逮捕歴や前科の記事は削除できるのか

あなたに逮捕歴や前科がある場合、その情報がニュース記事などでいったんネット上に掲載されてしまうと、それを見た人が自分のブログやSNSに引用して拡散したりします。2ちゃんねるなどのネット掲示板に転載されたり投稿されたりすることもあれば、ニュースのまとめサイトなどに引用されることもあります。情報はどんどん拡散してしまいます。その結果、大勢の人にあなたの逮捕歴や前科を知られてしまうことになり、大きな不利益を受けることになります。

逮捕歴、前科情報が残っている場合に受ける不利益

就職活動で不利益をこうむる

就職や転職をする際に、採用先がネット上で名前検索をし、逮捕歴や前科を知られたら、採用してもらえない可能性が非常に高いです。
たとえ、逮捕された事件が有名でなくとも、どこかのサイトに掲載されていれば、実名検索によって該当の記事が出てきてしまいます。昨今では、採用活動の際に、事前の実名検索を義務付けているような企業もあるようです。たったひとつのサイトであっても、ネット上に実名での逮捕報道記事が掲載されてしまえば、それが採用先に見つけられてしまう可能性は否定できません。

勤務先で不利益をこうむる

会社内で前科を知られたり、逮捕されたことがあると判明すると、勤務先で不利益を受けることになるかもしれません。前科や逮捕歴を理由に、解雇されたり、左遷されたりすることが考えられます。少なくとも、昇進は難しくなるでしょう。また、前科や逮捕歴が知られたからと仕事先を変えようと思っても、上述の理由で転職が困難になってしまう可能性があります。

交際や結婚が困難になる

逮捕歴や前科がある人とあえて結婚したいと思う人はあまりいません。愛していても、将来生まれるかもしれない子供のことなどを考えて、結婚はやめておこうと考えるでしょう。交際相手が結婚してもよいとしても、相手の親や家族が反対するなどの問題も生じます。結婚前に興信所に婚前調査を依頼することもありますが、そういった場合には前科や逮捕歴はすぐに判明してしまいます。

家族にも迷惑がかかる

前科があったりすると、本人以外が不利益を受けることもあります。犯罪者の身内だということで、近所や町内で噂になり、家族にも肩身の狭い思いをさせることになってしまいかねません。子どもがいる場合、友人やその家族が逮捕歴や前科を知ることは、いじめの原因にもなりえます。たとえ引っ越したとしても、ネット上に犯罪歴の報道が掲載されたままであれば、またその情報が周囲に知られてしまう可能性は依然として残り続けることになります。

賃貸物件が借りられない

賃貸住宅を借りる際には、入居審査があります。この時、ネット上で実名検索をされ、逮捕歴や前科を知られた場合には、審査に通らないということが考えられます。審査に通らなければ、契約はできず、家を借りることもできないため、日常生活に支障が出てしまいます。

このように様々な不利益をこうむる可能性を考えれば、過去の逮捕・前科に関わる情報は、できるだけ速やかに記事削除を行うことが望ましいといえます。

逮捕歴と前科の違い

逮捕と前科、混同しがちですが意味合いは異なります。

逮捕歴、前科情報と書いてきましたが、これらの意味の違いを理解しておきましょう。

逮捕歴とは

逮捕歴とは、事件を起こして警察に逮捕された履歴のことです。逮捕されても起訴されないこともあります。不起訴になれば当然有罪にもならないので、前科もつきません。だから、逮捕歴があるからといって前科がついているとは限らず、誤認逮捕や冤罪であったかもしれません。しかし、これらの場合でも逮捕のニュースは報道されますし、拡散されてしまうこともあります。

前科とは

前科というのは実際に刑事裁判を受け、刑罰を受けた履歴のことです。前科があるというのは有罪になっているということなので、誤認逮捕や冤罪の可能性はありません。

前科よりも逮捕歴の方が注目されてしまう

報道では、まず、逮捕報道がなされます。これに対し、刑事裁判には時間がかかるので、前科報道は相当な期間の後に、「以前起こった事件の被疑者の裁判があり、判決が出て有罪となりました」という報道になってしまい、よほどセンセーショナルな事件以外は、読者の関心を引くことはあまりありません。

しかし逮捕されたというだけでは、誤認逮捕や冤罪の可能性もありますし、相手と示談が成立して釈放されたり、微罪だからということで釈放されたりすることもあります。にもかかわらず、逮捕ニュースが大きく取り上げられ、拡散されてしまうのは困った問題です。

軽犯罪でも注目されれば拡散する

ニュースを見ていると、たいしたことではないような軽犯罪でも実名報道されたり、勤務先まで公表されたりすることがあります。このような軽犯罪の逮捕歴であっても、同じように注目されてしまうことになります。ニュースを見る人は「逮捕された」ということのみに注目しているのであり、どんな犯罪であるかに注意しているわけではないからです。事件をおもしろいと感じる人がいたら、揶揄の対象となって広く拡散されてしまうこともあります。

逮捕歴、前科情報はどれくらいの期間残るのか

逮捕歴・前科情報は極めてプライバシーに関わるものの1つです。

大手新聞のニュースサイトなどの場合、一度掲載した記事を、半年や1年といった一定期間で自動的に削除しています。あまり古い記事がウェブ検索で簡単に出てしまうことは、やはり問題だからです。しかし「一次情報」である新聞社等のニュース記事が消えた後も、そのニュースをコピペしたネット掲示板や個人のブログ、SNSなどはネット上に残ったままです。何もしなければ、いつまでも残ったままとなります。

逮捕歴や前科情報を削除することはできるのか

逮捕歴や前科情報の削除請求はできる場合とできない場合があります。逮捕歴や前科情報はプライバシー情報なので、プライバシー権の一種である「更生を妨げられない利益」を主張して、削除を請求します。個人には誰にでもプライバシー権が保証されており、これを侵害された場合には損害賠償請求や差し止め請求をすることができるのです。その一方で、ニュース記事などの掲載は表現の自由にもとづく行為なので、どのような場合でも記事削除の請求ができるわけではありません。表現の自由とプライバシー権のどちらを優先するかについて判断する必要があり、プライバシー権が過渡に侵害されていると判断できる場合のみ、削除申請が認められます。

なお、逮捕歴や前科に限らない、一般的なプライバシー侵害に関しては、下記記事で詳細に解説しています。

逮捕歴や前科情報削除の基準

起訴されたかどうか

起訴されたかどうかは重要です。不起訴であったということは、刑事裁判を受けておらず、有罪にもなっていないということです。冤罪の場合もあります。このような場合には、比較的削除が容易です。

犯罪が行われてからの期間

事件から一定の期間が経過すれば、社会への影響力は弱まりますし、実名報道の必要性は薄らぎます。長期間が経過していればいるほど、削除請求は認められやすくなります。この場合、もともとの事件の性質や重大さによって異なってきます。どのくらい昔の記事であれば削除できるのかというのは難しいところですが、公訴時効がある種の基準にされていたりします。例えば迷惑防止条例違反は公訴時効が3年です。記事が5年前のものであれば、削除してもらえる可能性が高いでしょう。

この「期間」という要素は、削除を望む側として、最も関心が高い最重要要素かと思われます。この点については別記事で詳述しています。

更生への取り組みがされている

本人がすでに社会復帰していたり、執行猶予期間が終了していたりすれば更生の利益を優先すべきなので、削除が認められやすくなります。また被害者がいる場合、示談が成立し、被害弁償ができていると更生の利益が認められやすくなります。

削除の必要性

プライバシー侵害で重大な被害をこうむっているなど、削除の必要性を判断されることがあります。社会復帰を目指して就職活動をしているのに前科報道による影響でうまくいかないというようなケースでは、事情を詳しく述べた「陳述書」を提出して判断してもらったりします。

逮捕歴や前科情報削除の手続き

上のように、逮捕歴や前科情報の削除は事件からの経過や更生の利益、削除の必要性などによって総合的に判断されますが、このような削除請求の手続きを個人が行うことは困難です。そこで、弁護士に相談して依頼する必要があるのですが、注意しなければならないのは、本人と弁護士以外の第三者が削除作業を行うと、非弁行為となることです。削除代行業者には注意しましょう。

弁護士に手続きを依頼すれば、新聞社のサイトやブログ、掲示板などの管理者に対し、記事削除の請求を行ってくれます。正当な理由があれば、多くの場合に任意の削除請求に応じてくれます。

任意の削除請求に応じてくれない場合には、裁判所で仮処分等を利用すれば、認められ、削除命令を出してもらえます。

モノリス法律事務所

モノリス法律事務所は、NHKドラマ「デジタル・タトゥー」の原案を務める代表弁護士の下、企業・個人の風評被害対策を多数手がけております。

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