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IT・ベンチャーの企業法務

著作権法2020年改正の要点を解説 「写り込み」はどこまで許される?

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著作権法2020年改正の要点を解説 「写り込み」はどこまで許される?

2020年6月5日に、改正著作権法が成立しました。

今回の改正目的には、「インターネット上の海賊版対策強化」や「著作権の適切な保護を図るための措置」等も含まれていますが、

ここでは、特に関心が高いと思われる「社会の変化に応じた著作物の利用の円滑化」のひとつである「写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大」について、解説します

写り込みに係る権利制限規定

例えば、著作物を創作したり利用する際に、街頭で写真撮影やビデオ収録にあたり、著作物であるキャラクターが写り込んだり、音楽が録り込まれたりといったことは、日常的に起こっており、これを避けることは非常に困難です。

また、そうした写真や映像をSNSや動画投稿サイトにアップロードしたりすることも、日常的に行われています。

これらの行為は、他人の著作物を許諾なく複製し、インターネット配信その他の方法で伝達する行為なので、複製権その他の著作権を侵害する可能性がありました。

しかし、その著作物の利用を目的としない行為に伴って、付随的に生じる利用であり、権利者に与える不利益がほとんどない、もしくは軽微なものである「写り込み」までが著作権侵害とされたのでは、表現行為が著しく制限され、文化の発展という著作権法の本来の目的を阻害しかねません

2012年の著作権法改正と写り込み

このため、写真の撮影等の方法によって著作物を創作するに当たり、当該著作物(写真等著作物)に係る撮影等の対象とする事物等から分離することは困難であることから、

  • 付随していた他の著作物(付随対象著作物)は、当該創作に伴って複製又は翻案することが侵害行為に当たらないこと(著作権法第32条1項)
  • そして、複製又は翻案された付随対象著作物は、写真等著作物の利用に伴って利用しても侵害行為に当たらないこと(第2項)

上記の2項が、2012年の著作権法改正により、明確にされました。

ここで、「分離することが困難である」とは、ある著作物(写真等著作物)を創作する際に、創作時の状況に照らし、付随して対象となった他の著作物(付随対象著作物)を除いて創作することが社会通念上困難であると客観的に認められることでした。

また、「付随対象著作物」については、撮影後に画像処理等により「付随対象著作物」を消去することが可能な場合が考えられますが、本条第2項では条文上「分離することが困難であること」を要件としていないので、「付随対象著作物」を「写真等著作物」から分離することが可能であっても、著作権者の許諾を得ることなく利用することができました。

これが、2012年著作権法改正により初めて規定された、今回の改正前の著作権法30条の2の「付随対象著作物の利用」であり、いわゆる「写り込み」にかかわる権利制限規定です。

この2012年改正では、写真の撮影、録音又は録画(写真の撮影等)の方法によって著作物を創作するに当たって、他人の著作物が写り込んだ場合のみを対象とするなど、適法とされる利用範囲は、限られたものでした

しかし、スマートフォンやタブレット端末等の急速な普及や動画投稿・配信プラットフォームの発達等の社会実態の変化に対応した、写り込みにかかわる権利制限規定の対象範囲の拡大が要請されるようになってきました。

写り込みに関する改正点

2020年著作権法改正の写り込みに関する主な改正点をまとめると、以下のようになります。

  1. 適法とされる行為の範囲が広がる。
  2. 適法に利用できる著作物(付随対象著作物)の範囲が広がる。
  3. その代わり、その利用は「正当な範囲内」に限られる。

行為の範囲

1の行為の範囲については、改正前の著作権法第30条の2では、「写真の撮影、録音又は録画」のみであり、「著作物を創作する」行為である必要があり、複製の範囲内でした。

これが、改正後には、「事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為」(複製伝達行為)となり、創作行為である必要は不要となり、公衆送信、演奏、上演など、方法を問わずに利用できるようになりました

行為の範囲が広がることにより、写真の撮影、録音および録画に限らず、複製伝達行為全般が適用対象となったので、ドローンを利用した生配信やスマートフォンのスクリーンショット、コピー&ペースト、模写、CG化などの行為も対象に含まれることになります。

また、新たに著作物を創作する場面で他の著作物が写り込む場合という限定がなくなったので、固定カメラによる撮影や生配信など、創作性が認められないとされるものについても、著作権法30条の2が無制限に適用されることになりました。

付随対象著作物の範囲

2の付随対象著作物の範囲については、改正前の著作権法第30条の2では、分離困難である場合に限られ、撮影対象の事物または音から「分離することが困難であるため」、他の著作物が付随して写り込んだ場合でなければ、権利制限を受けられない、つまり著作権侵害になるとされていました。

この分離困難性という要件は、すでに述べたように「物理的に分離困難であることではなく、その著作物を除いて創作することが社会通念上、客観的に困難であることを意味する」と解されていたので、この要件によって結論が分かれる場合が多くありました。

しかし、改正により「正当な範囲内」であれば利用可能となったので、改正前の著作権法30条の2の「メインの被写体と付随著作物の分離の困難さ」という要件は不要となり、分離困難かどうかは「正当な範囲内」かどうかという要件の判断において考慮されることとなりました

例えば、子供が抱いたぬいぐるみも「正当な範囲内」になるので、日常生活において一般的に行われる行為に伴う写り込みが幅広く認められることとなりました。

また、被写体の一部を構成する事物や音の取り扱いについては明らかでなかったのですが、改正により、これらも「不随対象著作物」に含まれ得ることが明記されました。

正当な範囲内

3の正当な範囲内については、これまでは条文上の規定はなかったのですが、改正により、「写り込み」の利用が「正当な範囲内」での利用に限られることが明記されました。

分離困難性を不要としたことで、著作権侵害が成立しないと判断され得る「写り込み」の範囲が広がったことになりますが、それにより著作権者の利益が不当に害されることになると、写り込みの正当化根拠を逸脱することになってしまいます。

そこで、「利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物において当該付随対象著作物が果たす役割」が、「正当な範囲内」であるかどうかを判断する際の考慮要素として示されています

改正後は、「正当な範囲内」という要件のもとで、個別事案に応じて柔軟に判断されていくこととなりますが、改めてこれらを整理すると、著作権法第30条の2(付随対象著作物の利用)は、

  • 「複製伝達行為」を行うに当たって
  • 対象とする事物又は音に付随して対象となる事物又は音に係る著作物は
  • 当該著作物が軽微な構成部分となる場合であれば
  • 正当な範囲内において
  • 当該複製伝達行為に伴って、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
  • ただし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

以上が要点となります。

まとめ

2020年の著作権法改正で、日常生活において一般的に行われ得る行為に伴う「写り込み」が、幅広く認められることとなりました

一方で「正当な範囲内」という制限もあります。

著作権侵害かどうかの判断は高度に専門的な法律知識が必要です。

ぜひ経験豊かな弁護士にご相談ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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