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IT・ベンチャーの企業法務

キャラクターには著作権がない?IPビジネスのための基礎知識

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キャラクターには著作権がない?IPビジネスのための基礎知識

漫画やアニメ、ゲーム、VTuberやYouTubeアニメなど、様々なメディアにおける「キャラクター」は、例えば、アニメの人気キャラクターがコラボとしてスマホゲーに登場する、YouTube上で人気を集めたキャラの書籍が出版される、など、様々なビジネスにおいて利用されています。いわゆる、「IP(知的財産)ビジネス」と呼ばれるものです。

こうしたビジネスに関連して、「キャラクターには著作権の保護が及ばない」という問題があります。この言葉はどういう意味なのでしょうか。例えば、他人が作ったキャラクターを無断でゲームに登場させても「著作権侵害」とはならないのでしょうか?逆に、自社のキャラクターを法的に保護しながらビジネス展開するにはどうしたら良いのでしょうか。キャラクターと著作権の関係について解説します。

キャラクターと著作権、アイディア・表現二分論

「アイディア・表現二分論」と著作権法

著作権法は「アイディア」と「表現」を区別します。

著作権法の基本的な考え方に、「アイディア・表現二分論」と呼ばれるものがあります。

まず前提として、著作権法は「著作物」に対して発生する「著作権」を保護するための法律なのですが、ここでいう「著作物」とは

思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

著作権法2条1項1号

です。そして法律は、「人が何かを創造する」という行為を、「アイディア」と「表現」に区別します。例えば

  • セーラー服姿で口にパイプをくわえていて、ほうれん草を食べると超人的なパワーを生み出す30代の男性海兵(というアイディア)
  • 具体的に紙の上に描かれたポパイの絵・イラスト(という表現)

といった区別です。頭の中にある思想や概念といった「アイディア」と、現実に紙や譜面やディスプレイ上に描かれた「表現」を区別する、という考え方です。そしてこの上で、

  • アイディア:特許権や実用新案権によって保護を行う。このため「発明」など高度なものだけが保護対象になるし、また、出願を行うなど法定の手続を踏まないと権利が発生しない
  • 表現:著作権によって保護を行う。素人が紙の上に10秒で描いた花の絵にも著作権は発生し保護対象になるし、出願手続なども不要で描いた瞬間に自動で権利が発生する

というように、保護の程度に明確な差を設けています。簡単に言えば、

頭の中のアイディアは基本的には皆の物で、たまたま最初に思いついた人に法的な保護を与える場合は限定的であるべきだし、手続を経て「このアイディアには誰かの権利がある」と公開させなければならない(そのために出願などの手続を定める)。
しかし具体的な表現については、芸術的価値などとは無関係に保護を与える。その方が、他の人が新たな表現の創造を行うことを促進できる。

というのが、法律の基本的な発想なのです。

「キャラクター」はアイディア

キャラクターと「アイディア表現二分論」の関係とは?

この上で、例えば「ポパイ」「ドラえもん」「初音ミク」といった、あるキャラクターの設定・特徴・人格といったものは、表現ではなくアイディアであると考えられています。

「ポパイ」のイラストを無断で描くことが著作権侵害にあたるか否かが争われた事件、いわゆる「ポパイ事件」で、最高裁は以下のように述べ、著作権侵害を主張するのであれば、「キャラクターが無断で利用された」ではなく「ある具体的な絵・イラスト(例えば第●巻の第●話のイラスト)が無断で利用された」というように、「どの絵・イラストを盗まれたのか」を特定するべきであるという旨を判示しました。

著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもので」(同法2条1項1号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が、反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。

最高平成9年7月17日判決

つまり、

  1. ある設定・特徴・人格を有する「キャラクター」(というアイディア)
  2. 1に基づいて具体的に作者が描いたイラスト(という表現)
  3. 2を模倣して第三者が無断で描いたイラスト(という表現)

作者が持つのは、「1(キャラクター)に関する著作権」ではなく「2(具体的なイラスト)に関する著作権」であり、3を描く行為は「2(具体的なイラスト)に関する著作権の侵害」にはなり得ても、「1(キャラクター)に関する著作権の侵害」にはならない、という構造です。

デフォルメ化なども「翻案」で著作権侵害

ポパイ事件の複雑なポイント

ただし、このポパイ事件で「キャラクター」と「表現」の区別が最高裁まで争われたことには、一つの特殊事情があります。ポパイは1929年に生み出されたキャラクターであり、初期作品については米国司法による判断で、著作権による保護期間が満了していた、という点です。つまり、下記のような構造です。

時間軸の中のどの絵に基づくか次第で、著作権の存続の有無が異なる事案でした。

「一つのキャラクター(アイディア)」について描かれた絵・イラスト(表現)が、時間軸の中で大量に存在し、その中のどれかに基づいて作成されたと思われる「無断作成された絵」が存在する。これがどの絵に基づいて作成されたか次第で、

  • 「著作権切れの絵・イラストに基づいて作成された(したがって著作権侵害とならない)絵・イラスト」なのか
  • 「著作権が存続する絵・イラストに基づいて作成された(したがって著作権侵害となる)絵・イラスト」なのか

結論が分かれる、という事案だったのです。

通常の場合、例えばある漫画キャラクターに関する無断作成イラストがある場合に、「そのイラストは具体的には第●巻の第●話のイラストの模倣なのか」という点が問題になるケースは、あまりありません。

著作権法が禁止する「翻案」とは

著作権法は、あるキャラクター(について描かれた絵・イラスト)が存在する場合に、そのデッドコピーや単純模倣だけでなく、そのキャラクターのデフォルメ化なども含めたある程度の範囲を、「翻案権侵害」という形で禁止しています。法律的な言い回しとしては、

既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持つつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為

最高裁平成13年6月28日判決

とされています。

例えばGoogleで「初音ミク」を画像検索すると、オフィシャルのイラストだけでなく、ネット上の様々なユーザーが作成した、デフォルメ化された同キャラなどが見つかります。

Google「初音ミク」画像検索結果

これらも、オリジナル初音ミクの「翻案」とは言えるでしょう。

オリジナルとある程度異なる絵も翻案権侵害となります。
  • オリジナルの絵・イラストと全く同じもの(デッドコピー)や、ほぼ変わらないものは「複製権侵害」
  • オリジナルの絵・イラストをデフォルメ化させたものなどは「翻案権侵害」

というのが著作権法の構造であり、結局どちらも著作権を侵害することに変わりがないのです。

著作権とライセンス・ガイドライン

ただし、こうした「複製権侵害」や「翻案権侵害」になるイラストの作成・公開は、初音ミクの場合、「キャラクター利用のガイドライン」において一定範囲で許諾されています。

一般に「版権物」と称されるキャラクターについて、原画をそのままのかたちで、またはみずから描いたイラストなどのかたちにして(いわゆる「二次創作物」)、その権利者の許諾がないままインターネットなどで公表することは、著作権法などの法律によって禁じられています。『初音ミク』などの当社キャラクターも、法律によって同じように扱われます。
一方、クリエイターにとって、自ら汗をかいて制作した作品を、それが二次創作物であってもインターネットなどで公表したいと思うことは自然な願望です。当社も、営利を目的としない利用については、当社のキャラクターをできる限り使っていただきたいと思っています。

piapro(ピアプロ)|キャラクター利用のガイドライン

このガイドラインは、「デフォルメ化などを行っても初音ミクの著作権との関係で翻案にあたることは当然」だが「それを一定範囲では許諾する」という建付となっている訳です。

言い換えれば、自分や自社が著作権を有するキャラクター(を描いたイラスト)について、

  • ライセンス契約を締結した特定の者に対して使用を許可すること
  • ガイドライン等を設けて不特定多数に対して一定範囲で使用を許可すること

は可能です。この前者が、いわゆる「IP(知的財産)ビジネス」となる訳です。

「キャラクターの著作権」と事業譲渡

キャラクターと著作権の関係は、事業譲渡の場合にも問題になります。

このように、キャラクターに関する著作権の概念は、少し複雑です。

このことは、いわゆるIP(知的財産)ビジネスにおける様々な場面で、問題となります。例えば、あるVTuberという「キャラクター」に関して、個人ユーザーから会社、会社間での「事業譲渡」を行う場合等です。事業譲渡とは、例えば、

  • YouTubeチャンネルの管理権限
  • Twitterアカウントの管理権限
  • そのVTuberの公式サイトの管理権限や、サイトを構成する各種要素の著作権

といったように、「ひとまとまり」の事業を全てまとめて売買等するスキームなのですが、この事業譲渡においては、譲渡対象となる「ひとまとまり」を具体的にリストアップし、契約書上に明記する必要があります。

その際に例えば

VTuberキャラクター「●●」の著作権

といった記載を行ってしまうと、本記事で詳述してきたように「そもそもキャラクターには著作権が存在しないのでは?」という問題になってしまうからです。例えば

●●氏がVTuberキャラクター「●●」について●年●月●日乃至●年●月●日に描いた全てのイラストの著作権

というような記載の方が対象の明確性という意味でベターであると言えるでしょう。

まとめ

このように、「キャラクター」と「著作権」の関係は、少し複雑です。「キャラクターの著作権」に関わるビジネス、例えば、あるVTuberキャラクターだとして、その

  • 他メディアへの展開
  • 二次利用ガイドラインの作成
  • ゲームなど他事業を行う企業とのコラボ
  • 事業譲渡(売却)

といった場面では、IP(知的所有)ビジネスに関する知識やノウハウのある弁護士に相談を行う方が良いものと言えます。

なお、「キャラクター」を保護する権利は、著作権だけではありません。例えば、キャラクター名を保護するのは「商標権」です。こうした他の権利に関する解説は他記事にて行っています。

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