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ICOの方法と弁護士の関与が必要な理由

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ICOの方法と弁護士の関与が必要な理由

ICO(Initial Coin Offering)は、仮想通貨(いわゆるトークン)の発行と引き換えに、新規事業の立ち上げ等に必要となる資金を調達する手法を言います。こうした資金調達の手法は、株式公開(いわゆるIPO)とよく似たプロセスを経て進んでいくものですが、仮想通貨というIT技術を用いることから、ITエンジニア等の技術者との協働なくしては実現が困難なのは言うまでもありません。加えて、ネット上での広報・話題づくりが重要になることから、魅力的な広報媒体・メディアを立ち上げるためにWebデザイナーやライターといったようなクリエイティブ人材の活用も当然重要になります。

もちろんICO・仮想通貨まわりの法整備がまだまだ未熟な本邦においては、不測のトラブルや紛争リスクに備えるためにも、弁護士もまた重要な存在となるでしょう。

エンジニア・デザイナー・ライターといったIT系のクリエイティブ人材と、弁護士という法務の専門家が歩調を合わせてプロジェクトを進めていく必要がある点はまさに、ICOという資金調達プロジェクトの面白さや難しさを、ある意味象徴するものでもあるかもしれません。両者はそもそも業界自体が異なっており、それゆえ仕事に対する考え方・ワークスタイルにかかわるところでも、ともすれば互いに異質なもの同士にさえ見えるかもしれません。

本記事では、企業がICOを行う際に進めるべき段取り・手順について整理するとともに、IT系のクリエイターと弁護士が協働して働くことの意義、そしてその際に相互に意識しておくべきことなどについて考察しています。

IT系のプロジェクトの一般的な進行プロセス


IT系プロジェクトであるICOでは 、多数の人材と組織が関わってきます。

「上流工程」、「下流工程」といった言葉を聞いたことがあるでしょうか。こうしたプロジェクトの進め方は、現代ではむしろ賛否両論あるところではあります。しかし今日のIT系技術者の仕事の進め方・考え方をもっとも端的によく現すのは、やはりこういった言葉でしょう。いわゆるウォーターフォールモデルという、プロジェクトの進行を取り仕切るための古典的な考え方にまつわる言葉です。すなわち、川の上流から下流に一気に下り落ちていく水のように、あらゆるタスクの進行は、手順の前後や手戻りを挟むことなく一気通貫すべきであるという思想を表現するものです。

こうした話は、なにもICOに限ったものではなく、一般的にIT系のクリエイティブ人材には広く共有されている文化ともいうべきものです。ICOのような先端的な技術を例にとるまでもなく、たとえばごく一般的なITシステムの開発においても、戦略・企画・設計といった全体構想にかかわる話(=上流工程)に始まり、プログラミングの実装やテストという詳細部分の作りこみ(=下流工程)の話に進んでいくという一連の流れは、最早定石ともいうべきものでしょう。

全体像の構想にはじまり、全体との整合性に気を配りながら詳細部分の作りこみに進んでいくという思想は、IT系のクリエイターにかかわらず、ある意味すべてモノづくりに通底する、ある種の普遍的なパターンとも言えるかもしれません。戦略や企画の立案、PM(プロジェクトマネジメント)を主とするコンサルタント、そして実装技術に長けた技術者(すなわちエンジニア)、こうした人たちが協働でモノづくりを進める構造は、建設業界(いわゆるゼネコン)にも類似のものが見られます(もっとも歴史的な順序でいえば、IT系のが仕事の「お作法」それ自体がそもそも、建設現場のアナロジーのもとに洗練されてきた経緯だと見るべきなのでしょうが)。

題材がなんであれ、あらゆるモノづくりは、細かい部品の積み重ね・積み上げで成り立つものだということなのでしょう。多くの人手(いわゆる「工数」)、そして多数の人員の力を借りてひとつのプロジェクトが成り立っている以上、不測のトラブル・事故、ないしは事件を防止すべく、プロジェクトの全体像の構想・計画立案の段階で、高いレベルでの「綿密さ」が要求されるという話なのだとも言えるでしょう。

ICOの場合の進行プロセス

では、上記のような理解を踏まえて、ICOでは、一般的にどのような「工程」を経てプロジェクトは進んでいくものなのでしょうか。以下にタスクを示していきます。

ICOの企画・全体構想

トークンを市場での流通を前提とする「仮想通貨」的なものにするのか、電子マネーのように交換レートを事前に明確にして行うのか等の、全体的なスキームの構築をまず行います。

コンテンツの実装

トークンの発行、広報媒体、ホワイトペーパー等のコンテンツの実装を行います。

ICOの告知

対外的に当該ICOの存在を知らしめ、出資を募ります。

オファーの設定

ホワイトペーパーに書かれている一般的な内容を踏まえつつ、さらに個別の投資家との間で交渉が行われる場合には、さらに細やかに条件面についての話し合いが必要となります。

プレセールの実施

後述のクラウドセール・トークンセールの前に、先行して投資を行ってくれる投資家向けに、一般投資家にはない特典を謳うトークンを発行したり、より安価にトークンを販売する場合があります。

クラウドセールの実施

不特定多数の一般投資家にむけて、トークンの販売を行います。

ICO実施後の、各種IR活動

一連の資金調達活動にかかわった利害関係者にむけて、IR活動を行います。その内容は、当該トークンの法的性質に基づいて、なにを盛り込むべきかが変わってきます。

ICOに弁護士が参与が必要なのはなぜか

ICO実行にも弁護士の役割が重要となります。

ICOはそれ自体が、IT系のプロジェクトであることから、多数の人と組織が関与して進んでいくことになるのが通常です。またそれが、企業活動の資金調達にかかわるプロジェクトであることから、必然的に巨額なマネーが動く商取引ともなりがちです。大勢の人員、そして多数の利害関係者が絡み、またさらに大きなお金が動く大規模プロジェクトであるからには、つねに予期せぬ紛争と隣り合わせであることは言うまでもありません。紛争には様々な原因があり得ますが、例えば、「瑕疵」が発見されてしまった場合には、「瑕疵担保責任」の問題となります。

また加えて、その大規模プロジェクトがICOであるからには、そこにはICO固有の法律問題が絡んできます。日本ではICOについての法整備があまり成熟しておらず、いくつもの既存法が重層的にICOに規制を及ぼしている状況となっています。こうした状況であるがゆえに、適法なものと違法なものを峻別するだけの高度な法的リテラシーを有する人材が、なにかと必要とされるという事情もあるのです。本邦におけるICOの法的規制の状況については、別記事で詳しく解説しています。

弁護士の働き方をめぐる一般論と、その先にある展望

ところで、ここで一旦話題を変えて、弁護士業務というものの性質について考えてみることにしましょう。弁護士の特徴のひとつには、資格に裏付けられた高度な専門性が挙げられるでしょう。他人の訴訟代理人になることをはじめとした弁護士資格だけに付与される独占業務の存在は、大きな裁量を持ち、そして専門家として活動することを前提としたものです。

また、IT系の諸々の「モノづくり」のプロジェクトとの比較でいえば、弁護士は「一人親方」的な働き方に向かっていく傾向が強いのも一つの特徴といえます。「裁判沙汰」、「弁護士マター」といったような言い回しに象徴されるように、世間的にも弁護士は、紛争場面という、ごく限定的なイレギュラー事態においてこそ実力を発揮する、いわば「下流工程のスペシャリスト」としての役回りが求められる場面が多くなりがちなのかもしれません。

もっとも弁護士業務の歴史も一枚岩ではありません。たとえば企業のM&Aなども、昔と変わって企業法務の領域のひとつとして、今や弁護士の職域として広く認知されるに至っています。全社的な戦略の立案・そしてその実行にかかわるフェーズで包括的に弁護士が果たすべき役割は、本体決して小さいものではありません。この意味では、ICOも今後、弁護士の必要性は広く認知されていくようになるものと考えられます。



モノリス法律事務所は、NHKドラマ「デジタル・タトゥー」の原案を務める代表弁護士の下、企業・個人の風評被害対策を多数手がけております。

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