食べログの口コミでの風評被害の削除を巡る裁判

食べログの口コミでの風評被害の削除を巡る裁判

食べログは、カカクコムグループが運営するグルメサイトです。「お店選びで失敗したくない人のためのグルメサイト」をコンセプトとしており、ユーザーの口コミと共に全国のレストラン情報が掲載されています。

2019年4月初現在913,118店舗、30,313,856口コミが掲載されており、月間1億1800万人以上が利用しているとされています。

ある調査では「利用した経験のあるグルメサイト」で、食べログは80%で1位でした。このように大きい影響力を持っている食べログなので、悪い口コミが投稿されると、当該の飲食店には大きな痛手となります。

食べログはガイドライン違反で削除を求められる可能性もある

食べログのガイドラインはかなり厳しく、詳細に設定されています。だから、ライバル店からの営業妨害の投稿や、クレーマーなどからの嫌がらせの投稿などは、ガイドライン違反に基づいて、削除してもらえる可能性があります。これについては、当サイト内の別記事をお読みください。

明らかにガイドラインに違反するような投稿であれば、食べログへの通報で削除してもらえるでしょう。しかし、実際にはそのような明らかなケースばかりではなく、削除してもらえない場合があります。 そういう場合には、裁判で削除を求めることとなりますが、飲食店対食べログ(カカクコム)の裁判は、過去、どのようなものがあったでしょうか。

店の外装写真が事実と異なるとして削除請求を求めた事例

佐賀市内の飲食店が、2010年9月に食べログを提訴しました。

この飲食店は店舗リニューアルをしたのですが、食べログには改装前の写真や情報が掲載されたままだったので、「実際の店の状況とは異なり、客の誤解を招く」として、食べログを運営しているカカクコムに対して、店舗に関する情報の削除を求めました。

掲載されている情報が最新のものではないことを理由とした削除請求

カカクコムはこれに対し、「最新の情報ではないことを記載しており、掲載当時の情報としての誤りはないため、違法性はない」と反論しました。

確かに、現在も、例えば〇〇さんのある店についてのレビューの上に、

この口コミは、〇〇さんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。
最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。
利用規約に違反している口コミは、右のリンクから報告することができます。

と断ってあります。当時からほぼ同じだったようです。

「掲載当時の写真としては間違っていない」「だから、現在の写真と異なっていても違法ではない」という反論は、確かにその通りではあるかもしれませんが、飲食店主としては、せっかくお金をかけて改装したのですから、不本意だったでしょう。

ここで、飲食店主が請求したのは、自店が食べログに無断掲載され、おまけにその情報が現在のものと異なっているのだから、自店の情報を全削除せよというものでした。

これに対し、カカクコムは請求を拒否しました。

情報が明らかに誤っている場合は削除や訂正が認められやすい傾向?

両者の主張は隔たりが大きかったのですが、最終的にはカカクコムが店舗の情報や写真を削除し、飲食店側は訴えを取り下げることで合意して解決しました。

この件では、判決によって削除請求が認められたわけではありませんが、話合いで飲食店側の要望が認められたことには注目すべきです。

このような結果になったのは、食べログに「写真」が掲載されており、その内容が異なることが明らかだったからと考えられます。料理やサービスの内容とは異なり、事実関係を明らかにしやすい情報は、スムーズに削除請求が認められる可能性が高いと言えるでしょう。

長時間待たされたと書かれた店舗が削除請求を求めた事例

食べログの口コミの内容により、損害賠償となることも。

2013年5月、レビューに食べかけの写真と「料理が出てくるまで40分くらい待たされた」と書き込まれたことにより「客が激減した」として、札幌市内の飲食店主が食べログに対してページの削除と損害賠償を求め、札幌地方裁判所に提訴しました。

この飲食店主は2012年1月、自ら食べログに、経営する飲食店の情報を掲載しました。ところがそこに「料理が出てくるまで40分くらい待たされた」といった批判的な口コミを書き込まれてしまい、直後に店を訪れる客が激減しました。飲食店主は食べログが原因と考え、「40分待たされた」という内容が事実と異なるとして、「店情報そのものを含めて投稿を削除せよ」と求めましたが、食べログが拒否したため、店舗に係る情報を掲載していることについて不正競争防止法違反であり、又は原告の人格権に由来する名称権等を侵害するものであるなどと主張して、自店舗ページの削除と損害賠償を求めて訴訟を提起したのです。

2014年9月、札幌地裁は「本件店舗や本件サイトの運営主体の特定や識別を困難にするものではないから、(不正競争防止法の)冒用には当たらない」「口コミは営業権の侵害に当たらず、原告の要求を認めれば表現行為や情報が恣意的に制限されることになる」として、店主の請求を棄却しました。

不正競争防止法は「店の名前を掲載されない権利」を認めている訳ではない

不正競争防止法は、他人の有名な商品などの表示を自分の商品として表示使用することを禁止していますが、判決では、「当該店舗は不正競争防止法が適用されるほど著名なものではないし、カカクコム側に不正競争の目的がないこと」もあげられています。また、「店舗は広く客を募って営業行為をしているのであり、個人と同じような情報コントロール権は及ばない」ことも理由としています。

飲食店主は、札幌高等裁判所に控訴しましたが、2015年6月、同高等裁判所も地方裁判所と同様の判断をし、控訴を棄却しました。

理由としては、原審と同じように、「店の名称の利用は店舗や口コミを特定する目的のものなので、名称の冒用ではない」、「店の名称や所在地はすでに一般に公開されているので、同意なしに公開したとしても店の利益を侵害しない」というものでした。

この判決は「口コミの内容によっては、店舗の評判が低下するなど、一定の営業上の損害が発生する可能性がある」と指摘し、「店の名誉や信用を毀損する内容の投稿であれば削除が認められる可能性がある」ことに言及していますが、同時に、「社会的相当性のある口コミであれば、店舗側に営業上の損失が発生したとしても甘受すべき」とも判示しています。

飲食店主は、これを不服として上告しましたが、2016年6月、最高裁は受理しない決定をし、1、2審判決が確定しました。

興味深い例ではあるのですが、この裁判で争点とされたのは、店舗情報が掲載されている「ページ自体の削除」です。通常求めるのは「問題部分の削除」です。報道では、この点があまり意識されず、混同されているように感じます。「食べログに対して削除請求をしても、裁判では勝てない」と誤解している人が多いようですし、報道の一部にも、そうした言説が見られます。

誹謗中傷に該当するような口コミの部分削除であれば勝てるケースもある

店舗側はどのような書き込みがあったとしても、それを甘んじて受け入れるべきだという判決が出たかのような理解がありますが、そうではありません。

1審の札幌地裁は「サイトの利用者が得られる情報が恣意的に制限されることになってしまうので、(店側の請求は)到底認められない」とし、2審の札幌高裁も「飲食店を経営する以上、社会的に妥当な『口コミ』であれば損失があっても受け入れるべき」と判断しました。

これはまっとうな判断であり、法人であり会社であって、広く一般人を対象にして飲食店営業を行っているのであれば、個人と同様の自己に関する情報をコントロールする権利(自己情報コントロール権)を有するものではない、と考えるのは自然です。言い換えれば、論評され、批判されても、それが妥当なものであるなら、受け入れるべきです。また、店側に自店の情報が掲載される媒体を選択し、店が望まない場合にはこれを拒絶する自由を与えることになれば、他人の表現行為や得られる情報が恣意的に制限されることになってしまい、「表現の自由」と正面から衝突する結果となり、自由な表現が一切できないことになりかねません。

ただ、そのことと、「誹謗中傷に該当するような口コミを投稿されたとしても、その口コミ自体の部分削除もできない」ということは話が別です。名誉毀損に該当するような口コミの部分削除は、対食べログであっても、他のサイトと同じように可能であると思われます。

店の情報を掲載されたこと自体について削除請求をした事例

店舗情報の掲載をされたこと自体が問題であるとして、食べログ側に削除請求をした事例があります。

その飲食店は、広く宣伝することなく、口コミで「隠れ家的な」お店であることを売りにして営業をしていました。来客は、常連や常連が紹介する客がメインであり、ひっそりと営業していたのです。

しかし、ある日から突然「一見の客」が多く訪れるようになったため、不審に思った店主が調べてみると、食べログに自店の情報が掲載されていることが判明しました。

なお、この店では、「口コミ投稿を禁じます」という内容の表示をしていましたが、店舗自体のホームページはありました。

「自分の店に関する情報の公開範囲等を制限する権利」はあるのか

この事例では、食べログに掲載された情報自体が間違っていたわけではありませんし、誹謗中傷された記事を削除してほしいという請求でもありません。情報掲載によって店の営業が害されるとして、店舗の経営者は情報の削除、つまりページ全体の削除を求めたのです。理由としては、自己情報コントロール権侵害と営業権侵害を主張しました。

大阪地方裁判所は2015年2月、「情報コントロール権は人格権にもとづくものであるが、この権利は、不法行為や差し止めを認めるためのものではない」と判断し、削除請求の根拠にならないと判断しました。

また、営業権や営業遂行権侵害の点については、店舗情報の削除請求の根拠になりうるとはしながらも、店舗が自らホームページを持っていて店舗情報を公開していることなどから、食べログ側が削除請求に応じなかったとしても違法と評価されるものではない、と判断して、やはり飲食店側の請求を認めませんでした。

完全な「隠れ家店舗」であれば店自体の情報削除を求められる?

この事例では、飲食店がホームページやブログ、ツイッターなどによってすでに店舗情報を公開していたことを理由として飲食店側の削除請求を棄却したので、飲食店がこのような公開をしていなかったら削除が認められた可能性もあります。これは、興味深い点です。本当にあらゆる情報を出さない、いわば「完全な隠れ家」だったら、どういう判決になったでしょうか。

実際、判決文では、営業権または業務遂行権について、「営業の自由、職業活動の自由は、憲法22条1項の職業選択の自由に包摂されるものとして、保障されているものと解される。この権利の享有主体は、個人のみならず、法人においても認めることができる。したがって、原告は、自らの業務遂行のため、自己の情報に関し、公開するかどうかについて、選択する権利又は利益を有する」として、法人が、その業務遂行に際して、自己の情報を公開するかどうかを選択する権利・利益は、保護されるべきものであるとしているのです。

裁判所は、削除請求を認めるかどうかは「店に対する利益侵害と侵害行為との相関関係」によって判断されるとしています。つまりこの事例では、食べログによる情報公開の程度が、すでに飲食店が発表している店舗情報の公開の程度と変わらないため、削除請求が認められなかったと考えられます。そこで、飲食店による情報公開の程度が低い場合には、相関関係が崩れて削除請求が認められる可能性も残されていると考えられます。

この件では、飲食店側が不服として控訴しましたが、和解によって終了しました。

和解なので内容までは明らかではありませんが、「食べログ」のサイトから店舗情報の一部が削除されています。

具体的には電話番号と予約が「非公開」になっており、住所は町名のみ表示される形式に変更され、地図は表示されなくなっています。

まとめ

明らかにガイドラインに違反するような投稿であれば、食べログへの通報で削除してもらえるでしょう。

しかし、削除してもらえない場合には、食べログ(カカクコム)を相手に裁判で削除を求めることとなります。

当法律事務所の、経験豊かな弁護士にご相談ください。速やかに対応致します。

モノリス法律事務所

モノリス法律事務所は、NHKドラマ「デジタル・タトゥー」の原案を務める代表弁護士の下、企業・個人の風評被害対策を多数手がけております。

Phone: 03-6262-3245 (平日10時-17時)
Email: kawase@monolith-law.jp

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