ネットにおけるストーカー行為は弁護士に相談するべきか

ネットにおけるストーカー行為は弁護士に相談するべきか

ストーカーは元配偶者や別れた恋人のような身近な人物とは限りません。見ず知らずの相手から執着されることもあります。SNSで知り合った相手からのネットストーカー被害も、後を絶ちません。

警察庁がまとめた2018年の「ストーカー事案の相談等件数は」21556件です。また、ストーカー規制法に基づく「警告」は2451件で2016年以降減少していますが、逆に「禁止命令等」は1157件(うち緊急禁止命令等は483件)で、2016年以降急増しています。

「ストーカー規制法違反」の検挙者は2018年には870人(ストーカー行為罪762人、禁止命令等違反108人)、「ストーカー事案に関連する刑法犯・特別法犯」の検挙者は1594人となっています。

ストーカー規制法とは何か

ストーカー規制法は「つきまとい等」を繰り返すストーカーを規制する法律で、正式な名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。

この法律が成立したのは2000年で、その前年の「桶川ストーカー殺人事件」がきっかけでした。

桶川ストーカー殺人事件
1999年10月26日、埼玉県桶川市のJR桶川駅前で発生。元交際相手(当時27歳)らにストーカー行為をされていた女子大生(当時21歳)が、元交際相手の実兄を含むストーカーグループに、白昼ナイフで刺殺された事件です。被害者家族は殺人事件発生の4ヶ月以上前から、加害者グループによるストーカー行為を上尾警察署に何度も訴え、加害者告訴まで行っていたのですが、上尾警察署はろくに取り合おうとしませんでした。そのあげくに発生してしまった事件であり、遺族は「娘は加害者と警察に殺された」と、警察をも非難しました。

ストーカー規制法が成立する前には脅迫や暴行、住居侵入などが行われて初めて相手が逮捕されるという形であり、「つきまとい行為」自体の規制はありませんでした。

そのため「つきまとい行為」を受けて身の危険を感じて警察に相談しても、上尾警察署の場合は特殊ですが(事件後、3人の懲戒免職者を含む15人が処分されました)、どの警察署でも効果的に対応することができなかったのです。

ストーカー規制法の改正

「桶川ストーカー殺人事件」がきっかけとなって作られたストーカー規制法は、時代の変化、特にインターネットの発展とともにストーカー行為が変化し、それに合わせて2度改正されて現在に至っています。

2013年7月のストーカー規制法改正

ストーカー規制法が成立した2000年当時、Eメールはまだ一般的ではなかったので、「つきまとい行為」にはEメールの送信が想定されていませんでした。

2012年に神奈川県逗子市で起こった「逗子ストーカー殺人事件」がきっかけとなり、「つきまとい行為」に「Eメールの連続した送信」が追加されました。

逗子ストーカー殺人事件
2012年11月6日、神奈川県逗子市のアパートでフリーデザイナーの女性(当時33歳)が刺殺され、犯人の元交際相手の男(当時40歳)が首吊り自殺した事件。2人は2004年頃から交際していましたが、2006年4月頃に別れ、被害女性は2008年夏に別の男性と結婚し逗子市に転居しました。加害者の男には新しい姓や住所は隠していたのですが、被害女性が新婚生活を度々facebookに投稿していたため、2010年4月頃に被害女性の結婚を知った加害者から嫌がらせのメールが届くようになりました。メールは次第にエスカレートし、2011年4月には「刺し殺す」などと脅すメールが1日に80通から100通送りつけられたため、被害女性は警察に相談し、同年6月に脅迫容疑で男は逮捕され、同年9月に懲役1年・執行猶予3年の有罪判決が確定しました。しかし、2012年3月下旬から4月上旬にかけて、被害女性は計1089通に上る嫌がらせメールを男から送りつけられました。メールには「結婚を約束したのに別の男と結婚した。契約不履行で慰謝料を払え」などと書かれており、女性は警察に相談しましたが、警察は違法行為に該当しないとして立件を見送りました。 一方、4月上旬以降はメールが届かなくなり女性は安心していたのですが、男はYahoo!知恵袋で情報を収集し、また探偵を雇って被害女性の居場所を調べ、11月の事件となりました。

2016年12月のストーカー規制法改正

2013年7月の改正で「つきまとい行為」に「Eメールの連続した送信」が追加されましたが、その後、LINEやTwitterやFacebookなどのSNSが発展しました。友人や知人と連絡を取り合うのには、EメールよりもSNSの方が多くなってきました。しかし、これらの行為は「Eメールの送信」とは別の行為であるとされ、2013年の改正でも対象外でした。

2016年に東京都小金井市で起こった「小金井ストーカー殺人未遂事件」がきっかけとなり、「TwitterやLINE等のSNS等でのメッセージの連続送信や、個人のブログへの執拗な書き込み」が、「つきまとい行為」に追加されました。

小金井ストーカー殺人未遂事件
2016年5月21日に東京都小金井市で発生した殺人未遂事件。芸能活動を行っていた女子大学生(当時20歳)を、ファンを自称する男(当時28歳)がTwitterなどのSNS上でストーカー行為を繰り返した後、小金井市内のライブハウスでナイフで刺殺しようとしました。男は京都に在住する会社員で、Twitterで女子大学生と接触を試みたが返信がなく、一方的に贈り付けたプレゼントを返却するよう彼女やその関係者に要求。しかし、警察にはプレゼントとして贈った腕時計を返送されて逆上し、殺害を計画したと供述しており、腕時計を返却された後はさらに書き込みが過激化していました。

ストーカー規制法

「ストーカー行為等の規制等に関する法律」で規制の対象となるのは、「つきまとい等」と「ストーカー⾏為」の2つです。

第一条には、「この法律は、ストーカー行為を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的とする」とあります。

「つきまとい等」とは

第二条では、「この法律において『つきまとい等』とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう」とし、次の8項を挙げています。

  1. つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
  2. 監視していると告げる行為
  3. 面会や交際の要求
  4. 乱暴な言動
  5. 無言電話・拒否後の連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等
  6. 汚物等の送付
  7. 名誉を傷つける
  8. 性的羞恥心の侵害

ストーカーは凶悪事件へ発展する可能性が高いため、初期のうちに厳しく対処すべき行為ですが、「貸した金を返してほしい」「合意事項を実行してほしい」などという連絡を繰り返し行ったからといって、ストーカー犯だと訴えられては困ります。 第二条で「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」と定義しているのは、このためです。

「ストーカー行為」とは

同一の人に対し「つきまとい等」を繰り返して行うことを「ストーカー行為」と規定し、罰則が設けられています。ただし「つきまとい等」の1から4及び5(電子メールの送受信に係る部分に限る)までの行為については、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われた場合に限る」とされています。

ストーカーは、たいへん恐ろしいものであり、特に相手の顔が見えないネットストーカー被害を受けると、生きた心地がしなくなる場合すらあります。

上の「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われた場合に限る」という限定は、頼りなく、不安に思えるかもしれません。 しかし、警察も「すぐには動かない」などと言っているわけではありません。身の危険を感じたら、直ちに最寄りの警察署に相談しましょう。

警告と禁止命令

ストーカー殺人事件では、被害者の供述だけでいきなり逮捕されることはあまりありません。

まず、被害者から届を受けた警察が事実関係を確認した時点で「警告」が⾏われます。警告の⽅法は、状況に応じて電話などによる⼝頭注意にとどまる場合や、警察署へ呼び出される場合があります。

その後、それでもストーカー⾏為をやめなかった場合には、「禁⽌命令」が出されます。なお、被害者への危険性が及ぶ可能性がある場合に限り、「警告」がなくいきなり「禁⽌命令」が出されることもあります。 冒頭であげた警察庁資料にあった、ストーカー規制法に基づく「警告」は2451件で2016年以降減少し、「禁止命令等」は1157件(うち緊急禁止命令等は483件)で、2016年以降急増しているというのは、執拗、悪質なストーカー犯が増加しているということなのです。

ストーカー行為の罰則

ストーカー行為をした者は、

  • 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第18条)
  • 禁止命令等に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(第19 条)
  • 禁止命令等に違反した者は、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金(第20条)

と、なっています。

また、2016年の改正で親告罪とする規定が削除され、「告訴がなくても控訴を提起することができる」(第18条)、つまり非親告罪となりました。

ネットストーカー行為を弁護士に相談すべき場合

ネットストーカー被害にあった場合、一人で悩んでいても解決しませんし、こちらが何もしないでいると思ったら、ストーカーはますます図に乗り、行動がエスカレートしかねません。「時間をおけば沈静化するかもしれない」という願望は、ほとんど現実化しません。

まず、警察に相談してみましょう。常軌を逸した行動であるなら、被害届を提出し、処罰を求めていると明確に意思表示しておくことが大切です。

警察が対応してくれない場合

警察に相談しても事件性がないと判断されてしまったり、ストーカー規制法の運用ができないとして、対応してくれない場合があります。

また、「警告」をしても⾏為をやめず、「禁⽌命令」を出しても無視し、逮捕されて迷惑行為をしないと誓約したにもかかわらず、懲りずにつきまといを繰り返すストーカーも多くいます。

そうした場合は、インターネットトラブルを強みとする弁護士に相談し、対応してもらいましょう。 警察は事件が起きたら動いてくれますが、起きなければ積極的には対応してくれない場合があります。しかし、弁護士は事件が起きる前でも、ネットストーカーに対抗できます。

相手が特定できない場合

ストーカー犯人が特定できず、警察や他の機関に相談できないという場合には、弁護士に相談し、投稿などから、発信者情報を開示する請求手続きを取ってもらいましょう。

法的措置を行う

犯人を特定したら、接近禁止の仮処分を申し立てることが可能となります。放置すると身体等に急迫した危険性があるとき、申立人に接近してはならないと裁判所に命令してもらうのです。

接近禁止の仮処分が行われたにもかかわらず、つきまといをやめない場合には、脅迫罪などの他の罪を問いやすくなります。

犯人を特定すれば、名誉毀損罪(刑法第230条)で訴えることができますし、損害賠償請求(民法第709条)をすることも可能となります。法律の専門家である弁護士であれば、様々な法的措置を考え、対抗することができます。 なお、個人情報をネットに投稿されている場合には、弁護士に記事削除を申請してもらいましょう。

ストーカーとの示談等

裁判になれば、犯人側が示談を申し込んでくる場合があります。ストーカー事件の場合には示談が大変重要な役割を持ってくるからですが、相手側からは被害者保護の観点から被疑者本人は出てくることはできないので、弁護士が出てくることになるでしょう。

この示談交渉を被害者本人が行うことは法律知識的にも心理的にも無理があり、弁護士に任せる方がいいでしょう。スピーディーな交渉が可能になりますし、精神的負担を最小化できます。

こうしたいろいろな観点から見る時、ネットにおけるストーカー行為は、経験豊富な弁護士に相談するべきだと言えるでしょう。

モノリス法律事務所

モノリス法律事務所は、NHKドラマ「デジタル・タトゥー」の原案を務める代表弁護士の下、企業・個人の風評被害対策を多数手がけております。

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