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美容整形クリニックへの口コミによる名誉毀損判断のラインとは

美容クリニックを探す時に大きな参考情報の一つになるのが、口コミです。実は、美容クリニックは、口コミを書き込まれやすい業種の一つでもあります。

美容クリニックは一般的な病気の診療とは異なり、仕上がりの美しさが求められます。この美しさは主観による部分も多いため、どのような仕上がりになるのか事前に十分に確認してから受診したいというニーズが患者側にあります。このことは、美容クリニックの口コミが書き込まれやすい一因といえるでしょう。

もっとも、美容整形は患者本人にとってはセンシティブな問題であることも多いため、美容クリニックの医師やスタッフのちょっとした対応がクレームにつながり、誹謗中傷の口コミがインターネット上に書き込まれることも起こりがちです。

そこで、美容クリニック向けに、どのような口コミが名誉毀損と判断されるのかを解説します。

美容クリニック特有の口コミの特徴

美容クリニックに対する誹謗中傷の口コミとしては、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 医師や職員の対応に対する口コミ
  • 医師の技術力に対する口コミ

医師や職員の対応に対する口コミ

美容クリニックの口コミの特徴として、医師や職員の発言や対応などに対する批判的な口コミが多いという点が挙げられます。美容クリニックの場合には、患者がクリニックに通うことを秘匿したいと感じていることが多く、有名人であればなおさら、周囲に知られないように注意を払いながら来院します。

このため、医師や職員が個人情報に配慮のない態度をみせたりすると、患者が敏感に感じる傾向にあります。

また、容姿にかかわることは、患者本人にとっては非常にセンシティブな問題です。このため、医師や職員の何気ない一言が患者の気持ちを傷つけるということが起こりやすいといえます。

医師の技術力に対する口コミ

美容クリニックの経営に大きな影響を与えるのは、医師の技術力に関する口コミです。美容整形については失敗した場合に取り返しがつかないと考える患者が多いため、医師の技術力を事前に把握したいと考える傾向にあります。したがって、技術力に対する中傷の口コミが増えると、受診する患者が減少しやすいといえます。

他方、医師からすると問題がないと思える誤差についても、審美的な観点から患者が納得しなければ誹謗中傷の口コミにつながるリスクも高いと言えます。

口コミが名誉毀損となる要件

名誉毀損となる口コミの書き込みは、名誉毀損罪(刑法230条)として刑事罰の対象になるだけでなく、民事上は不法行為として損害賠償(慰謝料)の対象にもなります。

また、インターネット上の口コミが名誉毀損にあたると判断される場合は、書き込みがされた掲示板等から口コミを削除するよう請求することもできます。美容クリニックの口コミの削除に関しては、以下の記事でも詳細に解説しています。

口コミが名誉毀損になるためには、刑法230条に定める名誉毀損の要件を満たす必要があります。刑法230条の名誉毀損の要件は次の3つにわけることができます。

  • 公然と
  • 事実を摘示し
  • 人の名誉を毀損する

「公然と」とは、不特定又は多数が口コミを閲覧できる状態であれば足ります。インターネット上の口コミの場合には通常「公然と」されたものと認定されます。なお、会員制のサイトであっても会員が数十人以上いるのであれば「多数」といえますので、「公然と」という要件は満たします。

「事実を摘示」とは、具体的な事実を書き込まれたことを意味します。よりわかりやすく言うと、真実かそうでないかを一義的に判断できるものがここでいう「事実」にあたります。

例えば、「顔が可愛くない」というのは主観的評価に過ぎず、真偽の判断ができません。これに対して、「クリニックの職員が○○という侮辱的な発言をした」という口コミは、発言部分に限れば真偽の判定が可能です。したがって、後者は「事実を摘示」したものといえます。

「人の名誉を毀損する」とは、口コミをされた人や事業者の社会的評価を下げたことをいいます。これは、口コミによって本人が自尊心を傷つけられただけでは足りず、客観的に見て評価が低下したといえる必要があります。

名誉毀損の要件に関しては、以下の記事でも詳細に解説しています。

美容クリニックの口コミが名誉毀損となるケース

過去に裁判で争われた事案を参考に、美容クリニックへの口コミが名誉毀損と判断されるのはどのようなケースであるか説明します。

なお、以下の説明はあくまでも目安です。事案ごとに事情は異なりますので、同じような口コミをされたからといって必ず名誉毀損となるとは限りません。

実際に、誹謗中傷の口コミを投稿されて名誉毀損になるか判断に迷う場合には、事前に弁護士に相談することをおすすめします

治療費が高いにもかかわらず技術力が低いとの口コミ

美容クリニックではありませんが、歯科医院に対する口コミが名誉毀損にあたるか争われた裁判例として東京地方裁判所平成30年4月26日決定があります。

この裁判例の詳細に関しては、以下の記事でも詳細に解説しています。

このケースでは、「治療費がホームページの記載より高い」、「セラミックを使って治療した歯が○○本すべて、直ぐに虫歯になり、どうにかして欲しいと言っても何もしてくれなかった」などといった口コミが投稿されました。

特に、後者の口コミは閲覧した人に、虫歯治療の目的がまったく達成できない技術力のクリニックであるとの印象を与えます。

歯医者の治療を受ける目的は虫歯治療や再発防止であることからすれば、このような口コミをみた人は受診を控える可能性が極めて高いことから、クリニックへの名誉毀損にあたると判断されたものと思われます。

そのうえ、このケースではクリニック内の全記録を精査したところ、「直ぐに虫歯になり、どうにかして欲しいと言った」という口コミの内容に合致するクレーム記録がありませんでした。

このため、口コミに記載された事実関係自体が真実でない可能性がありました。

美容整形の施術歴を他の患者の前で話されたとの口コミ

東京地方裁判所令和2年6月24日判決は、美容クリニックで病院のスタッフが他の患者がいる前で大きな声で患者の施術歴を話した、という口コミを書き込まれたケースにおいて、美容クリニックの社会的評価を低下させるものと判断しました。

美容クリニックで、他の患者がいる前で特定の患者の施術歴を大きな声で話したとの口コミは、クリニックが個人のプライバシーに対する配慮を欠いているという印象を与えます。

美容クリニックの患者は通常は施術歴を秘匿したい気持ちが一般的に強く、このような口コミは美容クリニックとしては致命的ともいえます。

このため、裁判所は、美容整形の施術歴を他の患者の前で話されたとの口コミはクリニックの社会的評価を低下させるものと判断しました。

ただし、このケースについては施術歴を話したことは真実であることが証明されています。そして、最終的には、口コミについては公共性があると裁判所は判断したことに注意が必要です。

この結果、名誉毀損の要件は満たすものの違法性が阻却され、口コミを投稿した患者は慰謝料支払い義務を負いませんでした。

美容整形の施術歴を他の患者の前で話されたという口コミに関しては、以下の記事でも詳細に解説しています。

まとめ

美容クリニックに対する批判的な口コミが名誉毀損になるかどうかは、かなりケースバイケースです。もっとも、ある程度の判断の傾向は見受けられます。

美容クリニックの口コミの内容は、医師の技術力に対するものと、スタッフ等の対応に対するものとに分かれますが、いずれの口コミであっても、第三者から見たときに美容クリニックとして「致命的」といえる内容か、その口コミを見た人が受診を控える可能性が高いか、という観点から総合的に判断されているといえるでしょう。

美容クリニックからすると誹謗中傷の口コミは、クリニックの経営を左右する非常に大きな問題です。インターネットの特徴として、中傷の口コミを放置すると、どんどん拡散されていきます。

中傷の口コミを放置すると、どんどん拡散されていきます。

このため、美容クリニックに対する誹謗中傷のコメントを発見したらできるだけ早い段階で法的措置を講じることが重要です。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。

近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。

美容クリニックに対する誹謗中傷に関する口コミなども放置してしまえば、やがてはクリニックの経営にも影響を及ぼしかねません。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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