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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

経営等に関する顧問契約書を締結する際のチェックポイント

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経営等に関する顧問契約書を締結する際のチェックポイント

近年、ビジネス環境の変化が激しいこともあり、会社が事業を遂行する上で外部の専門人材からの助言を得て経営に活かしたいというニーズが増えています。最近では企業の第一線で活躍していた人材を顧問という形で迎え入れ、経営に活かす流れも加速しています。そこで今回は、会社が専門人材との間で経営等に関する顧問契約を締結する場合の顧問契約書について解説します。

顧問契約とは

顧問契約とは、会社の経営や技術面に関して専門的立場から助言を得ることを目的とした契約です。契約の法的性質としては、いわゆる業務委託契約と同種のものであり、会社が専門家に助言等の業務を委託し、専門家がこれを受託する内容となります。ただ、一般的な業務委託契約では必ずしも受託する側が専門家であるとは限りませんが、顧問契約の場合にはあくまでも専門的知見を有している人に助言を求めることを目的としたものとなります。

顧問契約締結の相手方としては、従来は経営や会計・財務コンサルティングを目的として公認会計士や税理士、経営コンサルタントなどと顧問契約を締結することが多かったといえます。これに加え、冒頭でも述べたように最近では経営コンサルタントの肩書は持たないものの長年にわたり業界の第一線で活躍してきた経歴を持つ人と顧問契約を締結し、営業面での助言をもらうようなケースも増えてきています。

顧問契約の法的性質

顧問契約の性質と重要なポイントについて説明していきます。

顧問契約は、法的には業務委託契約の一種です。業務委託契約については、主に成果物を納品するなど契約上定められた一定の結果が実現することを報酬発生の要件とする請負型と、結果の実現を保証しないものの結果の実現に向けて最善を尽くす義務を負う準委任型の2種類があります。顧問契約においては、通常は経営上の成果指標(KPI)の実現に向けた助言をすることが業務内容となります。成果指標を実現するための具体的な施策の実行は顧問の助言を受けた経営陣の責任で行う事柄であるため、顧問自身は成果指標の実現を保証する立場にはありません。したがって、顧問契約の法的性質は準委任型といえます。準委任型の顧問契約においては、業務内容について以下のように定められます。ここで、甲は依頼者、乙は顧問を指します。

第〇条(業務内容)
甲は乙に対し、甲の〇〇に関する相談に対して助言する業務を委託し、乙はこれを受託する。

また、報酬の発生についても、請負型のように結果の実現が条件とならないことから、以下のように顧問料などの名目で月々決まった金額の支払いを受ける形となることが通常です。

第〇条(報酬)
甲は乙に対し、顧問料として月額金●万円(消費税別)を毎月末日までに、乙に支払う。

なお、業務委託契約一般については、下記記事にて詳細に解説しています。

[blogcard url=”https://monolith-law.jp/corporate/regulation-of-outsourcing-contract”] 

顧問契約における重要なポイント

以下では、顧問契約において重要な条文について具体的な条項案を紹介するとともに、各条項において確認すべきポイントを解説します。条項案の「甲」は依頼者、「乙」は顧問を指します。

業務内容に関する条項

第〇条(業務内容)
1.甲は乙に対し、乙の顧問として甲の事業に関する相談への回答その他甲乙間で合意された業務(以下「本件業務」という)を委託し、乙はこれを受託する。
2.乙は、本件業務遂行のため、月に1回、甲の指定する方法により相談に応じることとする。

顧問契約においてもっとも重要な条項が業務内容に関する条項です。業務の内容については条項案の第1項のように抽象的に定めたうえで、具体的な業務が発生する都度、個別契約において業務内容を決めるという方法が一般的です。ただし、行政に対する補助金申請などのように一定のプロジェクトに限定して助言を受ける場合には個別契約ではなく顧問契約本体において具体的に業務内容を定めることをおすすめします。

なお、個別契約とは、基本契約を前提として、具体的業務が発生する都度発注書および請書のやり取りをすることによって成立するスタイルが典型的ですが、顧問契約においてはメールなどで依頼者が顧問に相談をし、これに顧問が諾否の返信することで成立することが通常でしょう。
条項案の第2項は、顧問が依頼を受けた業務に関して定期的に助言をする必要がある場合に規定するものです。

例えば、経営コンサルティングなどでは一定の期間ごとに効果を測定し、それをもとに次の施策を検討する必要があります。このため、定期的に相談を受けることをあらかじめ顧問契約に定めることになります。これに対し、業務が発生する都度必要に応じて相談に乗るような性質の顧問契約においては、条項案第2項のような定期相談に関する条項は不要となります。したがって、条項案第2項はあくまでも顧問契約の目的に応じて要否を判断する必要があります。

報酬に関する条項

顧問契約における報酬に関する条項とはどのように規定するべきでしょうか。

第〇条(報酬)
1.甲は乙に対し、顧問料として月額金●万円(消費税別)を毎月末日までに、乙の指定する銀行口座に送金して支払う。振込手数料は甲の負担とする。
2.前項の顧問料は1か月●時間までの業務の対価とする。
3.本件業務遂行に要する時間が前項を超過することが予想される場合、乙は甲に対し、事前に通知しなければならない。当月の業務時間が前項を超えた場合、乙が甲に対し事前に通知したことを条件として、超過部分に関する報酬は1時間あたり金●万円とする。
4.本件業務の遂行に通常要する費用は乙の負担とする。乙が特別な費用を支出した場合、甲が事前に承諾した場合に限り、甲に対しその支払いを請求することができる。

顧問業務に関しては、条項案第1項のように「月額〇円」という定額で報酬を支払う契約が一般的です。顧問契約は継続的に助言を行うことが前提の契約であるためです。ただし、ある月の業務量が過大になった場合にも月額報酬の範囲内とすると業務内容と報酬のつり合いが取れないこととなります。そこで、このような突発的な業務量の増加に備えた規定として、条項案第2項および第3項のように一か月の想定業務時間数を超えた場合に超過料金を請求する条項を入れることがあります。顧問側として注意が必要なこととして、想定業務時間数を超えた場合に超過料金を請求するためには、前提として日頃から業務上の作業を行う際に時間計測をしておかなければいけないということです。

このため、顧問側として業務量の突発的な増加が想定しにくく、かつ時間管理が手間であると考えるときには、超過料金に関する条項は置かない代わりに、ある程度、想定業務時間数に余裕を設けた月額報酬を定めておくことも一つの方法です。また、超過料金の請求に関しては、時間計測の妥当性が依頼者側から見えづらいこともあって依頼者とトラブルになりやすいことを理解しておく必要があります。このため、具体的な業務において超過料金を請求する可能性が出てきた場合には、事前に依頼者に相談することも検討する必要があります。条項案第3項は、超過料金の請求のためには依頼者に対する事前通知を要件とする規定としています。

なお、依頼者側としてタイムチャージにより想定より報酬が増加することを避けたい場合には、事前に顧問に対して、依頼した業務における必要時間を見積もってもらった上で、上限予算額を提示しておくのも一つの方法です。条項案の第4項は、業務遂行上必要となる交通費や通信費などの費用負担に関する条項です。顧問契約においては業務遂行に多額の費用を要することは通常ないため、月額報酬と別に依頼者に費用を請求することは多くありません。ただし、依頼された業務を遂行するために特別なシステムを導入するようなケースなど依頼を受けるにあたり特別の支出が想定される場合には、依頼者に費用を請求する必要があるでしょう。条項案第4項は、特別の支出について事前承諾を条件に依頼者の費用負担とする内容となっています。実際に、このような特別の支出が発生する場合には、事前に依頼者との間で費用の明細などを共有し依頼者負担とすることについて顧問契約の条項に明示的に定めるか、または別途合意書を作成することになります。

競業避止義務に関する条項

顧問契約における競業避止義務とは?

第〇条(競業避止義務)
乙は、本契約の有効期間中は、甲に対し事前に通知した場合に限り、甲と同種又は競合する第三者の顧問に就任し、また本件業務と類似又は競合する業務を自ら又は第三者をして行うことができる。

特に経営や営業に関する顧問の場合、依頼者としては、自社の顧問が競業他社にも同様のアドバイスをすることを望みません。仮に、これを許容したときに自社が顧問を依頼することによる優位性が維持できなくなることや営業秘密が漏洩することをおそれるからです。依頼者としては競業避止義務に関する条項を入れることができればベターといえますが、顧問側としては競合他社に対して一切の業務提供を禁止されると大幅に収入源が制約されることになりますので、その制約に見合う報酬を提示しなければ拒否されることが多いでしょう。
したがって、競業避止義務としてどのような制約を課すのかは、双方が経済合理性を勘案して判断することになります。

両者の妥協案としては、条項案のように顧問が競業他社から依頼を受ける場合には、事前に依頼者に通知をする方法があります。通知であれば依頼者から同意を得ることは必要ではありませんので、依頼者の意向を問わず競合他社からの依頼を受けることができます。一方の依頼者としても、自社の顧問が競合他社にも助言をしている事実は把握できます。

営業秘密の漏洩に関しては、今回の記事では取り上げていませんが契約書で一般的に規定される機密保持義務に関する条項において漏洩が禁止されます。したがって、顧問側としては、機密保持義務が課されている限り顧問が他社に対して助言業務を行うからといって依頼者の営業秘密が漏洩することにはならない旨を依頼者に十分に説明し理解を得ることが肝要です。

知的財産権に関する条項

第〇条(知的財産権)
本件業務遂行の過程で発生した一切の知的財産権(著作権の場合には著作権法第27条及び第28条で定める権利を含む)は、本契約締結前から乙が保有していたものおよび乙が別途個別に指定するものを除き、発生と同時に甲に帰属することとする。また、乙は、甲及び甲が指定した第三者に対し、当該知的財産に関する人格権を行使しないものとする。

顧問業務においては口頭で助言をするだけではなく、経営状況や市場分析をグラフ化した資料等を作成して報告するといったことがあり得ます。このように顧問業務の一環として作成した資料に関しては、依頼者のために作成したものであることから、当該資料に係る知的財産権を依頼者に帰属させることが通常です。条項案は知的財産権の一切を依頼者に帰属させる内容となっています。もっとも、顧問自身が汎用的に作成した独自のデータなどに関しては顧問に知的財産権を留保する必要があります。このような場合には、当該データを依頼者に提供する際に、当該資料内に「知的財産権は顧問に帰属する」旨の文言を入れるなどの方法があります。条項案では、このような個別の指定があれば知的財産権を顧問側に留保できるように「乙が別途個別に指定するもの」を、依頼者に知的財産権を帰属させる場合から除外する内容としています。

なお、著作権と著作者人格権に関しては、下記記事で詳細に解説しています。

[blogcard url=”https://monolith-law.jp/reputation/unauthorized-photo-reproduction-on-the-internet-author-moral-rights”]

契約期間に関する条項

第〇条(契約期間)
本契約は契約締結日から●ヶ月間有効に存続する。ただし、期間満了月の●日までに特段の申入れがない限り、本契約は同条件にて1年間更新されるものとし、その後も同様とする。

経営や営業に関して継続的に助言を受ける目的の顧問契約においては、契約期間を半年から1年間といった長期間とし、なおかつ条項案のように自動更新条項が設けられることが一般的です。もっとも、一定のプロジェクトに関してだけ顧問から助言を受けることを目的とした顧問契約の場合には、契約期間をプロジェクト遂行に必要な期間のみに限定し、自動更新条項を付さないこともあり得ます。

まとめ

顧問契約とひとことでいっても、契約の目的や求められる助言内容はさまざまです。特に、営業や経営の顧問に関しては想定される内容に幅があることから、顧問業務を受ける場合には依頼者との間でイメージのすり合わせを丁寧にしておくことが重要です。顧問業務は長期間にわたり継続する契約となりますので、トラブルを回避するためにも弁護士などの専門家に相談して顧問契約書の条項に問題がないかを十分に確認することをおすすめします。

顧問契約とひとことでいっても、契約の目的や求められる助言内容はさまざまです。特に、営業や経営の顧問に関しては想定される内容に幅があることから、顧問業務を受ける場合には依頼者との間でイメージのすり合わせを丁寧にしておくことが重要です。顧問業務は長期間にわたり継続する契約となりますので、トラブルを回避するためにも弁護士などの専門家に相談して顧問契約書の条項に問題がないかを十分に確認することをおすすめします。

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