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株主総会資料の電子提供制度とは?2022年施行の改正会社法のポイントを解説

電子提供制度

2022年(令和4年)9月1日から、株主総会資料の電子提供制度が開始されました。会社が所定の手続を行うことで、株主がホームページ上で株主総会の資料を閲覧できるようになります。この制度によって、機関投資家等は各社の議案を検討する時間を十分に確保でき、会社側は郵送コストや配布の手間を省くことができます。

ただし、この株主総会資料の電子提供制度を導入するには手続き面、運用面での注意点があります。

この記事では、電子提供制度を導入する際の手続きについて詳しく解説します。また、導入後の注意点についてもお伝えしますので、検討中の方はぜひ参考にしてください。

株主総会資料の電子提供制度とは

株主総会資料の電子提供制度とは、従来は、株主に対して株主総会の資料を書面で交付することが義務付けられていたものを、自社のホームページに掲載することで、株主に対して株主総会資料を提供したこととする制度です会社法第325条の2)。2022年(令和4年)9月1日の改正会社法の施行により、株主総会資料の電子提供が可能になりました。

この制度では、取締役が株主総会の前に資料を自社ホームページ内に掲載し、株主総会の招集通知とともにウェブサイトのアドレスを株主に通知することで、株主総会資料を適法に提供したとみなされます。

なお、株主は会社に対し、書面交付を請求することも可能です。

株主総会資料の電子提供制度の背景

電子提供制度の背景

この制度が施行された背景には、株主総会の時期が集中していることや、従前の制度が十分に機能していなかったことなどがあります。

多くの上場企業では、定時株主総会を6月下旬に実施しています。集会の時期が集中することで、多くの上場企業に投資する機関投資家などが、総会資料に目を通す時間を十分に確保できないという問題が指摘されていました。

旧会社法でもインターネットに株主総会の資料をアップして株主に提供する仕組みはありました。しかし、実施するには個別株主の承諾を得なければならないためハードルが高く、特に株主が多い上場企業では現実的な方法ではありませんでした。

ウェブ開示によるみなし提供制度もありますが、株主の関心が特に高いとされる貸借対照表、損益計算書の内容などについては対象外となっており、使い勝手のよい制度とはいえませんでいた。

そこで、2019年(令和元年)12月4日に成立した改正会社法の中で電子提供制度が創設され、証券保管振替機構のシステム改修期間を経て、2022年(令和4年)9月1日より正式に施行されました。

電子提供制度を利用した株主総会招集の流れ

株主総会資料の電子提供制度を採用した場合、以下のような流れで株主総会は招集されます。

  1. 株式会社が株主総会の日の3週間前までに情報を掲載する(会社法第325条の2,および3
  2. 2週間前までに、株式会社が株主に、情報掲載先のURLを記載した招集通知を発送
  3. 株主はサイトにアクセスして情報を確認する

なお、インターネットへのアクセスが困難な株主は、書面交付を株式会社に請求することも可能です。電子提供制度の対象となる株主総会参考書類には、以下のように株主の意思決定を左右する重要な書類が含まれます。

<ウェブ掲載可能な株主総会参考書類の例>(会社法第325条の3

  • 株主総会の日時及び場所
  • 株主総会の目的事項
  • 株主総会に出席しない株主の書面決議権行使の可否
  • 株主総会に出席しない株主の電磁的方法による議決権行使
  • 株主提案の議案要領
  • 計算書類及び事業報告
  • 連結決算書類

電子提供制度が適用される条件

電子提供制度は、全ての株式会社に適用されるわけではありません。この制度が適用されるのは、以下のような株式会社に限ります。

  • 振替株式発行会社(上場会社はすべて該当)
  • 電子提供制度を提供する旨を定める定款変更を決議し、登記をした株式会社

上場会社(振替株式発行会社)は、2022年9月1日より、電子提供制度の採用が強制されます。その他、非上場会社では、定款を変更し、その変更登記をすることで制度の採用が可能です。

株主総会資料の電子提供制度のための定款変更

株主総会資料の電子提供制度のための定款変更

それでは、実際にこの制度を自社で採用するには、どうしたらいいのでしょうか。以下で、自社で電子提供制度を採用するための方法を解説します。

振替株式発行会社(上場会社はすべて該当)

振替株式発行会社は、2022年9月1日時点で電子提供措置を採用する定款変更の決議をしたものとみなされます。振替株式発行会社とは、株券電子化をおこなった会社で、現在上場している株式会社はすべて該当します。

定款の変更には、会社法上株主総会の特別決議が必要です(会社法第466条)。特別決議の議決成立には、議決権の過半数を持つ株主が出席し、3分の2以上の議決権を得なければなりません。

電子提供制度が強制されるにもかかわらず煩雑な定款変更決議を課せば、上場会社の負担が過大になるため、このような経過措置が設けられました。

ただし、定款変更決議がなくても、定款変更の登記は必要です。

振替株式発行会社以外の株式会社

上場会社以外の株式会社は、法律に則って定款変更のための株主総会の特別決議をおこなう必要があります。

ただし、新たに設立する株式会社は、設立の際に作成する定款に電子提供制度を採用する旨を定めることが可能です。

定款変更の登記手続き

定款を変更したら、必ず法務局で定款変更の登記手続きをする必要があります。登記すべき事項は以下の2点です。

  1. 電子提供措置をとる旨の定款の定め
  2. 変更年月日

定款変更後、登記すべき期間

会社法上、会社の登記事項に変更が生じた際は原則2週間以内に変更登記する旨定められています(会社法第915条第1項)。定款の変更も会社の登記事項に該当するため、効力発生日から2週間以内に登記を済ませなければなりません。効力発生日は株主総会で議決された日です。

ただし、振替株式発行会社(上場会社)の場合、電子提供制度の定款変更決議をしたものとみなされるため、定款変更登記の期限は2022年9月1日から6か月以内と定められています。

登記すべき事項

登記申請書の「登記すべき事項」欄には、電子提供制度を採用する旨の定めを、定款に記載されているとおりに記載しましょう。

変更年月日は、振替株式発行会社(上場会社)は改正会社法の施行日である2022年9月1日、その他の会社は定款変更の効力発生日です。

ただし、情報を掲載するウェブサイトのアドレスや、情報の一部のみを電子提供する旨の定めは登記できません。また、電子提供制度を採用するか否かの登記なので、「電子提供措置をとることができる」という選択式の内容も登記できません。

添付書類

登記申請の際に添付する書類は、上場会社かそれ以外の株式会社かで違います。

上場会社では定款変更の特別決議が省略されるため、「当該会社が令和4年9月1日において振替株式を発行している会社であることを証する書面」を添付します。それ以外の株式会社の添付書類は、定款変更を決議した株主総会の議事録とその株主リストです。

また、上場会社か否かに関わらず、申請1件につき3万円の登録免許税が必要です。

株主総会資料の電子提供制度導入の注意点

株主総会資料の電子提供制度導入の注意点

株主総会資料の電子提供制度は、株主側は各会社の議案を検討する時間を十分に確保でき、会社側は資料作成予算や郵送コストをカットできるというメリットがあります。

ただし、インターネット経由で情報を公開するため、公開期間中のサーバーダウンやハッキング被害などの問題があります。これらにより情報公開が中断された場合、株主総会決議の取消事由になるだけでなく、過料制裁の対象にもなります(会社法第831条第1項第1号、第976条第19号)。

ただし、電子提供措置が中断された場合は、以下の4つの要件を満たせば、電子提供措置の中断は株主総会の決議に効力を及ぼさないものとされています(会社法第325条の6)。

<電子提供制度がなされたとみなされる要件>

  1. 電子提供措置の中断が発生したことに、会社が善意・無重過失であること、または正当な事由があること
  2. 電子提供措置の中断が発生した時間が、提供措置がとられた期間の10分の1を超えないこと
  3. 電子提供措置開始から株主総会の日までに中断が生じた場合は、その期間のうち、中断期間が10分の1を超えないこと
  4. 中断を知った後速やかに、中断したこと、中断した時間、内容などについて電子提供措置をとったこと

中断が発生した際に、上記の4点を立証できるよう、ウェブサイトのログを保存しておくなどの対策をとっておきましょう。また、中断したリスクを低減するために、複数のウェブサイトで電子提供措置を実施することも手段の一つです。

まとめ:株主総会の電子提供制度は弁護士に相談を

株主総会資料の電子提供制度は、株主側にも会社側にもメリットのある制度です。

ただし、制度を採用するためには、定款変更やその登記などの手続きが必要であり、また実施後も危機管理面の対策が重要になるでしょう。

電子提供制度の採用は、会社法だけでなく、インターネットやシステムトラブルにも知見のある弁護士に相談しながら進めましょう。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。株主総会対応についてはリーガルチェックが必要です。当事務所はさまざまな法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:IT・ベンチャーの企業法務

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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