5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)にアップされた破産者情報の削除

5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)にアップされた破産者情報の削除

借金がたまりにたまって返せなくなったりして、経済的に立ち行かなくなった人は、裁判所に申立てを行って財産を清算することができます。
これを自己破産と言いますが、破産法では免責手続が定められており、裁判所から免責許可決定が得られれば、借金をゼロにし、返済する義務を免れることができます。

この自己破産につき、偶然知人が破産したことを知った人や、知人が官報に破産者として掲載されたのを見つけた人が、2ちゃんねるや5ちゃんねるにその情報を書き込んだ場合、これを削除することはできるのでしょうか。

破産法の目的

ある個人が破産したという情報は、官報に掲載され、不特定多数に対して公開されてしまいます。

しかし、そもそも、なぜ官報に破産者の住所・氏名が掲載されるのでしょうか。

自己破産の際に使う法律を、破産法と言います。破産法は、債務整理の一つである破産手続きの要件・効果・手段などを定める法律です。

破産法第1条
この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

このように、破産法の目的は、「債権者の権利の確保を図る」とともに、「債務者の経済生活の再生の機会の確保を図る」ところにあるのです。なお、破産法の適用対象は、個人だけでなく、会社等の法人も含まれますが、ここでは個人の破産について説明します。

自己破産の手続きと官報掲載

破産手続開始の決定時

旧破産法では、破産宣告という呼び方がされていましたが、改正後の新破産法では、破産手続開始の決定と呼ばれるようになりました。

破産手続きは、必要書類を裁判所に提出することから始まります。自己破産の申立書を、申立人の住所地を管轄する地方裁判所に提出することになります。添付書類等に不備がなければ、申立ては受理されます。

申立の1~2ヶ月後に破産審尋という裁判官との面接を行い、裁判所によって、破産手続開始が決定されます。この2週間後くらいに官報で公告が行われます。

免責決定時

個人破産の場合、個人が破産してもその個人は消滅しない(法人の場合には、破産によって法人自体が消滅します)ので、破産手続きによって支払いきれなかった債務は、破産後であっても残ってしまうことがあります。

残った債務を免除させる制度として、免責というものがあり、裁判所によって許可されれば、破産手続きによって支払いきれなかった借金は帳消しとなります。

この免責決定の2週間後くらいにも、官報で公告が行われます。結局、個人の自己破産の場合、住所・氏名は2回、官報に公告されることになります。

官報公告の目的

破産者の情報の告知は一般に公表するものではありません。

破産者の情報を官報に掲載するのは、債権者に対して債権の届出を促し、公平かつ迅速に破産手続きを遂行するためです。

破産者の財産の処分・換価が終了したら、債権者に集まってもらい、配当の手続きがなされます。配当は、一般債権者に対して債権額に応じて平等に配当されますが、漏れてしまう人が出ないように、破産者の住所・氏名を公告しているのです。

破産法第十条 
この法律の規定による公告は、官報に掲載してする。
2 公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずる。
3 この法律の規定により送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができる。ただし、この法律の規定により公告及び送達をしなければならない場合は、この限りでない。
4 この法律の規定により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなす。
5 前二項の規定は、この法律に特別の定めがある場合には、適用しない。

当然のことではありますが、ある個人について破産した旨を報道するためではありませんし、破産者を、世間一般に対して「晒す」ことが目的ではありません。「一切の関係人に対して当該裁判の告知」をするためです。

そういった点からすると、本来的には、破産手続きが終了した後になってもなお、長期間にわたり、破産者の情報を公開し続けること自体、法が予定しているものではありません。
破産は犯罪ではなく、破産者は犯罪者ではありません。

法がそもそも想定していない範囲において、個人のプライバシーを犠牲にしつつも、公開しなければならないことを正当化するような事情はないのです。

では、もし、自分が破産したという情報が2ちゃんねるや5ちゃんねるにおいて公表されたとき、どのように対応すればいいのでしょうか。

破産者マップとネット掲載

この問題が特にクローズアップされたのは、いわゆる「破産者マップ」というサイトが登場した際でした。

2019年3月、「破産者マップ」という、官報の過去10年分(最終的には3年分)の破産者情報を包括的・網羅的に収集してデータベース化し、Google マップに関連付け設定を施して破産手続きした人の住所の上にピン(目印)を挿入し、可視化させたサイトが登場しました。

これに対し、個人情報保護委員会は「本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならない」などの規定に違反する恐れがあるとして、サイトを閉鎖するよう、直ちに行政指導に踏み切りましたが、同月19日、運営者はTwitterアカウントで「関係者に辛い思いをさせた」と謝罪を行うとともに、サイトを閉鎖しました。

しかし、当初より危惧されていたことですが、破産者の住所・氏名を書いたリストが2ちゃんねるや5ちゃんねるに投稿されました。官報では住所は号・番地・アパートやマンションは部屋番号まで掲載されているのに比すと簡略化されたリストではありますが、都市部においてさえ、特定は不可能ではありません。地方の市町村では容易でしょう。

こうした情報は、今もネット上に残存しています。

破産情報を公開することの何が問題なのか

名誉を毀損する

破産したという事実は一般的に社会的評価を下げる事実であり、掲載されること自体が、破産した人たちの社会的評価を低下させ、名誉を毀損することは明らかです。

また、「官報にすでに掲載されている情報をもとに書き込んだだけだ」としても、インターネット上に公表することにより、既に公表された情報を人の目に触れやすくしています。既に公表された情報であっても、これを人の目に触れやすくすることは違法行為となりえます。

東京高等裁判所2013年9月6日控訴審判決では、すでにインターネット上に公開されている記事を掲示板に転載した行為を、「新たに、より広範に情報を社会に広め、控訴人の社会的評価をより低下させたものとして認められる」として、名誉権侵害を認めています。

名誉権が侵害されているとして、投稿削除を求めることが可能です。

プライバシーを侵害する

故人の破産情報が広まることにより、当該個人やその家族が、隣人や知人から白い目で見られ、偏見やいじめにさらされる可能性がありますし、勤務している場合には勤務先を解雇されるなど、生活への悪影響が生じることも考えられます。

また、住所及び氏名についてはそれ自体、一般に公開されたくない情報であり、プライバシーを侵害しています。

当サイトの別記事で紹介した東京地方裁判所2008年1月21日判決でも、すでに公開されていた、原告配偶者の氏名・住所及び原告らの親族の氏名・親族の経営する会社の本支店の所在地・電話番号などを内容とする書き込みを行ったことに対し、「被告は、誰でも容易にアクセスできるインターネット上の掲示板において原告らに係る上記情報を書き込んだものである。これにより、被告は、原告らが欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考える情報を、不特定多数の第三者が閲覧可能な状況に置いたものである。他方、本件掲示板において原告らに係る上記情報を公開する必要性を認めるに足りない」として、プライバシーの侵害を認め、被告に損害賠償を命じています。

プライバシーが侵害されているとして、投稿削除を求めることが可能です。

将来の破産手続きの利用を阻害する

破産に至った経緯は、人によって様々です。たとえ、本人に責任がある破産理由であったとしても、破産は裁判所が認めたものであり、免責も裁判所が認めたものです。

破産の事実が公表されるのではないかという恐怖心を人々に抱かせることは、将来の破産手続きの利用を阻害したり、セーフティネットである破産制度を用いることをためらわせて遅れさせてしまう可能性があり、破産という手続きをとることができなかったりした結果、手段をなくした多重債務者が死を選ぶ可能性すらあります。

こうした社会的被害が考えられるので、掲示板に掲載されたら速やかに対応し、投稿削除を求めるべきです。

2ちゃんねると5ちゃんねるの投稿削除

掲示板に投稿されたら削除請求のための適切な手続きが必要です。

2ちゃんねると5ちゃんねるが分裂し、

「2ch.sc」は「PACKET MONSTER INC,PTE.LTD」(シンガポール法人)
「5ch.net」は「Loki Technology Inc」(フィリピン法人)

が運営ということになり、現在に至っています。

2ch.scは、5ch.netのミラーサイト(コピーサイト)なので、基本的には5ch.netと同じ投稿内容です。しかし、別途の投稿も可能なので、投稿のID表示を見て、「.sc」であるか、「.net」になっているかどうかを見ます。「.sc」となっていれば2ch.scへの投稿で、「.net」となっていれば5ch.netへの投稿です。

2つになっても、影響力が弱まったというわけではありません。速やかに削除請求すべきですし、書き込み犯人を特定したい場合は発信者情報開示請求を行う必要があるのは、これまでと同じです。

削除請求を行う場合には特に気にする必要はないのですが、発信者情報開示請求を行う際には、どちらへの投稿であるかを区別し、どちらに請求するかを判断せねばなりません。

削除を依頼する

5ちゃんねるの場合には、メールによる削除要請をします。基準を満たせば、メールによる依頼で削除してくれることになっていますが、実際にはメールで削除依頼してもスムーズに削除されることは稀です。

2ちゃんねるの場合には「削除依頼スレッド」を使って管理人に削除依頼する方法がありますが、削除依頼スレッドを利用すると、その内容が「公開」されてしまいます。削除依頼スレッドは公開されているため、削除申請していることが第三者に広く知られてしまい、かえって世間の関心を集めることになり、被害が拡大しかねません。しかも、削除が認められることはほとんどありません。破産者情報の場合、特に、この方法は避けるべきでしょう。

仮処分申請

メール等を利用して依頼しても削除してもらえない場合には、裁判所に仮処分を申請することになります。

仮処分申請の方法、手順については、当サイトの別記事をご参照ください。

発信者情報開示請求訴訟

さらに、経由プロバイダが判明したら、発信者情報開示請求訴訟を提起し、発信者の「住所・氏名・メールアドレス」等の情報の開示を求めます。

発信者情報開示請求の方法、手順については、当サイトの別記事を、ご参照ください。

訴えが認められれば、裁判所から経由プロバイダに対し、記事投稿の際に利用された契約者の氏名、住所、メールアドレス等を開示することを命じる内容の判決が出されます。

発信者情報が開示され、発信者が特定されたら、「今後、このような投稿を行わないと誓約させる」「損害賠償を請求する」「刑事告訴をする」といった対処方法を選択し、実行することができます。

モノリス法律事務所

モノリス法律事務所は、NHKドラマ「デジタル・タトゥー」の原案を務める代表弁護士の下、企業・個人の風評被害対策を多数手がけております。

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