、監査役、ICOにおけるホワイトペーパーの策定、法的観点に基づくレビューなど、暗号資産関連の法務業務全般を手がけております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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