弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

暗号資産のレンディングとは?2つの法的論点について解説

レンディング

暗号資産で利益を得るには、暗号資産を売買するほかにも暗号資産のレンディングで利益を得ることもできます。

本記事では、暗号資産のレンディングサービスを行おうと考えている事業者を対象に、暗号資産のレンディングの概要や、ビジネスモデルを考える際に知っておくべき暗号資産のレンディングに関する法規制について解説します。

暗号資産のレンディングとは

暗号資産のレンディング

暗号資産のレンディングとは、暗号資産の保有者から暗号資産を一定期間借り受けることの対価として、暗号資産の保有者に対し、暗号資産の利用料を支払う仕組みをいいます。

暗号資産のレンディングは、「貸暗号資産」とも言われています。簡単にいえば、暗号資産を貸して、賃料をもらうという仕組みです。

暗号資産の売買で利益を得ようとする場合、値動きを頻繁に確認し、適切なタイミングで売り抜ける必要があります。タイミングを逸して暗号資産の勝ちが下落したタイミングで売ってしまった場合、損をする可能性もあります。

ですが、暗号資産のレンディングの場合、暗号資産の価値の下落の影響は少なからず受けますが、暗号資産を貸すことによる利用料を受けることができますので、安定的に利益を出すことができます。また、暗号資産のレンディングを行なっている間に、価値が下落した暗号資産の価値が戻ることも考えられます。

そのため、暗号資産のレンディングは、大きな利益の獲得は難しいものの、比較的小さな手間で、安定的に利益を得ることができる方法といえます。

国内の暗号資産レンディングサービスの事例

国内でも、複数の暗号資産取引所が、レンディングサービスを提供しています。本記事執筆時点(2022年11月)で、以下の暗号資産取引所がレンディングサービスを提供しています。

  • LINE BITMAX
  • GMOコイン
  • Coincheck
  • BIT Point

暗号資産取引所によって、扱っている暗号資産の種類、最低取引金額及び手数料等が異なりますので注意が必要です。

また、ビットコインマイニング事業を手がけるFUELHASHが、国内の個人投資家を対象に、クリプトレンディング事業に乗り出すことを発表しています。発表によれば、同社はシンガポール金融庁より「Capital Market Service License」を取得している事業者と提携し、同事業を進めます。

暗号資産のレンディングの2つの論点

暗号資産のレンディングの2つの論点

暗号資産のレンディングに関する法規制としては、暗号資産交換業に該当するかという点と、貸金業に該当するかという点が問題となります。

そこで、以下では、暗号資産のレンディングの暗号資産交換業該当性及び貸金業該当性について説明をします。

レンディングの暗号資産交換業への該当性

暗号資産交換業に関しては、資金決済法第2条第7項で規定されています。

7 この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。

一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換

二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理

三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。

四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。

暗号資産のレンディングが、暗号資産交換業に該当するというためには、上記の要件に該当する必要があります。上記の要件を確認すると、暗号資産のレンディングは、どの要件にも該当しないため、暗号資産交換業には該当しないものと考えられます。

ただし、暗号資産のレンディングと称して、実質的に見た時に、他者の暗号資産を管理していると判断されてしまうと、「他人のために暗号資産の管理をすること」(資金決済法第2条第7項第4号)に該当する可能性があります

そのため、暗号資産のレンディング事業を行う場合には、実質的に他者の暗号資産を管理していると判断されないように注意をする必要があります。暗号資産交換業に該当した場合の規制については、下記の記事にて詳しく解説しています。

関連記事:カストディ業務とは?暗号資産交換業者に対する規制について解説

レンディングの貸金業への該当性

貸金業に関しては、以下の貸金業法第2条第1項で規定されています。

(定義)

第二条 この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。

一 国又は地方公共団体が行うもの

二 貸付けを業として行うにつき他の法律に特別の規定のある者が行うもの

三 物品の売買、運送、保管又は売買の媒介を業とする者がその取引に付随して行うもの

四 事業者がその従業者に対して行うもの

五 前各号に掲げるもののほか、資金需要者等の利益を損なうおそれがないと認められる貸付けを行う者で政令で定めるものが行うもの

暗号資産のレンディングが、上記の貸金業の定義に該当する場合には、貸金業としての規制を受けることになります。

そこで、暗号資産が、法律上どのように扱われるかという点が問題となります。

資金決済法には、以下のように第2条第5項で、暗号資産に関する定義規定が置かれています。

5 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

他方、貸金業法には、暗号資産に関する定義規定が置かれていません。貸金業法では、暗号資産の貸付けは想定されておらず、金銭の貸付けが念頭に置かれています。

暗号資産については、法律上、金銭とはみなされませんので、暗号資産の貸付けについては、貸金業法上の金銭には該当しないものと考えられます。

そのため、暗号資産のレンディングについては、現在の貸金業法で規定されている貸金業には該当せず、貸金業法の規制は受けないということになります。

まとめ:暗号資産(仮想通貨)のレンディングついては弁護士へご相談を

以上、本記事では、暗号資産のレンディングを行おうと考えている事業者を対象に、暗号資産のレンディングの概要及び暗号資産のレンディングに関する法規制を解説しました。

暗号資産を貸す・借りるというだけでは暗号資産交換業の要件には該当しませんが、事実上他人の暗号資産を「管理している」場合には、暗号資産交換業に該当する可能性があります。一方、現在の貸金業では金銭の貸付のみが対象となっているため、暗号資産のレンディングは貸金業には該当しないと考えられます。

暗号資産のレンディングについては、法律的な知識に加えて、暗号資産に関する知識も必要となります。暗号資産のレンディング事業をお考えの場合は、あらかじめ専門的知識を有する弁護士に相談することをおすすめします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。当事務所は暗号資産やブロックチェーンに関わるビジネスの全面的なサポートを行います。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:暗号資産・ブロックチェーン

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る