ICOの法律と合法的に行うための方法とは

ICOの法律と合法的に行うための方法とは

仮想通貨を用いた資金調達(ICO、Initial Coin Offeringの略)は、既存の新規株式公開などとよく似たプロセスで進んでいくものですが、適法に行うために準拠すべき法制度は異なっています。ICOは適法なプロセスのもとで行うなら、低コストかつスピーディに資金調達を成し遂げる手段ともなりえますが、法制度への理解が乏しいままだと詐欺やマネーロンダリングなどに関する各種法規制に抵触するリスクもあります。本記事では、そうしたICOを取り巻く法制度について整理しています。

諸外国との比較にみる、日本のICO

ICOを取り巻く法制度についてまず第一に念頭に置いておくべき点は、日本においてはICOそのものを直接的に規制するような法制度が現状存在しないという点です。海外に目を向ければ、中国・韓国などの国において、詐欺やマネーロンダリングの温床となることなどから、ICOそのものが包括的に禁止とされる例も現れています。また、フランスではICOそのものを直接的に規制するための法整備が現在進められています。日本の場合はこうした国々とは異なり、既存の法制度の解釈をおし拡げるかたちでの規制のみが現在行われている状況であると言えます。

ICOそのものを規律する法制度がないという点から考えるならば、たしかに日本は比較的ICOが実施しやすい国であると言えるでしょう。しかし、直接的な規制がないということは言い換えるならば、適法な手法と違法な手法の区別が困難になりがちであるとも言えます。また、既存の法規制がどの程度にまでICOに及ぶかについては、明文化された制度だけでなく、金融庁をはじめとした関係省庁がどのような見解を採用するかも影響してきます。

したがってまとめるならば、日本におけるICOの法的規制は、具体的なプロセスやトークン設計などについては一定程度の自由裁量が残されつつも、既存の法制度の射程を見極めるとともに、それが適法な範囲内に納まるような設計とすることを実施者に求めるものです。ICOによる資金調達の事例としては近年、欧米では数億ドルにわたる資金調達に成功した例もあり、資金調達の手法として多くのメリットがあることには疑いの余地はありません。こうしたICOのメリットを存分に引き出すためにも、またそれに伴うリスクを最小限に減らすためにも、法的な素養が高い水準で求められる状況にあるのが、今日の日本のICO情勢であると言えるでしょう。

ICOの類型

トークンにも様々な種類があります。

まず、ICOにまつわる法的規制を確認するための前提として、ICOに用いられる仮想通貨にもいくつかの分類があるので、それらについて確認していきましょう。(ICOのために用いられる仮想通貨のことは、トークンという呼称を用いることが多いので、以下その表記で統一します。)ここで発行されるトークンの性質によって、どのような規制が及ぶかも決まってきます。

仮想通貨型

ビットコインなどの代表的な仮想通貨と同様に、市場で流通し、支払いや送金の手段として使用されることを想定したトークン

会員優待券型

株式における株主優待などのように、保有者になんらかの優待サービスを受ける権利を保証したトークン

電子マネー型

スイカやパスモなどの電子マネーと同じように、(一般市場での流通は前提としていないものの)特定の財やサービスとであれば、現金同様に支払いに用いることができるトークン。

などが代表的なものとなります。

ICOをめぐる制度の全体像

一口にICOをいっても、そこで発行されるトークンの種類に応じて、上記のような分類がなされます。以上のトークンのバリエーションを踏まえたうえで、今度は日本国におけるICO規制の全体像を確認していきましょう。

先に概略を示しておくと、

①トークンが資金決済法上の「仮想通貨」に…
・該当する →仮想通貨交換業としての登録が必要に
・該当しない
②トークンが資金決済法上の「前払式決済手段」に…
・該当する →各種届出、供託義務などが科せられることに
・該当しない→資金決済法の適用はない
③当該ICOが金融商品取引法上の「集団投資スキーム」に…
・該当する →金融商品取引法上の各種開示、書類提出義務が課せられることに
・該当しない→金融商品取引法上の規定は及ばない

というかたちに整理されます。

「仮想通貨交換業」、「前払式決済手段」、「集団投資スキーム」といった若干専門的な用語が出てきていますが、いまの段階ではあまり細部にこだわる必要はありません。要は、改正資金決済法という法律が、ICO規制に密接に関連しているのだということです。そして、そこで発行されるトークンが当該法律における「仮想通貨」に該当するのかどうか、そして仮に該当しないとしても、「電子マネー」的な特徴(つまり前払式決済手段としての特徴)を持つ場合には、結局一定の法的規制が及ぶことになるのだという点をまずは頭に入れたうえで、以下で詳しい内容を確認していきましょう。まずは、仮想通貨の法律上の定義からです。

仮想通貨の法律上の定義と、その扱いについて

法律上では「仮想通貨」とはどのように定義されるのでしょうか。

ICOで発行されるトークンにも様々なバリエーションがありますが、ここで重要となるのは、発行されるトークンが、法律上の仮想通貨に合致するのか否かという点です。言い換えるならば、ICO実施者がまず最初に検討すべき点は、改正資金決済法という法律における、「仮想通貨」に該当するか否かだということです。

改正資金決済法の第二条には、仮想通貨は以下のように定義されています(赤字部は、説明の便宜上追記したものである)。

この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

これに該当するか否かによって、ICOを行う際に仮想通貨交換業者としての登録を受ける必要性の有無も変わってきます。条文の内容をひとつずつ、要件に噛み砕いて整理するならば、この条文の内容は以下のように整理されるでしょう。

要件1 不特定性

物品やサービスを受ける権利を購入する手段として、不特定の相手方に対して決済を行えるものであることを言います。

要件2 財産的価値

不特定の相手方に対して、それ自体が財産的な価値を持つものとして売却できるものであることを言います。

要件3 電子的記録

電子機器ないしは電子的な方法で、データとして日々の取引が管理・記録されるものであることを言います。

要件4 非法定通貨

日本通貨・外国通貨・通貨建資産などの法定通貨ではないことを言います。

上記の4要件を満たすものが、法律上は仮想通貨として扱われることとなります。字面で理解しようとするとやや難解な印象がするかもしれませんが、決して難しいことではありません。「あらゆる財やサービスとの交換が可能で(要件1)、あらゆる人との間で流通すること(要件2)」が通貨の通貨たる所以でしょう。それらが、「硬貨や紙幣ではなくデータとして扱われるものであり(要件3)、リアルマネーではなく企業や個人によって独自に発行されているものであること(要件4)」によって、通貨は通貨でも「仮想」通貨となるわけです。上記4要件を満たすトークンによってICOを行う場合には、仮想通貨交換業者としての登録を行う必要が出てくるのです。

もっとも、仮想通貨交換業者としての登録を受けることは決して簡単なことではありません。取引実績が多くなく、社内の管理体制が手薄になりがちな小規模の事業者にとっては、むしろこの法律要件を同時にすべて充足することのないように設計を行い、登録手続そのものを回避していくことのほうが現実的な場合が多いでしょう。

仮想通貨交換業者としての登録なしに合法的にICOを行う際の指針

では、仮想通貨交換業者としての登録を受けることなしに、合法的にICOを行う際には、どのようなトークン設計を試みれば良いのでしょう。主に問題となりやすい点は、要件1(不特定性)と、要件2(財産的価値)の二点であると言えます。

この点から整理していくならば、例えば、

  • ICOのセール期間中に、会員限定でトークンを配布する(不特定性の回避)
  • 上記の会員の中でのみ、売買や交換が可能となるようにする(財産的価値の回避)

といった設計にしていくことなどが考えられるでしょう。こうしたかたちで、不特定性、財産的価値といった要件に充足しないようにした場合には、それは仮想通貨というよりはむしろ、電子マネーに類似のものと見なされることになる場合があります。(この場合には、前払式決済手段に該当するか否かという別の法的論点を検討していくことが必要となります。)

法律上の「電子マネー」の定義

次に、資金決済法上、どのような要件を充足するものを「電子マネー」とみなされるのかを確認しましょう。実際、ICOで発行されるトークンの性質によっては、むしろこちらの規制のほうに注意しておく必要が出てきます。

電子マネー等の普及でキャッシュレステクノロジーも発展しています。

法律上は、電子マネーの定義に合致するか否かは、以下の三要件をもとに見ていくこととなります。

  • 価値を表す金額や数量がデータとして記録され、管理されるものであること。(要件1)
  • 円などの法定通貨を対価として発行されるものであること。(要件2)
  • 支払いや決済の手段として、現金同様に用いることができること。(要件3)

言葉の定義はやや難しく見えるかもしれませんが、スイカやパスモといった電子マネーも、定義してしまえば法律上は上記のように整理されることとなります。たとえば、駅の券売機でスイカやパスモに1000円分チャージして電車に乗るとしましょう。チャージすればICカードには1000円分の価値が記録され(要件1)ますが、同時に1000円分紙幣や硬貨の支払いが求められます(要件2)。またチャージすれば、切符を買った場合と同様に改札を通過できます(要件3)。噛み砕いて見ていけば、実社会の電子マネーの定義となんら異なることを言っているわけではないことがわかるでしょう。

つまりは、先にお金を前払いしておくことで、その後の財やサービスの購入権を得ているという話になるわけです。これは、前払式決済手段と呼ばれます。いわゆるプリペイドカードやネットゲームで使えるポイントは、基本的にはこれに該当するものだと言えます。

電子マネーを発行する場合の法的規制

上記のような、電子マネーに合致するトークンを用いてICOを行う場合には、前払式決済手段に該当する場合として、一定額の現金を国に預ける(供託という)義務が発生します。この金額は、日本の法令上は前払式という形で預かっている金額の50%にわたる金額となるため、実施するICOの規模が大きなものとなればなるほど供託金の膨大な額ともなりかねません。したがって、小規模な事業者にとっては供託金の観点から実施が困難となるケースも今後増えてくるものと見られます。

電子マネーの場合の法的規制を回避するための道筋

供託金の問題がICO実施者にとって大きなハードルとなる場合には、その法律要件に該当させないようにすることが重要となります。その際には、例えば、トークン保有者には一定期間サービスを受け放題にするような設計にしておくなどの工夫が考えられるでしょう。

有償のサービスを受ける都度、サービス料金と同額のトークンを消費するような設計にすることを避けることで(つまりは要件3の点を回避することで)、前払式決済手段とは見なされないような設計にすることも可能となる場合があります。こうした手法により、供託金を用意せずにICOを実施できるようになる場合があります。

電子マネー型のトークンに関連しうるその他の法規制

消費者契約法による規制

こうしたトークンを用いる場合に影響しうる法規制は、上記の資金決済法や金融商品取引法の内容だけではありません。たとえば消費者契約法という法律があります。これは財やサービスを提供する企業と、それに対して支払いを行う一般消費者の力関係の格差是正を目的とする法律です。

電子マネー型のトークンは、いわゆるポイント還元サービスなどの形態をとることが少なくありませんが、このポイントがもし事実上利用できないくらい期間が短かったり、適切に情報開示がなされていないような場合には、むしろこちらの消費者契約法に抵触する可能性が出てくることになるでしょう。

金融商品取引法による規制

またほかにも、ICOを対象としたファンド規制にも注意をする必要があります。たとえば金融商品取引法(以下、金商法を記載)は、金銭等の出資を行う出資者の権利を擁護することを目的とした法分野ですが、ICOも場合によっては当該法律の規制が及ぶことになります。前提として、金商法にはその適用対象となる金融商品が一つ一つ列挙されており、ここに含まれないものについては、(たとえ広義の仮想通貨に含まれるとしても)金商法の規定が及ばないのが原則です。

しかし金商法との兼ね合いで注意が必要なのは、集団投資スキーム、すなわち、①出資をもとに事業を行い、②その事業の産んだ利益の一部を出資者に分配するというスキームの場合です。仮想通貨は原則として金商法の規制対象ではありませんが、この集団投資スキームに該当する場合には、例外的に規制を受けることとなります。その場合には、金商法の規定に基づき、第二種金融商品取引業の登録義務が課せられたり、各種の情報開示義務が発生することとなります。

なお、上記の集団投資スキームに関する規定が適用されるのは原則として、現金や有価証券による出資を受け付けた場合になります。しかし、ビットコインなどの仮想通貨で出資を受け付けた場合であったとしても、それが容易に現金化が可能であることから、結局こうした規定は及ぶものと解されています(金融庁公式見解による)。したがって、集団投資スキームへの該当性を回避することを目指す場合には、出資をなにで募るかではなく、スキームそのものの設計によって対処するのが王道であるというべきでしょう。

ICOにまつわる罰則

ICOを取り巻く法規制とは?

資金決済法に基づく罰則

仮に仮想通貨交換業者としての登録を受けることなしに、法律上の仮想通貨に該当するトークンでICOをした場合や、前払式決済手段であるにも関わらず供託義務を怠った場合などは、資金決済法に基づいてICO主催者に罰則が課される場合があります。この場合、最大三年の懲役、もしくは最大300万円の罰金の支払いが課せられることがあります。

金商法に基づく罰則

金商法の規定に違反した場合には、登録抹消・業務停止命令、課徴金の徴収などの行政上の処分が下ることが考えられます。また、行政処分だけでなく、最大10年の懲役などの刑事罰が科せられる可能性もあります。

ICOをめぐる「詐欺」事案の扱い

なお、近年詐欺的なICOがニュース等で話題になることがありますが、この「詐欺」の場合の扱いについては、民事・刑事両方の観点から見ていく必要があります。民事における詐欺の場合には、出資金を含めた出資者への損害賠償義務を負うこととなり、刑事における詐欺に該当する場合には、最大10年の懲役刑が課せられる可能性があります。事実と異なる告知を行ったり、重大な事実をあえて隠したうえで出資金を募ったりしたと見られてしまうと、ICO実施者はこうした大きなリスクを負うこととなります。したがって、当該ICOについての「説明書」にあたる、ホワイトペーパーの記載事項についても細心の注意を払う必要があります(ホワイトペーパーの記載方法については別記事参照のこと)。

結局、日本で適法にICOをやるにはどうすればよいのか

以上の法規制の内容を踏まえるなら、日本において適法にICOをやるためのひとつの道筋としては、

  1. 金商法上のファンド規制に抵触しないようにしつつ
  2. 仮想通貨交換業の登録を得て(もしくは前払式決済手段であることからくる供託等の義務を果たしたうえで)、
  3. 詐欺などの嫌疑をかけられぬよう、投資家の意思決定に必要となる情報をホワイトペーパー等で開示して

行うといったものが考えられます。

しかしながら、2.の仮想通貨交換業の登録の部分については、弊所がこれまでに行ってきた申請実務の実績を顧みても、数ヶ月もの期間を審査に要したケースが多く、スピード感を持って進められるとは言い難いのが今日の現状です。ICOがもつ最大のメリットが手続きの簡便さ・スピード感にあることから考えるならば、この申請を通過したうえでICOを実施するというのは極めて大きなネックとなってしまう場合も多いと考えられます。こうした現状を踏まえるならば、資金決済法上の仮想通貨に該当するトークンでICOを行いたい場合には、むしろ日本と法律の異なる外国に進出してしまうというのも一案となるでしょう(ICOについての諸外国の規制状況については別記事を参照のこと)。

まとめ

電子マネーと仮想通貨は似て非なるものですが共通点も多く、ICOのためのトークンに用いる場合には、特に混同されがちでもあります。しかし法律上の仮想通貨と扱われるか、もしくは電子マネーと扱われるかによって、注意すべき法規制の内容が大きく変わってきます。日本国の場合では、改正資金決済法上の「仮想通貨」「前払式決済手段」といった言葉の定義を踏まえながら、ICOで用いられるトークンの性質を見ていくことで、どのような規制が及ぶことになるかの判別が可能となります。

しかし、ICOを規制する法律は、なにも改正資金決済法だけでなく、消費者契約法や金融商品取引法も含まれる点にも注意が必要です。加えて、詐欺の嫌疑をかけられぬよう、ホワイトペーパーなどの記載にも注意を払い、投資家に対し説明責任を果たして行くことも重要です。したがって、現状日本にICOそのものを直接的に規律する法律がないとしても、その分、一層多角的に現行の法制度との整合性に目を光らせておく必要があるのだということをまずは認識すべきでしょう。

モノリス法律事務所

モノリス法律事務所は、元ITエンジニアで企業経営経験のある代表弁護士の下、仮想通貨取引所の監査役、ブロックチェーン関連の開発を行う会社の顧問弁護士などを務めております

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