電子マネーと仮想通貨・トークンの共通点と相違点とは

はじめに

仮想通貨が近年になって大きな注目を集めている反面、それ以前にすでに普及している電子マネーとどのように違うのかを正確に理解している人はそれほど多くないでしょう。また近年、ICO(Initial Coin Offeringの略)と呼ばれる仮想通貨を用いた資金調達の手法もビジネスの世界では大きな注目を集めていますが、ここで発行されるトークンにまつわる法規制を確認するためにも、電子マネーや仮想通貨という用語の法律上の定義をきちんと確認しておくことは非常に重要です。

ICOにおいて発行される広義の仮想通貨のことは、一般的にトークンという特別の呼称が用いられることが多いです。このトークンには、ビットコインのように不特定多数の人を介して流通することを想定しているものから、スイカやパスモのような電子マネーとよく似た建て付けのものまで様々にあります。それぞれの場合において服する法制度の体系は大きく異なっているため、それらを混同しないためにも、本記事では仮想通貨と電子マネーの共通点や相違点を取り上げています。

仮想通貨の法律上の定義

仮想通貨と電子マネーは一見よく似ていて混同しがちですが、法律上は、仮想通貨は以下の四点の特徴を具備するものとして、資金決済法上に定義されています。

  1. 不特定性:特定の経済圏のみでの利用に限定されることなく、不特定の相手方にむけて決済に用いることができることを言います。
  2. 財産的価値:「1ポイント1円」といったかたちで法定通貨との交換レートが厳格に存在しているわけではなく、それ自体が別個独立した通貨レートを持ち、価格に変動があることを言います。
  3. 電子的記録:電子機器などに、データとして記録・管理されるものであり、日々の商取引もデータ上の数字の増減によって把握されるものであることを言います。
  4. 非法定通貨:円やドルなどのリアルマネーとは異なるものであることを言います。

上記の四点の法律要件すべてを充足するものが、日本では法律上仮想通貨として扱われることになります。ICOという仮想通貨を用いた資金調達を用いる場合にも、この要件を充足するものを発行する場合には、仮想通貨交換業者としての登録を受ける必要が出てきます。したがって、仮想通貨交換業者としての登録手続を回避するかたちでICOを行う場合には、この4要件を同時に充足せずに済ませるトークン設計にすることが重要となるのでした(詳細については別記事参照のこと)。

電子マネーの法律上の定義

今では電子マネーでの支払いが便利な手段となっています。

では、こうした4要件同時に充足せずに済むようなトークン設計とする場合、どのようなやり方をすれば良いのでしょう。ここで、仮想通貨と似て非なる電子マネーの法律上の定義が問題となります。

電子マネーの法律上の定義は、以下の3要件を充足するものです。

  • 数値データとして記録され、管理されるものであること。
  • 「1ポイント1円」といったかたちで、法定通貨を電子データに置き換えたものであること。
  • 現金と同じように、支払い手段に用いることができるものであること。

以上が電子マネーの定義となります。スイカやパスモで電子マネーには既に馴染んでいる人も多いでしょうが、言ってしまえば法定通貨を電子データに置き換えたものが電子マネーであるという話になります。券売機で1000円分チャージすれば、その分のポイントがカードに記録され(要件A)、カードにはポイントが記録され(要件B)、ポイントの発行主体が指定する財やサービスの購入手段として使用が可能となる(要件C)というかたちに、私の身の回りに溢れる電子マネーも整理することができます。

そして、上記の三要件を同時に充足するようなトークンをICOで発行する場合には、前払式決済手段に該当するものとして、発行する電子マネーの金額に応じて国に資金を預ける(供託という)義務が発生するのでした(詳細については別記事参照のこと)。

仮想通貨と電子マネーの比較の要点

以上の内容を踏まえて、なるべくシンプルに仮想通貨と電子マネーの違いを以下に記していきます。

国や銀行などの、発行・管理のための主体がいるかどうか

仮想通貨の場合には基本的には分散型台帳という方式が用いられ、中枢に巨大なデータセンターを有しないかたちが採用されることが多いです。一方、電子マネーの場合には、法定通貨との交換レートを保証する事業者がどこかに存在しないことには成り立ちません。そうであるからこそ供託義務が課せられるのです。

支払いや決済の手段として、制限か課せられているかどうか

仮想通貨の場合には、インターネットに接続する環境さえあれば、世界中の誰に対しても広範に支払いや決済を行う手段となりえます。一方電子マネーの場合には、発行主体となる事業者によってあらかじめ限定された財やサービスに対する支払いのみが可能となります。

為替の変動があるかどうか

法定通貨との交換レートが事前に定まっていない仮想通貨は、為替の変動があります。一方法定通貨との交換レートが事前に定まっている電子マネーは為替変動はありません。こうした違いが、投資や投機の対象となるかならないかをという違いにもつながっていきます。

まとめ

以上が仮想通貨と電子マネーの共通点・相違点についての整理となります。仮想通貨・電子マネー・法定通貨・トークンなど、多数の用語が登場してきましたが、その定義は明確に異なるものです。しかしながら実務上は、仮想通貨的な特徴と電子マネー的な特徴両方を具備するようなトークンが発行されるような事例もあり、この区別をめぐる議論も複雑なものとなる場合が少なくありません。

仮想通貨の場合と電子マネーの場合とでは、規律している法制度そのものが大きくことなっていることも忘れてはなりません。区別が曖昧になるような場合には法制度の基本を踏まえつつ、金融庁等の関係省庁の見解をきちんと確認するなどの手間を怠らないようにしましょう。

モノリス法律事務所

モノリス法律事務所は、元ITエンジニアで企業経営経験のある代表弁護士の下、仮想通貨取引所の監査役、ブロックチェーン関連の開発を行う会社の顧問弁護士などを務めております

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