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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

独自ドメイン管理者を特定する「whois」とは

風評被害対策

独自ドメイン管理者を特定する「whois」とは

弁護士が通常手がけている事件とネット上の誹謗中傷対策は、「相手方がどこの誰か分かっているかどうか」という点において、大きく異なっています。

例えば弁護士の手がける離婚案件の場合、ある男性に依頼を受け、その配偶者である女性との離婚に関する交渉を行う事件であれば、相手方は「依頼者の配偶者である女性」。その住所氏名は、当然に分かっています。また弁護士の手がける債権回収事件の場合、ある企業に依頼を受け、その取引先企業に対して「商品を納品したのだから代金を支払ってくれ」と交渉を行う事件であれば、相手方は「依頼者の取引先である企業」。その住所や会社名は、当然に分かっています。内容証明郵便を送るにせよ、交渉が決裂して裁判を行うにせよ、「相手方の住所氏名は当然に分かっている」というのが、スタートラインなのです。

誹謗中傷対策の「相手方」は匿名な場合が多い

しかしネット上の誹謗中傷対策は、これと異なります。「相手方」とは、例えば「ネット上の匿名サイトを運営する個人」。ある匿名サイトの記事を消すためには、その匿名サイトの運営者を「相手方」として、「そちらのサイトに掲載されているこの記事を消してくれ」と求めるのが、少なくとも最も直接的です。しかしその「ネット上の匿名サイトを運営する個人」なる者は、一体日本の何処にいる誰なのか、全く分かりません。この状態では内容証明郵便も送りようがないし、裁判も起こしようがないのです。

したがって、まず手始めに、問題の投稿を行った投稿者特定をする必要があります。

では、「ネット上の匿名サイトを運営する個人」を、どう特定するのか。特定者投稿の手段はいくつかあります。その中の一つであり、そして、最も基本的な手段が、「whois」です。

独自ドメインとwhois

「ネット上の匿名サイト」の中には、いわゆる「独自ドメイン」で運営されているサイトがあります。「独自ドメイン」とは、サイトの運営者が自ら取得した「ドメイン」。URLにおける「http://」の直後の部分が「ドメイン」です。サイトを作る場合、自分で「ドメイン」を取得するか、業者が取得した「ドメイン」を利用させてもらうか、という選択肢があります。

例えばアメブロの場合、URLは「http://ameblo.jp/monolith-law/」といったものになります。これは、アメブロが取得している「ameblo.jp」というドメインを利用させてもらう形であり、いわゆる「独自ドメイン」ではありません。自分で、例えば「monolith-law.jp」というドメインを取得し、「https://monolith.law/」といったURLでサイトを運営するのが、いわゆる「独自ドメイン」です。

ドメインを取得する者は、自分に関する情報を、「whois」という形で登録・公開する必要があります。ドメインはある程度公的なものであり、例えばそのネットワークの安定的運用のため、技術的な問題が発生した際にはどこに連絡すれば良いのか、情報が公開されている必要があるのです。したがって、ドメイン登録の際には、その連絡先情報を登録して公開しなければならない。その登録者情報を参照するためのサービスが「whois」です。

例えば、whois情報からは、下記のような情報が得られます。

Contact Information: [公開連絡窓口]
[名前] 河瀬 季
[Name] KAWASE TOKI
[Email] kawase@monolith.law
[Web Page]
[郵便番号] 100-0004
[住所] 東京都千代田区大手町1-9-5 大手町フィナンシャルシティノースタワー21階
[電話番号] 03-6262-3245

このように、独自ドメインサイトの場合、whois情報を参照することでドメインの登録者を調べることができ、ドメインの登録者とは、通常サイトの運営者と一致します。これによって、投稿者特定を行うことができるのです。

なお、whois情報は「ANSI Whois Gateway」などのウェブサービスで確認できます。

「ANSI Whois」の詳細な使い方は下記記事にて解説しています。

匿名ドメイン登録サービスもある

もっとも、中には、下記のような情報が登録されている独自ドメインもあります。

Registrant Name: Registration Private
Registrant Organization: Domains By Proxy, LLC
Registrant Street: DomainsByProxy.com
Registrant Street: 14747 N Northsight Blvd Suite 111, PMB 309
Registrant City: Scottsdale
Registrant State/Province: Arizona
Registrant Postal Code: 85260
Registrant Country: US
Registrant Phone: +1.4806242599
Registrant Phone Ext:
Registrant Fax: +1.4806242598
Registrant Fax Ext:
Registrant Email: TOKUMEI.NET@domainsbyproxy.com

これは、「GoDaddy」という海外のドメイン取得用業者が用意している、匿名ドメイン登録サービスです。

「ドメインを取得する場合には、登録者の住所氏名をwhoisで公開する必要がある」というのは、例えば女性ブロガーにとっては酷です。「アメブロで料理ブログを運営していたら人気が上がってきたので、そろそろ独自ドメインを取りたい」という場合に、「では住所氏名を公開して下さい」と言われても、ストーカー被害などが怖いでしょう。そうした場合にドメイン取得用業者に依頼し、「Private」として、いわば「代わりにドメインを取得してもらう」のが、匿名ドメイン登録サービスです。したがって、ここに表示されているのは、当該ドメインを取得した個人の住所等ではなく、「GoDaddy」というドメイン取得用業者の住所等ということになります。 しかも、住所を見れば分かる通り、「GoDaddy」はアメリカの業者。投稿者特定を行うために、日本から「そちらでドメインを取得して運営されているサイトで誹謗中傷が行われているので、ドメイン登録者の住所と氏名を教えて下さい」と送っても(この理由はここでは割愛しますが)、おそらく相手にされません。

こうした場合には、様々な「ノウハウ」を用いて、当該匿名サイトの運営者に関する調査を行っていく事になります。とはいえ、個人ではそのようなノウハウを有していないのが通常です。匿名ドメイン登録サービスが利用されている場合には、投稿者特定を弁護士に依頼することをお勧めします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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